P2! - let's Play Pingpong! -(卓球漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『P2! - let's Play Pingpong! -』(ピーツー レッツ プレイ ピンポン)とは、『週刊少年ジャンプ』で2006年43号から2007年52号まで連載された、江尻立真による卓球を題材とする少年漫画。物語途中で打ち切りとなるも、『赤マルジャンプ』の2008Winter号に完結編が掲載された。
小柄な藍川ヒロムは、中学への入学を機にずっと憧れていたスポーツを始めようと考え、卓球部の戸を叩く。そこで彼は「破王」こと県下屈指の名選手たちと出会い、自身の才能を開花させていく。

『P2! - let's Play Pingpong! -』の概要

『P2! - let's Play Pingpong! -』(ピーツー レッツ プレイ ピンポン)とは、『週刊少年ジャンプ』で2006年43号から2007年52号まで連載された、江尻立真による卓球を題材とする少年漫画。単行本は全7巻。
作者の江尻は学生時代に卓球に打ち込んだことがあり、当時の経験やその時に見た強い選手の振る舞いを上手に漫画に落とし込んだ、丁寧かつリアリティのある物語が特徴。大きな見せ場を作りにくい作風が影響して人気は伸び悩み、物語途中で打ち切られる。その後『赤マルジャンプ』の2008年Winter号に完結編が掲載され、主人公たちのその後が描かれた。

藍川ヒロム(あいかわ ヒロム)は、ずっとスポーツに憧れていたが、その小柄な体格が災いして活躍できないばかりか周囲の足を引っ張る日々を続けていた。ならばと始めた絵画も「下手ではないが躍動感がまるでない」と言われる始末で、“自分のやりたいこと”ができないことに鬱屈する小学生時代を過ごす。
中学入学を機に一念発起したヒロムは、本格的にスポーツを始めようと様々なスポーツ部の戸を叩く。「小柄な選手でも活躍できる」と知って卓球部に入ることになったヒロムは、そこで「破王」こと県下屈指の名選手たちと出会い、自身の秘められた才能を開花させていく。

『P2! - let's Play Pingpong! -』のあらすじ・ストーリー

ヒロムと卓球の出会い

藍川ヒロム(あいかわ ヒロム)は、ずっとスポーツに憧れていたが、その小柄な体格が災いして活躍できないばかりか周囲の足を引っ張る日々を続けていた。ならばと始めた絵画も「下手ではないが躍動感がまるでない」と言われる始末で、“自分のやりたいこと”ができないことに鬱屈する小学生時代を過ごす。
久勢北中学校への入学を機に一念発起したヒロムは、本格的にスポーツを始めることを幼馴染の早乙女乙女(さおとめ おとめ)に宣言し、様々なスポーツ部の戸を叩く。「君は運動には向いていない」とあちこちから断られる中、「小柄な選手でも卓球なら活躍できる」と知ったヒロムは、卓球部への入部を決意する。

ヒロムは知らなかったが、久勢北中学校の卓球部には去年県下最強の王華学園中等部を打ち破った2年生の川末涼(かわずえ りょう)と遊部遊(あそべ ゆう)、3年で部長の岩熊鉄男(いわくま てつお)の3人が所属していた。涼はヒロムを見て「スポーツをやったことのない者が活躍できるほど甘い競技ではない」と苦言を呈するが、そのヒロムは涼の華麗なプレイに憧れ、彼のような選手になることを夢見ていく。
同じく新入生の眞白裕也(ましろ ゆうや)らと共に卓球部に入ったヒロムは、涼への憧れを力にして過酷な練習をこなしていく。そんな彼を見た岩熊は、「この新入生は拾い物かもしれない」とヒロムに自分の戦術を叩き込んでいく。

「破王」vs.「覇王」

ヒロムが一通り卓球の基礎を身に着けた頃、王華学園の卓球部との練習試合が行われることとなる。「覇王」として君臨してきた王華学園と、それを破った「破王」たる久勢北の対戦は、今年の大会の結果をも占う重要なものになると県内の卓球関係者から注目を集める。
試合のために部の仲間と共に王華学園を訪れたヒロムは、そこで以前町の卓球場で出会った晶(あきら)という少女と出会う。晶はヒロムが岩熊に仕込まれた特別な練習がその才能の開花を促すためのものであることに気付き、個人的な興味から自身も彼にアドバイスを送る。

