9-nine-はるいろはるこいはるのかぜ(9はるいろ)のネタバレ解説・考察まとめ

『9-nine-はるいろはるこいはるのかぜ(9はるいろ)』とは、株式会社クリアレーヴのゲームブランド、ぱれっとによって制作された恋愛アドベンチャーゲームである。シリーズ4作と新章からなる『9-nine-(ナイン)』シリーズの第3作目となる本作は、香坂春風に焦点を当てた物語となる。ネガティブで臆病な人格と、女王様のような人格の2つの面を併せ持つ春風は、翔と仲間の優しさに触れ、徐々に打ち解けていく。物語の核心が明らかになる一方で、心の弱さを克服し成長していく春風の姿に心を打たれる作品となっている。

『9-nine-はるいろはるこいはるのかぜ』の概要

『9-nine-はるいろはるこいはるのかぜ(9はるいろ)』とは、ぱれっとが開発した恋愛アドベンチャーゲームであり、ぱれっととして14作目の作品となる。『9-nine-』シリーズの第3作目として発売された本作は、ヒロインの1人である「香坂春風(こうさかはるか)」に焦点を当てた物語となっている。
18禁となるWindows版が2019年4月26日に、Steam版が2020年9月1日に発売され、2021年4月23日にシリーズ4作品と新章をまとめた全年齢対象版のコンプリートパッケージが発売された。また、『9-nine-新章』も同日にDMM GAMESにてダウンロード配信されている。

舞台となるのは、学園都市である白巳津川市(しろみつがわし)。大地震により、白蛇九十九神社(はくだつくもじんじゃ)に祀られていた神器が破損し、異世界から所有者に特殊能力を授ける装飾品“アーティファクト”が流出してしまう。その人知を超えた力を悪用した人体石化事件が発生した。石化事件の犯人が“魔眼のアーティファクト”の所持者であることを知った主人公の新海翔(にいみかける)は、クラスメイトの九條都(くじょうみやこ)と妹の新海天(にいみそら)と共に、石化事件の調査と解決に動き始める。調査の途中で“リグ・ヴェーダ”と名乗るアーティファクトユーザーの組織と対立をしてしまう。そのメンバーの中に、毎朝見かける学園の先輩、香坂春風(こうさかはるか)の姿があった。

本作のキャッチコピーは「——2つのカタチ、2人のセカイ。」。

前作と同様、終始美麗なグラフィックでプレイヤーを魅了し、過酷な運命に挑む翔たちの姿に心打たれる作品となっている。謎が次々と明らかになり物語が佳境に入ってく本作も、手に汗握る展開に最後まで目が離せない。

『9-nine-はるいろはるこいはるのかぜ』のあらすじ・ストーリー

平和な日常に迫る脅威

主人公である新海翔が住む白巳津川市がスポンサーとなり、地域振興を目的として作られた『輪廻転生のメビウスリング』というアニメがあった。それに合わせて作られた“春のメビウスフェス”が今年も開催されるも、大きめの地震が発生しその年のフェスは中断となってしまう。アニメの聖地であり、フェスの会場でもある白蛇九十九神社に奉納されていた神器が地震によって破損してしまった結果、翔の世界が異世界と繋がってしまうのであった。人が石化する怪事件が起こったあと、翔の通う白泉学園の校舎が火の海になる怪事件が起こり、それを翔のクラスメイトである九條都が超能力によって鎮火させ、翔の前には異世界人を名乗るソフィーティア(以下ソフィ)が現れる。にわかには信じがたい超常現象を目の当たりにした翔は、その現実を信じざるを得ない状況となっていた。

すべての事件は“アーティファクト”と呼ばれる不思議なアクセサリーが、ソフィの住む異世界から翔の世界に流出したことで起こっており、そのアーティファクトを操る人物を“アーティファクトユーザー”(以下ユーザー)と呼んでいた。同じような怪事件が起こらないよう、翔はユーザーである都と協力し、アーティファクトの力を正しく使わんとする仲間を探すこととなる。そしてあっさり見つかった3人目の仲間は、翔の妹である天であった。3人は更に仲間探しを続ける中で、『輪廻転生のメビウスリング』のファンサイトに目をつける。そこに本物のユーザーが紛れているかもしれないと考え、掲示板を調査すると、4人目の仲間候補が浮上した。それは、毎朝男子の集団を引き連れて登校している香坂春風先輩であった。明らかに不自然ではあるものの、彼女の女王様のような振る舞いと口調が、ファンサイト内の掲示板の住人である“エデンの女王”と名乗る人物に酷似しており、ユーザーである可能性が高いと踏んだ翔たちは彼女の調査にあたることとなる。

