ロードス島戦記(Record of Lodoss War)のネタバレ解説・考察まとめ

『ロードス島戦記』(ロードスとうせんき)とは、原案:安田均、著:水野良によるライトノベル。テーブルトークRPG『Dungeons & Dragons』のリプレイを小説に仕立て直したもので、漫画、ゲーム、アニメとメディアミックスを果たす。美麗なイラストと完成度の高い世界観で好評を博し、後発の「ファンタジー作品」に絶大な影響を与えた。
戦乱続く「呪われた島」ロードス島。父の名誉を守るために旅立った少年パーンは、幾多の戦いを経験して成長し、「戦乱を終わらせる」ことを目的に剣を振るうようになっていく。

『ロードス島戦記』の概要

『ロードス島戦記』(ロードスとうせんき)とは、原案:安田均、著:水野良によるライトノベル。キャラクターになり切り、特定のルールに基づいて冒険を楽しむテーブルトークRPGの『Dungeons & Dragons』のリプレイ(実際のプレイの内容を読み物に仕立てたもの)を、小説化したものである。英語表記は「Record of Lodoss War」。
出渕裕の美麗なイラストと『Dungeons & Dragons』のものをさらにブラッシュアップした完成度の高い世界観で好評を博し、ゲーム、漫画、アニメ、ラジオと様々なメディアミックスを果たした。

本作が日本のサブカルチャー文化に与えた影響は非常に大きく、「日本における西洋ファンタジー作品の事実上の元祖」ともされている。日本の漫画やアニメにおける「魔法と精霊」、「戦士や魔法使いなどの職業」、「亜人種としてのエルフやドワーフ」、「宝を守る竜」などの基本的なイメージは、この作品のものが元となっている。
あくまで架空世界の物語であり、エーゲ海に実在するロードス島とは無関係である。この名前の一致は意図したものではなく、全くの偶然であることを制作者サイドが明かしている。

アレクラスト大陸の南にあるロードス島は、長く続く戦乱により荒れ果てており、「呪われた島」とも呼ばれていた。その中で幾多の英雄が出現し、伝説的な活躍をしては無残な最期を遂げていった。
剣士としての栄達を夢見て旅立ったロードス島出身の少年パーンは、いくつもの出会いと悲劇と戦いを経験して成長し、やがて「戦乱を終わらせる」ために剣を振るうようになっていく。

『ロードス島戦記』のあらすじ・ストーリー

呪われた島の伝説

主人公の剣士パーン(左)と、彼と共に戦うエルフのディードリット(右)。

アレクラスト大陸の南にあるロードス島は、小さな大陸にも匹敵するほどの広さを持ち、長年に渡る戦乱によって荒廃していた。その裏には、500年前に滅んだ魔法王国の魔法使いカーラの暗躍があった。
「どこかの勢力が極端に大きな力を持つと大きな破局が訪れる」との思想を持つカーラは、自らの魂を仮面状のマジックアイテムに封じ、ロードス島の様々な勢力を渡り歩きながらどこかが極端に力を持たないよう画策。カーラの行動はロードス島の諸勢力に勢力の均衡をもたらしたが、決定的な勝利者を生まないまま戦乱が続く要因ともなった。

ある時、魔神と呼ばれる異世界の魔物がロードス島に大量に出現。この時ばかりは「人類の危機」としてロードス島の各国は連携して対抗し、カーラもこれに協力。大地母神マーファの司祭ニース、武芸百般の騎士ファーン、最強の傭兵ベルド、大魔術師ウォート、屈強無比なドワーフの王フレーベ、ここにカーラ(の魂が入ったマジックアイテムを装着し、彼女に肉体を乗っ取られた魔法剣士)も加わった6人によって魔神たちは滅ぼされ、ロードス島の人類は危機を脱する。
しかし、その後に待っていたのは、人間の国家同士が再び繰り広げる戦乱だった。ファーンは光の国ヴァリス、ベルドは闇の帝国マーモの王となり、それぞれの正義を掲げて戦争を主導していく。戦いに巻き込まれることを嫌ったウォートとフレーベが隠遁し、カーラの策謀によって戦乱が果てしなく長引いていく。やがて「今使っている肉体もそろそろ寿命だ」と悟ったカーラは、次なる憑依先としてニースの娘であるレイリアを選ぶ。首尾よくレイリアの肉体を奪ったカーラは、いずこかへと姿を消していく。

英雄戦争

マーモはロードス島南にある島で、ゴブリンやダークエルフといった「闇の種族」とされる者たちが他の地域での迫害を恐れて集まっていた。ベルドは彼らに新たな居場所を与えるため、またライバルでもあったファーンとの決着のため、大規模な侵略戦争を開始する。後に「英雄戦争」と呼ばれる大戦の始まりである。
アラニア王国出身の少年パーンは、この話を耳にして居ても立ってもいられなくなり、自らも参戦するべく幼馴染の神官エトと共に故郷を発つ。エルフの少女ディードリット、“星”を探し続ける魔法使いスレイン、レイリアの救出を悲願とするドワーフの戦士ギム、野心家の盗賊ウッド・チャックといった仲間を得たパーンは、彼らと共にファーン王の下で戦い始める。

