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メタファー込みでの良作
アカデミー脚本賞を受賞した、「ゲット・アウト」のジョーダン・ピール監督の作品です。
ある幸せな一家を、ドッペルゲンガーの自分たちが襲いに来るというホラー。
ですが、コメディアンでもある監督の作風なのか、ところどころにクスッと笑えるシーンが差し込まれていて、
緊迫した中にも和む瞬間があります。ただただ恐ろしい思いをしたい!という方には、すこし期待はずれかもしれません。
この作品に出てくるドッペルゲンガーたちは、実はクローン技術で作られた人造人間です。
しかし魂のクローンまでは作ることができなかったため、地上にいる人間(対になる存在)と魂を分け合っています。
といっても、クローンたちの方が不完全な存在のため、基本的には言葉を話すこともできず、複雑なことを考えることもできません。そのため、臭いものに蓋をするように、地下に大勢のクローンたちが閉じ込められているという設定です。
とてもリアルとは言えない設定ですが、これは格差社会へのメタファーなのだそうです。
地上を自由に歩き回り、話し、生活している人間と、地下に詰め込まれ、自我もなく、ただ死ぬのを待っているクローン。
それは、富裕層と貧困層の対比を示しています。
主人公アデレードと、そのクローン、レッドの幼い頃の秘密が明かされることで、そのメタファーが痛烈に感じられるようになっています。
ホラー映画と一口に言っても、ただ恐ろしいだけの作品ではなく、考えさせられるタイプの良作でした。