ちいさこべえ(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ちいさこべえ』とは、望月ミネタロウが2012年9月から2015年2月まで小学館『ウィークリービッグコミックスピリッツ』にて連載していた漫画。(単行本全4巻)原作は山本周五郎の同名の時代小説で、時代設定を現代に変更した翻案作品である。
舞台は東京「一の町」に古くからある大留工務店(だいどめこうむてん)。一人息子である若棟梁の茂次が、鎌倉に泊まり込みで仕事に来ている最中に大留工務店が火事で焼け、棟梁である父と母がこの世を去る。残された茂次は、父の言葉を胸に大留工務店の再建に取り掛かる。

りつは、菊次が自分にむける視線をいやらしいと感じていた。
子供達が温泉旅行から帰ってきた夜、りつが寝ている部屋に菊次が入ってきた。背をむけて身構えるりつに菊次が「お母ちゃん…おやすみなさい…」とだけ言い部屋を出てゆく。菊次はりつに母の面影を感じていただけだったのだ。菊次をいやらしいと思っていたりつは、自分を心から恥じる。

茂次「俺はお前に、「大留」をやってもらいたいんだ。俺と結婚してくれないか。」

菊次の事を誤解していた事を恥じたりつは「おひまをください。」と家を出て行ってしまった。行く先のないりつは亡くなった母親のお墓にいた。りつを見つけ出した茂次は、ひどくもどかしく焦ったくなるくらい、いろいろな話しをしてやっと、「俺はお前に「大留」をやってもらいたいんだ。俺と結婚してくれないか。」と言う。

茂次「ここはお前達の家でもある。お前達は何があってもどこにいても いつまでもずっとうちの子供だ。これだけは覚えておいてくれ。お前達にはここに家があって、俺とりつがいつでもここにいる。」

茂次の言葉を聞いたサクラ

サクラが「大留」の家の廊下で茂次にバッタリ会った時、嫌味っぽく「また…ハチ合わせしたわね。」と行った時に、「ここは俺の家だからな。」と言った後に続く茂次の言葉。「ここはお前達の家でもある。お前達は何があってもどこにいても いつまでもずっとうちの子供だ。これだけは覚えておいてくれ。お前達にはここに家があって、俺とりつがいつでもここにいる。」この言葉を聞いたサクラの反応は、言われなくたって大きくなっても居ついて、年寄りになった茂次達の世話になると言う。ひねくれながらも頼りにしているようだ。

茂次とりつの祝言

茂次の両親達の一周忌を終えいくつかの季節がすぎた春。茂次とりつは、「大留」の再建にお世話になった方々や従業員達や子供達に見守られながら、昔ながらの心温まる祝言をあげた。

りつ「これからもどうぞよろしくお願いします」

祝言のあと夜遅くまで続いた祝いの宴も終わった。皆が帰り静かになって、茂次は疲れて布団の中でうとうとしていた。りつはしばらく側に座っていたが、そっと茂次の両親の仏壇の前にいきお辞儀をして、やわらかく小さな声でつぶやいた言葉が、「これからもどうぞよろしくお願いします」

『ちいさこべえ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

海外でも話題になった『ちいさこべえ』

日本のマンガは、世界各国で翻訳出版され多くの読者がいる。
フランスやベルギーには「バンドデシネ」という独自のマンガ文化があり、その中でも日本のマンガは人気である。
『ちいさこべえ』は、シンプルかつピュアなタッチで描かれたインパクトのある表紙や、今まで紹介されていた日本のマンガにはない日本らしさがありフランスの読者を魅了した。マンガ評論家たちも​​現代的な作品にもかかわらず、どこかノスタルジーを感じさせる内容や表現を絶賛する。フランスで毎年開催されている漫画界のカンヌといわれる「アングレーム国際漫画祭」で2016年と2017年の2年連続で賞をとり海外での評価も高い。

映画化もされた原作『ちいさこべ』

『ちいさこべえ』の原作である山本周五郎作『ちいさこべ』は1952年の発表以来、1962年の東映制作・配給による映画化、宝塚歌劇団によるミュージカルでの舞台化・NHKによるドラマ化もされている。その時々で、子供達の人数が変わったり、細かな設定の違いがあるものの、大火で両親と店を失いながらも、義理と人情に厚い茂次が子供達を引き取り店を再建してゆく過程が描かれており心温まる作品になっている。

独自の表現を加えた『ちいさこべえ』

『ちいさこべえ』は、山本周五郎原作の時代小説『ちいさこべ』の時代設定を江戸時代から現代に変えた翻案作品。時代設定以外の物語の内容は、ほぼ原作に忠実に描かれている。ただ原作は13章からなる70ページほどの中編。一方、漫画は44話からなる全4巻の作品だ。文章には表現されていない心情や風景が、望月ミネタロウワールドでふんだんに描かれている。『ちいさこべ』にプラスされた「え」とは、「絵」である。

望月ミネタロウワールドとは

望月ミネタロウは1964年神奈川県横浜市に生まれる。1984年の第11回ちばてつや賞を受賞した翌年から、ヤングマガジンにて連載が開始された『バタアシ金魚』がヒットする。その後『座敷女』『ドラゴンヘッド』など、時代を先取りする斬新な作品で人気を博する。『東京怪童』『ちいさこべえ』『没有漫画・没有人生』など一作ごとにテーマも表現スタイルも変えた作品を発表している。一貫しているのは作品の時代背景や風俗を取り入れた、細かすぎるほどに凝った作画。望月ミネタロウにしか出せない魅力がある。

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