蟲師(漫画・アニメ・映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

蟲師(むしし)は漆原友紀の手による漫画作品。1999年から2002年にかけてアフタヌーンシーズン増刊にて連載された。見慣れた動植物とは異なる生き物「蟲」と人々の営みを蟲師・ギンコの視線を通して描く。第30回講談社漫画賞・一般部門賞受賞。2005年フジテレビ系列にてアニメ化、数々の賞に輝き、2007年オダギリジョー主演で実写化されている。

第7巻

■花惑い(はなまどい)

桜の名木を見にやってきたギンコは匂い立つような美しい女・佐保に出会う。
佐保は目や耳をはじめ五識を失っていた。
桜の手入れをする庭師に、佐保は桜の泡だけを飲んで80年以上生きていると聞き、桜に宿る木霊(こだま)という蟲によって美しさと長寿を得たのではないかと考えるギンコは庭師に詳しく話を聞く。

■鏡が淵(かがみがふち)

生きた人間の影を写し取り、実体を奪う蟲・水鏡(みずかがみ)に影を取られてしまった娘・真澄(ますみ)は失恋したばかり。
死を望む真澄にギンコは水鏡の撃退法と共に実体を持って生きていることについて語る。

■雷の袂(いかずちのたもと)

愛する人と結ばれることなく子を産んだ女は、どうしても子を愛することができないことが悩みだった。
叱り飛ばして外に放り出したときに雷に打たれたのが原因で招雷子(しょうらいし)という蟲につかれ、4度にわたって雷に打たれる我が子の姿を見ても助ける気が起きない。
そんな母をギンコは諭す。

■棘のみち(前編)(おどろのみち ぜんぺん)

最古の蟲師一派である薬袋(みない)の一族に生まれたクマドは、狩房家の淡幽の肉体に封じられた禁種の蟲を完全に絶やす術を見つけるため、幼い頃に蟲の世と人の世の境である「棘の道」で魂を抜かれ、代わりのものを入れられた。
淡幽の頼みでギンコは、クマドと共に棘の道の調査に乗り出す。

■棘のみち(後編)(おどろのみち こうへん)

「棘の道」の中を歩く2人は、魂を喰う「核喰蟲(きねくいむし)」に襲われる。
ギンコを救うため核喰蟲の前に飛び出したクマドだったが、ギンコの見たものはクマドの体から出て核喰蟲を食べる「人工の蟲」の姿だった。

第8巻

■潮わく谷(うしおわくたに)

雪の山中で怪我をして倒れていたところを豊一に助けられたギンコは、雪の中で実りをつける棚田を見る。
眠ることなく働く豊一にこのままでは命が危ないからと蟲下しを渡すギンコ。
自分の生命が母親の命を吸い取って成り立っていたことを知った豊一は、子どもの未来を守るため、蟲の力を捨てぬ決意をする。

■冬の底(ふゆのそこ)

冬の終わり、冬眠に入ったギンコは春の目覚めと共に目覚めるはずだったが、予想に反して山はまだ冬だった。
近くの山々が春を迎える様子を見たギンコは、己のいる山のヌシが山崩れの傷を癒すために山を閉じていることに気づく。

■隠り江(こもりえ)

体の弱い少女・ゆらは時折意識をなくし抜け殻のようになる。
しんどいときに意識の水路をわたって女中のスミに会っているという彼女にギンコは、そのままでは二度と意識が戻らなくなってしまうと忠告する。
スミに頼ることをやめられないゆらだったが、スミから「もう頼るのはやめてください」と手紙が届く。

■日照る雨(ひてるあめ)

雨が降るときのわかるテルは幼い頃、決して追いつけないとされる「逃げ水」に追いついてしまったことがあった。
それ以来汗もかけなければ涙も出なくなってしまったテルは、自分がいることで雨が降り続け人が亡くなった過去に苦しんでいた。

■泥の草(どろのくさ)

