メタモルフォーゼの縁側(漫画・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『メタモルフォーゼの縁側』とは、自分の成長速度や周囲との人間関係に悩む主人公が、老婦人との出会いや初めての同人制作活動により成長する姿を描いた漫画作品。鶴谷香央理にとって初めて単行本化した漫画作品である。2022年には実写映画化された。17歳の女子高生・うららが、75歳の老婦人・雪と出会い、『君のことだけ見ていたい』という漫画を通じて仲を深めていく。そのなかで、うららが周囲との対人関係や、漫画を描くという未知への挑戦において、徐々に成長する様を描いている。

母とコンビニへ向かううららは、母に「うららさんさ、最近ちょっと活発になったんじゃない?よく出かけるし、ご飯もちょくちょく作ってくれるし。なんか心境の変化?」と聞かれる。うららは「いろんなこと 別にいつやってもいいのかもって 今まで考えたことなかったんだけど」と語りだす。遠くまで出かけたり、手の込んだ料理を作ったりなど、「何歳かになったら『やってもいいよ』ってなる時が来るのかと思ってたけど、別にいつでも、今やってもいいんだなーと…」と自分の思いを語る。直接描かれてはいないが、最近交流し始めた雪のことを思い出しているのだと伝わってくる。また、このシーンはうららが自室でノートの落書きからオリジナルの漫画を夢中になって描くシーンの後である。同人誌の作成に対し、前向きな気持ちになっていることが伺える。

うらら「好きなものを好きっていうのも 綺麗な人をうらやましいと思ったり 将来はこうなりたいみたいのとか そういうの全部恥ずかしい。疲れる」

新学期、うららは同じクラスになった英莉と自分を比べて、改めて英莉の美しさを実感する。また、英莉は留学したいという目標を持っているのに比べ、自分には夢がないことも気にしていることが伺える。さらに、BLが好きだということは公には言いにくいことだという思いもある。それらの重圧に押しつぶされそうになっている。そこで「好きなものを好きっていうのも 綺麗な人をうらやましいと思ったり 将来はこうなりたいみたいのとか そういうの全部恥ずかしい 疲れる」という長い独白があり、うららの苦悩を物語っている。このセリフのあとには、「咲良くんは自分の大事なものを大事にできてすごいね。私、咲良くんになりたい」というモノローグが続く。

うらら「いいえ」

英莉が夕方の飛行機で留学先へ旅立つという日、紡はうららを呼び出し、「昔傘倒して、倒れた方に歩いてく遊びやったじゃん。あの傘にでもなったつもりで答えて。俺、見送りに行かなくていいよね?」と聞く。うららは「いいえ」と答える。紡は「いやそこ普通『はい』じゃない?」と驚くも、うららは「だっておしゃれしてるし、行くつもりかなーと」と答える。そして紡はうららに途中まで付いてきてもらう。品川駅で、紡はうららに「ありがとう」と礼を言う。うららは英莉に嫉妬されたり、英莉から言われた言葉の意味がわからなかったり、紡と英莉の関係を羨んだりと、いろいろな感情を経験してきた。そんなうららが紡の背中を押す、印象的なシーンである。

コメダ先生「宇宙人可愛かったです 行き詰まってた時だったんで元気出ました」

コメダ先生はうららの描いた『遠くから来た人』の感想について、「宇宙人可愛かったです 行き詰まってた時だったんで元気出ました」と雪に伝える。雪はうららの頑張りをすぐそばで見てきた人物であり、コメダ先生の『君のことだけ見ていたい』をきっかけにうららと仲良くなった人物だったので、喜びもひとしおだった。この感想は後からサイン会に並ぶうららがコメダ先生から直接聞かされる方がいいだろうと考え、雪はうららには内緒にしていた。しかしうららは緊張のあまり喋ることができなかったため、結局雪から聞かされることになった。帰りのタクシーの中でうららは「コメダ先生のお話、先に聞かなくてよかったかもしれないです。描いてるのを見てるだけでいっぱいいっぱいだったので…」と言っている。

『メタモルフォーゼの縁側』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

作者が映画を絶賛「小さなことを小さなまま映画にしてくださった」

『好書好日』では、作者である鶴谷香央理のインタビュー記事を読むことができる。鶴谷は、実際に出来上がった映画を観た感想として、「私が漫画で描いた小さなことを小さなまま映画にしてくださったことが嬉しかったです」と話している。2人が夢中になるものをBLにした理由や、BLの魅力についても語っている。さらに、作中に登場する『君のことだけ見ていたい』を映画では『黄昏アウトフォーカス』などのBL作品で知られるじゃのめが描いていることついても話している。

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主演の芦田愛菜が作品について語る「明日も頑張ってみようかなと思わせてくれるような、大好きな作品」

映画『メタモルフォーゼの縁側』の完成を記念した世界最速上映会が2022年4月27日(水)に都内で行われ、うらら役を演じた芦田愛菜、雪役を演じた宮本信子、紡役を演じた高橋恭平、狩山俊輔監督が登壇し舞台挨拶をした。芦田と宮本がどのように関係性を深めたのか2人が語っているほか、初めてグループから離れて演技をした高橋恭平がその心境を語るなど、撮影時のエピソードや作品にまつわるトークが繰り広げられた。芦田と宮本は脚本を読んだ感想を以下のように答えている。

脚本を読んだ感想について芦田さんは「雪さんとうららの関係性を見ていると、友達になるのにも、好きなものを好きだと言うことにも、年齢なんて関係ないと思わせてくれます。そんな二人の姿が見ていて微笑ましくて温かくて、明日も頑張ってみようかなと思わせてくれるような、大好きな作品だと思いました。」と語りました。

宮本さんは「こんな素敵なお話はそうそう無いなと思いました。娘でも孫でもない女子高校生と、ある一冊の本から縁があって、そして友情が芽生えていく。撮影中は、本当に楽しかったわね。」と芦田さんに笑いかけ、芦田さんも「楽しかったです!」と笑い合う様子が印象的。

出典: www.nikkatsu.com

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『メタモルフォーゼの縁側』の主題歌・挿入歌

主題歌:芦田愛菜&宮本信子(うらら&雪)「これさえあれば」

作詞:伊東妙子 作曲:伊東妙子・篠田智仁

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