死神坊ちゃんと黒メイド(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『死神坊っちゃんと黒メイド』とは、2017年から2022年にかけて『サンデーうぇぶり』にて連載されていた漫画作品。作者はイノウエ。魔女によって「触れた生き物の命を奪う」呪いをかけられた貴族の坊っちゃんと、そんな坊っちゃんに仕えるメイドのアリスの純愛を描く、ファンタジー・ラブコメだ。両想いなのに触れられない坊っちゃんとアリスの切ない恋模様、2人を取り巻く個性豊かなキャラクターたちが、ファンから高く評価された。

『死神坊ちゃんと黒メイド』の概要

『死神坊っちゃんと黒メイド』は、2017年10月から2022年5月にかけて『サンデーうぇぶり』にて連載されていた漫画作品。作者はイノウエ。原作漫画は話数223話、全16巻で完結している。2021年7月にテレビアニメ化され、第1期が同年9月まで放送された。アニメは第3期まで制作され、漫画同様完結している。
物語の主人公は、幼い頃に「触れた生き物の命を奪う」という呪いを魔女によってかけられた貴族の少年、坊っちゃん。彼は呪いのせいで家族や友人から拒絶され、本邸から離れた森の奥にある屋敷で孤独な日々を過ごしている。そんな彼の傍らには、日々逆セクハラを仕掛けてくるメイドのアリスがいた。坊っちゃんとアリスは互いに想い合う仲。しかし、呪いのせいで触れ合うことはできない。坊っちゃんはアリスと結ばれるため、呪いを解く術を探す。
設定はシリアスだが、登場人物は良い人が多く、コメディシーンが多いため重くなりすぎない点が魅力の作品。坊っちゃんとアリス以外のキャラクターの恋模様も描かれており、そこも本作の見所となっている。

『死神坊ちゃんと黒メイド』のあらすじ・ストーリー

孤独な坊っちゃんとセクハラメイド

5歳のときに魔女によって「触れた生き物の命を奪う」呪いをかけられた坊っちゃん。彼は家族と離れ、森の中にある別邸での生活を強いられていた。家族からは疎遠にされ、現在はほとんどいないことにされている。屋敷には自分と2人の使用人だけという生活に、坊っちゃんは孤独を感じていた。そんな坊っちゃんは、孤独以外の悩みも抱えていた。それが、一緒に暮らしているメイド、アリス・レンドロットの逆セクハラだ。いたずらに距離を詰めてきては、きわどいことをして坊っちゃんをドギマギさせるアリス。坊っちゃんはアリスに好意を抱いているため、いつ自分が欲望に負けて触れてしまうかと気が気でない。坊っちゃんはアリスに触れるためにも、早く呪いを解こうと改めて決意する。

潜入!魔女の集会

アリスと冬を満喫していた坊っちゃんは、魔女のカフとその幼なじみである魔法使いのザインと知り合い、2人に誘われて魔界で行われる「魔女の集会(サバト)」に出席する。そこで坊っちゃんとアリスは、魔界のボスである魔女のダレスと出会った。ダレスは坊っちゃんに呪いをかけた魔女を知っているが、彼女に呪いを解くよう頼むのは不可能だと告げる。呪いをかけた張本人は、すでに死亡していたのだ。ショッキングな事実を告げられたが、坊っちゃんは諦めない。必ず真実にたどり着いて呪いを解くと宣言する坊っちゃんに、弱気になっていたアリスは安堵する。

