『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』とは、2014年に公開されたアメリカのドラマ映画。監督はメキシコ人映画監督であるアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、主演はマイケル・キートンが務める。タイトルの不可思議さと独特なカメラワークが話題となった。本作の主人公は落ちぶれた末、ブロードウェイの大舞台に再起を賭ける一人の俳優。そんな彼の元にある日、かつて自身が演じたスーパーヒーローである「バードマン」の幻影が現れる。
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』の概要
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』とは、2014年に公開されたアメリカのドラマ映画。監督はメキシコ人映画監督であるアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、主演はマイケル・キートンが務める。2014年1月に開催された、第71回ヴェネツィア国際映画祭のオープニング作品に選ばれ、同年10月にアメリカで、日本では2015年1月に劇場公開されている。演出や演技、音楽、撮影、脚本などの全てが賞賛を集めた。
本作はゴールデングローブ賞で最多7部門にノミネートされ、主演男優賞、脚本賞の2部門を受賞。アカデミー賞では最多9部門にノミネートされており、作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞の4部門で受賞した。英国映画協会が発行する『サイト&サウンド』誌が選出する2014年の映画トップ20では第16位、米『ローリング・ストーン』誌が選ぶ2014年の映画ベスト10では第2位を獲得している。
かつてはヒット作に出演していたものの、その後20年にわたって鳴かず飛ばずだった俳優のリーガン・トムソン。ブロードウェイの大舞台に再起を賭ける日々を暮らしていた彼だが、そんな彼の側にある日、かつて自身が演じたスーパーヒーローである「バードマン」の幻影が現れるのであった。
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のあらすじ・ストーリー
ブロードウェイに再起を賭ける俳優
かつて爆発的人気を誇ったヒーロー映画「バードマン」。その主役であるバートンを演じていた俳優、リーガン・トムソンは、この映画のヒットと共に一躍スターダムを駆け上がったものの、映画が終了して以降はパッとした仕事もなく、世間に存在を忘れ去られつつあった。一世を風靡した過去はどこへやら、今はすっかり禿げた頭にかつらを乗せ、道を歩いていても誰にも気づかれることはない。「バードマン」の映画シリーズが終了してから20年という月日が流れたころ、リーガンは再び自分の名を世間に知らしめるべく、ブロードウェイの舞台に立つ計画を練っていた。その計画とは、レイモンド・カーヴァーの短編小説「愛について語るときに我々の語ること」を自らアレンジし、自身が主役として舞台に立つというものだった。娘のサムをアシスタントに据え、リーガンは着々と舞台の準備を進めていく。
しかし自身にとって一世一代ともいえる大きな挑戦に不安を抱えていたリーガンは、徐々に追い詰められ、精神を病んでいくようになる。その結果、なんと「もう1人の自分」とも呼べる、バードマンの声が聞こえるようになっていくのであった。
バードマンの声はリーガンにしか聞こえておらず、さらに、リーガンはバードマンの持っている超能力も実際に使えるようになっていった。そうした超常現象にも巻き込まれ、舞台の準備も進めている不安定な精神状態の中、さらにリーガンに追い打ちをかけるような出来事が生じた。舞台の稽古中、出演俳優のひとりであるラルフに照明が落下するという事故が起こったのだ。ラルフは幸い命に別状はなかったが、怪我を負ったことで降板を余儀なくされてしまう。
追い詰められるリーガン
ラルフの代役としてリーガンが起用したのは、マイク・シャイナーという舞台俳優だった。彼の演技力は他の俳優と比べ物にならないほどずば抜けており、そんなマイクの実力を見たリーガンは舞台の成功を確信する。しかし、自身の実力を理解し、過信している節があるマイクは好き勝手に行動してはリーガンを振り回すようになっていく。
そうして何とか舞台のプレ公演の日を迎えたものの、ベッドシーンを演じたマイクは何と勃起してしまい、観客や世間の感心はストーリーやリーガンの演技などではなく、全てマイクの勃起事件に移ってしまうのであった。さらに、マイクとサムが肉体関係に陥ってしまうという事態に、リーガンはますます追い込まれていく。
サムはリーガンと離婚した前妻との間に授かった一人娘で、アルコールと薬物への依存症を抱えていたことから、舞台に関わり出す少し前まではリハビリ施設に入所していた。
大先輩であるはずの自分を振り回す若手俳優と大切な娘がキスをする姿を見てしまったリーガンは、まず裏口から外に出て、落ち着くためにタバコを吸うことにした。するとなんと扉が閉まってしまい、リーガンはそのまま外に締め出されてしまう。
