『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』とは、2013年のイギリス・アメリカ合作のドラマ映画。2013年の第70回ヴェネツィア国際映画祭にて初上映された。一夜の過ちで妊娠した浮気相手の出産のために車を走らせる男が、運転しながら家族や職場の同僚たちと繰り広げる電話での会話劇のみで構成されている。邦題の「86分」は本作の上映時間で、短時間で目まぐるしく起こる決断と崩壊が、リアリティと緊張感を持って描かれている。
『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』の概要
『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』とは、2013年のイギリス・アメリカ合作のドラマ映画。2013年の第70回ヴェネツィア国際映画祭にて初上映され、2014年4月のイギリスを皮切りに、2015年10月にアメリカ、2016年1月に日本で順次劇場公開された。
邦題にある「86分」とは本作の上映時間で、短時間で1人の人間の中で目まぐるしく起こる決断と崩壊が、リアリティと緊張感をもって描かれている。
2012年の映画『ダークナイト ライジング』のベイン役で世界的なブレイクを果たした俳優、クリス・ハーディが主演を務め、基本的には車内での彼の一人芝居という形で展開する。本作での演技が高く評価され、トムは第40回ロサンゼルス映画批評家協会賞主演男優賞を受賞した。なお、監督、脚本を務めたスティーヴン・ナイトは第16回英国インディペンデント映画賞脚本賞を、編集のジャスティン・ライトは第27回ヨーロッパ映画賞編集賞を受賞している。
一瞬のうちにすべてを失う人間の姿を、運転している男と、電話の相手との会話劇のみで描いている新感覚ドラマ。撮影にはBMW X5が用いられていることも話題となった。3台のデジタルカメラを同時に回して撮影され、8日間で全ての撮影を終えたという。
主人公のアイヴァン・ロックは、一夜の過ちで妊娠した浮気相手が出産を控えていたその日、ロンドンに向かって車を走らせていた。しかしその日は家族でサッカーの試合を見る約束をしており、翌日には大きな仕事が控えている。彼の元にはひっきりなしに電話がかかってきていた。その一つ一つに対応しながら、アイヴァンは自分の出自を振り返り、過ちを清算することを決意する。しかしその決意は、彼が築き上げてきたものを足元から崩壊させるものだった。
『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』のあらすじ・ストーリー
浮気相手の元へ向かうアイヴァン
イギリスのバーミンガム。高層ビル建設の現場監督アイヴァン・ロックは、この日の仕事を終えると自宅には向かわず、夜の高速道路へ向けて愛車のハンドルを切っていた。アイヴァンの向かう先は約80kmも離れたロンドンの病院。1年前、出張の間に酒の勢いで一度だけ関係を持った浮気相手のベッサンがその一夜でアイヴァンの子を身籠ってしまい、今日生まれそうというのだ。この一度の過ちを清算するべく、彼は病院へと急いでいた。
しかしこの夜は、自宅で妻のカトリーナや長男のエディ、次男のショーンと共に、一家揃ってサッカーをテレビで観戦する予定だった。さらに翌日の仕事でも重要な作業が控えており、アイヴァンはカーナビに電話を繋げると、ベッサンと家族、そして部下のドナルと、走行中の車内から電話で連絡を取り合うことになった。
アイヴァンはまず家族に、事情があってすぐには帰れないことを告げると、ドナルに明日の作業の手順を指示した。明日の早朝には大量の生コンクリートが現場に運び込まれる予定で、唐突に申し送りをされたドナルはどうしていいかわからず、当然ながら混乱することになった。続いて病院のベッサンに電話すると、彼女はいよいよ出産間近なのにも関わらず看護師は不在で、病院の対応の悪さについてひたすら愚痴を言っている。そこへ事情を知らず、ハイテンションなカトリーナから電話がかかってきて、アイヴァンは自らの浮気の真実を打ち明けた。カトリーナはショックのあまり電話を切ってしまう。
今度は上司のガレスから電話がかかってきて、責任をドナルへ丸投げしたことが問題視されてアイヴァンは解雇されることになった。
全ての喪失と小さな希望
アイヴァンはその解雇通告にも耳を傾けず、そのままドナルに自分の代わりをさせる話を勝手に進めていったものの、職務上で重要な書類を自身がそのまま車に持ってきてしまっていたことに気づく。アイヴァンは書類の内容をドナルに説明したが、ドナルは極度の緊張のあまり酒を飲んでしまっていた。
