お文具といっしょ(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『お文具といっしょ』とは作者「お文具 @imoko_iimo」がTwitterに投稿した4コマ漫画から誕生した作品である。白くて丸いお文具さんが仲間たちとともに癒しのある毎日を過ごすという内容で、2020年1月15日にYouTubeに投稿したことで人気に火がついた。旅行、ルーティン紹介、激辛カップ焼きそばに挑戦、作業系動画など幅広い内容の動画が毎週水、金、日曜日の20時ごろに投稿される。講談社からは単行本も出版されていて、これはTwitter上の作品に書き下ろしを加えて収録したものである。

『お文具といっしょ』の概要

『お文具といっしょ』とは、作者である「お文具 @imoko_iimo」がTwitterに投稿している4コマ漫画から誕生した作品である。

同作品の作者自身の名前も「お文具」であるため、作品誕生時はファンがしばしば混乱に陥った。

単行本『お文具といっしょ』は2019年に講談社から発売されていて、Twitterに掲載された作品と書き下ろし作品が収録された。複数のお文具さんたちとサラリーマン風の若い男性である「ご主人」を中心に据えた物語である。プリンさんたちが登場せず、お文具さんが複数存在するのは初期のお文具さん作品の特徴である。単行本とYouTube上でのストーリーは地続きになっておらず、お文具さんの性格や口調もそれぞれ異なる。

2020年1月15日、YouTubeチャンネル『お文具のアニメ』が開設され、「お文具チャンネルを開設いたしました」と題した動画が投稿された。動画内ではお文具さんがお尻を振ったり、ノートPCで撮影した動画をチェックしている。シンプルな内容ではあるがこの初投稿の動画を機にお文具さんの人気に火が付き、一躍人気キャラクターとなった。

YouTubeの『お文具のアニメ』はTwitterの4コマ漫画と比較するとストーリー性が高い。たとえば人気の「モーニングルーティン」シリーズからは、プリンさんがお文具さんを起こしに行くこと、猫さんが喫茶店を経営していること、ゼリーさんは苔の上で満天の星空のもとに眠ること、名も無き者さんは自己肯定感が低いことなど、ぞれぞれのキャラクターの個性が詳細に描かれている。ルーティン系の動画の人気が高いのは、キャラクターそれぞれの持ち物や習慣が作者自身のものを反映させているため現実的な描写が多く、親近感を抱きやすいためである。例えば作中では猫さんに保護された「子猫さん」というキャラクターが存在するが、作者自身もこのキャラクターによく似た子猫と暮らしており、その様子をTwitter上に公開している。

『お文具といっしょ』のあらすじ・ストーリー

TwitterやInstagramに、お文具さんのイラストや4コマ漫画が投稿されている。4コマ漫画は基本的には1話完結型であり、起承転結にはこだわらない作風である。YouTubeに投稿される予定の動画の告知もTwitterで行われており、お文具ファンが情報収集を行う際はTwitterを追うのが最速の手段として知られている。

お文具さん作品のファンは「文学者」と公式に命名されている。グッズ販売の告知の際はTwitterで「文学者さまへ」と呼び掛けられることが多く、ファン同士もお互いのことを「文学者さん」と呼び合う文化がある。

Twitterで投稿される漫画は、それぞれのキャラクターを単独で取り上げているものが多い。主に新作動画の告知やイラスト投稿、お文具グッズ販売のリツイートを主体として運用されているため、YouTubeに比べると各キャラクターの関係性や個性がつかみにくい。Twitter上ではお文具さんたちの新しい生活スタイルの紹介や物語の展開はないが、YouTube上での新作ネタを盛り込んだイラストが投稿されている。