しかし、隠密行動に適した能力を持つ天が、調査中に彼女の仲間に捕まってしまう。司令官、ゴースト、春風先輩の3人で構成され“リグ・ヴェーダ”と名乗るその仲間は、翔たちを仲間に誘う。リーダーである司令官は、ユーザーの理想郷を作ることが目的であり、そのためならば人殺しも容認すると話す。しかしそれに賛同することができない翔たちは誘いを断ると、即座に敵認定され、司令官は敵意を剥き出しにしてくる。戦う術を持たない翔たちであったが、それでも立ち向かう決心をした直後、助っ人が現れた。その人物は、都がアルバイトをする喫茶ナインボールの常連であり、いつもパフェを食べていることから、翔たちがパフェクイーンと呼んでいる結城希亜であった。彼女もユーザーであり、リグ・ヴェーダの思想に嫌悪感を示す。希亜は司令官と言い争った結果緊迫した空気が霧散し、リグ・ヴェーダは去っていくも、ゴーストから「夜道には気をつけろよ、お兄ちゃん」と翔を挑発していった。

翔たちは半ば強制的に希亜が結成した“ヴァルハラ・ソサイエティ”のメンバーとなり、リグ・ヴェーダと戦うことになる。リグ・ヴェーダの中に、人体石化事件の犯人である“魔眼のユーザー”がいることを無意識化に感じ取っていた翔は、そいつを倒さなくてはいけないという決意を胸に、新たな朝を迎えるのであった。

リグ・ヴェーダに属する春風の本心

翔と天が登校中、春風先輩が天に手紙を押し付けて走り去る。昨日の謝罪と話したいことがあるという内容で、春風先輩自身の連絡先も記されていた。天を心配した翔は自分から春風先輩に連絡をすると、やはり昨日の謝罪の言葉が並べられる。昨日の件でリグ・ヴェーダに身を置いているのが怖くなったと話す春風先輩を仲間に誘うことも視野に入れ始める。

翔はリグ・ヴェーダの1人であるゴーストが魔眼のユーザーであることを確信していた。証拠はないものの、そこには妙な自信があった。そこで、アーティファクトの力を使って引き連れている男子たちのように、翔もその力を使われているふりをして、リグ・ヴェーダに潜入捜査をしようと心に決めたのであった。それを春風先輩にどう切り出すか悩んでいる最中にソフィが現れ、何か変わったことがないか問われる。そこで翔は、知らないはずのことを知っており、確証はないけど確信がある状態であることを伝える。ソフィはその根拠のない確信に対して、翔には不可解な点が多いと指摘し、今はなにもわかっておらず、なにかわかれば伝えに来ると言い残し歪んだ空間に消えていった。改めて春風先輩に連絡を入れ、先輩をこちらの仲間にしたいが、そうすると先輩がリグ・ヴェーダに敵とみなされてしまうので、自分がリグ・ヴェーダに潜入しようと考えていることを告げる。やりとりを続けるなか途中から通話に切り替え、リグ・ヴェーダの2人に翔を紹介することになった。通話中の春風先輩は、いつもの女王様のような態度からは想像できないくらい気弱で、男子が苦手であるという話ともう1人の私という表現が気になりつつも、悪い人ではないことを確信する。