裕也は実父でもある王華学園の監督である城島久也(じょうしま ひさや)に「この男に捨てられたせいで母は死んだ」と恨みを抱いており、この練習試合で勝って父のメンツを潰すことに躍起になっていたが、力及ばず敗北。涼と遊部はそれぞれに王華学園の選手に打ち勝ち、岩熊と相手のエースである相馬光樹(そうま みつき)の勝敗によって練習試合の決着もつく形となる。両者は互角の勝負を繰り広げるが、実は岩熊は相馬に勝つために続けた猛練習の影響で深刻な故障を抱えており、試合途中で戦えなくなってしまう。
最高のライバルと目した岩熊が自滅に近い形で卓球を辞めることになったと知って相馬は愕然とするが、その岩熊のたっての願いでヒロムが試合を引き継ぐ。相馬は「1年生ごときが岩熊の代わりになるものか」と強引に攻め立てるが、ここでヒロムが予想外の健闘を見せる。ヒロムは「どんな動きも止まって見える」ほどのすさまじい動体視力の持ち主で、卓球に不可欠な読み合いにおいて天才的な資質を持っていた。彼の絵にことごとく躍動感が無かったのも、これが理由だったのだ。

必死に食い下がるヒロムだったが、「相手は読み合いが異様に強い」ことを見抜いた相馬の前に最終的に敗北。一行は王華学園を辞し、岩熊は正式に引退を表明。遊部が次の部長に就任する。
岩熊もまた自分との決着を楽しみにしていたこと、壮絶な無念と共に引退を決意したこと、その彼が最後にヒロムという才能を見出したことを理解した相馬は、「岩熊は間違いなく自分の最強のライバルだった男であり、彼が遺していったものを自分も見守ろう」と、ヒロムに注目していくようになる。

新コーチの就任

遊部を部長にして新体制となった久勢北中学校の卓球部に、蒔絵薫(まきえ かおる)という新コーチがやってくる。彼女は岩熊が頭を下げて連れてきた人物で、コーチとしては非常に優秀だったが、何かを教えるでもなく卓球部の様子を眺めるばかりでヒロムたちを呆れさせる。
実は薫は、1年生だった頃の岩熊にトレーニング法を伝授したことがあり、自分の知らないところで猛練習を重ねた彼が引退することになったのを悔やんでいた。卓球部に何も教えようとしないのも「岩熊のように無茶をして選手生命を縮める子供をもう見たくない」との想いが理由だったが、「涼のように早くうまくなりたい、岩熊の期待にもっと応えたい」と猛烈な熱意を示すヒロムに岩熊に近しいものを感じ取り、彼に“無茶をさせない”ためにこそトレーニング法を教えていくこととなる。

練習を重ねたヒロムは、岩熊や晶も注目した才能を少しずつ開花させ、1年生の中でも裕也と並ぶ有力な選手へと成長。やがて始まった全国中学校卓球大会の地区予選では、その成長を見守り続けた乙女の前で公式戦で初めての勝利を手にし、自身の成長を実感する。その様子を見ていた相馬は、「1試合ごとに急成長していった去年の岩熊のようだ」とライバルの弟子の活躍にさらなる期待を寄せる。
一方、会場で晶と再会したヒロムは、彼女が涼の妹であることを知る。晶は王華学園の女子でも最強の実力者で、将来は日本代表入りを確実視されるほどの才能の持ち主だった。憧れの涼と肉親なんてと羨ましがるヒロムだったが、その晶は涼の試合を見て「早く負けてしまえばいいのに」と冷酷につぶやくのだった。

若き才能の飛躍

涼は生まれつき腕の筋肉量が少なく、打球のパワーにおいて絶対的な不利を抱えていた。卓越した技術でそれを補ってはいたが、“同じ戦術”で戦う相手に対してはこの点が露骨に作用し、晶の入れ知恵でこれを実践した選手に負けてしまう。
晶もまた涼に憧れて卓球を始めた過去を持っていたが、「自分にはパワーが無い、年下の妹にも勝てない」と絶望した兄を1度は引退に追い込んでしまう。その後晶は涼から「お前は才能があるから続けるべきだ」と言われ、罪悪感を抱えながら卓球選手として成長していくが、その涼が再び卓球を始めたことで罪悪感を消化できなくなってしまう。「涼が卓球を再開したのは、自分への当てつけが理由ではないのか」と思い込んだ晶は、自分の前から“卓球をする涼”を消したい一心で涼が負けるよう画策したものの、本心では兄と仲直りしたいと考えており、「どうしてこんなことになってしまったのか」と涙する。