山の沼地に死者を葬り、葬儀から7日間は山に入ってはならないという習わしのある村で足が痺れるイボが流行る。
村人たちは「死が伝染した」という。
ギンコはその村の中で一人だけ足中に草が生い茂った男に出会う。男は4日前に死んだ者の兄だという。
ギンコは男に死臭が染みついているからではないかと推測する。

第9巻

■残り紅(のこりべに)

遠い昔にいなくなった少女・アカネ。
アカネがいなくなった場所に立っていた記憶のない少女・みかげはアカネの父親に引き取られ、里に溶け込み、アカネの幼馴染・陽吉と結婚した。
子を育てあげ老夫婦2人で暮らす陽吉とみかげだが、夕方になるとみかげが「帰る」と言って姿を消すようになる。
山を歩くギンコはみかげに会い、幼い頃に出会ったのは大禍時(おおまがとき)という蟲ではないかと話す。

■風巻立つ(しまきたつ)

船に乗り込んだギンコは水夫見習いのイブキがとりかぜという蟲と口笛で話をする姿を目にする。
「夜には決して吹かんことだ」と忠告するギンコだが、真剣にとらなかったイブキの口笛で船が沈んでしまう。
帰宅後冷たい義母にあてつけるように夜口笛を吹きまくるイブキだが、義母がどす黒くなって倒れてしまう。

■壷天の星(こてんのほし)

夜しかない場所で屋敷に独りきりで住む少女・イズミはいつの間にか用意されている食事を食べ、自分の人形を隠す見えない誰かと遊んでいた。
そこへやってきたギンコはイズミに「空の向こうで毎日食事を作って待っている母親、人形を隠して遊んでいる姉がいる」と話す。

■水碧む(みずあおむ)

水かきのある少年・湧太(ゆうた)は泳ぎが達者な代わりに異常に喉の渇きを訴え体温が低く、言葉を発さない子どもだった。
湧太に雨蠱という蟲が寄生していることを告げたギンコは薬をわたすが、湧太は長雨の日に消えてしまう。

■草の茵(くさのしとね)

ギンコの過去の話。山中で行き倒れたギンコは蟲師・スグロに助けられる。
スグロは蟲を寄せる体質のギンコに必要と思われる蟲払いの方法などを教える。
そんなある日、ギンコは生まれたばかりのヌシの卵を見つけるが、親鳥の鳴き声に驚き、卵を割ってしまう。

第10巻

■光の緒(ひかりのお)

乱暴者の少年・ゲンは会ったことのない母親が自分を嫌って出て行ったのではないかと密かに悩んでいた。
そんなある日行李の中に入った縫い目のない光る衣を見つける。
道で出会ったギンコに「それはオレがおまえに着せたものだよ」と言われたゲンは、母親がその衣を自分のために織ってくれたことを知る。

■常の樹(とこしえのき)

山に千年以上立っていた木が切られた。
大工の幹太(かんた)は落ちていたスモモに似た実を食べたことで足が木になり、千年間の木の記憶を持つようになった。
動かぬ足に悩む幹太だが、足に咲いた赤い花によって木の記憶を呼び覚まし、これから地震が来ることを知らせる。

■香る闇(かおるやみ)

花の匂いがすると不安になる男は、何度も強い既視感に襲われていた。
ある夜、雨宿りに立ち寄ったギンコに見覚えを感じた男は、既視感は同じ時間を繰り返し生きているためだとギンコに指摘される。
花の匂いのする暗がりに気をつけろという忠告を聞いた男は見たことのない妻に出会う。

■鈴の雫(前編)(すずのしずく ぜんぺん)

山々に鳴り響く夥しい鈴の音と共に生まれた少女・カヤは体に草が生えていた。
父も母も兄も、彼女を可愛がるが、風の強く吹いたある日、カヤは姿を消してしまう。
山を歩いていてヌシの視線を感じたギンコはヌシの道を辿り衰弱した少女に出会う。
人の心をなくしたカヤが兄に見つかり里に戻ったことで、山の均衡が崩れ始める。

■鈴の雫(後編)(すずのしずく こうへん)