そうこうしているうちにベッサンのいる病院から連絡が入り、彼女は赤ん坊のへその緒が首に巻き付いて危険な状況とのことから帝王切開を打診されたものの、どういうわけかそれを拒否したという。そこで、説得を依頼したい病院はアイヴァンに電話をしたという。アイヴァンは家庭を顧みなかった自身の父を思い出し、自分は決して父のようにはならないと自分自身に言い聞かせる。しかし、カトリーナからはアイヴァンとベッサンを罵倒する電話があり、事情を知らないエディはのんきにサッカーの途中経過を伝えてくる。
建設現場ではトラブルが発生し、酒に酔った状態のドナルとの連絡もつかなくなった。
アイヴァンはショーンを通じて職場へ連絡を取ろうとしたものの、堪忍袋の緒が切れたカトリーナから、二度と家に帰ってくるなと三行半を突きつけられてしまった。ようやく解決の糸口こそ見つかったものの、アイヴァンはとうとう仕事を完全に失う羽目となった。
この86分で家庭も仕事も失ったアイヴァンのもとに、ベッサンから無事に赤ん坊が生まれた、という電話がかかってくる。高速道路を降りたアイヴァンは、そのまま病院へと車を走らせるのであった。
『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』の登場人物・キャラクター
主人公
アイヴァン・ロック(演:トム・ハーディ)
本作の主人公。高層ビル建築の現場で監督を務めている。出張の間に酒の勢いで一度だけ関係を持った浮気相手のベッサンが自身の子を身ごもり、出産を控える彼女に会いに向かっている。その道中で妻に浮気を暴露して家族を失い、責任感のない言動をとったことで仕事を解雇されてしまった。実は私生児で、家庭を顧みることがなかった父と同じ轍を踏みたくないと思っている。
電話の相手たち(声のみの出演)
ベッサン(演:オリヴィア・コールマン)
アイヴァンの浮気相手で、出張中に一度だけ関係を持って子どもを身ごもった仕事仲間の女性。自身の元に向かっているアイヴァンとの電話で、病院の看護師の対応が悪いことに対する愚痴を零していた。その後帝王切開を拒否するなどのトラブルはありつつも、元気な女の子を出産した。
カトリーナ(演:ルース・ウィルソン)
アイヴァンの妻。夫と子どもたちを大切にしている。家族で一緒にサッカーを見る約束をしていたため、アイヴァンに電話するがそこで浮気を暴露されて深く傷つき、彼に三下り半を突きつける。
ドナル(演:アンドリュー・スコット)
アイヴァンの部下。浮気相手の元に向かうアイヴァンからいきなり大仕事についての申し送りを受け、混乱して飲酒。その後連絡が取れなくなり、大きなトラブルを起こしていることが発覚する。
ガレス(演:ベン・ダニエルズ)
アイヴァンの上司。職務を放棄してドナルにすべてを押し付けたアイヴァンを叱責し、彼を解雇した。
エディ(演:トム・ホランド)
アイヴァンとカトリーナの長男。アイヴァンとサッカーを見ることを楽しみにしており、カトリーナからの罵倒の後ろでサッカーの結果を教えてくれていた。
ショーン(演:ビル・ミルナー)
目次 - Contents
- 『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』の概要
- 『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』のあらすじ・ストーリー
- 浮気相手の元へ向かうアイヴァン
- 全ての喪失と小さな希望
- 『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』の登場人物・キャラクター
- 主人公
- アイヴァン・ロック(演:トム・ハーディ)
- 電話の相手たち(声のみの出演)
- ベッサン(演:オリヴィア・コールマン)
- カトリーナ(演:ルース・ウィルソン)
- ドナル(演:アンドリュー・スコット)
- ガレス(演:ベン・ダニエルズ)
- エディ(演:トム・ホランド)
- ショーン(演:ビル・ミルナー)
- 『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』の用語
- 86分
- 緊急帝王切開
- 『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 父親の幻に語り掛けるアイヴァン
- 『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 「86分」という邦題は上映時間から
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