ファーンは「ヴァリス一国だけではマーモと戦うのは危険だ」と考えており、アラニア王国や砂漠の国フレイムとも同盟を結んでいた。しかし魔物を味方につけたマーモの突破力はすさまじいものがあり、両勢力は互角の戦いを繰り広げる。やがてベルドとファーンは戦場で激突し、ファーンが倒れるも、彼の次にベルドに立ち向かったフレイム王にして剣匠たるカシューによってベルドも討ち取られる。
「一連の戦いの裏で何者かが糸を引いている」ことに気づいたパーンは、仲間たちと共に黒幕を追い、それがレイリアの体を奪ったカーラであることを突き止める。ギムの犠牲によってレイリアは自我を取り戻すも、カーラはウッド・チャックの肉体を奪って逃走。エトとスレインが戦争からの復興のために冒険を中断する一方、パーンはディードリットと共にカーラを追い続けることを誓うのだった。

魔竜シューティングスターの討伐

英雄戦争がロードス島に残した傷跡は深く、各国は復興のために動き出す。カシューは難民たちの入植地にするために未開の土地を制圧せんとするが、そこは魔竜シューティングスターの狩場であり、送り込んだ軍勢は返り討ちにされる。「空を飛んでいる竜には勝てない」と結論したカシューは、自身を含む少数精鋭でシューティングスターがねぐらの火山に戻ったところを討つ計画を立て、パーンとディードリットもこれに協力する。
この頃、マーモは「誰がベルドの後継者となるか」で揉めており、その有力候補の1人が暗黒騎士のアシュラムだった。アシュラムは「ベルドは不当に住処を奪われた闇の種族たちに本来の土地を返そうとしただけであり、英雄戦争の咎はむしろ他の国々にある」、「ベルドは流れ矢によって生じた隙を突かれただけで、それが無ければ負けなかった。カシューは決闘を穢した卑劣な男だ」と公言しており、かつてマーモと戦った勢力の者たちの中にも「彼の言うことにも一理ある」という意見があった。「シューティングスターがねぐらに隠し持つマジックアイテム支配の王錫(しはいのおうしゃく)を奪い、どんな相手でも服従させるその力でベルドの遺志を継ぐ」との目的の下、アシュラムもまた仲間と共にシューティングスターの下へと向かう。

シューティングスターのねぐらを目指す中、パーンたちはアシュラム一行と激突。互いに消耗した末に、シューティングスターを倒すまで一時休戦することとなる。彼らは死力を尽くしてシューティングスターを討ち取り、「敵対する間柄とはいえ、技量も精神力もすさまじい傑物だ」と相手のことを内心で認め合う。それでもカシューはフレイムの民のため、アシュラムは闇の種族のため引き下がるわけにもいかず、恐るべき力を持つ支配の王錫の処遇を巡ってカシューとアシュラムは決闘を始める。
両者はほとんど互角に渡り合うが、「自分の力はカシューにわずかに及ばない、このまま戦えば負ける」と悟ったアシュラムは、自分が守らんとする闇の種族たちのため、自分を信じて命を懸けてくれた仲間たちに報いるため、ここで負けるわけにはいかないとの思いに突き動かされ、決闘の約定に背いて支配の王錫を奪取する。これに憤ったパーンが猛然と斬りかかると、アシュラムは咄嗟に支配の王錫でその刃を打ち払い、結果として目的だった支配の王錫を壊してしまう。「ベルドの決闘を穢したカシューに憤っていた自分が、そのカシューと同じように決闘を穢してしまった」ことに絶望しつつ、アシュラムは火口に身を投じる。

マーモ討伐の機運

アシュラムは溶岩に落ちる直前に転移の魔法で救出されるも、仲間の期待に応えられなかった己への失望と決闘を穢した後悔とでかつての覇気を失う。しかしヴァリスやアラニア、フレイムといった国々が徐々に国力を回復し、マーモへの反転攻勢の準備を整えていることを知ると、「自分の名誉などどうでもいい、不当に虐げられてきた闇の種族のために戦わなければならない」と再び立ち上がる。
一方、パーンはディードリットと共に諸国を回り、様々な問題を解決すると共にかつての仲間たちと再会する。エトは英雄戦争での活躍が縁でヴァリスの王女と結婚し、今はその若き王として活躍。スレインはレイリアと結婚し、一女を儲けていた。

パーンにとってアシュラムとの出会いは大きな衝撃であり、「マーモにもあれほど強く高潔な人間がいる」、「闇の種族も生きている、彼らを悪と断じて倒すことは本当に正しいのか」と考えるようになる。同時に「俺にそのことを気づかせてくれたアシュラムでさえ、自分に付き従う民を守りたい一心で己の誓いを破ってしまった」、「彼らのような真の騎士たらんとする者たちが道を誤ろうとした時、止められるだけの力が欲しい」とも思い、ひたすらに腕を磨いていく。
対マーモの機運が高まっていくことは、「勢力の均衡」こそを至上とするカーラにとっては受け入れられない事態だった。ウッド・チャックの肉体を奪ったまま、カーラは力の均衡を取るためにマーモに加担。アシュラムの失脚によって大きな権力を握ったマーモの宮廷魔術師バグナードに協力していく。

