ヒストリエ(Historie)のネタバレ解説・考察まとめ
2003年から「月刊アフタヌーン」で連載されている岩明均による歴史漫画。マケドニア王国のアレクサンドロス大王に仕えた実在の人物である書記官エウメネス。古代オリエント世界を舞台に、名家の息子として育てられた彼が陰謀によって一時は奴隷に身を落としながらも徐々にその才能を開花させていく様が描かれる。
アンティパトロス
パルメニオンとともに「王家の両輪」とも称される重鎮で、王国内での権力は絶大。用兵はあまり得意ではなく、その分、政治家として内政・外交に手腕を発揮する。王国内で双璧をなすパルメニオン一派とも権力争いなどはほとんどなく、互いに協力体制を築いている。エウメネスに興味を持ち、フォーキオンの失脚を狙った作戦の際にはその実行者として抜擢している。
フォーキオン
アテネの弁論家・政治家。いつもしかめっ面で無愛想なため近寄りがたい印象を与えるが、実際には温和で親切な人柄。そのため人格者としてアテネ市民たちからの信頼が篤く、毎年のように将軍職に選出されている。基本的には穏健派で平和主義者だが、軍人として戦場に立てば非常に有能。ペリントスやビザンティオンでの海戦ではアテネ海軍を率いてマケドニア軍を敗退させている。
『ヒストリエ』の用語
オデュッセイア
古代ギリシアの代表的文学。ギリシア神話に登場する英雄オデュッセウスを主人公とし、トロイア戦争に勝利後、凱旋する途中に起きた10年間にもおよぶ漂泊が描かれている。古代ギリシアにおいては「イーリアス」と並び、教養ある市民にとって知っていて当然の知識の一つとされた。エウメネスが憧れていたオデュッセウスは、他の英雄たちが腕自慢の豪傑たちであるのに対して知略を武器とするところが特徴で、「誰よりも狡猾な王」と称される。
ヘロドトス
古代ギリシアの歴史家で、今日まとまった形で伝承された最初の歴史書「歴史」を著した人物。そのため「歴史の父」とも呼ばれている。
『ヒストリエ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
エウメネスの絶叫
名家の暮らしから突如奴隷の地位に墜とされ故郷を去る際、奴隷の地位であることを匂わせず接してきた人たちとの思い出と急変する彼らの態度との落差に、常に冷静なエウメネスがついに感情を爆発させる印象的なシーン。
「書物から得た知識の多くが、ほったらかしにしておけばいつまでも“他人”なのだが、第三者にわかりやすく紹介してみせる事で、初めて“身内”になってゆく」
一人本を読むことをこよなく愛するエウメネスが、大人数にその知識を伝えるという行為の中で自身の知識もまた変化することを実感する台詞。
インプットとアウトプットの関係を端的に表した深い言葉。
大蛇に呑まれる男
オリュンピアスによって切り落とされた愛人の生首を大蛇が丸呑みにする瞬間が9ページにもわたってコマ送りのように描かれているシーン。
アレクサンドロスの出生やヘファイスティオンの出現について、諸々のストーリー上の考察の糸口が詰まった重要ポイントだが、そうしたストーリー上の重要性を脇に置いたとしても、ただその一枚絵だけで見るものに強烈な印象を残すカット。単なるグロや残酷さという表現だけで処理してしまうのはもったいない、表現しづらい生々しさを圧倒的な迫力で描き出す岩明均の真骨頂が垣間見える一枚。
「今は自由の軽さと重さ存分に味わっております」
共に奴隷の身分を経験し、そしてその後に自由を手に入れたエウメネスとカロンの間で交わされた会話の中の台詞。
奴隷という重い枷から自由になったことの軽さと、自由になったからこそ担うことができる責任の重さを一言で表している。
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目次 - Contents
- 『ヒストリエ』の概要
- 『ヒストリエ』のあらすじ・ストーリー(第1部)
- プロローグ
- 少年期(カルディア)
- 少年期-青年期(パフラゴニア)
- 故郷カルディアへ
- 『ヒストリエ』のあらすじ・ストーリー(第2部)
- マケドニア首都ペラへ
- アレクサンドロスとヘファイスティオン
- ペリントス、ビザンティオン遠征
- カイロネイアの戦い
- 主要登場人物・キャラクター
- エウメネス
- アリストテレス
- アンティゴノス(フィリッポス)
- パルメニオン
- ヒエロニュモス
- ヘカタイオス
- ゲラダス
- カロン
- トラクス
- サテュラ
- ダイマコス
- テレマコス
- アッタロス
- エウリュディケ
- アレクサンドロス
- ヘファイスティオン
- オリュンピアス
- アンティパトロス
- フォーキオン
- 『ヒストリエ』の用語
- オデュッセイア
- ヘロドトス
- 『ヒストリエ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- エウメネスの絶叫
- 「書物から得た知識の多くが、ほったらかしにしておけばいつまでも“他人”なのだが、第三者にわかりやすく紹介してみせる事で、初めて“身内”になってゆく」
- 大蛇に呑まれる男
- 「今は自由の軽さと重さ存分に味わっております」