ゴーストが魔眼のユーザーであることの証拠を掴み、あわよくば、都の能力で奪えるよう魔眼のアーティファクトを特定し、スムーズに事が運ぶよう祈る翔であった。

リグ・ヴェーダへの潜入

翔を歓迎する高峰

翌日、司令官は春風先輩と同じクラスの男子であり、高峰蓮夜(たかみねれんや)という名前であることと、司令官の前ではもう1人の自分になってしまうことを春風先輩から伝えられる。その後、翔は春風先輩に魅了された男子としてリグ・ヴェーダに潜入するも、その作戦はあっさりゴーストに見破られてしまった。しかしそうなることも予見していた翔は、本当は春風先輩に惚れ常に一緒にいたいという理由であったが、さすがに恥ずかしいから春風先輩に嘘をつかせていた、と言い訳することをあらかじめ春風先輩と話し合っていた。翔は春風先輩への愛を語り、リグ・ヴェーダの仲間にしてほしいことを2人に訴える。「そんな理由で仲間を裏切るかフツー」とあきれ返り、警戒を薄めないゴーストの隣で、司令官は「惚れた女のそばにいたい。しごくまっとうな理由だろうがなにもおかしくない。ようこそリグ・ヴェーダへ」と翔を歓迎する。
その直後、背後から希亜が現れ、「裏切り者を始末する」と翔に対して能力を使用しようとする。しかしそれはゴーストによって遮られ、喧嘩を売られたと感じたゴーストは希亜にユーザー同士の戦いを挑む。しかし希亜の目的はあくまで翔であったため、「ヴァルハラ・ソサイエティを裏切った罪は必ず償ってもらう」と翔を睨み、その場を去るのであった。

希亜とのやりとりで翔はリグ・ヴェーダの一員として認められ、その場は解散となった。その後、元の人格に戻った春風先輩と夕食をとるため部屋に帰った翔は、希亜に電話をかける。翔は事前にリグ・ヴェーダ潜入作戦を希亜に相談しており、顔合わせの際雲行きが怪しくなったら助けに入ってほしいことと、うまくいったら適当に自分を痛めつけてほしいことを頼み込んでいたのであった。過剰な演出かと不安視していたもののうまくいって良かったと話す翔であったが、嘘が嫌いな希亜は「ヴァルハラ・ソサイエティの正義を裏切ったのは覆しようのない事実。いずれ相応の罰を受けてもらう」と告げ、通話を切った。
希亜との一連の話を春風先輩に報告し謝罪するも、春風先輩自身はそれを察しており、うまくいったことをお互い労いながら夕食を共にした。男性が苦手だと話していた春風先輩を気遣い、優しく声を掛ける翔に対して、春風先輩は完全に安心しきった表情を見せていた。その途端、翔の様子がおかしくなり、春風先輩に襲い掛かろうとする。途中で我に返るも、それが春風先輩の“自分の欲望を現実にする力”であり、春風先輩の妄想が具現化した結果であったことを知った。そのまま翔の部屋に泊まった春風先輩は、翌日、「自分の駄目な部分を見られて逆に吹っ切れた。新海さんとなら、普通に話せそうです。ありがとうございます」と話し、今まで見たことのない元気な笑顔を翔に向けるのであった。

春風先輩の能力は、望んだ未来を手に入れる力であることがわかる。春風先輩が作ったオリジナルキャラクターであるエデンの女王も、気付いたら春風先輩のもう1人の自分として生まれ、それもエデンの女王という妄想が現実となった結果であった。そして、その“エデンの女王”が完全に一つの人格として、春風先輩の意思に関係なく行動するようになってしまっていた。

敵対する友人

翔を抱き寄せる春風

翔はリグ・ヴェーダとの交流を続ける中、翔のクラスメイトであり親友である与一とゴーストが似ていることに気付く。それをソフィに相談すると、ゴーストが与一の幻体の可能性があると指摘した。真相を確かめるべく動いた翔とソフィであったが、やはり与一にはユーザーにしか姿が見えない力がかかっているソフィが見えており、与一こそ翔たちが探していた魔眼のユーザーであることが判明する。
魔眼の使用をやめるつもりはないと話す与一と対峙する翔の背後から、都、希亜、天、春風先輩が現れる。この状況下でも普段と変わらない態度を取り続ける与一の口からは、リグ・ヴェーダしか知り得ない情報が語られ、ゴーストが与一の幻体であることが確定した。
面倒は嫌いだから全力で逃げると言い放った与一の体からゴーストが現れ、背後から高峰も現れる。翔たちを尾行していたと話す高峰の登場は与一も想定していなかったようであったが、その高峰一人の力で翔たちは負けてしまうのであった。

