
『ライアー・ハウス』は、2012年のアメリカ映画。『ライアー・ハウス』は邦題で、原題は『Breathless』。犯罪と人間関係をテーマに据え、ブラックユーモアをふんだんに盛り込んだコメディスリラー作品となっている。最低限に絞られた登場人物が、家の中という限られた空間で繰り広げるドタバタ劇が、独特のカメラワークや即興的な演出でスタイリッシュに描かれている。低予算作品ながら、主演のジーナ・ガーションの演技力や、遺体を解体するグロテスクな描写に定評がある。
『ライアー・ハウス』の概要
『ライアー・ハウス』は、2012年のアメリカ映画。『ライアー・ハウス』は邦題となっており、原題は『Breathless』。犯罪と人間関係というテーマに、ふんだんにブラックユーモアを盛りこんだコメディスリラー作品となっている。
ジャン=リュック・ゴダールが監督し、1960年に公開された名作フランス映画『勝手にしやがれ』に影響を受けて制作されたということが明かされており、低予算ながら独特のカメラワークやアドリブで軽やかさやスタイリッシュさを演出している。また、登場人物は必要最低限に絞られており、シーンもほぼ家の中で進行する。
「嘘」を題材としているものの、心理描写にあまり着目されていないことから評価は二分しているが、主演を務めたジーナ・ガーションの高い演技力や、遺体を解体する際のグロテスクな描写には定評がある。
日頃虐げられている主婦のローナは、夫のデールが銀行強盗に手を染めていることを見抜き、その手柄である大金を親友のタイニーと共に横取りしようと目論む。しかし、夫を脅迫する過程で誤って射殺してしまうのであった。
「家の中全員、嘘つき。」という心惹かれる煽り文句を掲げる今作。10万ドルを巡る愛憎サスペンスが行きつく先はどこなのか。逆転に次ぐ逆転に頭が混乱し、思わぬラストに笑みがこぼれるような仕上がりとなっている。
『ライアー・ハウス』のあらすじ・ストーリー
銀行強盗から始まる泥沼
ローナは親友のタイニーを自宅に呼び寄せ、近隣のレッドカウンティで起きたウォルドルフ貯蓄銀行の強盗事件について話そうとしていた。
タイニーがローナの家に到着すると、リビングには意識を失ったローナの夫、デールが倒れていた。デールを見ると、ローナがフライパンで殴った痕が見える。ローナはデールがレッドカウンティの銀行強盗だ、と告げる。
タイニーは、「デールが過去にコンビニ強盗をしていたからといって、銀行強盗までやるとは限らない」と反論するが、ローナは確信があるかのようで、自分の出した結論を信じて疑わなかった。さらにローナは自分の疑念を裏付ける証拠として、デールのブーツについた赤土を見せ、レッドカウンティは赤土が多い土地であることを説明した。
さらに、強盗は頭にストッキングをかぶっていたと報告されており、ローナの唯一のストッキングが行方不明になっていることも根拠として挙げるのであった。
ローナはデールの職場にも連絡を取って、彼が転勤願いを出していたことも押さえていた。彼女は、これは町を離れて疑いを避けるための計画だと推測していたのである。
夫殺しに発展する事態
ローナとタイニーはデールを縛ったまま、銀行強盗の件について問い詰める。しらを切り通そうとするデールだが、ローナが銃を振りかざして威圧を強めると、デールはついに銀行を襲ったことを認めるのであった。
ローナが金の隠し場所を尋ねると、デールは「安全な場所」と言うが、ローナは彼の視線の動きから、実はトレーラー内に金を隠していることを見抜いた。議論の最中、ローナが銃を振り回すと銃が暴発し、デールは頭部を撃たれて即死してしまう。
ローナとタイニーは動揺し、何をすべきか相談する。
タイニーは警察に電話しようとするが、ローナは「正当防衛は主張できない」と説得する。ローナは、油田で機械に挟まれた人々が二日目にはテキサスの虫により死体が判別できなくなった、という話を父から聞いたことを思い出し、デールを油田に埋める計画を思いつく。
しかしそこに地元の保安官であるクーリーが訪れる。彼はデールが銀行強盗であるということに目星をつけていて、問いただすつもりでやって来ていた。ローナは、デールが散歩に出たと嘘をつき、令状もないことを理由に保安官の立ち入りを拒む。保安官は仕方なく車に戻り、退職願を確認する。
タイニーは計画を急ごうとするが、ローナは「保安官が見ている状態では死体を運べない」と説明する。タイニーは逃げる案を出すが、ローナはそれも警察に追われるだけだと却下する。
そこでローナは、昔感謝祭で大きな七面鳥を切り分けた経験を思い出し、電動ナイフでデールの死体を細かく分解して処理する計画を立てる。
血の海と化すトレーラー
ローナとタイニーはデールを解体し、錆び取りやブレンダーを駆使して液状化して廃棄することにした。解体しては床をモップで拭き、掃除機でデールの残骸を吸い取る。しかしこの一連の作業は予想以上に大変だったために浴槽ですべて焼却しようと試みるが、トレーラーは血と内臓で完全に汚染されてしまった。そのとき、窓から男が侵入し、二人を銃で脅す。
彼はローナが雇っていた私立探偵のモーリスという男だった。デールの銀行強盗とタイニーとの浮気を突き止めていたモーリスは、デールが残した金を手に入れるため二人を脅す。
ローナは、金がエアダクトにあると嘘をつき、ダクト内に仕掛けた罠で手を挟ませる。モーリスが痛みに気を取られている隙に、タイニーが温度計でモーリスを刺し殺す。
金に目がくらんだタイニーはローナを銃で追い詰めるが、ローナはタイニーを倒して気絶させる。ローナは、庭のデイジーの下に埋めてあった紙袋に隠された金を回収し、それを髪に巻いてスカーフで覆う形で隠して持ち去る。さらに指輪のついた自分の指を切り落とし、現場に残しておくことで、自分が死亡したかのように偽装していた。
そこに、令状を持ってきたクーリー保安官と部下がトレーラーに突入する。タイニーは床に倒れているが動き始める。状況からしてタイニーが犯人と判断したクーリーは発砲し、彼女を射殺する。トレーラー内は血と内臓の惨状となり、保安官と部下たちは状況を把握できずに呆然とするのであった。
『ライアー・ハウス』の登場人物・キャラクター
ローナ(演:ジーナ・ガーション)

