らせんの宿(ゲーム)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『らせんの宿』とは2014年7月に公開された、赤コワ制作の2D脱出ホラーゲーム。幼いころに姉をなくした主人公。そんな主人公は友人とともにある民宿へと迷い込む。その民宿はある一週間をループしており、化け物によって遭難者たちが惨たらしく殺されるという恐ろしい出来事が起こっていた。鬼ごっこゲームのようにして始まるが、タイムリープというSF要素や無力な幼い子どもたちを襲う悲劇のドラマ性などが人気となっている。

『らせんの宿』の概要

『らせんの宿』とは2014年7月20日に公開された2D脱出ホラーゲーム。製作は赤コウ。
バイオレンスな要素を含むため、推奨年齢は15歳以上となっている。
脅かし、恐怖演出に加えて、暴力・流血表現も含まれており、プレイ時間は4~6時間程度かかる。

複雑なストーリによって描かれたループもののフリーホラーであり、物語の真相が明かされていく謎解き要素もあり、高い人気を誇っている。
特に繰り返される悲惨なループによっておこる被害者たちの精神的な摩耗。悲壮な決意や裏切り。その中で輝く善性など人間の心理的な描写が評価されている。
ゲーム実況の題材としても人気があり、チャンネル登録者数450万人を超えるYouTuber・キヨ。によって投稿された動画は390万回以上再生されている。

『らせんの宿』のあらすじ・ストーリー

小学生のころ、溺れた自分を助けようとした姉をなくした主人公。
そんな主人公は友人のアオイ・ユウマ・カケル・サクラの四人とアオイの親戚のペンションへ行こうとしていた。しかし、後先を考えないアオイの言動によって正規ルートを外れ、一行は山の中で迷ってしまった。何とか道を探し出した主人公。アオイは大喜びでペンションへの近道だとその道を歩き出すが、その先にあったのは目的のペンションではなく、古びた民宿だった。
主人公たちが迷い込んだ民宿はすでに廃墟となっていた。この民宿はある一週間をループしており、赤おばさんと呼ばれる化け物によって遭難者たちが惨たらしく殺される惨劇の現場となっていた。
民宿の中に閉じ込められ、訳も分からず民宿の中を逃げ回る主人公は、姉と同じ名前をした幽霊の少女ヒナタと出会う。彼女の助けを借りながら、民宿を進んでいく主人公。
惨たらしいループを脱出し、生き残るために主人公たちは民宿の謎へと挑むことになる。

1週目

高校生の主人公は、友人のアオイに誘われ彼女の親戚のペンションへと向かっていた。主人公と友人のユウマ、カケル、アオイ、そしてユウマの妹サクラ。五人は道に迷ってしまい、古びた民宿にたどり着く。

本館

民宿にたどり着いた主人公一行は、荒れた民宿を探索しているうちにその異様な様子に恐怖を覚え、脱出しようとする。しかしすでに旅館に取り込まれてしまっていたため脱出することはできず、パニックになり散り散りとなってしまう。
一人になった主人公は、自分の姉と同じ名前の幽霊の少女・ヒナタと出会うが、彼女は意味深な言葉を残し消えてしまう。
探索を続けるうちに、主人公は巨大な女性の姿をした化け物「赤おばさん」に遭遇。彼女から逃げながらも、仲間を探して民宿の中を探索することになる。
先に行ってしまった仲間を探し、主人公は雨の中外を目指して民宿から脱出するが、木陰で無残な死体となったアオイを発見する。体が押しつぶされ、手足が無残に曲がった彼女の死体を見て吐き気を覚える主人公だったが、どうすることもできずその場を立ち去る。
その後、雨の中を歩き謎の空間に迷い込む。そこで眼鏡をかけた女性、菅原リンに遭遇する。リンは初対面のはずの主人公のことを知っており、主人公のことを次々と言い当てる。困惑する主人公だったが、リンは煙に巻くような言動で多くを語らず立ち去ってしまう。

