ぼくらの(漫画・アニメ・ラノベ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ぼくらの』とは『月刊IKKI』で2004年1月号から2009年8月号まで連載されていたSF・ロボット漫画である。作者は鬼頭莫宏。少年少女たちが巨大ロボット「ジアース」を操縦し地球を守るという、王道のSFロボット漫画でありながら、登場人物それぞれの生と死、人生観、人間関係が複雑に絡み合った人間ドラマでもある。2007年にアニメ化され、2007年~2008年にはライトノベル小説『ぼくらの〜alternative〜』が発売された。

古茂田孝美編

海軍の一佐を父に持つ少女古茂田は、ピアノの発表会を近く控えていた。発表会の前にジアースでの戦闘が始まり、古茂田は人型の敵性ロボット「ハムバグ」と自分たちの地球を舞台とし相対する。格闘戦を一方的に有利に進めるジアースだったが、それは敵の罠であった。戦闘場所となった海域に撒かれた触手にジアースは取りつかれ、操縦室内にまで侵入を許し古茂田は殺害されかける。しかしすんでのところで攻撃が停止し、同時に敵側のコエムシがジアースの操縦室内に転送されてきた。敵のコエムシの説明では、敵側のパイロットが逃亡してしまったのだという。国防軍とコエムシは逃げた敵の操縦者に古茂田と同じ年ごろの娘がいたこと、その娘が戦闘の余波で死んだ敵の地球側の被災者に殺されていたことを掴み、古茂田やピアノ発表会の情報を故意に流出させ、ピアノの演奏会場に敵をおびき出すことに成功する。古茂田は父に軍人の気持ちを理解できたこと、その父のおかげで操縦者の重圧に耐えられたことを感謝し演奏に挑む。最初は緊張から上手く演奏できなかった古茂田だが、自分を形作った世界の美しさを思い起こし、それを曲に乗せ演奏しきるのだった。会場でスタンバイしていた古茂田の父は、演奏を聞き終わり満足した敵のパイロットを、その死が自分の娘の死に繋がるとわかった上で自ら射殺する。古茂田は舞台で父に笑顔を見せてからこの世を旅立った。

徃住愛子編

ニュースキャスターを父に持ちアイドルに憧れる少女徃住愛子(とこすみ あいこ)は、自分たちの情報がテレビのニュースで世の中に流れ始めていることを知る。徃住はジアースに関連しているだろうことを嗅ぎつけた父に、自分が戦闘後死ぬこと以外の情報を話す。防衛軍やジアースの関係者は情報の流出を制御しようとするが、自らをジアースのパイロットだと名乗る偽物の少年まで出現、その後彼が戦闘被災者に射殺されたことで、ジアースの操縦者候補の少年少女たちは軍の完全な保護下に置かれることとなる。またこれ以上のデマ等の拡散を防ぐため、次戦の徃住の戦闘時には彼女の父を含むマスコミ関係者が操縦室内で実況放送をすることが決まる。これらの部外者も乗せたジアースは、ホームの軍の演習場で飛行タイプの敵性ロボット「アイドル」と戦うこととなる。ジアースは嘲るように俊敏に動く敵に翻弄され、溶解液を含む杭を次々と打ち込まれ劣勢に立たされる。溶解液は操縦室まで浸透し徃住は足の一部を失う重傷を負う。しかし徃住は戦闘を続行、彼女の許可もあり戦いの映像はそのまま中継される。徃住はアイドルのマイクパフォーマンスから着想を得たフェイントで敵を転倒させ、敵の操縦席を剥ぎ取り一気に勝負を決める。徃住はカメラを通じて世界中に自分たちの伝えられる限りの情報と、これまで多くの被害を出したことを謝罪してから、敵に止めを刺したのだった。

吉川寛治編

宇白と同じ中学に通い、彼の友人でもある少年吉川寛治(よしかわ かんじ)は、公園で出会った宇白と会話する。その中で母を妹の誕生後失ってしまった宇白が、表面的にはいじめている妹可奈に精神的な部分で依存していることを指摘し、彼女のためにも真剣に戦うよう告げる。これに対し宇白は自身がゲーム開始時に契約をしていなかったことを告白する。友人が助かると知りけじめがついた吉川は、そこからさらに可奈についての秘密と、町に気を付けるよう促し、そのタイミングでジアースでの戦闘に呼び出される。今回の敵は小片による射撃を得意とする砲撃型のロボット「ジャベリン」で、自分の両親が建設に携わった高層タワーのある町での戦闘となった。敵は位置確認のマーキングのための射撃後ハワイまで飛翔し、ジアースの背後の町ごと超遠距離から一方的に砲撃し続ける。超遠隔地の敵を直接探知、索敵できないジアースは町を守りつつ防戦一方となる。日本の防衛軍による核攻撃も効かない窮地に、宇白はジアースの魂を感知する能力を応用し、見知った人間をマーカーとして剝き出しの敵操縦席の周囲に配置し、地球の地殻ごとそれを撃ち抜く作戦を提案する。この日まで少年たちを支援してきた軍の一尉と他の軍関係者がこの任務に就き作戦は実行され、吉川は防衛軍の人員ごと地球を貫通するビームで敵を撃破した。戦闘後吉川はコエムシに両親の創った高層ビルに転送してもらい、そこで感慨に浸りながら人生を終える。

