ちいさこべえ(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ちいさこべえ』とは、望月ミネタロウが2012年9月から2015年2月まで小学館『ウィークリービッグコミックスピリッツ』にて連載していた漫画。(単行本全4巻)原作は山本周五郎の同名の時代小説で、時代設定を現代に変更した翻案作品である。
舞台は東京「一の町」に古くからある大留工務店(だいどめこうむてん)。一人息子である若棟梁の茂次が、鎌倉に泊まり込みで仕事に来ている最中に大留工務店が火事で焼け、棟梁である父と母がこの世を去る。残された茂次は、父の言葉を胸に大留工務店の再建に取り掛かる。

シュレーディンガーの猫

「シュレーディンガーの猫」とは、1935年にオーストリアの物理学者エルヴィン・シュレーディンガーが発表した、猫を使った思考実験の事。箱の中に猫と毒の入ったフラスコを入れて蓋を閉じる。 しばらくすると、猫は生きていると考えられると同時に死んでいるとも考えられる。 これを量子力学に例えると、量子的粒子が2つの井戸に同時に存在している状態である。と、いう量子力学的な考え。

『ちいさこべえ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

どんなに時代が変わっても人に大切なものは、人情と、意地だぜ。

身体が弱ってきた留蔵は「大留」を一人息子の茂次に託す。

病の床で父・留造が、現場が向いているとは思えない茂次に家業を背負ってもらいたいと言った時に、俺はお前の生きている今時の世の中ってやつはいまいち分からないが、これだけは肝に銘じておけと言った言葉。「どんなに時代が変わっても人に大切なものは、人情と、意地だぜ。」

だいじょうぶっ!

一の町子供福祉課の人たちが、りつが勝手に預かっている子供達の事で「大留」の来た日の夕方。資格も何もないのに子供を預かるなんて無謀だと責められる中、保育士と幼稚園教諭の資格を持つ福田ゆうこの助け舟で、子供達はひとまず「大留」の家で預かる事が決まる。勝ち気なりつが福田ゆうこの事を何も思わないわけがなく、目尻が上がって口がへの字になるりつを見た茂次は、りつの性格が分かるだけに心配する。りつは夕飯の買い物をした帰り道の川の土手で、気持ちを整え自分に言い聞かせる。しゃがんだりつのお尻のアップのコマから、しゃがんだままの上半身のコマに移り、買い物袋を持って立ち上がったコマになり、大きな声で「だいじょうぶっ!」と自分に言う。

意気地なしより 意地っ張りの方が、男らしいです。

三の町の現場は、「大留」の再起をかけて高い材料を使って普請をしていた。あと少しで完成という所で、放火のもらい火で全て焼けてしまう。両親の遺骨を前に1人部屋で意気消沈する茂次。そんな茂次を呼びにきたりつに茂次は、「…俺は、意地っ張りか?」と聞く。「え……?」と一瞬ためらったりつは、「意気地なしより 意地っ張りの方が、男らしいです。」とキッパリと言う。

二人にはまだ生きていて見守っていてほしいんだ。

他人の法事の手伝いはするのに、自分の両親の葬儀をしない茂次を責めるりつに、茂次は若棟梁と呼ばれて皆を引っ張ってはいるが、不安でしょうがないのだと言う。両親が死んだことは紛れもない事実だが、自分が「大留」を立て直すまでは2人が死んだ事は認めたくない。「二人にはまだ生きていて見守っていてほしいいんだ。」と言う。

家はここだ。

万引きした又吉を連れてきた一徳から「お前の家は?」と聞かれたりつが「家はありません。」と答えると直ぐに茂次が「家はここだ。」と言う。

「薄情者」「人でなし」って。

最初に子供達を「大留」の家には置けないと茂次が言った時、りつが言いかけて言わなかった言葉が、「薄情者」「人でなし」という言葉だったのではないかと茂次は思っていた。
「大留」の再建も子供達の事も自信を持って対処できるほど出来た人間じゃないが、りつが言葉にしなかった言葉が頭の中でどんな言葉よりも響いていたと、りつに言う。

お母ちゃん…おやすみなさい…

布団にくるまり身構えるりつと、部屋を出てゆく菊次の足

りつは、菊次が自分にむける視線をいやらしいと感じていた。
子供達が温泉旅行から帰ってきた夜、りつが寝ている部屋に菊次が入ってきた。背をむけて身構えるりつに菊次が「お母ちゃん…おやすみなさい…」とだけ言い部屋を出てゆく。菊次はりつに母の面影を感じていただけだったのだ。菊次をいやらしいと思っていたりつは、自分を心から恥じる。

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