山の声を伝える「光る輪」に呼ばれ山に帰ったカヤだったが、家族を恋しく想った彼女は山の声がわからなくなっていた。
山と一つになれなくなったカヤをヌシから降ろすため、次のヌシの誕生が決まる。
カヤをただの人に戻そうとするギンコだが、カヤは山の約束「理(ことわり)」となって消えた。

特別篇

■日蝕む翳 前篇(ひはむかげ ぜんぺん)

蟲の記録を集める淡幽に助言され、終わらない日蝕を始める蟲「日蝕み(ひはみ)」の出現が予想される里を訪れたギンコ。
予想通り日蝕みが出現し、世界は闇に包まれる。
その里に住む白髪の少女・ヒヨリは生まれつき太陽に弱く、家から出られぬ生活を送っていた。
太陽のない世界を自分の生きやすい世界だと喜ぶヒヨリには、太陽の中で元気に遊ぶ双子のヒナタへの複雑な想いがあった。

■日蝕む翳 後篇(ひはむかげ こうへん)

太陽の光がないことで弱り始める人々を見ながらも、決して協力的な姿勢を見せないヒヨリ。
双子の姉妹であるヒナタは、ヒヨリの言葉によって、自分が健常であるがためにヒヨリを傷つけてきたと知り、蟲の世界へ行ってしまう。
蟲にあてられて言葉を失い、姿の透けてしまったヒナタのため、ヒヨリは日蝕みを殺し、元のヒナタを取り戻すことを決意する。

アニメ

無印(第1期)

2005年10月から2006年3月にわたって放送された。
監督・長浜博史の「原作が面白いんだから、それだけを見て忠実に映像化する」という信念に則り、原作漫画に倣い、オリジナルストーリーやオリジナルキャラクターは一切なしで制作されている。

2006年3月に東京国際アニメフェア第5回東京アニメアワード・テレビ部門優秀作品賞を受賞。
美術監督・脇威志は美術賞を受賞している。
2007年、文化庁メディア芸術祭「日本のメディア芸術100選」アニメーション部門では総合第6位を獲得。
2000年から2007年の間に制作された作品に限定した中では第1位に輝いている。

同年開催された文化庁メディア芸術祭10周年企画展「日本の表現力」では、現代のアニメ作品の1つとして紹介され、第1話「緑の座」が上映された。

主題歌
「The Sore Feet Song」
歌 - Ally Kerr

特別篇 日蝕む翳(ひはむかげ)

2014年新春スペシャルとして放送された。
脚本に作者の漆原自身が参加している。
原作にはないオリジナルカットとして、先のアニメに登場したキャラクターたちのその後の姿が挿入されている。
本編終了後、4月から2クールにわたる続編アニメが放送されることが発表された。

蟲師 続章(第2期)

2014年4月から同年12月にかけて放送された。
原作単行本第6巻から10巻の収録エピソードをアニメ化している。
第二期は前述した特別編「日蝕む翳」の放送後、2014年4月より同年12月まで幾つかの時期に分けてテレビ放送した。

主題歌
「SHIVER」
歌 - ルーシー・ローズ / オープニング・エンディング ディレクター - 菅原一剛

実写映画

概要

大友克洋監督、オダギリジョー主演の日本映画。
2007年3月24日から松竹・東急系にて公開された。
第63回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門、第31回トロント国際映画祭VISIONS部門、
第23回サンダンス映画祭 SPECTRUM部門といった映画祭に出品されている。

あらすじ・ストーリー

今から100年前の日本。蟲師のギンコ(オダギリジョー)は雪深い山の庄屋で4本の角が生えた少女・真火(守山玲愛)と出会い彼女の病気を治す。
その後、蟲の力を文字に封じる女性・淡幽(蒼井優)の身に変異が起きたと連絡を受けたギンコは、変わった虹を探す虹郎(大友南朋)と共に彼女のもとへ向かう。
淡幽を助けるため蟲に取り憑かれ意識を失うギンコだったが、回復した後リハビリのため虹郎と光脈を訪ね歩く旅に出る。

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