雨を告げる漂流団地(アニメ映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『雨を告げる漂流団地』とは、海の上を漂流する謎の団地でサバイバル生活を強いられることとなった小学生たちの奮闘と冒険を描いた長編アニメーション作品。動画配信サイトNetflixで配信されている。
小学6年生の熊谷航祐と兎内夏芽が生まれ育った団地が、老朽化により取り壊されることとなる。航祐と夏芽と同級生たちがそれぞれの理由から団地を訪れたある時、猛烈な雨が一行を襲い、気が付いた時には彼らは団地ごと何もない海洋に飛ばされていた。全員無事に帰るため、航祐たちは力を合わせてサバイバルを開始する。

『雨を告げる漂流団地』の概要

『雨を告げる漂流団地』とは、海の上を漂流する謎の団地でサバイバル生活を強いられることとなった小学生たちの奮闘と冒険を描いた長編アニメーション作品。
製作は『ペンギン・ハイウェイ』や『泣きたい私は猫をかぶる』などで知られるスタジオコロリドで、動画配信サイトNetflixで配信されている。

小学6年生の熊谷航祐(くまがや こうすけ)と兎内夏芽(とない なつめ)が生まれ育った鴨の宮(かものみや)団地が、老朽化により取り壊されることとなる。2人は家族と共にそれぞれに引っ越すが、航祐が新しい生活に順応しようと努力する一方、夏芽はそこで過ごした懐かしい日々が忘れられずに密かに閉鎖された鴨の宮団地に忍び込むようになっていた。
ある時、同級生の橘譲(たちばな ゆずる)と小祝太志(こいわい たいし)に「お化けを探そう」と誘われて鴨の宮団地に向かった航祐は、かつての自分の部屋に忍び込んでいた夏芽と出会い、自身の祖父の遺品のカメラを彼女が持っていることに気付いて驚く。返す返さないで揉める中、航祐に憧れる同級生の羽馬令依菜(はば れいな)と安藤珠理(あんどう じゅり)までもやってきたところで、一行を激しいスコールが襲う。
それがやんだ時、どういうことか一行は団地ごと水平線の彼方まで何もない海洋に移動してしまっていた。全員無事に帰るため、航祐たちは力を合わせてサバイバル生活を開始する。

『雨を告げる漂流団地』のあらすじ・ストーリー

お化け団地の冒険

熊谷航祐が生まれ育った鴨の宮団地が、老朽化で取り壊されることが決定してから数年。航祐は家族と共に新しい団地に引っ越すも、かつて鴨の宮団地で家族同然に暮らした幼馴染の兎内夏芽とは、2人をどちらもかわいがってくれた自身の祖父の熊谷安次(くまがや やすじ)の死以来ギクシャクした関係が続き、どこか気持ちの晴れぬ日々を送っていた。
夏休みが始まってすぐ、航祐は同じサッカー部に所属する橘譲と小祝太志から「鴨の宮団地にお化けを探しに行こう」と誘われる。最近工事関係者の間で、「お化けを見た」という噂が飛び交っているらしいのだ。最初は気乗りしなかった航祐だったが、止められても行く気まんまんの太志を放ってもおけず、2人に同行することとなる。

そこで航祐は、夏芽がかつて自分の祖父が暮らしていた部屋に勝手に入り込んでいるのを発見する。それはそれで褒められたことではないが、夏芽は安次の遺品のカメラを勝手に持ち出しており、さすがに看過できないと判断した航祐はそれを返すように要求する。
彼らが揉めているのを見て、航祐に想いを寄せる同級生の羽馬令依菜とその友人である安藤珠理までもが鴨の宮団地にやってくる。夏芽は頑としてカメラを返そうとせず、航祐と彼女が揉めていると、突如辺りを滝のような大雨が襲う。それがやんだ時、団地棟の周囲の景色は、水平線の彼方まで広がる大海原へと変貌していた。

サバイバルの開始

驚き、困惑する航祐たちだったが、団地はどういうわけか海上に浮いている状態で、どこへともなく流されているようだった。夢か壮大なドッキリかと友人たちが慌てる中、航祐はサッカーで培ったキャプテンシーを発揮し、「よく分からないけど遭難したらしい」と判断して思いつく限りの方法で救助を求めようと試みる。その全てが失敗した頃、彼らの前に見知らぬ少年が現れるのだった。
夏芽曰く、彼は“のっぽ”という名で、以前から鴨の宮団地で暮らしていたのだという。夏芽は鴨の宮団地に忍び込むようになってから彼と知り合い、何度かこの不思議な大海原にも来たことがあるらしく、その経験からすると眠って起きれば元の世界に帰れるという。彼女が持ち込んだ食料にもまだかなり余裕があり、一行はキャンプ気分で帰れるのを待とうと考える。しかし航祐だけは、この現象も夏芽の話もすんなりとは受け入れられず、見張りを口実に別行動を取る。

