メタモルフォーゼの縁側

『メタモルフォーゼの縁側』とは、2017年11月17日から2020年10月9日まで『コミックNewtype』(KADOKAWAのウェブコミック配信サイト)に連載された、鶴谷香央理による漫画である。コミックスは全5巻「KDOKAWA」から刊行された。
物語は75歳の市野井雪(いきのいゆき)が書店でふと手に取ったボーイズラブ漫画に魅せられ、書店員の高校生・佐山うらら(さやまうらら)と交流を深めていく姿が描かれている。漫画家の西炯子は、「喜びと背中合わせである切なさを見事に描き出した、まことに愛すべき作品」と評した。
本作は東京ニュース通信社主催の「ブロスコミックアワード2018」で大賞、2019年には「このマンガがすごい!」のオンナ編1位を受賞した。さらに「第22回文化庁メディア芸術祭」のマンガ部門で新人賞を受賞した。2022年6月17日公開の実写映画では、佐山うらら役を芦田愛菜、市野井雪役を宮本信子が演じた。劇中のボーイズラブの作画は漫画家のじぇのめが担当した。

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メタモルフォーゼの縁側のレビュー・評価・感想

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メタモルフォーゼの縁側
9

名言「凡人はせめての精神」

女子高生と75歳の老婦人の友情物語という設定。漫画原作である。

夏の暑い日、市野井雪子(宮本信子)は夫の三回忌のあと、涼むために書店に立ち寄る。雪子はきれいな表紙の絵に引かれて1冊の漫画を手に取り、家に帰って読み始める。それはBL漫画だった。初めてふれるBLに心がときめく雪子。

書店でバイトをしている女子高生のうらら(芦田愛菜)は、学校のクラスにも馴染めず、どちらかというと陰キャで、オシャレにも無頓着。楽しみは自室でBLマンガを読むこと。それは誰にも言えない楽しみだった。

そんな雪子とうららが出会い、BLについて熱く深く語り合う。学校では笑顔が少ないうららが、雪子とは楽しそうに笑顔を見せる。最初はファミレスで会って話をするが、ひと目が気になるうらら。だからいつしか雪子の自宅の縁側でBLマンガを語り合うことになる。
そして、とうとう自分でマンガを作り出して販売しようとする展開に。

行動したことが誰かの心に触れ、そしてその人がまた行動を起こす。そんな映画だった。

うららの母がいう「せめての精神」が名言だった。せめてそこまでがんばる。凡人にはそこまでしかできない。その繰り返しなんだと。
同じクラスの英莉も実は留学のために努力を続けていた。その頑張りも誰かの心を動かす。

芦田愛菜がリュックを揺らしながら走る後ろ姿が、なんどか繰り返される。とても印象に残るシーンだが、その走る姿を見ているとポジティブになれる気がする。
自分もなにか行動を起こさなければと感じさせてくれる良作。

メタモルフォーゼの縁側
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友達に年齢なんて関係ないと思わせてくれる素敵な映画

17歳の高校生うららと、75歳の老婦人、雪。ある日うららのバイト先の本屋に、雪が訪れる。
雪はきれいな表紙の本を購入するのだが、実はBL漫画だった。初めて読むBLの物語にはじめは衝撃を受けるも、読みすすめていくうちに面白さに気づいていく。最新刊が欲しくなった雪は再び本屋を訪れ、うららと知り合う。
なにか劇的な出来事が起こるわけではないけれど日常であり得そうな物語なので、「あーなんかこの気持ち分かるなあ」というシーンがちょくちょくあって共感することが多かった。特にうららが本当はBLが好きだけど、学校では好きだということを隠して生活しているところ。
年頃だからこそ友達に嫌われたくなくて、好きなものを隠していることあったなーと昔の学生時代をふと思い出し、なつかしさを覚えた。
個人的に素敵だなと思った点は、以下の2つ。
・登場人物が全員良い人で見ていて終始あたたかい気持ちでいられる。
・はじめてBL漫画を読む雪の表情が非常にかわいらしく、観ていてくすっと笑える。

心から好きなものに向き合うことや、好きだと伝えることって本当に素敵なことなんだなと思わせてくれる映画。
エンディングの芦田愛菜ちゃんと宮本信子さんの歌があたたかくて癒されるので、ぜひ最後まで観てほしい。

メタモルフォーゼの縁側
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すべての登場人物を応援したくなる映画

青春とは若者だけのものではない。
いくつになっても夢中になれるものはある。
年を重ね、自分はもう何かにときめくことはない、と思っている人にもそれは突然訪れる。

夢中になれるものに出会い、世界が広がり、思ってもみない人とのつながりができる。
そんな世界の中で、子供も大人もみんな悩みを抱えている。
学校生活に馴染めず、周りと自分をくらべて落ち込む、そろそろ人生の終わりが見えてきた日々、このままでいいのだろうか…。
大きなものから小さなものまで、それぞれの中にある。

努力は必ず報われる、などという薄っぺらい言葉は正直聞き飽きたが、悩んで苦しんでもがきながらも壁を乗り越えた人にだけ見える景色がある。
そして、その景色を隣で一緒に見てくれる人がいる。

芦田愛菜さん演じる佐山うららと宮本信子さん演じる市野井雪の間に生まれる女の友情がとてもまぶしく羨ましい。
女の友情も決して悪いものではない、と思わせてくれる。

女子高生もおばあちゃんも年齢も肩書きも関係なく彼女たちが悩み苦しみ、そして壁を乗り越えようとする姿を見て心から応援したくなり、さらに自分も小さな一歩を踏み出してみようと思わせてくれる、そんな希望に満ちた映画です。

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