英雄王、武を極めるため転生す(ラノベ・漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『英雄王、武を極めるため転生す』とは、ハヤケンが『小説家になろう』に2019年3月から連載し、ホビージャパンのHJ文庫から2019年11月に刊行されているライトノベルである。英雄王イングリスが転生し、今度は美少女騎士として武を極める物語である。特徴として、異世界転生と性転換の要素が融合し、主人公の成長と戦闘が描かれる。漫画版もあり、アニメは2023年に放送され、スタジオコメットが制作を担当した。魅力は、緻密なバトルシーンと個性的なキャラクターである。

『英雄王、武を極めるため転生す』の概要

『英雄王、武を極めるため転生す』とは、ハヤケンによる『小説家になろう』に2019年3月から連載されている、漫画にもアニメにもなった日本のライトノベルである。本作は、異世界ファンタジーのジャンルに属し、主人公である英雄王イングリスが、武を極めるために転生し、次の人生では女性の見習い騎士として生まれ変わる物語である。
本作の特徴は、転生というテーマを用いながらも、主人公が前世の記憶と能力を持ち続ける点にある。イングリスは、前世で神騎士として巨大な国を築き上げたが、老衰によりその生涯を終える。死の直前、女神アリスティアが現れ、彼の願いを叶えるために再び転生させる。この転生後のイングリス・ユークスは、騎士の名家の娘として生まれ変わり、0歳の時から前世の記憶と神騎士の能力を持っている。
本作の魅力は、主人公の成長と冒険を描く中で、戦闘シーンやキャラクターの個性が際立つ点である。イングリスは、武を極めるために戦い続ける姿勢を持ち、戦闘狂とも言えるほどの戦いへの情熱を見せる。また、彼女の周囲には個性豊かなキャラクターが集まり、物語を彩る。特に、幼馴染のラフィニアや兄のラファエルとの関係性が物語の重要な要素となっている。
世間に与えた影響としては、ライトノベルとしての人気だけでなく、漫画化やアニメ化もされ、多くのファンを魅了している点が挙げられる。
漫画版はホビージャパンの『コミックファイア』というサイトにて、くろむら基人作画にて2019年12月から連載されている。
アニメは2023年1月から3月まで放送され、全12話であった。アニメーション制作はスタジオコメットが担当し、監督は葛谷直行が務めた。アニメ化により、さらに多くの視聴者に本作の魅力が伝わり、人気が拡大した。

『英雄王、武を極めるため転生す』のあらすじ・ストーリー

イングリス・ユークスと転生世界

騎士の名家の娘として転生したイングリス

英雄王イングリスは老齢による衰弱で死の床に瀕していた。そこへイングリスに加護を与えていた女神が現れ、イングリスを労うとともに、その功に報いて願いを叶えたいという。それならばと、イングリスはこれまでの国のために我が身を捧げて生きるのではなく、武の道のために生きたいと生まれ変わりを女神に望んだ。
イングリスは意識を失い、目が覚めると赤子に転生している。名前は前世を引き継いだイングリス・ユークス。しかし、男ではなく女の子だった。この世界では魔石獣と呼ばれる怪物が人々を襲い、国に害をなしている。選ばれた者はその身にルーンと呼ばれる印を宿し、アーティファクトと呼ばれる武具で魔石獣に立ち向かう。以前イングリスがいた世界にはなかったものだ。
イングリスが8歳になると、騎士になるためのルーンを授かる儀式において、従姉妹のラフィニア・ビルフォードは上級のルーンを授かった。しかしイングリスは女神の力であるエーテルを身に纏っているのでルーンの元となる魔素(マナ)の力を弾いて、無印となった。まさにこれがイングリスが望んでいたことで、ラフィニアの従騎士として生きていく道を選んだのだ。その他にも、この世界では虹の雨・プリズムフロウという雨が降る時があり、人間には害はないが、生物が浴びると魔石獣に変わるのであった。天には天上領・ハイランドと呼ばれる島が浮かび、そこには天上人(ハイランダー)が住み、このものたちが地上の人間にアーティファクトを授けているという。
イングリスが調べてもかつて自分が治めたシルヴェール王国も影も形もないし、ここは別世界なのだろうかと感じていた。

