アス / Us

アス / Us

『アス』(原題:Us)とは、2019年に公開されたアメリカのホラー映画である。監督はジョーダン・ピール、主演はルピタ・ニョンゴ、ウィンストン・デューク、エリザベス・モス、ティム・ハイデッカー。「Us」とは「私たち」という意味である。
1986年夏、両親と共にサンタクルーズにある行楽地を訪れたアデレード・ウィルソンは、近くにあったミラーハウスで自分にそっくりな少女と出会い、そのトラウマにより失語症となる。そして現在、成長したアデレードは失語症を克服し、夫と2人の子を持つ母になっていた。ウィルソン一家はサンタクルーズにあるビーチハウスを訪れ、そこで友人一家と落ち合った。夜、ビーチハウスに戻ったアデレードは、夫ゲイブに昔この場所で起こった出来事を打ち明ける。そのとき、停電が起こり、長男ジェイソンは玄関先に4人の不審者が立っていることに気づく。リビングルームで侵入者たちと対面したウィルソン一家は、彼らが自分たちとそっくりなドッペルゲンガーだと気づく。
自分たちと瓜二つの姿をした集団に遭遇した一家に起こる惨劇を描いた作品である。

sunlight_doorのレビュー・評価・感想

アス / Us
8

メタファー込みでの良作

アカデミー脚本賞を受賞した、「ゲット・アウト」のジョーダン・ピール監督の作品です。
ある幸せな一家を、ドッペルゲンガーの自分たちが襲いに来るというホラー。
ですが、コメディアンでもある監督の作風なのか、ところどころにクスッと笑えるシーンが差し込まれていて、
緊迫した中にも和む瞬間があります。ただただ恐ろしい思いをしたい!という方には、すこし期待はずれかもしれません。
この作品に出てくるドッペルゲンガーたちは、実はクローン技術で作られた人造人間です。
しかし魂のクローンまでは作ることができなかったため、地上にいる人間(対になる存在)と魂を分け合っています。
といっても、クローンたちの方が不完全な存在のため、基本的には言葉を話すこともできず、複雑なことを考えることもできません。そのため、臭いものに蓋をするように、地下に大勢のクローンたちが閉じ込められているという設定です。
とてもリアルとは言えない設定ですが、これは格差社会へのメタファーなのだそうです。
地上を自由に歩き回り、話し、生活している人間と、地下に詰め込まれ、自我もなく、ただ死ぬのを待っているクローン。
それは、富裕層と貧困層の対比を示しています。
主人公アデレードと、そのクローン、レッドの幼い頃の秘密が明かされることで、そのメタファーが痛烈に感じられるようになっています。
ホラー映画と一口に言っても、ただ恐ろしいだけの作品ではなく、考えさせられるタイプの良作でした。