春待つ僕ら(漫画・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『春待つ僕ら』とは、2014年から6年間『デザート』にて連載された、あなしん原作の少女漫画である。これを原作とした実写版映画も公開されている。内気でいつもひとりぼっちだった主人公の美月が、自分を変えるべく行動を起こそうとするがなかなかうまくいかない。そんな中出会ったバスケ部のイケメン4人組。彼らに振り回されながら、少しずつ美月の世界が変わっていき、大切な居場所が大きくなっていく。恋も友情もスポーツも、一生懸命に純粋に向き合う高校生たちの青春ストーリー。

『春待つ僕ら』の概要

『春待つ僕ら』とは、2014年~2019年まで『デザート』にて連載された少女漫画である。作者はあなしん。略称は『春僕』。2017年には第41回講談社漫画賞少女部門にノミネートされている。2018年には実写映画も公開され、本作の人気が伺える。『僕だけがいない街』の平川雄一朗が監督を務めた。土屋太鳳、北村拓海の主演で話題となる。
2017年~2019年には、ドラマCD付きの特装版7、9、12巻が発売されている。同じく同年の『デザート』付録にも、単行本に添付されたものとは別内容のドラマCDが添付された。
主人公の春野美月(はるのみつき)は、人見知りで内気な地味な少女。高校こそは友達を沢山作ると意気込んでいたところ、「バスケ部イケメン四天王」と深く関わりを持っていく。
美月は、イケメン四天王の1人である浅倉永久(あさくらとわ)に次第に恋心を抱くようになり、永久もまた純粋でひたむきな美月に惹かれていく。そこへ突如現れた美月の幼馴染の神山亜哉(かみやまあや)は、美月への強い想いを持っていた。バスケットボール強豪校に通う亜哉は、バスケットも恋も、永久の良きライバルとなっていく。恋も友情も大切に育んでいく美月と、その周りを彩る個性あふれるキャラクターが魅力的だ。イケメンたちに振り回されながらも、充実した高校生活が始まっていくハチャメチャ青春ラブストーリーである。

『春待つ僕ら』のあらすじ・ストーリー

美月と永久の出会い

バスケ部イケメン四天王に囲まれる春野美月(左から、若宮恭介、多田竜二、宮本瑠衣、浅倉永久)

高校に入学するまで、人見知りでひとりぼっちで過ごしてきた春野美月(はるのみつき)。
高校生活こそはと「脱ぼっち」を目指してカフェでアルバイトを始める。内気な自分自身を変えようと意気込んでいたが、そこに現れたのは、同じ高校に通う浅倉永久(あさくらとわ)、若宮恭介(わかみやきょうすけ)、多田竜二(ただりゅうじ)、宮本瑠衣(みやもとるい)の「バスケ部イケメン四天王」。
同じカフェで働く店長の娘の柏木ナナセ(かしわぎななせ)は、美月の良き相談相手でお姉さん的存在。そんなナナセに、四天王の1人である竜二が恋をする。しかし見た目に反して恋愛事には奥手な竜二は、ナナセを呼び出すよう瑠衣に頼む。瑠衣は店内にいた美月をナナセだと勘違いし、間違って連れ出してしまった。
このことがきっかけで、美月と永久、恭介、竜二、瑠衣との友情が少しずつ生まれていく。
地味な美月に最初は見向きもしなかった彼らだが、共に過ごす時間が増えていくうちに、優しくひたむきな美月の存在がなくてはならないものに。
美月にとっても、彼らと過ごす時間は自分が一番自分らしくいられる大切な居場所となっていた。
なかでも、永久に対する気持ちは他とは違っていた。ぶっきらぼうのようで実は優しい一面や、美月の話を真っ直ぐに受け止めてくれるところに、だんだんと惹かれていく美月。
美月が永久に恋をするのに、時間はかからなかった。
しかし、校内一の人気者のイケメンと地味な自分とでは釣り合わないと、なかなか気持ちを伝えられない。
取り巻きの女子たちの冷たい視線や、友人である山田レイナ(やまだれいな)にもどんな反応をされるかと不安があり、相談をすることもできずにいた。
レイナは、取り巻き達とは少し違った視点で四天王のファンであり、彼らの写真を撮ることに一生懸命。イケメンたちの絡みが大好物という趣味を持っている。
一方の永久も、美月が自分にとって特別な存在だと思っているようではあり、他の女の子にはしないような素振りを見せる。美月はドキドキさせられっぱなしだ。
そこへ、アメリカ帰りの美月の幼馴染、神山亜哉(かみやまあや)が現れる。亜哉は美月と出会った小学生のころから、彼女を大切に想っていた。積極的に美月にアプローチする亜哉に、永久は面白くなさそうな様子を見せる。さらに亜哉は、四天王たちのライバルである強豪校のバスケ部エースでもあった。

