チャップリンからの贈りもの(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『チャップリンからの贈りもの』(チャップリンからのおくりもの)とは、2014年のフランス映画。1978年に実在する伝説のコメディアン、チャールズ・チャップリンの遺体を金銭目的で「誘拐」した男たちの実話にスポットを当てた伝記コメディとなっている。チャップリンの実子であるユージーン・チャップリンと、孫であるドロレス・チャップリンが出演していることでも話題となった。コメディ作品かと思えば意外にシリアスで、しかしその中でも時折クスリとさせてくれるのが魅力的な作品である。

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『チャップリンからの贈りもの』の概要

『チャップリンからの贈りもの』(チャップリンからのおくりもの)とは、2014年のフランス映画。
実在する伝説のコメディアンで、「喜劇王」の異名で呼ばれて愛される、チャールズ・チャップリンの遺体を「誘拐」した男たちが1978年にスイスで起こした実際の事件にスポットを当てた伝記コメディとなっている。グザヴィエ・ボーヴォワが監督。主演を務めるコメディアン、ブノワ・ポールヴールドの軽妙なセリフ回しも称賛の声を集めた。チャップリンと4番目の妻であるウーナとの間に生まれた四男のユージーン・チャップリンと、ユージーンの姪にあたり、チャップリンの孫であるドロレス・チャップリンが出演していることでも話題となった。

妻の入院治療費で困窮する貧困家庭の大黒柱であるオスマンと、その友人で刑務所帰りのエディは、ニュースで喜劇王、チャールズ・チャップリンの訃報を知る。彼が生前過ごしていたという豪邸を見たエディは、刑務所の中で知人が話していた「富豪を誘拐して洞窟に置き去りにする」という話をヒントに、チャップリンの遺体を誘拐することを企てる。
紆余曲折の末、結局逮捕されてしまった彼らだが、人の優しさに触れて人生を立て直すことを誓う。

『チャップリンからの贈りもの』のあらすじ・ストーリー

共同生活の始まりと「喜劇王」の死

1978年、スイスのレマン湖畔。刑務所を出所したばかりで家を持たないエディは、友人のオスマンを訪ねていた。オスマンは恩人であるエディのためにトレーラーハウスを用意して、エディが所有していた本も揃えてくれていた。オスマンの娘であるサミラは獣医になりたいという夢を抱いていたが、経済的に苦しい状況にある一家では、とても彼女を学校に入れてやることなどできそうもなかった。
オスマンの妻であるヌールは病気で入院しており、何カ月も家政婦の仕事を休むことになっていた。医師から更に様々な検査もしなくてはいけないと言われたオスマンは頭を抱えるが、看護師から「家族手帳があれば治療費の補助がある」と説明を受ける。ヌールからエディを家に入れた事を非難されつつもオスマンははぐらかし、家族手帳についてヌールに尋ねるのであった。
一方、エディとサミラは、「喜劇王」ことチャールズ・チャップリンが死んだというニュースと、彼が演じた喜劇をテレビで見ていた。その番組では、チャップリンが最後に息を引き取ったという豪邸の映像が流れていた。

保険に入っていなかったオスマンは、借金の相談で銀行を訪れていた。しかし、収入の問題で金額の1/10程度の金額しか援助出来ないとにべもなく断られてしまうのであった。銀行はどこも同じ判断をする、と言われたオスマンは、妻の入院費の工面に苦しむことになってしまう。

遺体の誘拐

エディは「死んだ友達にお金を借りに行く」と言い出し、その計画に誘われたオスマンが話を聞くと、エディの言う「死んだ友達」とは喜劇王のチャップリンのことだということがわかる。あまりに荒唐無稽な話で馬鹿馬鹿しくなったオスマンは席を立とうとするが、エディは「刑務所に居た時の知り合いの友人に、金持ちを誘拐すると洞窟に隠し、身代金を要求する男がいた」と続ける。オスマンはすっかり呆れ果て、改めてその誘いを断るのであった。

しかし、それから数日が経った夜のことだった。母を恋しがって涙するサミラを見たオスマンは、エディに協力すると申し出る。

オスマンが運転席に座り、助手席にエディを乗せた車は夜道を走っていった。2人はチャップリンの墓を掘り起こす。エディは尻込みするオスマンを説得しながらなんとか棺を引っ張り上げると車へ積み、棺を乗せて別の場所に移動すると、また穴を掘って埋めるのであった。

エディの転機

エディ達はチャップリンの妻に棺を盗んだと電話をしたものの、緊張から言い間違いをしてしまったり、怒鳴りつけたりで話が要領を得なかったことから、いたずら電話だと勘違いされて電話を切られてしまう。
それというのも、このころ、チャップリンの家には同じような身代金要求のいたずら電話が掛かってきていたので、エディたちが本当に遺体を盗んでいたとは信じていなかったのだ。
その日夕食を取っていたエディたちは、テレビでチャップリンの事件を捜査しているというニュースが流れているのを見ていた。サミラは冗談のつもりで「犯人は何故遺体を盗んだのだろう」と問いかけるが、エディは引きつった顔をして冗談でやったのでは、と答えるしかなかった。