そんな彼女に、ヒロムは「涼も君と仲直りしたくて卓球をもう1度始めたのではないか」、「彼がどんな人かは自分も知っている、決して諦めないしいつかは君に追いつくはずだ」と本心からの言葉を伝える。晶は「言葉だけならなんとでも言える。生まれつきのハンデを抱える涼が日本代表クラスの選手にまで成長するなんて奇跡を私に信じろというなら、あなたも私に奇跡を見せてほしい」と要求。久勢北の対戦相手である、王華学園に次ぐ県内強豪校秀鳳学園の主将を相手に勝ってみせろと告げる。
意を決したヒロムが、相手選手が待ち構える試合場に進んだところで場面は切り替わり、3年の年月が流れる。ヒロム、涼、遊部、裕也はそれぞれが同世代最強クラスの選手へと成長し、インターハイの4傑にその名を連ねていた。裕也は父と和解して彼の下で練習を重ね、遊部は故障を重ねるたびにリハビリして選手に復帰し続ける岩熊の激励を受けつつ「この人は人間ではないのではないか」と失礼なことを考えていた。この頃には涼は王華学園の一員となっており、遊部に敗れて不満全開の相馬に「アイツをボコボコにしてやれ」と命じられる。

ヒロムが見せてくれた“奇跡”により涼との関係を修復した晶は、兄との仲を修復させていたが、その涼からヒロムとの関係について問われて曖昧な表情を浮かべる。全然身長が伸びずに小柄なままだったヒロムの控え室には、彼を見守り続けた乙女の姿があり、彼女に発破をかけられながらヒロムは元気よく試合場に飛び出していくのだった。

『P2! - let's Play Pingpong! -』の登場人物・キャラクター

久勢北中学校

藍川ヒロム(あいかわ ヒロム)

プレイスタイル:右・シェークハンド前陣異質攻撃型

主人公。幼い頃からスポーツに憧れ、中学生になったことを機に運動部への入部を決意。「小柄な選手でも活躍できる」と聞いて卓球を始め、2年生の先輩である涼のプレイスタイルに強く惹かれていく。
「どんな動きでも止まって見える」ほどのすさまじい動体視力の持ち主で、これが災いして描く絵のことごとくが躍動感の無いものとなっていた。岩熊や晶にこの才能を見出され、卓球選手として成長していく。

早乙女乙女(さおとめ おとめ)

ヒロムの幼馴染。スポーツ万能で成績優秀な上に実家が裕福。中学1年生にしては肉体も精神もおとなびており、ほとんど背の伸びないヒロムのことをからかいつつ見守っている。小学生の頃、ヒロムのミスで野球の試合に負けた際に彼を痛烈に罵ったことがあり、今も側に居るのはこの時の反省と自分の中でけじめをつけたい想いがあるため。
ヒロムに対しては異性の友人として接し、時に姉のように、時に母のように振る舞う。一方で彼の成長を認め、1人の男の子としても認識しており、最終回では互いに意識し合っている姿を見せた。

川末涼(かわずえ りょう)

プレイスタイル:右・シェークハンドカット主戦型

卓球部に所属する2年生。去年王華学園の選手を破った「破王」の1人。ストイックで冷静沈着、自分にも他人にも甘えを許さない性格。
ヒロムに対しては「今までスポーツをしてこなかった人間に続けられるほど甘いものではない」と当初は厳しい目で見ていたが、自分への憧れを力にして練習を重ねる彼を次第に部の仲間として認め、先輩として面倒を見るようになる。生まれつき腕の筋繊維が少なく、“打球にパワーが無い”という卓球選手としては致命的なハンデを抱えている。

遊部遊(あそべ ゆう)

YAMAKUZIRA
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@YAMAKUZIRA

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