美月と亜哉

亜哉は、美月が小学4年生のころにバスケットコートで出会った1つ年上の男の子。この思い出のバスケットコートがすぐ近くにあるからと、バイト先のカフェを選んだのだった。
しかし、美月は亜哉のことを女の子だと思って接していたのだ。
アメリカから帰国し、再会した亜哉が実は男であったことにショックを受ける。
美月にとって亜哉は、友人関係に悩む孤独な自分を支えてくれた、大切な存在だった。「強くてカッコいい女の子のあやちゃん」として憧れ、自分もそうなりたいと思ってきたのだ。
亜哉がアメリカに行くことになり離れてしまっても、「あやちゃん」が心にいることで自分を勇気づけてきた。
それは亜哉もまた同じで、美月と離れたことは大打撃だった。離れている間も美月への想いは変わることなく持ち続けており、再会してその気持ちをストレートに美月に伝える。
さらに亜哉は鳳城高校バスケ部のエースで、永久たちのライバルだった。美月への気持ちもバスケも、永久と亜哉はライバル心むき出しで接するようになる。
さらっと美月を抱き締めたり、頬にキスをしたりと見せつけるようにスキンシップを取る亜哉の行動。少しずつ美月への気持ちに気づき始めている永久は気が気ではない。

永久と亜哉・2つの想い

そんな中美月は、もう一人の友人である女子バスケ部の須藤マキ(すどうまき)が、永久のことを好きだという事実を知る。美月も永久もお互いにモヤモヤする日々を過ごすが、心のどこかで美月を亜哉に取られたくないという思いがある永久は、ついに美月を抱き締める。以前から永久との距離が近くなっていることもあり、美月は期待してしまう。
互いに特別な想いを寄せているのに、なかなか1つにならないもどかしい2人。
そしてIH予選が始まり、バスケ部の面々は忙しく過ごしていたが、大会では残念ながら鳳城高校に敗れてしまった。

大会が終わった後の夏休み、永久とは遊びに、亜哉からはデートに誘われていた美月。
永久との約束は、二人きりではなくみんなで遊園地に行くことに。ここでついに、永久は美月への気持ちを確信し、恭介に「美月が好きだわ」と宣言するのだった。
かたや亜哉の方は、大会優勝のインタビューで「大事なコに会いたい」と堂々と発言していた。
亜哉とのデートでは、女のフリをして嘘をついていたことを問いただす美月。亜哉も、美月と出会った当時は学校でいじめにあっており、弱い自分を見せたくなかった。
そのため、自分のことを女の子と勘違いしてくれていた方が都合が良く、美月との距離を保っていられるからと、言わずにいたのだ。
美月は、ショックを受けているばかりではなく、亜哉のことも男の子として真剣に考えなくてはいけないと思うようになる。
大切な思い出のある亜哉に対しても、やはり特別な気持ちがある美月なのであった。

永久の告白

夏休みが終わり、次の大きなイベントは文化祭。美月は実行委員となり、張り切っていた。ところが、張り切りすぎて1人でなんでも背負い込んでしまったせいで、レイナとの待ち合わせの際に倒れてしまう美月。そんな美月を助けたのは、永久ではなく亜哉だった。亜哉は自宅へと美月を運び、ここでも積極的にアプローチをする。亜哉は美月を駅まで送って行くが、美月はそこで、大きくなった「あやちゃん」を受け入れられず、警戒したり嫌な態度をとったりしてしまったことを謝る。自分にとって大きな存在だった亜哉と、今大切な存在である永久との間で美月の気持ちは揺れるのだった。
一方の永久も、美月への好きという気持ちを自覚してから、さらに積極的な行動を起こすようになる。しかし、永久たちが所属する清凌高校バスケ部には、恋愛禁止の部則があった。そのこともあり、何かひとつ亜哉に勝ったと思えるまでは気持ちを伝えるつもりはなかったのだが、もっと美月に近づきたいとの思いが強くなり、ついに文化祭終了後に告白するのだった。
突然のことに驚く美月。永久には「返事はいらない」と言われていたが、亜哉との関係もある。こんな状態で自分の気持ちを伝えて良いものかと、嬉しい反面悩んでいた。
そして永久から告白されたことがレイナにバレてしまい、友情が壊れるのではと焦る美月。レイナは素直には喜べないものの、美月と永久の恋を応援すると言ってくれたのだった。
そんな中、美月は永久の家へ遊びに行く。文化祭で告白される前に誘われていたのだ。そこで美月は、永久の両親が幼いころに他界しており、祖父母と3人で暮らしていることを初めて知った。
寂しさに押しつぶされそうな幼い永久だったが、ミニバスで知り合った恭介・竜二・瑠衣たちのおかげで寂しくなくなったと話す。そして、彼らと同じように、美月の存在も自分にとって特別だと伝えるのだった。
永久もまた美月のように、幼いころは寂しい気持ちを押し殺して「強くありたい」と思ってきた。祖父から「これからは我慢しなくていい。大事な人には本当の気持ちを見せてみなさい。」と言われたその意味が、今はとてもよくわかる。
この話を聞いた美月は、自分が永久から必要とされていることを嬉しく思うのだった。
こうして永久の気持ちは真っ直ぐに美月に届けられた。
永久に告白されたことを知った亜哉も、黙ってはいない。これまでも積極的にアプローチしていた亜哉だが、「美月が思ってるよりずっと大事に思ってるよ。愛してる。」と更に本気の告白を見せる。

