山田参助さんのマンガ作品です。
どちらかと言えば、無骨な絵柄・描き方が特徴的。
と言っても、荒々しい筆圧で「残酷な日本の様子」を赤裸々に表現するような作品とは異なります。
話の中核から逸れたネタのようなちょっとしたシーンでは、無骨というよりむしろ繊細で丁寧な印象をも与えられ、その書き分けに読者も飲み込まれていきます。
作品の主人公となるのは、戦場から帰還したクマのような復員兵の門松。
そして、かつての上官であった川島。
「肉のひとかけ」が入っているか否か、じっくりと品定めをしながら口に入れるスープを選び、また美味しいぞうすいをこさえて周りの人々へ売りさばく……1巻のはじめに収録されるのは、そんなほのぼの&ドタバタコメディ。
しかし、巻末に近づくにつれ胸をえぐるようなエピソードも増えていきます。
2巻以降でも繰り返し語られるのは、敗戦した日本の国民たち・アメリカ兵たち・そして慰安婦の女性たちという三者の関係性です。
苦痛と屈辱に耐え忍ぶ女性たちの姿は主人公である門松の視点から客観的に、かつざらざらとした質感を持って語られます。
他のキャラクターに関しても、それぞれに重い現実を背負っていながら、作品としてはそれを慰めることも悲劇とすることもありません。
「戦争」の恐ろしさについては、小学校・中学校で学んだ人も多いのではないでしょうか。
日本はかつての経験を判断材料としながら、同じことを繰り返さないためにそれぞれが在り方を考えすり合わせています。
国民ひとりひとりが意見を求められる緊迫した時期だからこそ、「戦争」がどのような生活を連れてくるのか、そして「戦争に負けた後」の日本はどうなるのか、マンガという形からも想像してみませんか?