伝染るんです。(漫画・アニメ・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『伝染るんです。』(うつるんです)は、吉田戦車が1989年から1994年まで小学館の『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載していた漫画、およびそれを原作としたアニメ作品、実写による動画作品である。従来の起承転結の常識を覆した4コマ漫画で、現実の枠を超えた奇妙な設定や状況、不可解なキャラクターたちによるシュールでナンセンスなギャグを特徴とする。その独特のギャグとキャラクターが受け、多くのフォロワーを生んだ。「不条理ギャグ」と呼ばれるジャンルを確立したパイオニア的作品とされる。

『伝染るんです。』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

こけし「もっとお母さんみたいに」

こけしは頭にこけしを乗せた半裸の少年。常に意味不明な言葉をつぶやき、人々を怯えさせる。やがてなにかを要求するときに「もっとお母さんみたいに」と注文をつけるようになり、周囲の人々は困惑しつつもその要求に答えるようになる。この不可解な言動を行う主要キャラクターとそれに振り回され困惑する人々という構図は本作において多く見られるものであり、作品の持つ狂気を感じさせる。

「さて久しぶりに」の男性「さて久しぶりに取りかえしのつかない事をするかな」

周囲から「先生」「社長」と呼ばれている初老の男性。「さて久しぶりに〜」と言いながら不可解な行動を行う。「さて久しぶりに取りかえしのつかない事をするかな」と言いながらビデオデッキの内部にわざと納豆をこぼしたり、「さて久しぶりに人間国宝でも見るかな」と言いながら人間国宝の男性を見つめ続けたりとその行動は常に不可解だが、不条理ギャグと呼ばれる本作の序盤における代表的なセリフである。

かっぱ「かわうそ君…ひ、ひどいや!」

かわうそとかっぱはよく2人で行動しているが、優しくて気弱なかっぱはかわうそに振り回されたり、暴力を振るわれたりと理不尽な扱いを受けている。そのたびに泣きながら「かわうそ君…ひ、ひどいや!」と訴えるかっぱだが、仲違いすることはない。作品の序盤から登場し、もっとも登場頻度の多いキャラクター2人の関係性がよくわかる場面で放たれたセリフである。作品を通じてかわうその暴走は止まることなく、周囲のキャラクターたち(特にかっぱ)は翻弄され続ける。

生徒たち「山崎先生はなんなんですか?」

山崎先生は中学校の英語教師だが、異常に短い足と円筒状で異様にツヤツヤした胴、顔はイルカのように口が突き出ており、異様な風貌をしている。教育熱心で理想的な教師として生徒たちからも慕われているが、一方でその謎の姿と言動に、周囲の人々がと困惑することも多い。初登場時に生徒たちから投げかけられた「山崎先生はなんなんですか?」という問いかけは、かわうそと並ぶ人気キャラクターである山崎先生の特異なキャラクターを強烈に印象づける。そして彼がその問いかけにまともに答えることはない。

かわうそ「下の人などいない!」

かわうそは「下の人」に肩車され、自身の背を高く見せかけるようになる。「下の人」の活躍で周囲から喝采を浴びたり、かっぱやかえるからは「下の人」を気遣われたりするが、かわうそはそのたびに「下の人などいないっ!」と必死になって否定する。これは作中でも人気のやりとりで「下の下の人」や「上の人」「下の犬」といったバリエーションを生んだ。作中もっとも有名なセリフとなり、インターネットスラングの「中の人」の元になったことでも知られる。

ロベール「平助さんのいくじなし!」

純朴な農家の青年・平助は、しゃべるかかしであるロベールを購入したことを周囲に言い出せない。そんな平助をロベールは「平助さんのいくじなし!」と罵る。ロベールの言動は基本的に毒舌・皮肉が多く、その後も平助を罵り続ける。平助が村の人からいくじなしではなく勇気のある男だと言われていることを知ったときも「あんなことを言わせておいていいの?平助さんのいくじなし!」と矛盾した言葉を吐く。

リアルな事件を題材にした場面

常識では考えられないような奇妙なギャグが続く本作において、ほぼ唯一といえるリアルな事件を題材にした場面。連載当時、世間を賑わせていた「リクルート事件」について「リクルート疑惑を風刺しちゃうぞ」というキャプションの後、国会議事堂と思われる建物をバックにベンチに座った国会議員らしき男性が2人登場する。「…お金好きか?」「うん…」の後、「きみは?」「好き」という会話が続くシンプルな内容だが、奇妙なだけでない作者の視点のユニークさが垣間見える。

『伝染るんです。』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

インターネットスラング「中の人」の元ネタ

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