SHUFFLE!(ゲーム・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ
SHUFFLE!(シャッフル)とは、Navelから2004年1月30日に発売された美少女ゲーム、およびそれを原作としたアニメのことである。
主人公の土見稟の所属する国立バーベナ学院を舞台に、凛のことを許嫁候補だというリシアンサスとネリネという2人の少女が転入してくるところから物語は始まる。
稟と楓は同じ屋根の下で暮していて、楓は稟に尽くすことを生き甲斐とするほどに仲がいいが、実は昔はそうではなかった。
それどころか、楓は数年前まで、あることがきっかけで稟のことを心の底から憎んでいたのだ。
それは、稟と楓の両親が亡くなった時にさかのぼる。
当時は稟と楓の仲も良く、家族ぐるみでの付き合いもあった。
ある日、稟の両親と楓の母親は旅行に行くという話になっていた。
しかし旅行の途中で、旅行には行けず家にいた楓が高熱を出したのだ。そこで稟の両親たちは楓の看病のため旅行を中断し、帰宅することに。
そしてその帰宅の最中に交通事故に巻き込まれ、稟の両親と母親は亡くなってしまった。
元々母親っこの楓は母親の死を受け、生きる気力を完全に失い、精神崩壊を起こし、寝たきりとなってしまった。
寝たきりの楓を見て、医者は「何か生きる理由がないと、この子はこのまま衰弱していくでしょう。」と言う。
どうすればいいのか稟は悩んだ。何か生きる理由をあげられないのかと。
そうして、ある一つの答えを出し、楓に告げた。「僕が「家に戻ってきてほしい」とわがままを言ったから両親たちは死んだんだ、僕が楓のお母さんを殺したようなものだ」と、全くの嘘をついて。
すると楓は目を覚ました。「自分の母親を殺した(と思い込まされている)稟に対する憎悪と復讐心」という、明確な生きる理由を手に入れたからだ。
それ以降、楓は稟に対し、真実に気が付くまで数々な嫌がらせを行った。
しかもその一つ一つが全く洒落にならないもので、階段から突き落としたり、学校にくる頃合いを図ってベランダから植木鉢を落としたりなど、下手をしたら死んでいるようなものまである。
さらに、この頃から楓は学校のアイドルであり、その楓が憎む者を周りが庇うわけもなく、ほぼすべての生徒から目の敵にされていた。
この嘘が楓の父親によってばらされ、楓が真実を知るまでの間、稟は楓を一切恨まず、ひたすらに我慢をし続けていた。
嘘がばれてからは、楓は稟に深く謝罪し、現在のような性格になった。亜沙に料理を教わったのもこの後の話である。
厳密にいうと、楓の母親がなくなる前の仲の良かった時から楓は稟に対し献身的で、稟が楓と和解した際に「昔のような仲に戻ろう」と言ったため、稟に尽くすようになった。
この稟と楓の過去は、原作ではあまり語られず、ファンディスクの『Really? Really!』で詳しく語られていく。
原作とアニメ版の大きな違い
アニメ版と原作のストーリーは、あまり変化はない。
強いて挙げるにしても、アニメ版では全キャラクターのルートをなぞるため、その際に最終的に結ばれる亜沙以外で稟に恋愛感情が芽生えないことくらいだろう。
しかし、一つだけ大きく原作と異なる部分がある。
それは、メインヒロインの楓がヤンデレになってしまうことである。
原作では一切そんな素振りは見せないのだが、アニメ版のオリジナルの展開で、恐ろしいほどのヤンデレになるのである。
ここまで楓が変貌するのは、アニメ版で稟と亜沙が結ばれてからの終盤のことである。
稟が亜沙と付き合うようになってから、稟は楓に対し、おざなりな態度になってしまっていた。
楓の作る晩御飯に対しても、リクエストを「なんでもいい」と適当にしてしまったり、またある時は用意してくれたにもかかわらず「亜沙先輩にごちそうになる」などと言い急にキャンセルしたりなど、失礼ともいえる態度をとってしまっていた。
楓はずっと昔から稟のことが好きで、稟に命まで救ってもらい、そのため稟に家事などあらゆる面で尽くすことを何よりの生き甲斐としていた。
そんな稟が、自分の先輩である亜沙に取られてしまい、相当な心的ダメージを負ってしまう。
さらに亜沙は、料理の師匠ともいえる存在であり、コンプレックスもあっただろう。
そして楓がヤンデレへ変貌し、崩壊していく様が、アニメ版ではじっくりと描かれた。この展開は賛否両論で、あまり気軽に話題にすると古くからのファンの顰蹙を買うこともある。
『SHUFFLE!』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
狂っていく楓
段々と狂っていく楓の姿がこの動画でまとめられている。
楓が「稟のお世話をする日常」にすがり、何も中身のない鍋を回すシーンは「空鍋」と言われ、ヤンデレの象徴として現在でも語り継がれるほどである。また、ヤンデレ=殺傷沙汰というイメージの反例として、この単語や楓自身が持ち出されることもある。
稟と亜沙のプリクラの亜沙の顔だけをぐしゃぐしゃに塗りつぶしたり、強引に稟に抱いてもらおうと迫ったりと、確かに殺傷などの過激な暴力こそないものの、その姿はまごうことなきヤンデレの完成系である。
「あんたなんか…死んじゃえばいいんだ!」
稟が家に招いた亜沙を家から追い出そうとした場面で、楓が亜沙に向かって叫んだ台詞。
ついに爆発した楓の内面のどす黒い感情が露わになり、当時は非常に大きな話題を呼んだ。
この場面はなんと楓を演じた後藤邑子さん自身さえ「成長しきれていない楓の一面が最悪の形で出てしまった。助けてあげてくださいって思った」とコメントしたほどである。
この言葉は、かつて稟が親を殺したと思っていた時、稟に向かって放った言葉と同じものである。
楓にとって、稟は母親と同等に大切な存在だった。その存在を取られ、自分の居場所であり、稟のお世話という生き甲斐を果たす場所である家にまで上がられたのだ。その苦悩はすさまじかったことだろう。
そして、それが親を失うことに等しい苦痛であることを現す、非常に重い名台詞だろう。
ちなみに、この台詞は「死んじゃえバインダー」と聞こえることから、時にネタにされることも。
神にも悪魔にも凡人にもなれる男
稟のことであり、第一話のタイトルでもある。クラスメートに名付けられたものだが、実際リシアンサスと結婚した場合は神界の王、ネリネと結婚した場合には魔界の王、それ以外のキャラクターと結婚した場合は凡人になるため、全く間違っていない。
それどころか魔王と神王は、一部の物語では「神界が一夫多妻制なので、神界で結婚したのちにシアやネリネと結婚した場合、三世界の王となりうる」とさらに突飛なことを目論んでいる。