YouTubeに投稿されている動画では、作風が少しずつ変化している。初投稿時お文具さんたちの顔は目が小さくて口が大きかったが、徐々に目が大きくなり口がおちょぼ口へと変化した。また初投稿時の動画では目鼻口が離れていたが、回を追うごとに目鼻口が集約して顔の中心に描かれるようになった。またその他の変化としては、お文具さんたちの輪郭がどんどん太くなっていることなどが挙げられる。全体としては、お文具さんたちの姿かたちはどんどん幼く可愛らしくなっている。

YouTubeに投稿されている動画は、『頑張りすぎている人に見てもらいたいアニメ』に代表される癒し系タイプ、『指をつかって見るアニメ』に代表される文学者参加型タイプ、『モーニングルーティン』に代表される私生活紹介タイプ、『旅行Vlog』に代表される全員集合タイプ、『【勉強用・作業用ジャズBGM】一緒にお文具の曲を聴きませんか?』に代表される勉強用/作業用タイプ、『【眠れない人のための動画】お文具と一緒に眠りませんか』に代表される睡眠タイプの6つに分類される。

『頑張りすぎている人に見てもらいたいアニメ』

『頑張りすぎている人に見てもらいたいアニメ』は数多くある動画の中で再生回数が最も多い動画である。1分にも満たない動画であり、そのうち3分の1がエンディングであるにも関わらず、お文具さんと言えばこの動画を思い浮かべるファンは多い。

「がんばらな糸」に絡まって身動きが取れなくなってしまったお文具さん。それを他の2人のお文具さんが大急ぎでほぐしていく。緊迫した時間が流れるなか、漸く糸はほどけ、3人はおしりを振ってダンスした。

この動画では、お文具さんが「頑張ること」を頑張っているのはよくないと伝えている。自分の願いや望みが分からないままただ「頑張ること」を目的にするのではなく、少しの間立ち止まってみることの大切さを実感する動画である。

YouTubeチャンネルが開設されてからまだ間もない時期(2020年2月23日)に投稿された動画のため、お文具さんが3人同時に存在する。複数のお文具さんが登場するのは初期お文具さん作品の特徴であるため、この動画はTwitterに投稿され始めた頃の雰囲気を色濃く残す。

『指をつかって見る動画』シリーズ

『指をつかって見る動画』

バレンタインデーのある日、お文具さんが視聴者に対して「指を置いてほしいのです」とお願いをした。画面右下にある赤枠を隠すように指を置いてほしいのだそうだ。指示通りに赤枠に指を置いて暫く待っていると、何かを大切そうに抱えたお文具さんが戻ってきて、指の下にそっとそれを隠した。
画面から指を離してみると、なんとそこには小さなプリンチョコが置かれていた。
お文具さんからバレンタインデーにプレゼントをもらえるという斬新なエピソード『指をつかって見る動画』は視聴者に驚きと癒しを与え、やがて人気シリーズとなった。

『指をつかって見る動画2』

『指をつかって見る動画2』では、お文具さんが視聴者の指の間で小刻みに縄跳びをする。前回と同様に指の下に何かを隠す展開を予想していた視聴者はお文具さんが突然縄跳びを始めたことに驚き、このシリーズの虜となる人が続出した。

『指をつかって見る動画3』

『指をつかって見る動画3』では指の下から雪に隠れていたふきのうとうが現れ、お文具さんが「もう春ですね」と囁く展開となった。すると突然ふきのとうの妖精が立ち上がり、「また見つかってしまった。もうこの星にはおれぬ」と言ってどこかへ飛んで行く。お文具さんは唖然と驚きながらも「新天地での更なる飛躍を心よりお祈り申し上げます」と言うしかなかった。ふきのとうの妖精が宇宙へ旅立ったため、1や2によりも広い空間へと物語が広がる展開となった。また、隠れていたふきのとうの妖精の可憐な姿と古めかしい言葉遣いにギャップ萌えする視聴者が続出した。

