【森見登美彦】「太陽の塔」の魅力とは?アンチ・クリスマス派に捧げる一冊!【日本ファンタジー大賞受賞作】

世の中がクリスマスムードに染まる中で、リア充への妬みを胸に抱く人たちにおすすめしたいのが、森見登美彦のデビュー作「太陽の塔」です。京都を舞台に、ぶっ飛んだ登場人物やキャラクターが奇想天外なストーリーを繰り広げる彼の作品。ここではあらすじや愛読者によるおすすめポイントの解説を紹介しています。

全てを通して私の視点で書かれているが、その私の視点がひねてるし妄想に富んでいるし、屁理屈であるけれども愛すべきものなのだ。

出典: book.akahoshitakuya.com

始めの一文から、言葉の選び方、内容や台詞まで、心の中で突っ込まずにはおられん事だらけで、うっかり電車で読もうものなら、怪しくニタニタと笑ってしまいそうになり、殊更むずかしい顔を取り繕って、いかにも高尚で知の玄奥に挑んでいます、といった風情を装うのに苦労すること必須であろう。

出典: kidoum.blog118.fc2.com

モテたくともモテない男の燃料は妄想と妄執と世界への憎しみ。

主人公は京都大学の男子学生

京都大学農学部の5回生で現在自主休学中の「私」

※画像はイメージです

京都の街をのたくる〝私〟の毎日は、

手ひどい失恋を味わわされた水尾さんの観察。

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人生において女性に縁がなかった。(中略)そんな「私」に初めて恋人ができた。しかし水尾さんという恋人は、驚くべきことに「私」を袖にした。それは一体なぜだったのか。

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水尾さんの生活サイクルを一覧表にして行動を把握、それを活用して彼女の日常を間近でつぶさに観察することで自分が振られた理由を探る――それが失恋後の「私」のライフワークとなった「水尾さん研究」だ。

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「決して水尾さんに対する未練に基づくストーカー行為などではなく、彼女はなぜ私のような人間を拒否したのかという疑問を解明するという副次的な目標を持った、緻密な観察と奔放な思索、および華麗な文章で記され文学的価値も高い"水尾さん研究"を行っているのだ」

出典: winterlight.jugem.jp

描かれる「クリスマス・ファシズム」

主人公である「私」は、物語の中で世間のクリスマスの風潮を嘆きます

私は慄然とせざるを得なかった。街を怪物が闊歩している…クリスマスという怪物が…、思わず私は呟いた。

昨今、世の中にはクリスマスという悪霊がはびこっている。日本人がクリスマスを祝うという不条理には、この際目をつぶろう。子供たちに夢を与えるのも結構だ、たとえそれがケルトの信仰を起源とする正体不明の白髭ジジイが叶える「物欲」という夢であっても。

しかし昨今の、クリスマスと恋愛礼賛主義の悪しき習合まで、許してやる筋合いはない。高らかに幸せを謳歌することが、どれだけ暴力的なことであるか。京都の冬を一段と冷たくし、多くの人間に無意味な苦しみを与える、この厚顔無恥の大騒ぎ。

日本人はもう一度、節度を取り戻さねばならぬ。かかるクリスマスファシズムに、我々はこれまでロシア的宿命主義の名のもとにひたすら我慢を重ねてきた。キリストの誕生日が過ぎるまで、我々は町を自由に歩くことも許されぬまま、ひどい不自由を余儀なくされてきた。

しかし、ここにはっきりといいたい。聞きたくもない幸せの謳歌を聞かねばならぬ義理はないのだと。

物語は12月24日にラストを迎える…

出典: amanaimages.com

やがて季節はクリスマスになり、四条河原町でええじゃないか騒動がおこる。

出典: ja.wikipedia.org

詳しい内容については、小説を読んでください

ラストの終わり方が素敵だと思った。
冒頭の2行と最後の2行が、もうね。良いです。

出典: mimori-hiroko.269g.net

とにかく、この物語は12月24日にラストを迎える。
そこに至るまでの「私」達のウジウジとしていて、誇り高く、
男汁にまみれていながらも、爽やかで、むさ苦しく、
青春くせぇ疾走が、どの様な最期を迎えたかを楽しめたので十分である。

出典: kidoum.blog118.fc2.com

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