オーバー・ザ・ガーデンウォール(アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『Over the Garden Wall』とは、2014年11月3〜7日にアメリカのカートゥーン・ネットワークで放送されたアニメ作品。1話約10分の全10話で、日本では長編版が2016年2月11日に放送された。「名もなき森(ザ・アンノウン)」に迷い込んだ気弱だが優しい兄・ワートと、無邪気な弟のグレッグが家を探して冒険する。19世紀から20世紀初頭の民話に基づいたストーリーや、どこか不思議な登場人物らが独特の世界観を作り上げており、短い作品ながらも人気を博した。

『Over the Garden Wall』の概要

『Over the Garden Wall(オーバー・ザ・ガーデン・ウォール)』とは、2014年11月3〜7日にアメリカのアニメ専門チャンネルであるカートゥーン・ネットワークで放送されたアニメ作品。第67回エミー賞を受賞している。監督はパトリック・マクヘイルが務めた。1話約10分の全10話。日本では、全エピソードを90分に編集した長編版が2016年2月11日に放送された。長編版からカットされたシーンが追加された15分シリーズ版も放送されている。
いつの間にか、霧が立ち込める「名もなき森(ザ・アンノウン)」に迷い込んだ気弱だが優しい兄・ワートと、無邪気な弟のグレッグ。そこで出会った木こりによると、この森には恐ろしいビーストが彷徨っているという。兄妹は森で起きる奇妙な出来事に巻き込まれながら、帰り道を探して冒険する。
20世紀初期のような音楽とビクトリア朝の絵葉書をイメージするようなデザイン、どこか不思議な住民たちが独特の世界観を作り上げており、短い作品ながらも人気を博した。
また、作中ではキャラクターによる歌が多数披露され、ミュージカル的要素を持っているのも特徴である。

『Over the Garden Wall』のあらすじ・ストーリー

名もなき森

神経質で気弱だが優しい兄のワートと、無邪気で幼い弟のグレッグは、気づけば「名もなき森(ザ・アンノウン)」と呼ばれる不思議な森に迷い込んでいた。どうやって迷い込んだのかわからない兄弟は、帰り道を探して旅を始める。
2人は、その森に住む木こりに出会う。彼は、切った木から油を抽出し、ランタンを灯し続けている奇妙な人物だった。兄弟を見た木こりは恐ろしい声音で、迷子の子どもを探して森に現れるビーストについて話す。そして、森から逃げるように警告した。

話を聞いた兄弟は、グレッグのベットのカエルを連れて小道を進む。すると、木に挟まって困っていた毒舌な青い鳥のベアトリスに出会う。彼女はワートたちを、アデレードという善良な魔女の元に案内し、そこから家に帰らせてもらおうと提案した。ワートは突然の提案に困惑し、ひとまず看板にあるポッツフィールドという町へ向かうと言って歩き始める。グレッグに誘われ、ベアトリスも旅に加わることになった。

ポッツフィールドの収穫祭

ポッツフィールドの町に着くと、ワートとグレッグは道にまであふれるかぼちゃを踏んでしまう。気に留めず町民を探すと、大きな建物から歌声が聞こえてきた。覗き込むと、かぼちゃ頭の生き物が歌いながらとうもろこしやリンゴの皮を剥いている。彼らは収穫祭の最中だったのだ。
兄弟は町民らしき生き物と話す最中、突然、町長のイーノックから農作物を荒らした罪などで有罪を言い渡される。ワートは抗議するが、聞き入れられず畑で数時間の肉体労働を命じられてしまった。
足枷をつけられたまま畑で作物を収穫していくワートたち。最後、命じられるままに穴を掘っていると、中から骨が這い上がってきた。ワートは、自分たちはこの後処刑されて、死後遺体を埋めるための穴を掘らされているのだと考えて騒ぐ。しばらくすると、骨はかぼちゃを頭に被せて踊り始めた。そして、その踊りを見て近づいてきた住民たちも、全員同じくかぼちゃを被った骨だったことが判明する。イーノックらが踊りで盛り上がっている隙に、ベアトリスがワートやグレッグにつけられた足枷を外したため、なんとかポッツフィールドを脱出することができた。

今回手助けしてくれたこともあり、ワートはベアトリスの話を信じて、アデレードの元へ向かうことになった。

動物学校

森を歩いていると、ワートはグレッグと逸れてしまう。弟を探して近くの建物を覗き込むと、そこは豚やうさぎなどの動物に勉強を教える学校だった。教師のミス・ラングツリーは、ワートを生徒と勘違いして早く席に着くように命じる。
その学校は財政破綻と暴れ回る謎のゴリラに困っていた。さらに、ミス・ラングツリーはジミー・ブラウンという男と結婚の約束をしたのに、彼が姿を消してしまって失恋中。ジミーへの愛を歌うミス・ラングツリーの授業を、ワートはなんだかんだ楽しんでいた。