新人戦

亜哉からの本気の告白に、すぐに返答できない美月。幼いころからずっと、互いに支え合ってきた2人。亜哉は今も美月を必要としている。
永久に好きだと言ってもらえたことは嬉しいが、亜哉がいたから今の自分がある。そう考えると、どうしても2人にハッキリとした自分の気持ちを伝えられないのだった。
そんな中、永久は恋愛禁止の部則を変えてもらうよう動こうとしていた。部則を変えて、もう一度美月に告白したいと思ったのだ。
部則を変えるための条件は、新人戦で1月にある本大会まで進み、優勝することだった。優勝にはもちろん、亜哉率いる鳳城高校にも勝たなければならない。
大事な第一試合が始まったが、前日に亜哉が美月を守って事故に合い、怪我をしてしまう。美月は自分のせいだと責任を感じ、亜哉の見舞いを優先させたため応援に来なかった。
しかし、試合のことが気になる様子の美月に亜哉が気を利かせ、試合会場へと連れ出す。永久と美月の関係を知る亜哉は、永久に宣戦布告を申し入れるのだった。
順調に勝ち進む永久たち。クリスマスも返上して練習に打ち込んでいた。
永久は、リストバンドにメッセージを書いてほしいと、バイト帰りの美月のもとへやって来る。美月も、永久が恋愛禁止の部則廃止を果たすまでは自分の気持ちを伝えずにいようと思っていたのだが、つい「必勝」と書いたあとに「スキ」と書きかけてしまう。隠そうとするも永久に見つかり、「必ず勝って部則をなくすから、そしたらこの続きちゃんと聞かせて。」と抱き締められる美月。
そしてついに運命の新人戦が始まる。試合を順調に勝ち進んでいく、清凌と鳳城。
決勝前日、バイト終わりの美月を送ろうとする永久だったが、そこへ亜哉が現れる。
「今日は俺に送らせてくれない?」という亜哉に対し、永久も「俺も美月に話したいことがあるんで、待ってもらえますか?」と伝える。
永久は美月に、試合が終わるまで必勝リストバンドを持っていてほしいと言って渡し、恭介たちのもとへと去っていく。
自分とのことに縛られて、亜哉のことを考えられなくならないようにとの配慮だったのだ。美月にとって亜哉が特別な人であること、自分と亜哉との間で揺れていることを永久は知っている。
一番は美月の幸せだと考えての行動だった。
しかし美月は、もう必要ないということだろうか、大事な試合があるのに余計なことを考えさせてしまった、と捉えてしまう。亜哉の怪我のこともあり、2人の邪魔をしているのではないかと不安になる美月。
涙を流す美月に亜哉は、「もう我慢しなくていいよ」と優しく伝える。美月が本気で永久に恋をしていることを悟った亜哉は、身を引くことを選んだのだった。
そして亜哉は、父からアメリカに戻って来るよう言われており、向こうのチームにも呼ばれていることもあって再びアメリカへ行くのだと打ち明けた。
身を引くとはいえ、たとえまた離れても永久に渡すことになっても、やっぱり美月が一番であり、それは変わらないということを伝える。

そしていよいよ、清凌対鳳城の決勝戦当日。
以前より格段に強くなった清凌だが、点差がどんどん広がっていく。永久の調子が良くないのだ。周りは弱気になる中、美月と永久は諦めていなかった。
永久は「まだ終わりませんよ。ここからです。」と亜哉に宣戦布告するのだった。
ところが、ボールを追いかける亜哉と永久は椅子に突っ込んでしまう。亜哉を庇った永久は怪我を負い、運ばれていく。
試合の結果は8点差で負けとなった。
試合後、永久のもとへ駆けつけた美月は、ついに気持ちを伝える。