地下

リンと別れた後、道なりに進んだはずが民宿に戻ってきてしまった主人公。リンから「もしかしたら逃げられるかも」と渡されたカギを使い、地下へと侵入する。
地下でも凄惨な書置きや、赤おばさんによってぐちゃぐちゃに踏み鳴らされる死体を目の当たりにする主人公。
地下を抜けた先で、またも幽霊のヒナタと出会う。彼女は自身の弟や、母親への不信を語る。また「ユキアツおじさん」という以前民宿へ迷い込んだ男性の話をし、主人公は脱出が可能であることを確信する。
ヒナタからの警告を受け、赤おばさんが監視する中を無理に突破することをあきらめた主人公は一度地下へと引き返し、仲間を探すため本館へと戻った。そこでユウマを発見し、アオイの死に消沈するユウマから「サクラが絵の中に取り込まれた」ことを聞く。
赤おばさんはユウマや主人公をおびき寄せるため、サクラを人質にさらっていた。危険を承知で、サクラを救出するために二人は赤おばさんの待つ絵の中に飛む。

絵の中

絵の中に飛び込んだ二人は、すぐにうつろな目をしたサクラに遭遇する。サクラを追いかけ一人先走ってしまうユウマと、それを追う主人公。主人公は死んだはずのアオイや、赤おばさんから逃げる自分の幻覚を見せられる。
最深部でサクラを発見したユウマと主人公だったが、それは赤おばさんが彼女に化けていただけだった。危機に陥る一行だったが、本物のサクラはすぐ近くにいたため主人公がおとりを引き受けることで、ユウマがサクラを連れて逃げることに成功する。
一人追いかけられる主人公は何とか絵から脱出し、ヒナタに導かれ赤おばさんをまくことに成功する。
安堵する主人公に、ヒナタはリンからの伝言として「ボウクウゴウにいく」と伝え、去っていく。

防空壕

ユウマやサクラ、リンを追って防空壕へとたどり着いた主人公。しかし奥へと向かう道筋で、人の手によって殺害されたユウマの死体を見つける。
主人公は、自分たちよりも前に民宿へたどり着き、脱出に成功した「ユキアツおじさん」こと松葉ユキアツの手記を発見する。その手記から、主人公はこの空間が繰り返されていること。そしてそのループは必ずしもすべてが同じではなく、らせんのように少しずつずれながら繰り返されていることを知る。また、そのループの際記憶を引き継ぐには防空壕の奥にいる必要があることも明かされる。
防空壕の奥にたどり着くと、そこではカケルがサクラを人質に取っていた。道中にあったユウマの死体は彼によるものだった。彼によって、主人公たちはすでに何度もループを繰り返しており幾度となく死んでいることが明かされる。カケルは繰り返されるループに精神を病み、自暴自棄になっていたのだった。
主人公を殺すことに失敗したカケルは仲間たちを殺害することをあきらめ、記憶の継承が起こる範囲から出ていく。そして主人公にもしもの時は自分を殺してくれるよう頼み、自らの首を掻き切って自殺してしまう。
カケルの死に動揺する生存者たち。リンは主人公に友人をおとりにして自分だけが赤おばさんから逃れるという方法を教え、次のループでの実行を唆す。そしてサクラはすべてが元通りになることを望み、カケルを許すことができないと記憶の継承を拒む。
記憶の継承を拒み主人公に希望を託すサクラだったが、そんな彼女に背後から赤おばさんが忍び寄り、彼女の体を引き裂こうとする。助けを求めるサクラを見捨て、恐怖から逃げ出す主人公。防空壕の奥で友人たちの死に苦しみ、死んだ姉に罪悪感を吐露しながら、主人公は次のループを迎えることになる。

2週目:惨劇の再開

前回の記憶を引き継ぎ、民宿の玄関で意識を取り戻す主人公。仲間たちに危険を訴えるが聞き入れてもらえず、民宿へと足を踏み入れてしまう。前回記憶を引き継いでいたカケルにすら信じてもらえず、主人公は前回と大きく構造の異なる民宿を探索することになる。
民宿を探索する主人公の耳に、サクラの悲鳴が届く。慌てて駆け付けた先には仲間たちに襲い掛かる赤おばさんがいた。恐怖に震え、一人防空壕に逃げることすら思い浮かべる主人公。しかし、前回のサクラの死を思い出し彼女を助けようと赤おばさんに立ち向かう。
赤おばさんに立ち向かうが、勝てるはずもなく死を予感する主人公。そんな彼を救ったのは、記憶がないはずのカケルだった。化け物を見たことで主人公を信じたカケルは友人を守るために立ち向かい、主人公たちは無事に赤おばさんから逃げることができたのだった。
カケルの犠牲、赤おばさんの出現によって主人公のことを信じた仲間たち。おびえる仲間たちを安全な場所に残し、主人公は一人探索に出る。民宿の壁に書かれた、かつての生存者たちが残したメモを読みながら、1週目よりも頻繁に怪奇現象の起こる民宿の探索を進めることになる。