天恵武姫(ハイラル・メナス)と聖騎士レオン・オルファーの裏切り

王都の宴席にて、イングリスは幼少時剣の稽古でコテンパンにしたラーアル・ランバーが、金で天上人となっていて再会を果たした。だが、その再会は喜ばしいものとはほど遠く、ラーアルは視察団の一員を処刑するという残虐な行為に及んだ。さらに、イングリスに対して自室への来訪を命じ、屈服を迫ったのである。
深夜、イングリスがラーアルのもとへ向かう途中、アーティファクト級の武具になれる天恵武姫(ハイラル・メナス)のエリスが現れた。彼女は「私がなんとかする」と言い、イングリスの行動を阻止しようとした。2人は一戦を交え、エリスはイングリスの実力を認めるに至った。
しかし、事態は思わぬ方向へと転じる。エリスの主人である聖騎士レオン・オルファーが姿を現したのだ。彼は国家への忠誠を捨て、反天上領のゲリラ組織「血鉄鎖旅団」に加わる決意を固めていた。さらに、天恵武姫エリスを組織への手土産として連れ去ろうとしていたのだ。イングリスはレオンに立ち向かおうとするが、レオンはアーティファクトを用いて戦ってくる。雷の召喚獣を多数操るものだったが、近づいて攻撃すると爆発する。エリスが離れたところから攻撃する技でイングリスを助けた。離れて攻撃せよということだったのだが、何を勘違いしたのかイングリスはそこから閃き、エーテルで自身を強化して爆発にも耐えられるようにした。そして雷の召喚獣を殴り倒していく。そこへ突如としてラーアルの屋敷から巨大魔石獣が出現した。先にイングリスを助けるため侵入していたラフィニアが屋敷から爆発とともに飛び出てきて、巨大魔石獣はラーアルが変身した姿だという。実はこれはレオンがラーアルにこっそり飲ませた、天上人さえも魔石獣に変える、虹の雨を粉にしたプリズムパウダーのせいだったのだ。混沌とした状況の中、イングリスはラフィニアを守るため、魔石獣の討伐に向かうことを決意する。イングリスはエリスも連れてともにキックをお見舞いし、街の外へ蹴り飛ばした。ほとんどイングリスの仕業なのにエリスがやったことにした。まだやってくる巨大魔石獣に、イングリスはエーテルを凝縮させて撃つ「エーテルストライク」を放ち、巨大魔石獣ごと消し去る。それも、エリスの手柄ということにした。力があるとわかると、自由が効かなくなるからだ。

時は流れ、イングリスとラフィニアは15歳を迎えた。2人は騎士としての道を歩むべく、騎士アカデミーへの入学を目指し、王都への旅立ちを決意したのであった。​​​​​​​​​​​​​​​​

王立騎士アカデミー

王立騎士アカデミーで新学期が幕を開けた。空飛ぶ乗り物である機甲鳥(フライギア)演習で湖のドッグまで走る際、イングリスは単に走るだけでは物足りないと感じ、自ら重力負荷をかけるなど、常に訓練に励んでいた。
ある日優秀な生徒のみが選抜される特別推薦テストにイングリス、ラフィニア、途中でイングリスとラフィニアと友になったレオーネ・オルファーとリーゼロッテ・アルーシアらが推薦された。テストの内容は「試練の迷宮」と呼ばれる特殊空間からの脱出であった。この迷宮は、挑戦者に自身の記憶を辿ることを強制する幻覚の迷宮であることが判明した。
4人は無事に「試練の迷宮」をクリアし、互いの絆を深めた。その後、新たな天上領からの特使就任パーティーに参加することになった。イングリスは華やかなドレスと豪華な料理に心を躍らせていたが、突如として獣人型魔石獣の群れが出現した。周囲が混乱する中、イングリスたちは冷静に対処し、魔石獣を着実に撃退していった。事態が収束した後、魔石獣出現の鍵を握るのは獣人種の天恵武姫リップルの存在であることが明らかになった。リップルはハイランダーの地上人を快く思わない派閥・教主連が遣わしていた。そのリップルに、無意識に魔石獣を呼び寄せ地上人を害するよう仕掛けを施されていたのだ。
落ち着く間、天恵武姫リップルを騎士アカデミーで預かることが決定し、ミリエラ校長は各学年から選抜した生徒を招集した。イングリスたち1回生に加え、生徒で唯一特級印を持つシルヴァ・エレインや実力者でありながらやる気に乏しいユアなど、個性豊かな上級生が一堂に会した。