夏芽の予測は外れ、一行は何日過ごしても元の街に帰ることができなかった。次第に夏芽の持ち込んだ食料も少なくなり、このままでは食べるものが無くなると判断した航祐は、時折擦れ違う鴨の宮団地と同様に海上に浮かぶ建物に乗り移って食べられるものを調達しようと考える。その準備を整えたところで折よく通りがかった建物は、航祐たちのサッカーチームが拠点にしていた、数年前に取り壊されたスポーツクラブだった。
勝手についてきた夏芽と共にここを調べる中、何者かが備蓄用の食料を2人の前に置いて立ち去る。取り壊されたはずのこの建物がどうしてここにあるのか、食料をくれたのは誰なのかも分からないまま、これ以上時間をかけては戻れなくなると判断した航祐と夏芽は譲たちにサポートされつつ鴨の宮団地に帰還する。

真実と激突と衝突

数日分の食料を手に入れて、一行は安堵する。しかしそんなある日、航祐はのっぽの服の下の腕から植物が生えているのを見てしまい、友人たちもいる前で彼にその正体を問う。
のっぽは素直に自分の肌から植物が生えているのを見せた上で、自身の素性を語り始める。それによれば、彼は鴨の宮団地の化身ともいうべき存在で、航祐や夏芽のことをずっと見守っていたのだという。彼らがこの世界に来てしまったのも、自分が呼んだせいかもしれないと自信無さげに詫びるのっぽを、「誰のせいでこんな目に遭っていると思っているのか」と令依菜は糾弾。しかし譲、太志、珠里の3人は「人間ではなさそうだけど悪い人でもなさそうだし、今まで一緒にやってきた仲間だ」とのっぽを受け入れる。結局航祐たちは、“全員で元の世界に帰る”との想いを新たに団結するのだった。

のっぽは「この世界に来たのは自分のせいである」との漠然とした認識は持っていたが、どうしてここに来たのかも帰る方法もまったく分からないと言う。とにもかく自分たちで切り抜けていくしかないと判断した航祐たちだったが、食料の問題だけはいかんともしがたく、ある日古びたデパートが近づいてくるのを見てここに乗り込むことを計画する。
しかしこのデパートは思っていた以上に老朽化しており、ろくな食べ物も発見できないまま探索のタイムリミットを迎えてしまう。「元の世界でこのデパートに前に来たことがある」と語り、どうしてこの世界に同じデパートがあるのか困惑する夏芽の手を引いて引き上げる中、トランシーバー越しに太志から緊急の連絡が入る。海流のまま動くデパートが予想を超えて鴨の宮団地に接近し、このままではぶつかるというのだ。慌ててデパートを脱出する航祐たちだったが、結局デパートは鴨の宮団地に衝突し、その衝撃で珠理が頭を打って意識を失ってしまう。

鴨の宮団地からの脱出

珠理は昏々と眠り続け、ろくな医療知識も無い航祐たちはそれを見守ることしかできなくなる。令依菜に「お前がこんな団地に忍び込んだからだ」と責められた夏芽は、航祐たちを巻き込んだ自責の念から1人で行動することが多くなる。これを案じた航祐が彼女を慰めると、夏芽は安次のカメラを返さない理由について打ち明ける。
両親が離婚した後、母に連れられて鴨の宮団地にやってきた夏芽は、「自分がもっと上手に両親を支えていれば、家族はバラバラにならなかったのではないか」との想いに縛られ誰にも甘えられなくなっていた。そんな彼女を本当の孫のように愛してくれたのが、母の仕事中に預かることを了承してくれた安次だった。

いつしか夏芽は安次を本当の父か祖父のように敬愛するようになったが、彼は病を経て命を落としてしまった。その安次が夏芽と「航祐へのサプライズプレゼントにしよう」と相談していたのがあのカメラで、本当はずっと航祐に渡そうとしていたのだという。しかし夏芽と些細なケンカをしたせいで航祐は安次の死に目には間に合わず、その罪の意識が邪魔をして彼に話しかけることもできなくなった。安次が「航祐に喜んでほしい」と望んで選んだあのカメラをどうすれば航祐に受け取ってもらえるのか、安次の最後の願いの通りに喜んでもらえるのか分からなくなり、ずっと渡しそびれていた。夏芽の告白を聞いた航祐は、安次に最後に「夏芽と仲直りしろ」と言われたことを思い出す。
鴨の宮団地はデパートとの衝突で損壊し、少しずつ浸水して沈没を始めていた。いよいよ一行が絶望を抱き始めた時、のっぽが「自分を置いて鴨の宮団地から脱出しろ」と言い出す。この世界に来た原因が彼であるなら、そこから離れれば元の世界に帰れるかもしれないというのだ。珠理もなんとか目を覚まし、他に手はないと判断した航祐たちは脱出用のイカダを作り上げるも、かつて“家族の離散”を経験した夏芽は「のっぽを置いていくなら自分も残る」と言い出す。