その後、翔の様子を心配した春風先輩が翔の後を追いかける。親しくしていた友人が敵となってしまったことにショックを覚えていた翔に、「1人で受け止めるにはあまりにもつらい現実、つらいときは甘えてほしい」と声を掛け、優しく抱擁した。それはもう1人の春風先輩であったものの、このような行動を起こそうとしたのは春風先輩本人であり、「偉そうに申しましたが、もう1人のわたくしの心の弱さも、問題ですわね。自分にできないことは、なんでもわたくしに押しつけて」と嘆くのであった。
2人が帰路に付こうとしたとき、後ろから声を掛けられる。それは翔の担任である成瀬先生であったものの明らかに様子がおかしく、「2人にお話があります」とアーティファクトユーザーが力を使用したときに現れるスティグマを額に浮かび上がらせた。
その人物は自分を“イーリス”と名乗った。その名前は、千年前に翔たちの住む白巳津川市を襲った災厄を鎮めた神様の名前であった。混乱を隠せない翔たちに、イーリスはソフィーティアに注意するよう優しく語りかけ、ソフィーティアがアーティファクトを回収するために翔たち以外にも協力者が存在していることを示唆し、去っていった。与一がソフィと対面した際さほど動揺しなかったことに違和感を感じていた翔は、イーリスの話によってソフィが与一にも手を貸しているのではないかと疑念を抱く。

イーリスの目的

数日前にイーリスに話しかけられたという成瀬先生は、そこで自分が世界の眼のユーザーであることを知る。そのアーティファクトは、別の世界を観測することができ、その世界同士を繋げる力を持つものであった。白巳津川の伝承の話が現実となったことに驚きを隠せないものの、信じざるを得ない状況だと話し、協力できるところは協力する、と翔に伝えた。そんな中、翔ともう一つの人格に交代した春風先輩は再びイーリスとの接触を図る。

元々イーリスの世界と翔たちの世界は繋がっており、成瀬先生の先祖たちとお互い付かず離れず良い関係を保っていた。しかし、イーリスの世界でアーティファクトが誕生したことで、そのバランスが崩れてしまう。アーティファクトが誕生するまでは魔術のような力を振るう者たちが存在していた。しかし、その魔術を習得するためには長い時間に加え才能も必要となるため、誰にでも魔術を扱えるように、と誕生したのがアーティファクトであった。しかしアーティファクトは主を自分で選んでしまうため、多くのアーティファクトが翔たちの世界へ流出し、白巳津川に災厄をもたらす。その災厄を鎮めたのがイーリスであった。イーリスはアーティファクトを回収したあと、自身の持つ“世界の眼”の対となるもう一つの眼を翔たちの世界に残し、その瞼を閉じることで繋がった二つの世界を隔絶したはずであった。しかし、その“世界の眼”となる神器が地震により破損してしまったことで、再びアーティファクトが翔たちの世界へ流出してしまう。このアーティファクトを平和的な手段で回収したいと願ったイーリスは、力を借りるために翔たちと接触を図ったのであった。

千年前と同じように自身でアーティファクトを回収しては、と問う春風先輩に対して、その際も成瀬先生の先祖の体を借りていたとイーリスは答える。世界間の移動は魂のみしかできないため、イーリス自身の同一存在である女性の体を借りて力を振るっていた。同一存在とは、互いの世界で同じ魂を持つ者同士のことであり、魂を同調させて体を借りることができる。イーリスと成瀬先生がその同一存在であった。しかし、千年の時が過ぎて力が弱くなってしまったイーリスは、昔ほどうまく同調できず、昔のようにアーティファクトを扱うことが困難となり、誰かに頼らざるを得ない状態となってしまった。

ソフィが所属しているセフィロトは、二度とアーティファクトによる悲劇を起こさぬようイーリスが作った組織であったが、内部分裂を起こしてしまう。アーティファクトを有効利用することで世界をより良い方向へ導くべきと主張する者たちが現れ、ソフィがそのうちの1人であった。ソフィは世界のためという大義名分を掲げて、回収したアーティファクトを私的に利用するつもりであり、渡すわけにはいかないとイーリスは話す。与一を含め、翔たち以外にもソフィの協力者がいると断言するイーリスは、動きたくても動けない自分の代わりに頑張ってほしい、とアンブロシアというアーティファクトとの契約を強制的に破棄する霊薬を渡した。魔眼の使い手である与一に対抗する手段がない翔たちであったが、これを飲ませるか注射することで無力化が可能となる切り札を手に入れる。「これでアーティファクトが回収できたらこちらに渡してほしいが、自分たちの命を一番大事にしてほしい。よろしくお願いします」と丁寧に挨拶したイーリスは、成瀬先生の体から離れていった。