『指をつかって見る動画4』

『指をつかって見る動画4』では、指を画面から外したとたんにその場所にヒビが生じていた。お文具さんは慌てた様子でひび割れた穴を隠したが、動揺は隠せない。指の下にプレゼントが置かれることを期待していたのに壁の穴を見せられて、視聴者の間にも緊張した時間が流れた。
しばらくすると、穴の中から音が聞こえた。なんと穴の中には空間が広がっていて、プリンさんがそこで「ごーしごし、ごーしごし、タオルごしごしプルプルプリン」と踊っていたのである。その後何の脈絡もなくプリンさんが眼鏡をかけ、お文具さんがその姿を褒めたたえた。まるで風邪を引いた時にみる夢のような展開であり、『指をつかって見る動画』シリーズの中でも異彩を放つ回である。

『指をつかって見る動画5』

『指をつかって見る動画5』は、忍者に扮したお文具さんの「にんにん」という掛け声から動画が始まる。今回は指の下の卵が孵化し、ひよこが誕生した。お文具さんは生命の神秘に感動した。

『指をつかって見る動画6』

『指をつかって見る動画6』では、開始早々お文具さんが画面いっぱいに映り、左右にキュッキュと音を立てながら揺れ始める。なんと画面を内側から掃除してくれると言うのだ。お文具さんはこれを「顔面キュッキュ」と命名した。ひと息ついたお文具さんは「今回も指をお借りします」と丁寧に断りを入れ、視聴者の指の下にそっとマスクを置いた。この動画は2020年4月22日に投稿され、当時の社会情勢を強く反映した回として根強い人気を誇っている。
当時、新型コロナウイルスによる特別措置法に基づく措置として2020年4月7日から5月25日の期間に第1回緊急事態宣言が発令されていた。通常、新学期は4月上旬から開始するが、この年だけはほとんどの教育機関が新学期を5月下旬から開始した。遠隔授業等の教育設備を整えるために新学期の開始時期が約1か月遅れることになったが、「延長した春休み期間」の対応やサポートは各学校や各地域によってさまざまで、子どもたちは多くのストレス環境に晒された。また、マスクや消毒液の不足、社会的距離を保つために行動を制限されたりと、心理的に不安定な状況下で過ごさざるを得ない人々が続出した。そんな状況の中、動画が開始してすぐ画面いっぱいに現れたお文具さんに当時の視聴者は大いに勇気づけられた。投稿された当動画はお文具さんの繊細な優しさが十分に表現されており、当時の不安な気持ちとともにこの動画を振り返る人も少なくない。

『指をつかって見る動画7』

『指をつかって見る動画7』では、特別ゲストとしてプリンさんが登場する。動画の進行は1~6までのものと変わりなくお文具さんが進めていたので、プリンさんは思わず「僕要るのかな」と呟いた。
指の下からは「済」の字が表れ、それが郵便物受け取りの領収印であることが徐々に明らかとなる。配達員に扮したお文具さんが「元気を出せと言われても、誰も元気を持ってくる方はいないので、お届けにあがりました」と言って箱を差しだしてくれる非常に愛らしい動画である。この動画が投稿されたのは2020年5月22日で、日本政府により全国民にマスクの配布が開始された時期と重なる。お文具さん作品は作者が物事をストレートに受け取られぬように細心の注意を払って作成しているとのことだが、この動画はそれが端的に表れた回である。

『指を使って見るアニメ』

『指を使って見るアニメ』では、視聴者が置いた指の位置にお文具さんが素早く頭を合わせた。指はお文具さんのちょうど頭のてっぺんを押す形となり、今回はどうやらプレゼントをもらえるわけではないらしい。しばらく待っているとお文具さんから指を離すように言われて、指示に従うとお文具さんの寝ぐせが爆発した。視聴者はお文具さんの寝ぐせを押さえつけていたのである。お文具さんは丁寧に「寝ぐせを押さえてくれてありがとう」と礼を言った。動画の後半ではプリンさんも参加し、指を使ってお文具さんの寝ぐせを消し飛ばした。

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