魔石獣を排除しリップルを護衛する日々が続く中、強者との戦いに渇望を抱くイングリスは、リップルに手合わせを申し出た。天恵武姫との戦いに胸を高鳴らせるイングリスであったが、銃を使うリップルに苦戦させられる。それでもわざと自分への射線を狭めて、銃弾を作成した氷の剣で打ち返したしたイングリスは、リップルとの間合いをつめて一撃を加えることに成功する。ここで、ミリエラのマナに対する反応からリップルが特級印を持つ者からマナを吸収し一定量溜まると魔石獣を呼び出すことが判明した。それでも王立騎士アカデミーは引き続きリップルを預かることとした。

偽の調印式と虹の王

ある日街を歩いているレオーネとリーゼロッテの前に、レオンと黒仮面の男が姿を現した。彼らは衝撃的な情報を明かす。カーリアス国王が天上領との関係改善のために、アールメンを丸ごと献上しようとしているというのだ。さらに、自分たちは「血鉄鎖旅団」の一員であり、調印式に来る天上領の使者を討つと宣言した。この話を耳にしたイングリスは、二面作戦を提案する。国王と使者を守り、血鉄鎖旅団の襲撃を阻止すると同時に、リップルの問題も解決しようというのだ。そしてラフィニアと共に、メイドに扮して調印式に潜入することを決意した。しかし、調印式は天上人イーベルが仕掛けた罠だった。血鉄鎖旅団を引き寄せるためのものだったのだ。利用されたことを知った国王は、イーベルの捕縛と血鉄鎖旅団の壊滅を命じる。イングリスはイーベルを遠くへ蹴り飛ばし、飛び交うフライギアを踏み台にしてラフィニアと共に飛行戦艦にたどり着いた。
戦艦上でイングリスと黒仮面の男が対峙する中、イーベルが舞い戻り、戦況は三つ巴となる。そのとき、黒仮面の男は自分の天恵武姫システィア・ルージュを黄金の槍へと変貌させた。
一方、騎士アカデミーには最強の魔石獣「虹の王」が召喚された。レオンを中心に攻撃を仕掛けるも、その傷はたちまち再生してしまう。さらに悪いことに、ユアが虹の王の体内に取り込まれてしまった。
虹の王の召喚を見ていたイングリスは、黒仮面の男に「お前と関わっている暇はない」と言われイーベルと黒仮面の男が戦い始めるのを羨ましく思いながらも、虹の王の元にラフィニアと共にフライギアで向かう。イーベルは黒仮面の男の槍の攻撃を防ぎきれず、あっさり消滅してしまったのだった。
この窮地に際し、シルヴァは天恵武姫リップルに「武器化して共に戦って欲しい」と進言する。リップルはシルヴァは私を使いこなすには未熟だから早すぎると拒否するものの、シルヴァの熱意により強制的に武器化が始まってしまう。
そんな中、虹の王との戦いを心の底から楽しみにしていたイングリスが、ついに仲間たちのもとに帰還する。彼女の到着により、戦況は大きく変わろうとしていた。​​​​​​​​​​​​​​​​イングリスは、武器化したリップルを使おうとしていたシルヴァを止めた。虹の王が撃った複数の熱線をイングリスは殴って方向を変え、街への被害を逸らす。イングリスは必殺の一撃を放ちたいところだが、虹の王には隙がない。レオーネやリーゼロッテが虹の王を牽制して隙を作ってくれたところで空に飛ばし、特大のエーテルストライクを撃った。流石に逃げ場のない虹の王は直撃を受け、なんとか堪えているところをイングリスはエーテルの拳で直接殴り突き破るエーテルブレイカーを畳みかけ見事に仕留める。イングリスはユアも無事に救出した。