2週目:真相

仲間を犠牲にして赤おばさんから逃げるような記述を目にしながら、探索を進める主人公。彼は仲間たちと逃げ出すため地下室のカギを探すことになる。
謎の地下に迷い込んだ主人公は、不気味なたくさんの子どもたちを目にする。彼女たちは一様に大人を怖がり、虐待を受けていたようなふるまいをする。恐怖から攻撃性を見せた彼女たちは、自分たちより年長の主人公をバラバラにしようとする。子どもたちにとっては、高校生の主人公たちですらすでに大人だった。赤おばさんとは、大人たちから虐待を受け死亡した幼い子どもたちが変貌した姿だったのだ。つまり民宿で起こる怪奇現象は、無残な死を迎えた子どもたちによる大人への復讐だった。
ヒナタも虐待を受けていた子どもだったが、彼女は他の子どもたちよりも少し年上だったこと、そして弟がいたことからほかの子どものような加害性を持たず、時折迷い込んだ者たちの味方をしていた。
旅館がループしているのは生前の彼女の強い願いによるもので、赤おばさんはそれにつけこんで、迷い込んだ犠牲者たちを惨殺していたにすぎなかった。つまり、民宿に取り込まれたかつての犠牲者たちの選んだ仲間を切り捨て一人だけでも助かる方法は、正規の脱出方法でなかった。子どもたちは殺戮を続けるため、怪奇現象の核となるヒナタを逃がさないよう、死んだ彼女の弟を民宿に縛り付けていたのだった。
民宿に起こっている怪奇現象を終わらせる方法は一つ。民宿の奥、山小屋に閉じ込められた彼女の弟の遺体を助け出し、ヒナタのこの世界への未練を断ち切ることだった。

2週目クライマックス

真相を知った主人公は、かつてその道に挑んだ松葉ユキアツと同じく山小屋向かうことを決める。ヒナタの弟、タイヨウを助け出し民宿で起こっているループを止めるため。それが叶わなくとも山小屋へと挑む自分へ赤おばさんの目を引き付け、その間に仲間たちを脱出させるため。主人公は猛吹雪の中一人山小屋へと挑む。
ヒナタの弟タイヨウはすでに死亡しており、遺体は白骨化している。ヒナタはその事実を認めることができず、そのためこの世界はループし続けている。ループを終わらせるにはヒナタに向き合い、彼女に弟の死を理解させる必要があった。主人公は嘘を吐かず、ヒナタへかのほの弟が死んでいることを告げる。
一度は主人公に怒りを覚えたヒナタだったが、主人公に諭されたことで弟がすでに死んでしまい、もう自分の名前を呼んでくれない事実を受け入れる。赤おばさんとなった子どもたちの恨み言を受けながら、ヒナタの協力によって主人公はタイヨウの遺体を抱いて雪山を降り、地下を抜け、ついに民宿から全員で脱出することに成功する。
公には主人公たちの話は信じられず、民宿で遭遇した赤おばさんは化け物熊ということになってしまった。しかし主人公たちはカウンセリングを受けながらも日常に復帰することができ、ヒナタは弟の死を受け入れ成仏した。
日常に戻った主人公は、帰り道で聞き覚えのある名前をした幼い姉弟を見かける。ヒナタとターくん。弟こそタイヨウからタマキという名前に変わっていたが、ヒナタは弟と喧嘩しながらも母親に甘え、三人で帰っていくのだった。

『らせんの宿』のゲームシステム

基本的な流れ

主人公(右)を追いかける赤おばさん(左)

主人公は人を殺す化け物の徘徊する民宿に閉じ込められ、そこから脱出することを目的としている。
民宿の中は時空が歪んでおり通常の手段では脱出することができない。そのため幽霊であるヒナタや残された手記などから情報を取得し脱出する方法を探すことになる。
宿の中には「赤おばさん」と化け物がおり、生きている人間へと襲い掛かってくる。主人公は追いかけてくる赤おばさんに追い付かれないよう決められたポイントまで逃走することが基本となる。また、彼女の視界に入らないよう物陰に隠れながら進むような場面も存在する。

天木はじめ
天木はじめ
@amagihajime

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