結ばれる2人

美月の告白を聞いた永久は嬉しそうな表情を浮かべるが、病院へと連れていかれてしまい、その後の話はできなかった。
永久の怪我は大事には至らず、準優勝の打ち上げで監督と共にラーメンを食べに行く清凌バスケ部。永久はその場で、恋愛禁止の部則について考え直してほしいと直談判する。
部員たち全員で頼むが、来月から外部コーチを頼むからしばらく我慢してほしいという監督。
ところが、この外部コーチというのは、バスケを教えていた経歴を持つ永久の祖父だったのだ。永久たちの頼みを聞いた祖父は快く受け入れてくれ、めでたく恋愛禁止の部則はなくなった。
そのことを美月に伝え、改めて告白する永久。涙を浮かべた美月は、「はい」と返事をしたのだった。互いに好きだったのに、部則によって阻まれていた2人の距離がようやくなくなり、晴れて付き合うこととなった。
亜哉はというと、アメリカ出発前に永久と落ち合い、「俺のこと思い出す暇なんてないくらい幸せにしてあげてね」と伝える。
美月と永久のことを素直に認めたくはないが、美月の初めての恋を応援する形をとったのだった。

ようやく実った2人の恋。
美月はふと、永久をドキドキさせたいと思うのだった。
バイト先のカフェでサプライズパーティをし、永久をドキドキさせる作戦を実行しようとする美月。自分から手を繋いだり名前で呼んでみたりと、慣れないことを必死に試すがどれも撃沈してしまう。
カフェに着くと他のみんなの姿はなく、二人っきりの空間が用意されていた。
夜、永久は満点の星空が見える丘へと美月を連れて行く。
人見知りで弱い自分を変えたいと思っていた美月は、永久と出会い共に時間を過ごしてきたことで自分のことが好きになってきたと話す。
「私に自信を持たせてくれるのは、永久君だけなんだよ」
そこで再び、お互いの気持ちを確かめ合う2人なのだった。

幸せな高校生活~卒業へ

2年生へと進級した美月たち。
美月は新歓祭でスピーチをすることになっていた。本を見てそれらしいスピーチを考えたが、「一生懸命伝えたいと思った言葉が1年生に伝わればそれでいいと思う」との永久の言葉に、用意していた原稿を持たずにスピーチに臨む。
中学まで上辺だけの付き合いしかできず、それをリセットするために知っている人がいないこの高校を選んだが、苦手なものは苦手なまま。でも仲間のおかげで充実した学校生活を送ることができた、と永久たちやレイナのことを考えながら、自分の言葉でスピーチをしたのだった。
スピーチを終えた美月の表情は、最初のころの不安げな様子とは違って清々しいものだった。

夏になり、またインターハイ予選の時期となった。
昨年は鳳城に敗退した永久たちだったが、リベンジ戦はどうなるか、美月たちの緊張も高まる。
そんな試合前の練習中、永久は亜哉の姿を見つけた。チームメイトを応援するため、アメリカから一時的に帰国していたのだ。
亜哉は、この試合に負けたらもう一度美月にアタックさせてほしいと大胆なお願いをする。
しかしその後、「頑張れよ」と永久に声援を送り、笑顔で拳をぶつけ合うライバル2人であった。

時は流れて、美月は卒業式を迎えていた。
幸せな気持ちと、充実した高校生活が終わってしまう寂しさに切なくなる美月だったが、その隣には永久の姿があった。

『春待つ僕ら』の登場人物・キャラクター

主人公

春野美月(はるのみつき)/演:土屋太鳳

CV:黒沢ともよ(ドラマCD)
清凌高校1年4組。高校に入学してすぐ、「words cafe」という喫茶店でアルバイトを始めた。
地味で目立たないが、優しく真面目な女の子。人付き合いが苦手で、中学までは真の友達と呼べるものがなく、ひとりぼっちだった。高校では内気な自分を変えたいと強く思い、バスケ部のイケメン四天王はじめ、レイナや須藤マキと友達になっていく。
四天王たちとの最初の出会いはバイト先の「words cafe」。多田竜二から告白されそうになるが、店長の娘のナナセと人違いしていたことがわかる。間違っておきながら美月に対して失礼な態度をとる四天王たちだったが、そのおかげで彼らとは緊張せず、ありのままの自分らしく話せるようになる。
そうして関わっていくうちに永久に恋愛感情を持つようになるが、小学校時代の友人である神山亜哉からも熱烈なアプローチを受けて揺れ動く。小学生のころ、仲間外れにあっていた美月に優しく寄り添ってくれたのが亜哉だった。美月は、亜哉のその見た目からずっと女だと思っていた。どんなに寂しくても「あやちゃん」を心の支えにしてきた美月にとって、実は男であったという事実はかなりの衝撃となる。
何事にも一生懸命な美月だが、文化祭の実行委員を引き受けた際は、つい無理をして倒れてしまった。そんな美月の姿を見て、クラスの皆も信頼を寄せていく。
誕生日は4月3日。身長156cm。血液型O型。三姉妹の長女。妹の名前はカナ(中1)とリカ(小4)。

美月の幼馴染

toriiyouzou6
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@toriiyouzou6

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