一方で、迷子になっているグレッグは森の動物たちと楽しく話し込んでいた。遊んでいると、大きなゴリラに遭遇してしまう。逃げ込んだ先はワートのいる学校で、兄弟は無事再会できた。グレッグは、食堂で動物たちが美味しくなさそうに食事するのを見て、オリジナルソングの「Potatoes and Molasses(ジャガイモと糖蜜)」を歌いながら場を盛り上げる。すると、学校を運営するミスター・ラングツリーが止めに入り、暗い空気の中生徒は寝床に戻る。この日はワートたちも生徒と同じ部屋で眠りについた。

しかし、そのミスター・ラングツリーが経営難を嘆く声を聞き、ワートとグレッグはチャリティーコンサートを企画した。盛り上がっている中、野生のゴリラが現れて会場は大混乱に陥る。ゴリラがミス・ラングツリーに近づいた時、ワートは靴ひもにつまずいてゴリラとともに地面に倒れ込んでしまった。すると、ゴリラの頭が落ちて着ぐるみだったことが判明し、中からジミーが出てきた。彼は、ミス・ラングツリーに結婚指輪を買うためにサーカスの仕事に就いたが、ゴリラの着ぐるみが脱げなくなっていたのだ。ミス・ラングツリーとジミーは幸せに再会し、チャリティーコンサートも大成功した。

酒場

学校を出てから、干し草を積んだ荷車をヒッチハイクしたところ、突然ビーストが出たと運転手が暴走し、ワートたちは振り落とされてしまう。激しい雨が降っていたこともあり、彼らは近くにあった店に駆け込むことにした。
そこは、肉屋、仕立て屋、追い剥ぎなどが集まる不気味な酒場。酒場の主人は鳥であるベアトリスが店内に入ることを嫌がり、箒で叩き出した。

ワートとグレッグは店主や客と交流したが、外からベアトリスの悲鳴が聞こえてきたため馬に乗って探しにいく。気絶するベアトリスの近くには、この森に来た時に出会った木こりがいた。斧を手にする木こりにベアトリスが襲われたと考え、ワートたちは木こりが大切にしているランタンを蹴り飛ばし、彼女を抱えて森に逃げ込んだ。

ワートは木こりがビーストの正体かもしれないと考えたが、ワートたちが去った後、木こりは本物のビーストと話していた。その会話で、木こりのランタンには彼の娘の魂が宿っており、炎を灯し続けなければいけないことが明かされる。それもビーストの仕業で、木こりはビーストを怒鳴りつけていた。
ワートに命を救われたベアトリスは、自身の秘密を打ち明ける。彼女は元々人間だったが、青い鳥に石を投げたせいで家族ともども呪われて、鳥にされてしまったのだ。

狂った愛

ワートが酒場から持ち出した馬はフレッドといい、話すことができた。彼のおかげで、一向は裕福で変わり者な紅茶王クインシー・エンディコットの大豪邸へ招かれることとなる。
彼は「クインシー・エンディコットの健康茶」の経営者だが、お茶を売るのは自分の悩みや「魂を砕く深い孤独」から気を紛らわすお金を得るためだけだと話した。しかし、彼は屋敷を拡張し続け、それが大きくなりすぎて、ますます自分のアイデンティティに迷い、自信が持てなくなっていた。

クインシーは、隣人でありビジネス上のライバルでもあるマーガレット・グレイに執着していることを明かす。彼は屋敷の近くで彼女を見かけ、てっきり幽霊だと思っていたのだ。マーガレットの寝室は自分の邸宅のどこかにあると考えたが、自分の考えに自信が持てず正気を失い始めていた。
しかし、クインシーはグレッグの手助けもあって、ついマーガレットと実際に出会う。マーガレットはグインシー邸と隣接する家に住んでいたのだ。植物が生い茂っているせいで、二つの家は境界が曖昧になっており、そのせいでクインシーは自宅に幽霊が出ると勘違いしていたのだ。彼女が幽霊ではないことを知ったクインシーは、喜んで愛を告白し、2人は見事結ばれた。

フレッドはクインシーの屋敷に残ることになったため、ワートたち兄弟とベアトリスは、蒸気船の渡し船に乗ってアデレードの家へ向かうことになる。

渡し船の上

ワートらは、川を渡るための船に乗ることにした。船上では、言葉を話す蛙たちが談笑したり、音楽を奏でたりして楽しんでいる。トラブルに巻き込まれもしたが、最終的にワートらも音楽隊に加わり、ともに演奏して楽しんだ。対岸に着いてから野宿していると、ワートはベアトリスが夜中にこっそり抜け出していくことに気づき、グレッグと一緒に彼女を追いかけることにした。