本作の主人公。浮気と酒に溺れ、暴力を振るう夫に悩まされている主婦。夫のデールが銀行強盗に関与した可能性があることに気づき、金の強奪を目論むものの誤って射殺してしまい、人生が狂ってしまう。
デール(演:ヴァル・キルマー)

ローナの夫。浮気やアルコールに溺れており、家を顧みることがない典型的なダメ夫。銀行強盗に関与しており、10万ドルの大金を隠していたものの、それを嗅ぎつけたローナに脅迫された際、誤って射殺されてしまう。
タイニー(演:ケリー・ギディッシュ)

ローナの友人。ローナがデールの金を強奪する計画に乗ったことで一連の事態に巻き込まれるが、実はデイルの浮気相手であったことが物語終盤で明かされる。全てを知ったローナに偽装工作を施されて単独犯に仕立て上げられ、犯人と誤認されて撃たれ、死亡。
クーリー保安官(演:レイ・リオッタ)

画像右がクーリー
レッドカウンティの銀行強盗がデールであると目星をつけ、家を訪ねてきた保安官。令状がないことを理由に追い返されたものの、物語終盤に令状を取って再登場。トレーラー内の惨状を見て、タイニーを射殺する。
モーリス(演:リチャード・リール)
デールの素行調査のため、ローナに雇われていた私立探偵。デールの銀行強盗とタイニーとの浮気を突き止め、その情報を持ってトレーラー内に突入。ローナとタイニーを脅し、金を強奪しようとするも不意を突かれて殺される。
目次 - Contents
- 『ライアー・ハウス』の概要
- 『ライアー・ハウス』のあらすじ・ストーリー
- 銀行強盗から始まる泥沼
- 夫殺しに発展する事態
- 血の海と化すトレーラー
- 『ライアー・ハウス』の登場人物・キャラクター
- ローナ(演:ジーナ・ガーション)
- デール(演:ヴァル・キルマー)
- タイニー(演:ケリー・ギディッシュ)
- クーリー保安官(演:レイ・リオッタ)
- モーリス(演:リチャード・リール)
- 『ライアー・ハウス』の用語
- 銀行強盗
- 10万ドル
- 『ライアー・ハウス』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 妻に脅されて焦った情けないデール
- 『ライアー・ハウス』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 原題の『Breathless』の由来となった1960年のフランス映画『勝手にしやがれ』(原題:À bout de souffle)