タヌキツネのゴン(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『タヌキツネのゴン』は、集英社のWeb漫画アプリ『少年ジャンプ+』に掲載されている漫画作品。作者は日本の漫画家・メガサワラである。2022年8月11日から2024年1月11日の間連載していた。
人間が存在しない妖怪の世界が舞台。主人公のゴンはタヌキの父とキツネの母の間に生まれたタヌキツネの子供。タヌキとキツネがいがみ合う世界で生まれたゴンは、家族の深い愛情によって心優しく育っていく。本作はそんなゴンが家族や友達と織りなす、ほっこりな日常を見ることができる漫画作品である。

タヌキとキツネは昔の大合戦を堺に不和になっていた。その時に生まれた怨恨は合戦が終わった後時代にもずっと引き継がれている。タヌキとキツネの仲が悪いということは、妖怪の世界で知らないものがいないほど有名な話だった。だからタヌキの父とキツネの母を持つタヌキツネのゴンは、大変めずらしい存在だった。そんなことを知らずにゴンは妖怪学校に入学する。そしてクラスでの自己紹介で奇異の目に晒された。子供とは純粋で残酷な存在である。ゴンのことを珍しい、変だと、クラスメイトは容赦ない言葉を投げかけた。ゴンはそれにショックを受け、帰宅する。落ち込んだゴンの様子を見て、とっくりは学校でゴンに何があったかを悟る。ゴンはとっくりに自分は変なのかと尋ねる。とっくりはそんなことないと間髪入れずに答えた。そして仲が悪いタヌキとキツネの間に生まれたゴンを、「タヌキとキツネの『仲良し』の印だからな!!」と抱き上げた。ゴンはその言葉が嬉しくて「いいかも!!!」と笑顔を見せるのだった。

ゴン「なかよくしちゃいけないきまりは…『だれ』のためにあるの!?」

タヌキとキツネは仲が悪い。「キツネは信用するな」がタヌキの常識であり、「タヌキは信用するな」がキツネの常識である。本人達が何かをされたわけでもないのに、教育として憎しみ合うように育てられてきたのだ。それは非常事態でも障壁になる。町中で火事が起きた時、キツネの消防団員はタヌキの店を後回しにしようとしたし、タヌキは相手がキツネだからといって薬を渡そうとしなかった。そんな光景を見て、ゴンは「おかしいとおもう!!!」と叫ぶ。そして「キツネとタヌキがなかよくしちゃいけないの…おかしいとおもう!!」と続けた。自分達が何かをされたわけでもないのに”仲良くしちゃいけない”というのはおかしい。仲良くしなかったせいで店もなくなり、誰かが死のうとしている。それを見て、ゴンは「なかよくしちゃいけないきまりは…『だれ』のためにあるの!?」と大人に問いかけた。ゴンのまっすぐな言葉に心を動かされた大人は、ようやく互いを助けるために動き出す。大人はなかなか生き方を変えられないが、ちょっとしたきっかけで変わることもできる。幼いゴンの言葉はそのきっかけになったのだった。

タヌキとキツネの平和を願うツヅラオ

ゴンの母親・ツヅラオはキツネでありながら、キツネの常識「タヌキは信用するな」に疑問を持っていた。その考えのせいでキツネの仲間からも疎まれていた。しかしツヅラオの考えは揺るぐことない。タヌキを逃したことを仲間に咎められても、ツヅラオは凛とした態度を崩さなかった。誰かを傷つければその報復は誰が受けるのか。自分か、仲間か、はたまた未来の子供達か。自分よりも未来の世代にこの先もずっと怨恨が残るのが怖いと語る。この物語の根幹にあるテーマの革新をつく名場面である。

ゴン「じゃあ けんかしたら よくなったの!?」 「けんかしたら…なかなおりしなきゃだめなんだよ!!」

「灯籠流し」の日、キツネとタヌキはいがみ合いを始め、一触即発の事態に陥る。それを止めたのはゴンだった。タヌキとキツネの大人達の間に割って入り、ケンカではなく話し合いをしなくてはいけないと訴える。しかし大人というものは簡単に引き下がることができない。話し合いでどうにもならないこともあると大人達は言う。それに対してゴンが言った言葉が「じゃあ けんかしたら よくなったの!?」 「けんかしたら…なかなおりしなきゃだめなんだよ!!」だった。この言葉に大人達は何も言えなくなってしまう。漫画の中の世界だけでなく、現実の世界でも通じることであり、読者達の胸を打ったセリフである。

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