ベアトリスは、密かにアデレードに会っていた。実は、彼女は自分とともに呪われてしまった家族を人間に戻すために、人間の子どもとアデレードの持つ呪いを解く魔法のハサミを交換しようとしていたのだ。しかし、ワートとグレッグとの旅を通じて考えを変え、自分自身を差し出すことにした。間一髪のところで、ベアトリスを追ってきたワートたちが乱入する。一時はアデレードに捕まるが、3人は協力してアデレードを倒し、ベアトリスの兄弟を解放した。

ベアトリスとはそこで別れ、兄弟は再び森の中を進んでいく。

呪われた少女

ワートとグレッグは、森の中にすむローナという心優しい少女に出会う。彼女は、邪悪な見た目をしたアウンティー・ウィスパーズと住んでいた。気質の似ているワートとローナは、次第に心を通わていく。ワートは、そんなローナがウィスパーズにさまざまな雑用を押し付けられているのを見て、理不尽にこき使われているのではないかと邪推していた。

実は、ローナは邪悪な悪霊に取り憑かれており、彼女の家に来た客人を何人も生きたまま食い尽くしていた。ウィスパーズは、命令を効かせる特殊な鐘を鳴らして雑用を言いつけることでローナの気を逸らし、悪霊が出てこないようにしていたのだ。

ウィスパーズの策も虚しく、ワートたちは悪霊に姿を変えたローナに襲われてしまう。ワートはウィスパーズが使っていた鐘を鳴らし、悪霊に対して、ローナから出ていき2度と戻ってこないように命令した。悪霊は鐘の力に逆らえず、彼女から出ていく。自由になったローナはウィスパーズと嬉しそうに抱き合った。
ワートはローナの元を去り、グレッグとともに疲れた状態で木の下で眠りに落ちてしまった。

雲の町

グレッグは疲れ果てたワートを見て、自分がしっかりしなければいけないと思い直す。そして、良いリーダーになれるようにと星に願った。すると、彼は夢の中で雲の町に連れていかれる。

そこで遭遇した悪い北風を倒すと、雲の女王がグレッグに感謝して「願い事を叶えてあげます」と言った。グレッグはすぐ「ワートと一緒に家に帰りたい」と伝える。しかし、女王が言うには、すでにビーストがワートの体を奪い、彼を木に変え始めているという。グレッグは自分がワートの代わりにビーストに身を捧げることで、ワートを開放したいと新しく願うのだった。

ハロウィンの夜

ワートが目を覚ますと、グレッグの姿が見えなくなっていた。慌てて弟を探しに駆け出すが、凍った湖に落ちてしまう。そこで、ワートは自分たちがこの森に迷い込む前の出来事を思い出した。

ハロウィンの夜、ワートはグレッグとともに、思いを寄せていたサラという女の子を含む数名と墓地にいた。タイミング悪く警察官が車でやってきて「全員逮捕するぞ」と言ったため、子供たちは一斉に逃げ出す羽目になる。兄弟も墓地の庭の壁を超えて、反対側の線路に着地した。列車が近づいてくるタイミングでグレッグがカエルを見つけて追いかけたので、ワートも慌てて追いかける。2人はそのまま丘を転げ落ち、意識を失ったまま湖に落ちたのだ。

ビーストとの対決

回想が終わり、目を覚ましたワートの周りにはベアトリスと彼女の家族がいた。凍った湖から救い出してくれたのだ。すぐにグレッグを探すためにワートは起き上がる。その頃木こりは、木に姿を変えようとしているグレッグを発見した。グレッグを助けようと、木こりはそばにいたビーストに襲いかかる。

ワートとベアトリスは、木になりかけているグレッグを発見して駆け寄った。すると、ビーストが現れて木こりを放り投げる。葉っぱを吐き続けるグレッグを救うため、ビーストはワートへ取引を持ちかけた。もし、ワートが木こりと同じようにランタンの火を灯し続けるなら、その中にグレッグの魂を込めてもいいと言ったのだ。ワートは一度ランタンを受け取ったが、そうすると自分はこの森から出ることができないことに気づく。また、ランタンの火は木こりの娘やグレッグではなく、ビーストの魂だと看破した。ワートが火を消そうとすると、ビーストは激しく取り乱す。それを見て、ワートはランタンを木こりに託し、グレッグを救出して去っていたのだった。

木こりは、自分の娘だと思っていた火がビーストの魂だと知ってひどくショックを受けていた。背後から命令してくるビーストに怒りを覚え、娘の姿を映し出すランタンの火を少し眺めた後、一気に吹き消す。ビーストは叫びながら姿を消した。

Zuiq-39
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