Helck(ヘルク)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『Helck』(ヘルク)とは、明るい笑顔と共に「人類殲滅」を唱える勇者と、それを不審に思って見張り続ける魔王軍の幹部のハチャメチャで壮大な旅路を描いた七尾ナナキの漫画作品。アマチュアで活躍していた七尾のプロデビュー作品であり、様々な漫画賞を獲得している。
魔王トールが勇者に倒され、再編を急ぐ魔王軍は、次なる魔王を決めるための大会を開催。ここに人間の勇者ヘルクが現れたことで、大会責任者のヴァミリオは仰天する。ヘルクは大会予選を余裕で突破しつつ「人間が憎い」と語り、警戒するヴァミリオを困惑させる。

『Helck』(ヘルク)の概要

『Helck』(ヘルク)とは、明るい笑顔と共に「人類殲滅」を唱える勇者と、それを不審に思って見張り続ける魔王軍の幹部のハチャメチャで壮大な旅路を描いた七尾ナナキの漫画作品。
ニコニコ静画などを舞台にアマチュアで活躍していた七尾のプロデビュー作品であり、コミカルで荒唐無稽なコメディの裏にシリアスな秘密を組み込んだ本格ファンタジー漫画である。その軽妙な物語と個性的なキャラクターから人気を博し、2015年の「次にくるマンガ大賞」これから売れてほしいマンガ部門8位、2017年の「100万人が選ぶ 本当に面白いWEBコミックはこれだ!」オトコ編5位など様々な漫画賞を獲得している。連載終了後にアニメ化が決定し、2023年夏から2クールで放送された。

魔王トールが勇者に倒された。再編を急ぐ魔王軍は、次なる魔王を決めるための大会を開催。ここに人間の勇者ヘルクが現れたことで、大会責任者のヴァミリオは仰天する。ヘルクは大会予選を余裕で突破しつつ「人間が憎い」と語り、その強さと人柄で魔族たちを魅了。「何か裏の目的があるに違いない」と警戒するヴァミリオだったが、ヘルクが実の弟にして魔王トールを倒した勇者であるクレスを殺した罪で人間界ではお尋ね者になっていると聞いて首を傾げる。
ヘルクは本当に魔族の味方になるつもりなのか、彼と弟との間に何があったのか。これを見極めようとしたヴァミリオは、ひょんなことからヘルクと一緒に旅をすることとなり、人間たちに起きた異変を目の当たりにしていくこととなる。

『Helck』(ヘルク)のあらすじ・ストーリー

新魔王決定戦の闖入者

魔王トールが勇者に倒され、これを機に人間側が大攻勢を仕掛けたことで、魔族たちは苦しい戦いを強いられていた。再編を急ぐ魔王軍は、次なる魔王を決めるための大会を開催。ここに人間の勇者ヘルクが参加したことで、魔族の帝国の四天王の1人にして大会責任者のヴァミリオは仰天する。なんとか脱落させようと様々な手を打つも、ヘルクはデタラメな強さを発揮してそのことごとくを跳ね除けてしまう。一方で彼は「人間が憎い」と語り、その活躍と人柄で魔族たちを魅了していく。
「何か裏の目的があるに違いない」と警戒するヴァミリオだったが、ヘルクが実の弟にして魔王トールを倒した勇者であるクレスを殺した罪で人間界ではお尋ね者になっていると聞いて首を傾げる。さらに魔王ウルムの城が白い翼を持つ人間側の軍団に落とされたとの報せが入り、ヴァミリオは「人間側に何か大きな異変が起きている」ことを知る。

ヘルクは本当に魔族の味方になるつもりなのか、彼と弟との間に何があったのか、白い翼の軍団の正体はなんなのか。これを見極めようとしたヴァミリオは、「大会の次の種目を“ウルム城の奪還”にする」という四天王の1人アズドラの提案を受け入れ、“運営のアン”という偽名を名乗りつつヘルクや他の参加者たちの戦いを近くで見守ろうと画策する。