宇白可奈編

物語冒頭で宇白可奈は兄に意地悪され契約していなかったのだが、ココペリ戦後コエムシに頼み契約していたことを知り、宇白は愕然とする。またここで町とコエムシ二人だけの会話のシーンがあり、この二人がジアースに乗って戦い抜いた異世界の地球の生き残りであり、実の兄妹であることが明かされる。また可奈は宇白が実の兄ではないことを知っており、自分の死後の兄を想って失踪していた宇白の実母を探していた。結果として可奈は徃住の父らの協力もあり、自分たちとずっとともに戦っていた田中一尉がその人であることを突き止める。田中一尉はこの事実を隠していたのだが、可奈は自分の過去から逃げず、兄に実の母であることを事実を告げるよう頼む。その後可奈は家族との最後の日常を過ごそうとするも、父との買い物途中でジアースでの戦闘に呼び出される。戦闘は並行世界の開けた演習場のような平地であり、敵性ロボットは鶏卵を二足歩行させたようなロボット「キャンサーⅡ」であった。敵地の軍用機の煙幕により視界を奪われ、ジアースは敵を探知できない状況で攻撃され続ける。前回の戦闘の反省から操縦席に軽戦闘機を持ちこんでいた田中一尉は、これに乗り敵の戦闘機を次々と撃ち落とし、煙幕を晴らすことに成功する。視界を回復したジアースは格闘戦で敵を圧倒するが、田中一尉がキャンサーⅡに人質に取られる事態となってしまう。田中一尉は敵性ロボットへ数度射撃した後、自らの頭を撃ち自害する。この一部始終を目撃していた可奈は激昂し、キャンサーⅡを怒りにまかせ破壊しつくしたのだった。兄である宇白は戦闘後妹の遺体や母の乗っていた戦闘機の残骸を目にし、また父親違いの妹と邂逅を果たす。家族、友人たちの死を通して他者を思いやれるようになった宇白は、自身の意志でジアースと契約する。

町洋子編

町は宇白に続きジアースと契約してしまう。ゲーム開始時町は契約できなかったのだが、ココペリ戦で前回の地球分の戦闘が終わったことから、契約できるようになっていたのである。町は宇白に、残された時間で死んでいった仲間の家族へ会いに行こうと提案し、二人で旅に出る。旅の最後ではジアースの偽のパイロットであった子供の両親にまで会い、自分たちのけじめをつける。その後町は宇白と共に寄った公園で彼に告白するが、その直後何者かによって差し向けられた暗殺者に頭部を撃たれてしまう。暗殺者はコエムシに始末され町はすぐに病院に運ばれるも、重体となり意識を取り戻すことさえ絶望的な状況になる。戦闘開始と同時に敗北がほぼ決定してしまうこの事態に、コエムシは兄である自身が直接町の命を断ち、宇白に次の戦いを任せることを提案する。町を失った後宇白とコエムシは、同じ喪失感を抱えながら浜辺を歩き雑談する。ここでコエムシは異空間にとばし保護していたこの世界の町を召喚し、宇白に出会わせるのだった。

宇白順編

この地球で最後の戦いを任せられた宇白は死の恐怖に苛まれる。だがコエムシの「この世界のてめーの妹や親父を大事にしろ」、父の「おまえは悪い息子なんかじゃないよ」といった言葉に励まされ、友の吉川が着ていたジャケットを羽織り戦いに挑む。戦闘場所となったのは並行世界の地球で、人型タイプの敵性ロボットとの戦闘となる。暴力を振るうことへの若干の躊躇はあったものの、1度殴り合い始めるや戦闘を有利に進め、敵を半壊し打ち倒す。しかしここで操縦室内に敵のコエムシが転送され、その発言に不安を感じた宇白は、剥ぎ取った敵の操縦席を開封してしまう。これは敵側の罠であり、敵の操縦者は並行世界の地球のどこかに転送され逃亡してしまうのだった。宇白は敵パイロットを個別に識別、索敵する手段がないことから、目標のパイロットを殺害するまでビームを全人類に向け射撃することを選択し、万単位で無差別に人間を殺害し始める。虐殺中大量の人間を殺す罪の意識から宇白は嘔吐してしまうが、半井の作ったユニフォームをコエムシに転送をしてもらう。それに着替えた宇白は仲間のことを思い出しながら攻撃を続け、これまでの人生を俯瞰しながら彼らの下に旅立ったのであった。

『ぼくらの』の登場人物・キャラクター

主要登場人物

ココペリ

ジアースのパイロットへ少年少女を勧誘し、また敵性ロボットとの戦闘を通しその操縦法を教えた謎の青年。戦闘後子供たちの前から消失する。正体はこの地球以前に他の並行世界の地球でジアースに乗り戦っていた集団の生き残りで、本作中のマチと同郷の人物。本名は画楽(がらく)といい、ココペリは引き継ぎ役のパイロットが名乗る役名のようなものである。

和久隆(わく たかし)

中学1年、身長155㎝のB型で、活発なサッカー少年。通称ワク。
サッカーが得意な人気者。強豪のクラブに所属し、県の選抜大会にも出場している。しかし物語開始時には自分の人生に悩みサッカークラブから身を引いていた。戦闘終了後必ず死ぬことを知らなかったこともあり、ジアースに乗り隠れたヒーローとなることに興奮していた。戦闘時にはサッカーで培った技術で敵を撃破する。

小高勝(こだか まさる)

中学1年生、身長145㎝のO型で、自分は優れた存在であるとの傲慢な思考をもった少年。通称コダマ。
土建屋として成功した父を持ち、独善的な性格でありながら高い能力を持つ彼を尊敬している。兄二人は父を嫌っているが小高はこの父の影響で自身も優れた存在である、ありたい考え、能力の低い存在や敗北者と認識した存在の命を軽んじている。またモデルガンで猫を撃つ、和久を海面に突き落とした宇白の行為を肯定的に捕らえるなど嗜虐的側面がある。

矢村大一(やむら だいいち)

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