お文具といっしょ(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『お文具といっしょ』とは作者「お文具 @imoko_iimo」がTwitterに投稿した4コマ漫画から誕生した作品である。白くて丸いお文具さんが仲間たちとともに癒しのある毎日を過ごすという内容で、2020年1月15日にYouTubeに投稿したことで人気に火がついた。旅行、ルーティン紹介、激辛カップ焼きそばに挑戦、作業系動画など幅広い内容の動画が毎週水、金、日曜日の20時ごろに投稿される。講談社からは単行本も出版されていて、これはTwitter上の作品に書き下ろしを加えて収録したものである。

ブラッシングのご褒美に「ぷちゅーる」をもらう子猫さん。

ちゅーるに似たペースト状の猫用おやつ。
猫さんが子猫さんによくあげるおやつで、『毛がパねぇ』では猫さんがブラッシングを我慢したご褒美として子猫さんに渡した。子猫さんはいつも「ぷちゅーる」を煙草のようにくわえ、一服する真似をしながら食べる。子猫さんの見掛けによらない大人びたこの仕草は、猫さんをたびたび驚かせた。

『お文具といっしょ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

猫さん「心がいっぱいになったらお腹をいっぱいにしようね。」

名も無き者さんは憂鬱な気分を追い払おうと、猫さんが経営する喫茶店に夜遅く出向く。真夜中にも関わらず、そこには焼きたてのパンが用意されていた。

『明日なんて来てほしくない』において、猫さんが名も無き者さんにかけた言葉。

日曜の夜、名も無き者さんはソファーに寝そべりながら明日のことを思い浮かべていた。暗い気持ちが次から次へと押し寄せ、身体は眠りたいのに心が眠れない。自分なのに自分ではない感覚に襲われた名も無き者さんは、ただ無駄に過ぎ去っていく時間に身をゆだねるしかなかった。

そこに1通、猫さんから「こんな時間だけど、パン焼いたよ。食べにくる?」というメッセージが届いた。

外に出るためのエネルギーをふりしぼり、猫さんが経営する喫茶店に辿り着くと、そこにはお文具さんの姿もあった。
名も無き者さんとお文具さんの2人がパンを頬張ると、猫さんは「心がいっぱいになったらお腹をいっぱいにしようね」と言った。

その言葉を聞いて少し安心した名も無き者さんは、明日への活力を次第に取り戻すのであった。

猫さんのこのセリフは、慰めるのではなく、叱咤激励するのでもなく、根掘り葉掘り何かを聞き出そうとするものでもない。疲れ果てた人にただ寄り添おうとする傾聴の姿勢から発せられた言葉である。何も聞き出さず他者に寄り添うことの尊さを表現した言葉は、多くのファンを惹きつけて名言となった。

お文具さん「物事を成し遂げようと思わなくて良いのです。失敗ばかりを考えなくて良いのです。」

名も無き者さんに、「〇を1つ足してみて」とアドバイスするお文具さん。

『失敗が怖くて進めないあなたへ』において、お文具さんが名も無き者さんにかけた言葉。

最近、仕事を何のためにするのか分からなくなってきた名も無き者さんは、悶々と暗く重い気持ちを抱えていた。
明日仕事に行くのがつらい。仕事とはいったい何なのだろう。どうして自分は働いているんだろう。
毎日同じことの繰り返しで、時間の感覚さえ実感がない。
「明るい日」と書いて「明日」のはずなのに、名も無き者さんは自分にはもう二度と明るい日が来ないと思っていた。
繰り返すのは失敗ばかりで、また明日も失敗する。だから明日なんてもう来てほしくないと落ち込む名も無き者さんに、お文具さんは「物事を成し遂げようと思わなくて良いのです。失敗ばかりを考えなくて良いのです。」と言った。

お文具さんは、「Lose」ではなく「Loose」に目を向けるように名も無き者さんに助言した。マルを1つ増やすだけで「失敗」から「ゆっくり」へと意味が変化したことに感心した名も無き者さんは、徐々に気持ちを落ち着かせたのであった。

お文具さんは「Lose(失敗」)にマルを1つ足して「Loose(ゆっくり)」に変化させた。失敗を恐れて身動きが取れなくなっている名も無き者さんに、「ゆっくりでだいじょうぶ」と促した場面は作中でもトップの名場面である。