ウルム城奪還作戦

魔界の大地は地下から染み出す毒によって汚染されており、正面を避けてウルム城に近づくには特に汚染の激しい地下通路を踏破する必要があった。ヴァミリオたちは恐れることなくこれを進んでいくも、大地を穢す毒から生じた狂暴で危険な新世代生物に遭遇する。ヴァミリオたちが警戒する中、ヘルクは「コイツのことなら知っている」と言って怒気を込めつつ一蹴。ケンロスたちがさすがヘルクと盛り上がる中、ヴァミリオは「なぜ人間の勇者であるヘルクが、魔界を脅かす新世代生物のことを知っているのか」と首を傾げる。
ウルム城にはまだ噂の翼を持つ兵士が留まっており、一行は「これが最後の試練だ」と一斉攻撃を開始。ヘルクもまた無言で戦線に加わり、ヴァミリオは「ここでヘルクが本当に人間を裏切るつもりなのかどうかがはっきりする」と彼の挙動に注目する。

翼を持つ兵士たちの1人はエディルという名の剣士で、ヘルクのかつての知り合いだった。彼は自分たちのことを「勇者として覚醒した存在」だと自称し、鍛えれば鍛えるほど限界を超えて強くなると豪語。これを聞いたヴァミリオは、「今はまだ自分たちならなんとでもなる程度の存在でしかないが、翼を持つ兵士たち全員が単身で魔王を倒せるほどに成長したら魔族は滅ぶ」と戦慄し、そうなる前に全面戦争を仕掛けるしかないと覚悟する。
ヴァミリオの援護もあり、一行は順調に翼を持つ兵士たちを倒していく。しかしエディルにトドメを刺そうとしたところでヘルクが割って入って彼を庇い、「人間たちの味方をするということは、やはりヘルクは敵だ」とヴァミリオは警戒を強くする。しかしそのヘルクが「翼の兵士たちは殺してはダメだ」と謎めいた言葉を口にした直後、エディルは仲間であるはずの翼を持つ兵士に刺し貫かれて死亡してしまう。

エディルたちは大規模な魔界への侵攻のために、距離と距離を無視して空間を結ぶゲートという魔法を城内で発動させていた。しかし彼らは伝説級の高位魔法であるゲートの制御に失敗し、これが暴走。一行も巻き込まれ、どことも知れぬ場所に吹き飛ばされそうになる。
ヴァミリオは魔法の解除を試みて成功するも、ゲートの余剰エネルギーに飲み込まれる。助けようとしたヘルクと共に転移していった先は風光明媚な絶海の孤島で、ヴァミリオは「どうやらヘルク共々人間界に飛ばされたらしい」と悟る。

孤島の日々

ヴァミリオがヘルクと共に姿を消したことで、魔界は大騒ぎになる。アズドラが居場所を占うと、彼女は人間たちの国がある大陸からかなり外れた場所に飛ばされたことが明らかとなり、救助するのも簡単ではないと一行は頭を抱える。
そのヴァミリオは、やむなくヘルクと事を構えることをいったん中止し、彼と共に島を脱出する方法を考えていた。幸い島には食料豊富な森があり、人間なのか魔物なのかよく分からない生き物たちの村も近くにあり、すぐ生活に困るということもなさそうだった。ヘルクは脱出用の船の製作に取り掛かり、ヴァミリオがそれを手伝うでもなく監視する中、2人は不可思議な遺跡が島の周囲に存在していることに気付く。

程無くして船は完成するものの、どの方角に進めば人間の国がある大陸に辿り着けるか分からず、ヘルクとヴァミリオは途方に暮れる。村人たちによれば、島の山には博識の魔女が暮らしているらしく、彼女なら大陸のある方角も分かるとのことだった。魔女が村に降りてくるのを待つ中、ヴァミリオは翼の兵士についてヘルクに尋ねる。彼が語るところによれば、翼の兵士とは「王によって操られる生物兵器」であり、「もはや人間とはいえない、滅ぼすしかない存在」なのだという。
その頃、魔界のウルム城では、ケンロスたちが翼の兵士の増援を相手に防衛線を繰り広げていた。前回以上の数で押し寄せる翼の兵士たちに苦戦する一行だったが、応援に駆け付けたアズドラによって逆転に成功。しかし「今のままでは勝ち目はない」と判断した翼の兵士たちが次々に自害していくのを見て、一同は唖然とする。