本性を現すイーリスと翔の選択

イーリスにより石にされた希亜、都、天、春風

春風先輩の能力の使い方を模索している最中、春風先輩の体力が限界に達したため、公園で休憩をとる。そこに偶然高峰が通りがかり、その手には2人分の食料が入った袋が握られていた。事を構える気はないと前置きをした高峰は、「理解者がおらず孤独を抱えた与一の傍にいたい、それが腐れ縁というやつだ」と話し、その場を立ち去るのであった。高峰の様子に違和感を感じた春風先輩は、翔と高峰の後を追いかける。辿り着いた先で、ソフィが翔たちを早く殺すよう与一に話している姿を目撃するのであった。

翔たちは都、天、希亜の協力のおかげで、イーリスから渡されたアンブロシアを飲み物に混入させ、与一に飲ませることに成功する。しかし、味に違和感を感じた与一を見て、その飲み物を一口飲んだ高峰と共に血を吐いて倒れ、動かなくなってしまう。近くで見ていた翔たちはすぐさま2人に駆け寄るも脈が止まっており、「霊薬は殺さずに契約を破棄するはずじゃ…」と呟く都に、「あら、私そんなこと言ったかしら」と声が聞こえ、翔たちが一斉に振り返ると、そこには額にスティグマを浮かべた成瀬先生が立っていた。

「うまくやってくれてありがとう」と血だまりから与一のアーティファクトである銀のイヤリングを回収する。「実はまだ手放してなかったの、嘘ついてごめんなさいね」とイーリスは自身の持つ魔眼のアーティファクトの対となる、与一のアーティファクトを手のひらに置いた途端、それは空間の歪みへと消えていった。「眼なんだから二つあって当然よね?」とイーリス自身の両眼を指さし、赤黒いスティグマが輝きだす。魔眼の発動を察知した翔は「みんな目を閉じろ!」と警告を出すも、翔の目の前には石となった春風先輩、都、天、希亜が立っているのであった。「あなたのおかげよ。協力してくれてありがとう。これから手当たり次第石にして残りのアーティファクトを集めに行くわ」と石となったみんなを砕いてアーティファクトを回収し、空間に消えていった。

状況が呑み込めず混乱状態の翔の前に「選択を間違えたわね、翔。もうこの枝は終わりね」とソフィが現れる。与一の隣にいたのは自分ではないことを翔に伝え、状況を把握していたにも関わらずそれを伝えなかったのは、あんな状況じゃ信じないと判断したのが一つの理由であり、もう一つの理由が翔自身失敗を糧にして別の枝の翔が成功を掴みとれるからであると話した。「さぁ、どうするの?」と問うソフィに「決まってるだろ」と答えた翔は、「目覚めろ、オーバーロード!」と叫び、過去に遡りイーリスを倒す選択をするのであった。

春風の能力により導かれる勝利

成瀬先生の身体で戦うイーリス

過去に遡った翔に、ソフィを疑い信じなかったことでみんなイーリスに殺されてしまった枝の記憶が流れ込む。空間に現れたソフィに、2日後みんなイーリスに殺されることと、イーリスと接触した際に手渡された霊薬により与一たちが血を吐いて死んだことを伝えた。それを聞いたソフィは、その霊薬は毒薬であると断言し、そしてイーリスのことを話し始める。
イーリスは千年前に多くのアーティファクトを回収したことでその魔力に取り憑かれてしまう。しかし、世界の眼を成瀬先生の先祖に託して異世界の扉を閉じたことで、一度その気持ちを振り払い、二度と悲劇を起こさないようセフィロトを設立した。アーティファクトとの契約も大半は破棄したものの、結局闇に落ちてしまったのであった。イーリスの目的は両目が揃うことで真の力を発揮する魔眼を揃えることであり、千年もの間探し続けていた。今回の騒動で片目が見つかり、翔たちを利用して手に入れようとする。イーリスこそが私利私欲のためにアーティファクトを利用しようとしており、ソフィが魔眼を最優先していたのはイーリスに渡さないためであった。
数多くのアーティファクトを所持しているイーリスに勝つ方法はないが、魔眼さえ渡さなければまだ勝機はないとも言えないと話すソフィは、アンブロシアが完成するまでイーリスに魔眼が渡らないようなんとか間を持たせてほしいと翔に伝えた。そこで翔は世界の眼を破壊することを提案する。アーティファクトには自己修復機能があるため放っておくと復活するが、その間イーリスと先生とのリンクが一時的に切れることでアンブロシアが完成するまでの時間稼ぎとなる。そして復活するまでにアンブロシアを成瀬先生に使い、世界の眼と完全に切り離そうと考えたのであった。