新たなる英雄たち

バグナードは、「邪神を降臨させ、闇の種族以外の者たちを根絶やしにする」という恐るべき計画を秘密裏に進めていた。これを突き止めたマーモ以外の諸国は、邪神の降臨を防ぐためにマーモ本国の討伐に取り掛かる。英雄戦争からは、すでに十数年の年月が経っていた。
邪神降臨のための依り代としてバグナードが目を付けたのは、スレインの娘で祖母と同じ名を持つ幼い少女ニースだった。フレイムに属する部族の族長の子であるスパークは、マーモとの戦いの中で仲間たちと共にニースの護衛を委ねられる。しかしニースはもともと邪悪な魔女の魂を一部受け継いで生まれた少女で、「バグナードはいつでも自分の位置を捕捉できる、いつまでも逃げ回ることはできない」との彼女の判断もあり、スパークたちはバグナードの野望を阻止するために危険を承知でマーモに乗り込んでいく。

同じ頃、ヴァリスやフレイムの連合軍がマーモに接近していた。混乱の中、一瞬の隙を突かれてスパークはニースをマーモの手の者に拉致されてしまう。彼女を奪還するために連合軍が侵攻する直前のマーモに乗り込んだスパークたちは、「戦う意志の無い闇の種族は守るべきだ」との思いで行動していたパーンやディードリットと合流。彼らと共にバグナードの下へと急ぐ。
その途中、一行はアシュラムと遭遇。彼の中から「ベルドの仇討ち」への執念が消え、「闇の種族を救う」高潔な精神だけが残っていることを見て取ったパーンは「戦う必要はない」と判断してスパークたちを先に行かせるが、純粋に今の自分の剣が彼を止めうるレベルに至ったのかどうかだけを知るためにアシュラムに勝負を挑む。アシュラムもこれに応えて2人は剣を交え、力の差を理解したパーンは敗北を認める。戦う意志が無く、またこの戦争の後のロードス島に自分たちの居場所は無いと考える闇の種族の民たちを連れてアシュラムがマーモを去っていく様を、パーンとディードリットは何も言わずに見送る。

呪われた島の終焉

バグナードの下に辿り着いたスパークは彼を倒すも、儀式はすでに完了し、ニースは邪神に肉体を乗っ取られようとしていた。スパークや仲間たち、そして両親の必死の呼びかけによってニースはなんとか正気を取り戻し、ロードス島の危機は回避される。パーンの根回しによりマーモの占領はこれ以上ないほどスムーズに進み、ここに英雄戦争に端を発する戦乱はついに終焉を迎える。
計画が破綻したカーラは撤収しようとするが、その前にパーンたちに居場所を突き止められ、ウッド・チャックは解放される。カーラの魂が収められたマジックアイテムもレイリアが封じ、ロードス島で長きに渡って暗躍してきた魔女はその命運を絶たれる。パーンと共に行動する中で、「闇の種族もまたロードス島に生きる隣人である」ことに気づいたスパークは、フレイムには戻らずマーモの復興のために人生を捧げる。そんな彼をニースや仲間たちが支え、国と民を導いていくのだった。

『ロードス島戦記』の登場人物・キャラクター

主要人物

パーン

CV:草尾毅(OVA版)/瀬戸真由美(OVA版少年期)/神奈延年(TVアニメ版)/竹村拓(ドラマCD版)/三木眞一郎(『ようこそロードス島へ!』)/寺島拓篤(『ロードス島戦記オンライン』)
演:菅谷哲也

アラニア王国で育った少年。物語開始時はマーモの暴虐に義憤を燃やす純粋な熱血漢だったが、多くの戦いの中で「マーモの民は敵ではない、戦争によって殺し合うことになっただけの隣人である」と気づき、戦乱そのものを終わらせるために奔走していく。
どの国にもどの組織にも属さず、ただロードス島に生きる全ての者の平和と幸福のために力を尽くす様は、やがて「自由騎士」の異名と共に島中に広がっていった。

ディードリット

CV:鶴ひろみ(初期カセットブック)/冬馬由美(OVA、ドラマCD等)/新山志保→野田順子(TVアニメ版)/宮村優子(『ようこそロードス島へ!』)/遠藤綾(『ロードス島戦記オンライン』)
演:多田愛佳

エルフの少女。好奇心から森を飛び出し、英雄戦争に参加しようとしていたパーンの仲間となる。他の仲間たちがそれぞれに新たな道を歩み始める中、あくまでパーンに付き従い、彼と共に多くの冒険を繰り広げた。
「長く尖った耳」、「精霊の使い手」、「胸が小さい」といった日本版エルフの基本的な設定の基になったキャラクターとして非常に有名。パーンのことは最初は「放っておくとすぐに死んでしまいそうな、手間はかかるけどおもしろい人間」と見ていたが、次第に英雄としての気質を表していく彼に強く惹かれていった。

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