坊っちゃんと家族の関係

サバトのあと、変わらない日常を過ごしていた坊っちゃん。彼のもとに、弟のウォルターがやってくる。次男として生まれたウォルターは、坊っちゃんが呪いを受けるまで兄のスペアとして生きてきた。しかし坊っちゃんが呪いのせいで長男の役目を果たせない今、ウォルターは自分こそが家長に相応しいと思っている。ウォルターは家長の座を手に入れるため、坊っちゃんに「先に呪いの真実にたどり着いたほうが家長を継ぐ」という勝負を持ちかけた。坊っちゃんは困惑しながらも、勝負を受ける。
ある日、坊っちゃんの妹であるヴィオラが、アリスを訪ねて別邸にやってきた。ヴィオラが持ってきたのは、坊っちゃんが呪いをかけられた頃に使用人たちが書いていた日誌だ。ヴィオラはこの日誌に、兄の呪いを解く手がかりがあるのではないかと考え、アリスに渡そうと考えたのだ。そんなヴィオラの様子を、ダレスが監視していた。ダレスはザインを呼び出し、その日誌を処分するよう命じる。どうやら日誌の内容は、ダレスにとって都合の悪いもののようだ。カフの名前を出して脅されたザインは、ダレスに言われた通り日誌を処分する。しかしその際、ザインは日誌をいつでも復元できるよう魔法をかけたうえで処分した。
日誌の件のあと、ウォルターは母のガーベラから本邸に呼び出された。母いわく、当主である父の病状が思わしくないため、万が一のことを考えて坊っちゃんとウォルターのどちらが家長になるかはっきりさせておきたいのだという。ガーベラは坊っちゃんに、春までに呪いが解けなければ家長はウォルターに任せると宣言した。一方、坊っちゃんもガーベラにアリスと結婚すると宣言。驚くガーベラを置いて、坊っちゃんはアリスと共に別邸へと帰っていった。

ザインの力を狙うダレス

母との会談を終え、別邸での生活に戻った坊っちゃん。彼の前に、突然ダレスが現れる。ダレスは坊っちゃんに頼み事があるのだという。それはザインの説得だ。ダレスはある事情から、時間を操るのが得意な魔女を探していた。日誌の一件で、ダレスはザインこそが求めていた力を持つ魔女だと気づいたのだ。しかしザインは自身の魔法を嫌っており、頑なに使おうとしない。そこで、ザインの友人である坊っちゃんに、ザインに魔法を使うよう説得してもらおうと考えたのだ。説得の見返りとして、ダレスは坊っちゃんのために、解呪を得意とする魔女を手配する。しかし手配された魔女アメリアでも、坊っちゃんの呪いを解くことはできないという。アメリアは、これほど強力な呪いをかけられるのは、ダレスの双子の姉しかいないと断言する。
後日、坊っちゃんはザインと会い、彼にダレスが時間操作の魔法を狙っていることを伝えた。ザインはカフを巻き込まないよう、彼女を置いて姿を消そうと決意する。しかしザインが姿を消す前に、ダレスの命令を受けた魔女たちがザインを襲撃した。その襲撃が原因でカフに危険が及ぶが、ザインがカフを守るために嫌っていた力を解放したことで、事件は無事に収まる。
ザインを連れていくことはできなかったものの、ザインが時間操作の魔法を使うようになったことに満足したダレスは、ひとまず引き下がることにする。その際、ダレスは事件現場にいたアリスと坊っちゃんに、亡くなったとされるアリスの母シャロン・レンドロットが実は生きているという衝撃の事実を伝えた。

アリスの母にかけられた呪い

ザインが襲撃された事件から時が流れたある日のこと。アリスの母、シャロンのことを聞くため、再び魔界にやってきた坊っちゃんとアリス。2人はダレスに導かれ、棺の中で眠るシャロンを発見する。ダレスによると、シャロンはダレスの姉であるシャーデーの呪いで眠り続けているのだという。シャーデーはすでに死亡しているのだが、なぜ死んだのかはわからない。ダレスは姉の死因を知っている可能性のあるシャロンを目覚めさせようとしたが、呪いは強力で解けなかった。ダレスが時間を操るザインを必要としていたのは、シャロンの呪いを解くためだったのだ。そしてシャロンは、坊っちゃんがシャーデーに呪いをかけられた一件にも関係しているらしい。その理由は明かされぬまま、坊っちゃんたちはダレスによって元の世界に帰された。

魔術師たちとの出会い

平和な日々が続いていたある日、怪しい何者かに狙われているというザインとカフが、坊っちゃんたちのもとにやってきた。その彼らを追うようにして、少年と老婆が別邸を訪れる。少年の名はニコ、老婆の名はイチ。2人は人間でありながら魔力を持っている魔術師だ。ニコは本来高齢男性なのだが、シャーデーから不老不死の呪いをかけられた。ニコはシャーデーを殺したが、呪いは解けず子供の姿のままなのだという。ニコがザインを追っていたのは、ザインの時間操作の魔法で呪いをかけられる前へと飛び、シャーデーをもう一度殺すため。シャーデーとの決戦を見据え、坊っちゃんたちはニコが運営する魔術学校で魔法や魔法道具の使い方について学ぶことになる。