イングリスは王から近衛騎士団団長を拝命されたが、前線で戦えなくなると辞退した。虹の王によって破壊された王立騎士アカデミーも再建が進み、とりあえずの鍛錬の日常が戻ったのだった。

『英雄王、武を極めるため転生す』の登場人物・キャラクター

主人公

老王イングリス

CV:麦人
老王イングリスは、イングリスが転生する以前の姿であった。彼は驚異的な手腕を発揮し、一代にして広大な王国を築き上げた。その圧倒的な力と民のための善政により、人々から「英雄王」との称号を与えられたのである。長い治世の末、老いの訪れとともに、イングリスは死の床に就いた。その最期の時、女神アリスティアが現れ、彼の偉大な功績に報いるため、望みを尋ねたという。イングリスは深く考え、こう答えたのである。「生涯をかけて武の道を究めてみたい」と。その言葉を受け、女神は老王の願いを聞き入れた。こうしてイングリスは、新たな人生を歩むべく転生の道を選んだのであった。彼の魂は、武の道を極めるという使命を胸に、次なる世界へと旅立っていったのである。​​​​​​​​​​​​​​​​

イングリス・ユークス/クリス

CV:鬼頭明里
イングリス・ユークス、別名クリスは本作の主人公である。灰色髪が特徴。彼女は前世の英雄王イングリスが、城塞都市ユミルの騎士団長リューク・ユークスの娘として転生した姿だ。前世の老齢男性の意識を持つため、ラフィニアを孫娘のように感じ、自身と男性との恋愛に拒否感を抱いている。自他ともに認める美少女に成長したイングリスは、その事実自体を悪くないと感じつつも、男性の目を引き付けることを内心嫌っている。容姿は実年齢より上に見え、胸の発育も良好だ。武を極めるという今生の目的のため、基本的に自ら戦うことを最優先に考え、世情にはあまり関心を示さない。実力のある相手と手合わせをしようとしたり、戦いの機会を増やそうと画策するため、周囲からは戦闘狂や獣のように見られることがある。ラフィニアはイングリスのことを「天使の身体に武将の魂が宿ってる」「ドレスを着た野獣」と表現することもある。武を極めるために戦うのであって蹂躙は望んでいないため、あえて自分の能力を制限して戦うことが多い。しかし、戦う機会が得られても相手が戦意喪失したり、状況の変化で勝負が有耶無耶になったりして満足に戦えないことが多く、運はあまり良くない。ラフィニアの母親である伯母イリーナと母親セレーナの遺伝により、イングリスはラフィニアとラファエルと共に、周囲の人々を驚かせるほどの大食漢である。​​​​​​​​​​​​​​​​

主要人物

ラフィニア・ビルフォード/ラニ

CV:加隈亜衣
ラフィニア・ビルフォードは、イングリスの従姉妹であり幼なじみでもある。黒髪が特徴。彼女はビルフォード公爵家の令嬢で、イングリスと同年齢だ。上級印の光の弓の魔印を持つ実力者である。ラフィニアは、イングリスと自身の兄ラファエルが良い組み合わせだと考えており、機会があるたびに2人の仲を取り持とうと画策する。また、イングリスを様々な衣装に着替えさせるのを楽しみにしており、イングリス自身もそれを楽しんでいるのだ。性格は明るく、愛嬌たっぷりの少女である。町を歩けば、その可愛らしさゆえに思わず振り返ってしまう人も多い。真面目で正義感が強く、常に自分が正しいと信じる行動を取る。しかし、胸の発育については少々コンプレックスを抱えており、時折、発育の良いイングリスに嫉妬することもあるのだ。食事面では、イングリスと同様に大食漢としても知られている。人々からは親しみを込めて「ラニ」と呼ばれることもある。​​​​​​​​​​​​​​​​

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