人間の王の策謀

翼の兵士たちの行動と、人間界に送り込んだ諜報員の情報から、アズドラは「翼の兵士は新たに誕生した勇者であり、死んでも契約者である人間の王の前で即座に復活する」と推測する。だからこそ彼らはまったく恐れることなく、しかも容易に死を選ぶのだ。このまま彼らが経験を重ねて成長していけば、魔族は絶滅を免れない。そうなる前に、アズドラは勇者に力を与える契約者たる人間の王を抹殺することを画策する。
一方、ヘルクとヴァミリオは魔女から大陸の方角を教えてもらい、彼女の助言を取り入れつつ島を脱出する準備を整える。魔女はもともとは魔界で暮らしていた人物らしく、ヴァミリオに「ヘルクに気を付けろ。今の彼はお前たちに敵意を持っていないが、いつまでもそうとは限らないし、いざ敵となればあれほど恐ろしいヤツはいない」と忠告する。

「島の外を見てみたい」と言って勝手についてきてしまった鳥のような生き物ピウイと共に、ヴァミリオたちは島を出発。島でも見かけた不可思議な遺跡のある海域を突破して、大陸を目指していく。巨大な魔物に手を焼きつつ大陸の端に到着するも、そこにあったエリーユ国は蛮族トースマンに征服され、民が苦役に喘いでいた。見るに見兼ねたヘルクとヴァミリオは、奴隷を調達にやってきたトースマンの軍勢と対決。これをあっさりと撃退するも、一撃で叩き伏せられたトースマンの王はなお敗北を認めず、異形の怪物と成り果てながら立ち上がる。
新世界生物にも似たその姿に、ヴァミリオは「人間界にも何か大きな異変が起きているのでは」と戦慄。しかしそうまでして得た力はヘルクに遠く及ばず、反動によってトースマンの王は力尽きる。トースマンの兵たちは、横暴な王の死をむしろ歓迎してエリーユ国から撤退。かくしてエリーユ国を救ったヘルクとヴァミリオとピウイは、改めて帝国を目指す旅を進めていく。

闇の力の暴走

エリーユ国で集めた情報によれば、帝国の領地に入るまでの間に、大きな国を2つ軽油することになるはずだった。しかし旅の途中で訪れた街で、その2つの大国はしばらく前に壮絶な戦争を繰り広げた末にたった数日で消滅してしまったという事実と、今もこの地には侵入者を決して逃がさない恐るべき魔物が潜んでいるという噂を聞くこととなる。
それでも遠回りしている時間は無いと判断したヘルクたちは、強引にこの地を突破することを決意。街で出会った吟遊詩人のイーリスは、「もしもの時のために」と言ってピウイに魔を払う歌を伝授する。

廃墟と化した国を訪れたヘルクたちは、果たして闇の塊のような魔物に襲われる。ヘルクと五分に渡り合う技量と、どれだけダメージを与えても元に戻ってしまう性質を備えたこの怪物に一行は苦戦。ヴァミリオは「なんらかの術によって実体を得ている」タイプの敵だと分析するも、戦闘の最中にそれを解析する余裕は無く、次第に追い詰められていく。しかしこれを見たヘルクが「仲間を傷つけるな」と激昂し、再生されることをお構いなしに怪物を殴り続ける。さながら鬼神のようなその姿に、ヴァミリオは魔女から忠告された「ヘルクは最悪の敵となりうる」という言葉を思い出す。
ヘルクに痛めつけられ、ピウイの歌で戦意を喪失した怪物の正体は、かつてこの地で邪法を用いて力を得た人間の戦士だった。泥沼の戦争の中、人々は邪法に手を出して怪物を生み出すも、これを制御できずに両国は滅亡。生き残った戦士の1人である彼は、自らに邪法を施して人としての生を捨て、仲間や妹のイーリスを守ろうとしたのである。正気に戻してくれた礼だと言ってヘルクに得物の剣を譲り、様子を見に来たイーリスに看取られながら、戦士は静かに息を引き取る。