一連の話をみんなに伝え、世界の眼である神器を破壊するため神社に赴くも、目の前に成瀬先生と同調したイーリスが現れる。そこで翔たちは戦闘を挑むも、イーリスの圧倒的な強さに力が及ばない状況であった。しかし、翔があらかじめ状況の連絡を入れておいた高峰と与一がイーリスの背後から攻撃を仕掛けた。共通の敵であることを理由に協力を得られたものの、与一はイーリスの一撃で致命傷を負ってしまうのであった。なんとか意識を保っている状態の与一は、「これを持っていると翔たちにずっと追われるから。一つはおまけ」と翔に二つのアーティファクトを差し出した。一つは魔眼のアーティファクト、もう一つは幻体を操るアーティファクトであった。改良前のアンブロシアでアーティファクトとの契約を破棄し必要なものだけ再契約をしたと話す与一は、高峰と共にその場を後にした。ためらうことなく二つのアーティファクトを体内に取り込んだ翔は、ゴーストの姿となって現れた幻体と共にイーリスに挑むも、あっさりと敗れてしまい、翔の力によって世界はやり直されるのであった。

ゴーストと共に何度もイーリスに挑みそのたびに敗れ続けるも、その度に世界をやり直し続ける翔に、イーリスは「まさか…オーバーロード…!」と焦りを見せる。翔を殺すことができず探していた魔眼を手に入れることが不可能とわかったイーリスは、「魔眼を手に入れ損なった憂さ晴らし、しっかしとさせてもらうわよ」と強大な力で翔を攻撃し始める。それを避ければ後ろで動けなくなっている春風先輩たちに攻撃が当たることになり、翔は耐え続けた。その様子を見た希亜は、「いつまで“わたくし”でいるつもり…?そのあなたのままじゃイーリスには勝てない…あなたの力が勝利を引き寄せる…このまま彼の後ろで守られ続けるか、それとも彼の隣に立つか…決めなさい!春風!」と春風先輩を鼓舞する。希亜の言葉で立ち上がった春風先輩は、「私も、あなたを助けたい!」と自らの能力で翔たちを勝利へ導き、イーリスは「また別の枝で会いましょう…」と成瀬先生の体から去っていった。

イーリスとの戦いから数週間が経過し、翔と春風先輩は結ばれ、アンブロシアが完成したことで成瀬先生は世界の眼との契約を破棄することができた。イーリスの脅威はほぼ去ったものと思っていたが、高峰から姿を消したと聞かされていた与一が、ソフィの姿をしたイーリスと言葉を交わしているところを目撃する。それはいずれまたイーリスと戦うことを示唆するものであったが、そのときが来るまでアーティファクトの回収を続け、街に平穏が戻るまで戦い続けることを誓う翔であった。

語られるソフィの秘密と九番目のユーザー

プレイヤーに語りかける形で姿を現した見慣れないシルエットは、ソフィの本体であった。イーリスとソフィは枝分かれした同じ存在であり、千年前にアーティファクトを回収した際その誘惑に負けたのがイーリス、誘惑に抗いアーティファクトを返還したのがソフィであった。世界の眼を通して、お互いにもう一人の自分がいることは認識していたものの干渉はできなかったが、翔の世界への扉が開いたことでもう一人の自分と交わることとなってしまう。「ようやく自分の過ちを正すチャンスを得た」と話すソフィは、アーティファクトを最低限しか所持しておらず力及ばない自分の代わりに、イーリスを滅してほしいと語りかける。そして、鍵となるのは9人目のユーザーとなるプレイヤーであることを指摘した。
オーバーロードのユーザーは翔ではなくプレイヤーであり、翔は怪我をしたときに取り込んだ世界の眼の断片から異世界への扉を開く力を発現させていた。そのゲートを通して繋がったプレイヤーは翔の同一存在であり、翔の行動に干渉することができていた。「今までよりよい結末へと運命を導いてきたプレイヤーならイーリスも滅ぼせる、世界の支配者たるあなたなら」と話すソフィは、プレイヤーを“ナイン”と呼び、物語の幕は閉じられた。

『9-nine-はるいろはるこいはるのかぜ』のゲームシステム

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