そんなある日、エディは街中で見かけた美しい女性に声を掛けていた。その女性はローザと名乗り、エディは彼女が経営しているというサーカスに招待される。サミラを連れてサーカスを訪れたエディは、ローザからサーカスの仕事をしないか、と誘われるのであった。

エディは再びチャップリン家に電話を掛けた。刑事が電話に出て、棺を持っている証拠が欲しいと言われ写真を要求される。エディは棺を掘り起して写真を撮り、足が付かないよう注意しながらそれを送った。
その写真が元となり、間違いなく遺体が本物だとされたことから、チャップリン家で身代金が用意され、秘書のジョンがそれを運ぶ事になる。
ジョンが指定された場所に着くと公衆電話に次の指示が書かれたメモがあり、エディはその姿を遠くから観察していた。次の場所ではオスマンが車に乗って待機していた。お金を置き去ったのを確認して車を動かそうとするが、たまたまその場に立ち寄った、全く無関係の男が張り込んでいた警察に逮捕されてしまう。その様子を見ていたオスマンは、自分を犯罪に巻き込んだエディに怒りを覚え、家を出て行けと怒鳴りつけてしまう。

幸せな結末

オスマンは家に帰るとサミラに八つ当たりをし、昔エディと住んでいた宿舎が放火された時、彼が命がけで助けてくれたから要求を断れないと事情を明かした。エディがサミラにプレゼントした本とメッセージカードを見つけたオスマンは、メッセージカードを丸めて捨ててしまう。

家を追い出されたエディがベンチに座っていると、そこに迷子のチンパンジーが現れた。思い当たる節があったエディがそのチンパンジーをサーカスに連れて行くと、ローザから「道化師がいなくなって人手が足りない」という事情を聞かされる。ローザに頼まれたエディはピエロとして急遽舞台に出演し、喜劇を演じることになってしまった。
エディはその後もサーカスの仕事を続けることになった。そこにオスマンが助けてくれとやって来る。オスマン夫妻は役所に結婚の届出をしていなかったため、家族手帳を所持していなかったのだ。それを病院で話したところ、ヌールの治療費が全額自己負担だと告げられてしまったのだという。
事情を知ったエディは改めてチャップリン家に身代金を請求するが、途中で我を忘れたオスマンが電話を奪って怒鳴り散らす。しかし、この際に時間を指定する形で「翌日電話する」と話してしまったことから、オスマンは公衆電話に現れたところを警察に逮捕されてしまうのであった。
オスマンは決して相棒の存在を明かすことをしなかったが、チャップリンの秘書のジョンに耳元で何かを囁かれると、一転してエディのことを打ち明ける。その頃、病室でニュースを見ていたヌールは、夫が逮捕された事を知るのであった。
そして、それからほどなくして、エディとオスマンの裁判が始まった。

釈放されたオスマンは、ヌールやサミラとチャップリンの墓を訪れていた。心優しいチャップリン夫人は彼らを告訴することなく、彼らが犯行に至った事情を知ると、快くヌールの医療費を払ってくれたのだ。こうしてヌールは無事に退院し、絆を深めたオスマン一家。彼らはチャップリン夫妻に助けてもらった恩は忘れず、必ず全額返済しようと墓前で誓い合った。
エディは釈放後、再びサーカスの道化師としての職を得ていた。ローザと鏡越しに目が合ったエディの顔には、幸せそうな微笑みが浮かんでいた。

『チャップリンからの贈りもの』の登場人物・キャラクター

エディ・リカルト(演:ブノワ・ポールヴールド)

本作の主人公のひとり。刑務所に収監されていたが、基本的には明るく心優しい男。釈放後に友人のオスマンを頼って彼と彼の娘であるサミラとの生活を送り始める。困窮するオスマンの事情を知り、喜劇王チャップリンの遺体を誘拐することを企てる。

オスマン・ブリチャ(演:ロシュディ・ゼム)

画像中央がオスマン

本作の主人公のひとり。過去にエディに命を救われたことがあり、それ以来彼を恩人として慕っている。妻のヌールの医療費で逼迫した生活を余儀なくされ、娘のサミラにも苦労をかけてしまっている。当初は断っていたものの、金銭的に追い込まれてしまったことでエディの甘言に乗り、チャップリンの遺体を誘拐してしまうことになる。

サミラ(演:セリ・グマッシュ)

画像左がサミラ

オスマンの娘。獣医になる夢を持ったしっかり者の女の子で、犯罪を起こしたエディのことは勿論、彼と関わり続ける父に対しても当初は良い顔をしなかった。しかし生活を共にするうち、母のいない寂しさを埋めるように少しずつエディとも打ち解けるようになる。

ヌール(演:ナディーン・ラバキー)

オスマンの妻。重い病気で入院しており、莫大な医療費に迫られる原因となってしまう。至って普通の常識的な感性を持った女性で、犯罪者のエディを家に入れたオスマンを強く非難していた。しかし後に彼らの善意を知り、和解している。

ローザ(演:キアラ・マストロヤンニ)

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