本人の言う通りのっぽを置いていくか、それとも一緒にこの冒険を切り抜けてきた仲間として連れていくべきか一行は悩み、航祐は後者の意見を採用。強いリーダーシップで一行を導いてきた航祐の意見に譲、太志、令依菜、珠理も従い、夏芽は安堵する。しかしいざ脱出という時にのっぽは自分だけ鴨の宮団地に残る道を選び、これにショックを受けた夏芽は彼を助けるためにイカダから飛び出してしまう。航祐は慌てて彼女を連れ戻そうとするも波に阻まれ、溺れかかったところを譲と令依菜によって引き上げられるのだった。

日常への帰還

のっぽの推測通り、航祐たちを乗せたイカダは日常への帰還を果たそうとしていた。しかし航祐は「夏芽がいないのに帰っても意味がない」と涙を流し、彼女を行かせてしまった後悔に崩れ落ちる。そんな彼らの前に、まるで“鴨の宮団地と同じ場所を目指す”かのように海上を行く観覧車が現れる。航祐の言葉と涙に共感した譲たちは、夏芽たちを救うためにこの観覧車を利用することを思いつく。
この観覧車は令依菜が初めて連れていってもらった、今はもう閉演した遊園地のもので、その中にはのっぽのように肌から植物の生えた少女がいた。彼女は令依菜のことを覚えていると語り、航祐たちに協力して鴨の宮団地を追う。一行は力を合わせて夏芽とのっぽを救おうと奮闘するが、吹き荒れる嵐に飲み込まれ、航祐、夏芽、のっぽを乗せた鴨の宮団地は海中に没していく。

必死に2人の名を呼ぶ譲たち。この先何が起きても“家族”と一緒なら怖くないと互いを励まし合う航祐と夏芽。これを見たのっぽは、ただ自責の念に後悔することをやめ、「自分には航祐たちを元の世界に帰す義務がある」と奮起。全てを諦めていた彼の中に芽生えた強い想いは、鴨の宮団地を海上へと浮上させ、航祐と夏芽は譲たちとの再会を果たす。
やがて鴨の宮団地はどことも知れぬ陸地に到達するが、そこにいたのはのっぽと同様に肌から植物が生えた人々だった。自分や彼らが何者なのかについては語らぬまま、のっぽは「自分はここに来るためにこの世界に来た」と言って鴨の宮団地を降りていく。それを見送った航祐たちは、気付けば元の世界に、解体工事の進む団地の中へと戻っていたのだった。

あの大海原がなんだったのか、そもそも本当の出来事だったのか、誰にも証明できないし分からない。当たり前のように続いていく日常の中、航祐は夏芽が抱えてた悩みを理解し、彼女と家族同然の交流を再開。ようやく彼女から手渡された安次のカメラで撮った写真を眺め、あの冒険を振り返るのだった。

『雨を告げる漂流団地』の登場人物・キャラクター

熊谷航祐(くまがや こうすけ)

CV:田村睦心

鴨の宮団地で生まれ育った少年。小学6年生で、地元のサッカークラブでは夏芽と共にツートップを務めている。
突如団地ごと大海原に飛ばされるという異常事態の中、サッカーで培ったキャプテンシーを発揮して友人たちをまとめていく。いずれ食料が無くなることを見越してその確保を考えるなど建設的に物事を考える能力を持つが、祖父の安次の死去以来生じてしまった夏芽との間の溝をどう解消すればいいか分からずにいる。

兎内夏芽(とない なつめ)

CV:瀬戸麻沙美

鴨の宮団地で育った少女。航祐と同じ6年生で、彼と同じサッカークラブでツートップを務めている。作中のセリフによると、航祐はサポートやアシストに回ることが多く、シュートを決めるのはもっぱら夏芽の方だったようである。
両親の離婚を経て母と共に鴨の宮団地に引っ越してきた立場で、家族というものを信じられなくなっていた。母の仕事中に面倒を見ることを了承してくれた安次に懐き、その孫で同い年の航祐とも親しくなり、彼らと家族同然の交流を続ける。しかし安次が病死し、鴨の宮団地の取り壊しも決まったことで再び“家族”を失い、解体工事の進む鴨の宮団地に忍び込むことを繰り返していた。

橘譲(たちばな ゆずる)

CV:山下大輝

航祐の同級生で、同じサッカークラブのチームメイト。大柄な体格を生かし、チームではキーパーを務めている。
4人兄弟の長男で、責任感が強く温和な性格。普段は航祐にリーダーシップを委ねているが、必要だと判断した時は積極的に彼を支える縁の下の力持ちである。

小祝太志(こいわい たいし)

YAMAKUZIRA
YAMAKUZIRA
@YAMAKUZIRA

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