シャーデーとの邂逅

魔術学校での生活を始めた坊っちゃんたち。一同は、魔術学校に現れたダレスを案内役に、過去へ飛んでみることを決める。決戦前の偵察のようなものだ。過去に到着してすぐ、ザインはシャーデーに遭遇した。この出来事が現在に影響を及ぼし、眠っていたはずのシャロンが目を覚ます。しかしこの目覚めには、シャーデーの企みが隠されていた。シャロンにはシャーデーの分身が潜んでおり、彼女が目覚めると動き出すようになっていたのだ。幸い、分身はすぐに退治された。しかしシャーデーの分身は消え去る前に、シャロンが長い眠りについたのはアリスのせいであると告げる。シャロンがシャーデーから受けた呪いは、病弱だったアリスを健康体にする代償だった。

呪いの理由

分身事件が解決したあとの、とある雨の日。坊っちゃんとアリスは、幽霊になって世界中を旅している坊っちゃんの祖父ヴィクトルと、その妻であるリズに出会った。そこで坊っちゃんは、自身にかけられた呪いの原因がヴィクトルとシャーデーの関係にあることを知る。
かつて、事故で妻を失くして落ち込んでいたヴィクトルは、シャーデーとある契約を交わした。それは「20年の寿命と引き換えに死後の世界でリズと一緒にいられる」というものだ。ヴィクトルは迷うことなく寿命を差し出し、シャーデーと契約を交わす。そんなヴィクトルにシャーデーは興味を持ち、よくヴィクトルのもとを訪れるようになった。ヴィクトルと関わるうちに、シャーデーはヴィクトルに想いを寄せるようになる。そんなある日、ヴィクトルの屋敷にアリスをつれたシャロンがやってきた。ヴィクトルはシャロンと過ごすことが増え、シャーデーの胸に激しい嫉妬心が芽生える。やがて、ヴィクトルは寿命で逝去。後にはシャーデーの歪んだ恋心だけが残った。シャロンに呪いをかけて眠らせたのは、ヴィクトルを取られたという妬みが原因だ。そして坊っちゃんに呪いをかけたのは、自分を理解し愛してくれる人はいないという悲しみが原因だった。呪いの向こうにシャーデーの苦しみを見た坊っちゃんは、過去に渡ってシャーデーを討伐するのではなく、シャーデーを救うことを決意する。

シャーデーとの最終決戦

ついに、過去に戻ってシャーデーと対峙する日がやってきた。戻る日時は、坊っちゃんが呪いをかけられる数時間前の本邸。坊っちゃんたちはシャーデーに接触して話し合いを試みるが、失敗して戦闘になってしまう。戦闘の最中、シャーデーは自身の強大な力に飲まれて倒れてしまった。アリスは味方の魔法でシャーデーの内側に入ることに成功。シャーデーの深層心理に触れ、彼女はずっと孤独で、ただ友達が欲しかったのだということを知る。アリスはシャーデーに「自分が友達になる」と告げ、彼女の心を癒やした。アリスの優しさに触れたシャーデーは、もう一度人を信じてみようと決意。坊っちゃんたちやニコたちと和解し、自分がかけた呪いを解くことを約束する。

坊っちゃんの決断

シャーデーは坊っちゃんの呪いを解くことはもちろん、坊っちゃんに呪いをかけずにいることもできた。シャーデーが幼い坊っちゃんに呪いをかけなければ、坊っちゃんは別邸で孤独な日々を過ごすことなく、貴族の長男として幸せな生活ができる。しかし坊っちゃんは「呪いをかけられた人生のほうがいい」とシャーデーに告げ、過去を変えないことを望んだ。坊っちゃんは呪いに苦しんだが、呪いがあったからこそ出会えた人たちがいて、彼らとの縁が大切だったのだ。シャーデーはそれを受け入れ、過去はそのままに現在の坊っちゃんの呪いを解く。こうして坊っちゃんは、愛するアリスに触れられるようになった。

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