怖くても惹かれるのは傑作の証?『まんが日本昔ばなし』のトラウマ話(超独断)
その昔、『まんが日本昔話』というアニメがTBS系列で放映されていました。子供に対する教訓として描かれた話の中には、「トラウマになった」と語り継がれるものも…。
『わらび長者』
手に持った鐘ひとつで、正確に言えば気分ひとつで祭りを止めさせたり、逆に雪が降りしきる真冬に祭りをやらせたり。多大な権力を持った長者様のお話なんですが、段々この長者が「大丈夫か!?」と言いたくなるほど壊れていくんですよ。
「今日中にワラビをとり尽くせ(年中行事のようです)」「無理です。もう日が沈みます」となったら、画像の顔で扇を振りながら舞い踊る…「夕日を返せ」と。
その途端、不穏なBGMと共に夕日がゆっくり上ってくるわ、長者の家屋敷が少しずつ消えていくわ…何かリズムが不協和音なんですよね。そんな中で不条理な光景が繰り広げられるんです。話も怖いですけど、長者様の顔の方が怖いです。でも癖になりそう…。
『夜中のおとむらい』
おとむらいって「葬式」ですね。ある侍が夜中に歩いていると、葬列に遭遇。何の気なしに「誰の葬式ですか」と尋ねたら、自分の名前が返ってきた…。
絵自体も怖いですけど、演出も怖いです。目元塗りつぶして顔分からなくしてるのが何とも。ラストは大方皆さんが予想されている通りですが、やっぱり怖い…分かってても。異次元に放り込まれたんでしょうか。
『地獄の人参』
タイトルだけだとある意味笑っちゃいますが、中身は『蜘蛛の糸』です。主人公は守銭奴な婆さん。カンダタほど悪いことはしてない…はず。でも地獄に落ちた所を見るに、それなりのことはしてたんでしょう。「地獄の沙汰も何とやら」で、鬼を買収して閻魔さまに「極楽行かせて」と言いますが、生前の善行が「旅の坊さんに腐った人参あげただけ」…いけしゃあしゃあと言える婆さん、亡者なのにハート強いです。お金ためる人は違います。「話にならんわ!」と閻魔さまも一蹴しますが…。
何が怖いって亡者の描写ですよ。「極楽、極楽…」と呟きながら火の中をさまよっている。抜け出せても、鬼によって逆戻り。呟きの声、誰が誰とも区別がつかないほどに記号化された(差別化する意味もないですけど)亡者の描写がまず怖いです。
『たこの足』
強欲婆さんパート2です。海辺に住んでいる婆さんが、岩に乗り上げたように乗っかっていた大きなタコの足を切って売ろうと引っ張ります。途中でちぎれてしまいましたが、結構な値段に。翌日からは鎌を研いで…毎日懲りずに同じ場所に足を乗せているタコは何を考えてるんでしょうか…。しかし、その話を聞いた僧侶から言われます。「もう足切らない方がいい」と。すでに7本切った後でした。
婆さんの夢に出たタコが個人的にはトラウマでした…泣きながら、最後に残った足を振って…。
『テンの神と女神』
トラウマというよりもなんだか切ないお話。
アイヌの神話を元にしたお話。昔は「天の神」だと思ってましたが、動物のテンです。念のため。「女神」とありますがの方はと言えば、おそらくは最高位の神の娘である霧の女神で、しかもかなりの美人。父親が「そろそろ婿探さんと…」と相手に選んだのが「テンの神」です。条件だけで決められました。
タイプじゃないわーと、正直に言います。「嫌です」「ワガママ言うな!」頑固な父により、縁談は進展。テンの神は「ワガママな娘だけど、頼んだぞ」と言われそりゃあもう大喜びで皆に吹聴して回るんですが…式当日にトンズラされます。ラストと言い、探し回っている光景がトラウマ級です。でも、今見ると、どっちにも感情移入できるのがまたモヤモヤするんですよね…。