文庫になっている「なごめる」漫画特集
癒されたい、なごみたい…そんなあなたに送る漫画集。多少古くともいいんです。色々と事件が起きたり物騒な世の中、和める漫画で癒されましょう。そして活力源にいたしましょう。
『動物のお医者さん』(佐々木倫子)
シベリアンハスキーブームを巻き起こし、獣医師志望者を数多出した、ある意味罪深い漫画です。でも和めるからいいんです。
あらすじ・ストーリー
高校3年生のハムテルこと西根公輝(まさき)が、「近道だから」と通ったH大学獣医学部解剖室前。解剖の光景を見ないように駆け足で通り抜けた先にいたのは、シベリアンハスキーの子犬。ハムテルは漆原教授に「君は獣医になる」とか言われて犬を押し付けられます。一緒にいた親友の二階堂によりチョビと名付けられてしまった子犬をはじめ様々な動物が登場します。
おすすめポイントなど
犬好き、もしくは動物好きでなくとも楽しめます。人間もキャラが濃いですから。菱沼さんとか。しかし、この作品の魅力は、「絵は美しいのに、何だかとぼけている」点でしょうか。H大学はおそらく北海道大学がモデルであり、かなりの名門校なのですが、のんびり~…とした空気が漂っています。ハムテルも一度もテストで「落とした」ことがない知性派なのに、どこかずれているんです。動物たちもレタリング風の文字で心の声を上げますし。
無論、それだけではありません。そこそこ謎めいた部分やエピソードがあるのですが、それさえもふたを開けたら「なーんだ…」と言うようなものが大部分。しかしがっかりするような類のものではなく、それはそれで楽しめますし、絵が美しいからこそとぼけた印象が味にもなっているのです。
川原泉作品
これまた味わい深いです。何とも言えない安心感が漂っています。小難しい単語やらセリフもあるのですが、何だかほっこり癒されるのです。
この絶妙すぎる味わいはどこから来るのでしょう。インテリジェンスな香り漂うのに、鼻につかないんです。並みの手腕じゃありません。
何でも受け入れる世界観。そして説得力。それでいて和める。短編が多いので、気軽に読めます。
中でもおすすめはこちら。文学並びに歴史の勉強になります。かの「ボルジア家」のことも描かれていますが、あまり重苦しくならないのは主人公二人のおかげなんでしょうね。作中のるくれつぃあ同様、読者もある種救われる思いです。
こちらもおすすめ。陸、海、空、果ては宇宙の食欲魔人が登場します。別文庫に収録されていますが、龍であろうと古代中国人であろうと、川原さんの向ける目は優しいです。だから和めるのかもしれません。和める漫画特集でした。