ハイパーインフレーション(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ハイパーインフレーション』とは、日本の漫画家・住吉九による経済バトル漫画。2020年に集英社の『少年ジャンプ+』にて連載を開始し、2023年に完結した。経済とバトルがかけ合わさった異色の作品。経済の歴史や仕組みが学べる内容になっており、高度な頭脳戦やその合間に挟み込まれるギャグ要素の絶妙なバランスが読者に多く支持されている。
主人公のガブール人の少年・ルークは、ヴィクトニア帝国の奴隷狩りで攫われた姉・ハルを助けるために、精巧な贋札(ハイパーノート)を身体から生み出す能力を使って戦っていく。

ルークは奴隷狩りに遭い、ハルと離れ離れになってしまった。そしてハルを助けたいと強く願った。その時現れたのが、ガブール神だ。ガブール神は、ルークに特別な力を与えるためにやってきて、ルークの願いを尋ねる。ルークは迷わず、「ハル姉を助けたい!!」と答えた。しかし、ガブール神がそれを聞き、「違う」と否定する。そしてそんなことで満足するはずがないと続けた。ルークは、自信なさげに「……ハル姉を幸せにしたい」と答える。ガブール神は「それだけか?」と再度尋ねた。それに対してルークはおずおずと「できれば その……ガブール人みんなを幸せにしたい」と言う。そこでルークの何かが弾けた。「ってかさァ!!もう全部全部俺の望むとおりに!!俺は…俺は…カネが欲しいッ!!世界を買えるカネを寄こせッ!!」と言うルークの叫びは、心からの強い願いだった。ガブール神はルークの欲望の深さに満足したのか、特別な力「身体から贋札を生み出す力」を授けた。金が全てであるという現実的な叫びであり、この漫画の根幹とも言える名セリフである。

クルツとレジャットの熱い戦い

ルーク達が秘密裏にハイパーノートを製造している古城の場所がバレ、ヴィクトニア帝国の秘密諜報部のレジャットが精鋭を引き連れて攻めてきた。ルーク達は、レジャットに捕まらないように城内を逃げ回る。そこで金貸しを営むガブール人のクルツは、ルークが逃げるための時間を稼ぐためにレジャットと戦うことになった。クルツはレジャットを地下牢に誘い込み、鍵をかけて自身もレジャットと共に牢の中に閉じこもる。そして鍵を飲み込んだ。レジャットはクルツに何度も攻撃をし、なんとか鍵を吐き出させようとする。しかしクルツはしぶとかった。

戦いの中でクルツの攻撃がレジャットにかすり、服が裂けてレジャットの肌が露出した。そこには痛ましい拷問のような痕があった。クルツはそれを見て動揺する。自分がかつていたゼニルストン自治領では、救世主を作り出すためにガブール人を拷問していた。ガブール人が耐え難い苦痛によって「世界を壊したい」、「力が欲しい」と強く願えば救世主になると課程していたからだ。実際にクルツはその実験で酷い拷問を受けた。しかし一緒に実験を受けた人物の中にレジャットはいなかった。レジャットの傷は、レジャットが救世主になろうとして自らつけたものだった。しかしあまりの痛みにレジャットは挫折した。それをクルツに指摘されたレジャットは激昂。「人間が痛みに!!勝てるわけがないだろォ!!」と言ってクルツに襲いかかる。クルツの脳裏には何十年にも及ぶ過酷な奴隷生活がよぎった。そしてクルツの口から出た言葉は、「勝てるんだな これが!!」だった。

この戦いは熱すぎるバトルして読者からの評価も高い。『ハイパーインフレーション』の中でも屈指の名場面である。

「私は誰の味方でもない カネの味方だ」

グレシャムのお決まりの言葉であり、信念であり、信条である言葉。何よりも、命よりも金儲けを優先するグレシャムは、お金が何より大好き。そんなグレシャムは、特定の誰かに情で味方をするなんてことはしない。金のためならほいほいと人を裏切るその軽薄さは非常に危ういが、逆に言えばグレシャムを儲けさせる話をもちかければ、確実に味方になってくれるし、裏切られないという信頼にもなる。「私は誰の味方でもない カネの味方だ」というセリフは、グレシャムという人間を体現する言葉なのだ。

ルーク、レジャット、グレシャムの3人の共闘

ゼニルストン自治領で大量の贋札を作り、それを持ってヴィトニア帝国の政府との交渉に勝利したルーク。そしてルークは、帝国の軍を率いてハルを助けるためにゼニルストン自治領へ進軍した。そこにはルーク、レジャット、グレシャムの3人が並ぶ姿が。。出会ってから協力しているようで協力していない、常に裏切り、裏切られの関係にあった3人が手を取り合って最後の戦いに臨む姿は、読者にも深い関係を与えた。それと同時に3人の関係が今後どのようになっていくかを期待させる場面であった。

『ハイパーインフレーション』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

一種の経済入門書として高評価

本作のタイトル『ハイパーインフレーション』は、経済学用語であり、タイトル通りに本編では経済に重きを置いた頭脳戦が繰り広げられている。作中では、「金本位制」や「インフレーション」など経済用語が多々登場し、その解説がかなり本格的かつ、わかりやすいと高い評価を得ている。一部では「一種の経済学入門」と言われるほどだ。

作者・住吉九は国崩しの経験者説

本作の魅力の一つは、経済に重きを置いた高度な頭脳戦である。その頭脳戦があまりにも高度、かつ、わかりやすく本格的すぎるので、一部の読者の間では、「作者である住吉九は、実際に経済で国崩しを行った経験があるのでは?」と囁かれている。

公式による神作画アニメPV

2022年4月、少年ジャンプグループの公式YouTubeチャンネル「ジャンプチャンネル」にて、『ハイパーインフレーション』のアニメPVが公開された。神作画とタイトルがついている通り、大変作画がよく、話題になった。

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