さらに最悪なことに、ラストシーンを演じることになっていたリーガンはパンツ一枚の格好だった。扉は外側からは開かないため、このままでは舞台を締めくくることができない。
意を決したリーガンはパンツ一枚の姿のまま堂々と外を闊歩し、表の入口から舞台に上がったのだった。リーガンのその姿は、たまたま現場を目撃していた通行人により撮影されていた。その動画がサイトにアップされ、リーガンは賛否両論を得る。
実体化するバードマン
世間的にも私生活でも精神的に追い詰められたリーガンの前に、とうとう実体化したバードマンが現れた。そして自分の分身であるヒーローに「お前はできる」と告げられたリーガンの心には不思議なことに自信が溢れてくる。リーガンはその場で、サムの母であるシルヴィアに連絡を取り、和解する事に成功した。
そしてその日、舞台の最後のシーンで、リーガンは実弾入りの銃を自分に向けて引くのであった。
リーガンの舞台上での奇行は自殺未遂として世間に捉えられることになった。頭を狙って打ち込んだはずの銃弾はどういうわけか頭を逸れ、リーガンの鼻を吹き飛ばしはしたものの、命までは奪うことはなかったのだ。リーガンはそのケガが元で入院する羽目になったが、舞台評論家から「無知がもたらす予期せぬ奇跡」と高評価を受けるに至る。リーガンが長年夢見てきた、悲願のカムバックは成功したのだ。
1人になったリーガンは鏡の前に立ち、顔を覆うガーゼを外す。吹き飛んだ鼻は整形されており、かつて自身が演じたバードマンのような鋭い鼻に変貌していた。リーガンは傍らに立っているバードマンに別れを告げると、病室の窓から身を乗り出して窓枠に立ち上がった。
病室に戻ってきたサムは、消えた父の姿を探して病室の窓辺に立っていた。そして彼女は窓の外に何かを見つけたように空を見上げ、嬉しそうに微笑む。
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』の登場人物・キャラクター
主人公とその関係者
リーガン・トムソン(演:マイケル・キートン)
画像手前がリーガン。奥で飛んでいるのは、かつて彼が演じた「バードマン」の幻影。
日本語吹き替え:牛山茂
本作の主人公。かつて大人気ヒーロー映画「バードマン」シリーズに出演していた元スター俳優だが、以降はパッとせずに落ち目の一途を辿っていた。ブロードウェイの舞台を手掛けることで、俳優としての再起を目指している。長年自分の相棒だったともいえる役の、バードマンの幻影に悩まされている。
サマンサ(サム)・トムソン(演:エマ・ストーン)
日本語吹き替え:武田華
リーガンと別れた元妻の娘。薬物やアルコールの依存症を抱えており、舞台に関わり出す前は更生施設に入所していた。施設を出て以降はリーガンの付き人をしている。
舞台関係者
マイク・シャイナー(演:エドワード・ノートン)
画像左がマイク
日本語吹き替え:宮本充
ブロードウェイの人気俳優。実力は確かだが、振る舞いが傍若無人で他の共演者やリーガンを見下している。サムと肉体関係を持つようになる。
レズリー・トルーマン(演:ナオミ・ワッツ)
画像中央がレズリー
日本語吹き替え:岡寛恵
リーガンの作品でブロードウェイの舞台に初出演する女優。マイクとは同棲中の恋人同士。
目次 - Contents
- 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』の概要
- 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のあらすじ・ストーリー
- ブロードウェイに再起を賭ける俳優
- 追い詰められるリーガン
- 実体化するバードマン
- 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』の登場人物・キャラクター
- 主人公とその関係者
- リーガン・トムソン(演:マイケル・キートン)
- サマンサ(サム)・トムソン(演:エマ・ストーン)
- 舞台関係者
- マイク・シャイナー(演:エドワード・ノートン)
- レズリー・トルーマン(演:ナオミ・ワッツ)
- ジェイク(演:ザック・ガリフィアナキス)
- ラルフ(演:ジェレミー・シャーモス)
- アニー(演:メリット・ウェヴァー)
- ローラ・オーバーン(演:アンドレア・ライズボロー)
- その他
- シルヴィア(演:エイミー・ライアン)
- タビサ・ディッキンソン(演: リンゼイ・ダンカン)
- ガブリエル(演:ダミアン・ヤング)
- クララ(演:ナタリー・ゴールド)
- ハン(演:キーナン・シミズ)
- ミスター・ラス(演:フランク・リドリー)
- 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』の用語
- バードマン
- 『愛について語るときに我々の語ること』
- 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 極限なのにどこかコミカルな葛藤シーン
- 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 臨場感を生んだ独特のカメラワーク
- ラストシーンで示唆されているリーガンの死
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