ヘルクの過去

ヘルクとヴォミリオが帝国領にだいぶ近づいたことで、魔界で翼の兵士の軍勢相手に防戦を続けるアズドラはようやく2人の位置を捕捉。速やかに回収班を送り出す。一方、これまでの旅でヘルクの人柄を見続けたヴァミリオは、「ヘルクは魔族の敵ではない」との結論と、「この男は心に大きな闇を抱えている、それが暴走すれば敵よりもなお恐ろしい脅威となる」との確信を得る。

そんな彼にどのような対応を取るべきかヴァミリオが悩む中、ヘルクはヘルクで共に旅をした彼女の人柄を信頼するようになっていた。勇者を殺す力を持つ己の剣をヴァミリオに渡すと、ヘルクは「もしもの時はこれで俺を殺してほしい」と彼女に依頼し自身の過去を語り始める。

幼き兄弟の苦難

ヘルクと弟のクレスは、人間界の辺境の村で生まれた。2人が幼い頃に故郷は魔物に滅ぼされ、子供でねできる仕事を求めて王都に向かうも、そこで彼らを待っていたのは孤児の兄弟など誰からも助けてもらえないという厳しい現実だった。この頃からすでに勇者としての才能を開花させていたヘルクは、弟を庇って必死に生き抜くも、栄養不足からクレスが病に倒れる。

クレスを救ってくれたのは、シャルアミという少女だった。ラファエドという貴族の娘である彼女は、クレスが死にかけていることに気付くと慌てて父に助けを求め、ヘルクたちを屋敷に招き入れる。彼女たちの看病によってクレスは一命を取り留め、「自分たちのような孤児を増やさないために、代々王国の守護を担ってきたラファエドさんのように、魔物を退治して人々を守りたい」と考えるようになる。

勇者クレスの栄光

15年後。成長したクレスは軍に志願して出世し、部下を率いて魔物と戦う立場となっていた。事実上の後援者として彼らを支えてくれたラファエドとも家族のような強い信頼で結ばれ、特にシャルアミとは憎からず想い合う間柄となる。
ヘルクはヘルクで、増加の一途を辿る魔物との戦いに身を投じ、その中で出会ったアリシアという若い女傭兵と親しくなる。アリシアは魔物に対し強い力を発揮する聖剣を所有しており、自分の力量に自信を持っていたが、それを大きく上回るヘルクの力に呆れと嫉妬と信頼を抱いていく。

やがてクレスは、勅命によって魔界に赴き、人間の国に魔物たちを送り込んでくる魔王を撃破。国中の民が「これでもう魔物が送り込まれることはない」と喜ぶが、クレス自身は魔王との戦いで負った傷が元で倒れ、そのまま意識が戻らなくなってしまう。
ヘルクとシャルアミが彼を案じる中、再び現れた魔物の大群が国を脅かす。「魔王を倒したのにどうなっているんだ」と混乱し、再びクレスに頼ろうとする人々を見たヘルクは、「もしかしたらクレスはトドメを刺し切っておらず、魔王は息を吹き返したのかもしれない」と考え、1人魔王城に赴くことを決意する。

魔族の真実

魔王城に赴いたヘルクは、そこでアズドラと出会い、「魔族は人間に敵意を持っていないこと」、「魔物は魔界の大地から自然発生すること」、「魔王がいなくなったため魔物の発生を抑えることができなくなり、一時的に人間界を含む周囲の被害が増えていること」を知る。ここを治めていた魔王トールは温厚な性格だったらしく、「それが本当なら、どうしてクレスは話も聞かずにトールを倒したのか」とヘルクは首を傾げるが、アズドラの言葉に嘘はないと確信して人間界へと引き上げていく。
しかし王国の民は誰もが「魔族は敵だ」と信じて疑わず、唯一ヘルクの話を聞いてくれそうなラファエドも「お前は騙されている」と言うのみだった。王国は「人為的に勇者を生み出す方法を発見した」と喧伝して特殊な処置を施した覚醒兵士を戦場に投入し、これが目覚ましい戦果を挙げたことで国中に決戦への機運が高まっていく。この流れを止められずに悩むヘルクに、クレスと共に魔王城に向かったゼルジオンという男が密かに接触する。「覚醒兵士とは自我の全てを奪われた人形のような存在で、国の上層部は民の全てをこれに変えようとしている」とゼルジオンは語り、この恐るべき計画にクレスは利用されているのだと言葉を続ける。