お文具さん「流行り廃りはあるかもしれないけれど、物だって巡り行く者なのです。」

「もう一度ご主人に会いたい」と願う廃棄されたロボット。疲れ果てて動かなくなった彼を、お文具さんがどこかへ連れていく。

『僕は人気のロボット』は、20年前に大流行したロボットが1人彷徨うシーンから始まる。

ロボットは自分のことを「僕は人気者」と思い込んでいるが、実はすでに廃棄されている。自身がもう時代遅れの古いデバイスであり人々から見向きもされなくなったという現実を理解できていない。ゴミ袋に入れられたことを「ご主人がビニールの袋を着せてくれた」としか認識しておらず、いつか迎えに来てもらえると信じ続けている。しかし廃棄されてからすでに10数年が経過しており、とうとう現実を直視しなければいけない時がやってきたのだった。

ご主人との思い出を胸に目的のない旅を続けてきたロボットだったが、ある日とうとう力尽きた。「せめて最後にご主人に会いたい」と願いながら眠りにつく瞬間、なんとお文具さんがどこからともなく現れたのだった。お文具さんはロボットを抱え、どこかへ連れて行った。

ロボットは解体され、部品はリサイクルされてスマホに再利用された。そのスマホはロボットをかつて所有していたご主人のもとへと届けられ、ロボットは再びご主人のもとに帰ることができたのだった。

ロボットが待望の再会を果たして喜んでいる様子を傍目に、猫さんは「また捨てられるかもしれないのによかったの?」とお文具さんに聞いた。お文具さんは「流行り廃りはあるかもしれないけど、物だって巡り行く『者』なのです」と静かに答えた。

科学技術の進歩によって新しいデバイスが次々と登場する現代社会では、物が短いサイクルで廃棄されるようになっている。「必要な物だけを丁寧に、大切に使えばいい」と視聴者に伝えて物との接し方の再考を促したこのエピソードは、お文具さんを代表する名場面となった。

『お文具といっしょ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

疲れた社会人を癒そうとして誕生した作品

『お文具といっしょ』は、作者の周囲に仕事で疲れた社会人が多く存在したため、そのような人たちを癒そうという思いから生まれた作品である。作者がMacBookProを購入したことでアニメ制作が開始され、2020年1月15日にYouTubeに最初の動画が投稿された。

お文具さんのモデルはサンショウウオやウーパールーパー

お文具さんの見た目はサンショウウオやウーパールーパーを参考にしてデザインされた。また口調や行動は作者自身を投影している。

男性説が囁かれていた作者

『お文具といっしょ』(講談社)では、複数のお文具さん達と彼らのご主人であるサラリーマン風の若い男性が登場する。作者は以前からTwitterで「お文具さんの仕草や口調は自分をモデルにしている」と公言しており、そのせいか次第に作品と作者を同一視するファンが増えてきた。
そんななか、『お文具といっしょ』に登場するサラリーマン風の男性自身にも実は作者の人格や生活が投影されているのではないかという考察が登場し、「作者=男性」説が流布するようになったのである。
また、作者は自身のことを「会社員兼イラストレーター」と紹介しているが、「作者=男性」説を唱えるファン達は「女性なら自身をOLと名乗るはず」と主張し、この考察を支持した。

作者は1996年生まれの京都出身女性

作者「お文具」は、素性のほとんどを明かしていない。
そのためファンの間では、作者は男性なのではないかという声も少なくなかった。しかし、声だけのテレビ出演で作者の性別が女性であることが判明した。
また、Twitterのプロフィール欄には誕生日が1996年3月10日と記載されている。ファンの間ではこの日が作者の誕生日だということで見解が一致している。
出身地については2018年12月18日にTwitterで「作者は京都の人ですが、」とつぶやいてる。YouTube上に投稿される動画でもたびたび関西地域のイントネーションが散見されていた。当初は大阪出身説が唱えられていたが、以前のツイートを遡ったファンによって当該箇所が確認されて京都出身であることが明らかとなった。動画内では『水曜どうでしょう』(1999年から2002年にかけて放送された北海道のローカル番組)をネタにしたと思われるシーンや静岡のイントネーションに聞こえる単語の発音が存在したため、北海道説や静岡説が唱えられていた時期もある。作者が自身の素性に関して明言したのはこの1点だけである。

Utagekuma3
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