「クレスを助けるために協力してほしい」とゼルジオンに頼まれたヘルクは、「弟を助けられるのであれば願っても無いことだ」とこれを承諾。アリシアたち数人の仲間と共に城に忍び込み、そこで意識のないまま捕らえられたクレスを発見する。早速これを救出しようとするヘルクだったが、彼の前に国中から“賢者”と呼ばれて信頼されるミカロスという男が現れ、クレスを操ってヘルクたちを襲わせる。
手加減して勝てるような相手ではなく、といって弟を傷つけることもできず、ヘルクは苦戦を強いられて手傷を負っていく。見兼ねたアリシアが加勢に入ると、その一撃は彼女自身も驚くほどのダメージをクルスに与える。これを見たミカロスは、アリシアの得物が勇者殺しの魔剣であることに気付き、これを奪ってヘルクを攻撃。かつてないほどのダメージを受けたヘルクは、苦悶の声を上げてその場に倒れる。ミカロスはそのままヘルクにトドメを刺そうとするも、正気を取り戻したクレスがそれを阻む。クレスは再び操られそうになるも、兄を救うために詫びの言葉を口にして自らに勇者殺しの剣を突き立てるのだった。

仲間たちがつないだ光

「弟を救えなかった」という絶望によって暴走しかけるヘルクだったが、アリシアたちの命懸けの奮戦により城からの脱出に成功。しかしその結果アリシアたちは国王側に捕まってしまい、勇者殺しの剣で負ったダメージも癒え切らないままヘルクは彼女たちの救出に乗り出す。
折しも王国ではアリシアの処刑が始まろうとしており、ヘルクは間一髪で彼女を助け出す。しかしここにラファエドが現れ、仲間を救ったヘルクを称賛する一方で「もはや遅い」と告げる。ラファエドたちは全ての人間が持ち、発動させることもなく死んでいく勇者因子を強制的に発現させる計画を進めており、それはもはや完成していた。王国中に降り始めた不可思議な雪により、ラファエドとすでに勇者として覚醒しているヘルク以外の国中の人間がむりやり勇者因子を覚醒させられ、その力に耐えられずに怪物と化していく。

その変異は、ヘルクが死に物狂いで助けたアリシアにも及んでいた。怪物と化して自意識を失っていくアリシアに「見ないでほしい、人でいられるうちに殺してほしい」と懇願されるヘルクだったが、大切な仲間を傷つけることなどできないと涙ながらにそれを拒否。何があっても必ず助けると必死に誓うヘルクに、アリシアは「あなたの言葉を信じる。次に会う時はあなたの敵になっているかもしれないけど、それでも笑っていてほしい」と願う。これを聞いたヘルクは、苦悩と絶望を胸の奥に仕舞い込み、彼女の望み通りに笑みを浮かべる。
弟も仲間たちも救うことができなかったヘルクは、絶望に苛まれながらも怪物と化した民たちを止めるために国王の下へと向かう。国中の人間と契約を結んだ状態にある国王さえ倒せば、理屈の上では全て解決するはずだった。しかし再び城の中へと乗り込んだ彼を待っていたのは、「国王が倒れて制御を失えば、勇者化した者たちは理性を永遠に失い本物の怪物と化す」という衝撃の事実と、死人同然の状態となりながらもその血と力を利用され続ける弟クレスの姿だった。せめてラファエドと、彼と共に裏で糸を引いていたミカロスという男だけは倒そうとするヘルクだったが、その力を脅威だと認識した彼らはゲートを解放。ヘルクを強制的に魔界へと転送する。

勇者の決意と新たな絆

YAMAKUZIRA
YAMAKUZIRA
@YAMAKUZIRA

目次 - Contents