保健教師アン・ウニョン(韓国ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『保健教師アン・ウニョン』とは韓国のホラーファンタジードラマである。作家チョン・セランの「保健室のアン・ウニョン先生」がNetflixオリジナル作品として映像化され、2020年9月25日より配信されている。人間の欲望から生み出される「ゼリー」が見える保健教師のアン・ウニョン。おもちゃの剣とBB銃で、人間に悪影響を及ぼすゼリーと戦う。ウニョンは、漢文教師のホン・インピョとともにゼリーが引き起こす問題に立ち向かっていく。

『保健教師アン・ウニョン』の概要

『保健教師アン・ウニョン』とは、2020年9月25日から配信されているNetflixオリジナル作品のホラーファンタジードラマ。韓国でのテレビ放送はなく、Netflixでのみ観ることが出来る。原作は、韓国のサイエンス、フィクション、ファンタジー作家チョン・セランの小説『保健室のアン・ウニョン先生』。チョン・セランは26歳の時に、著作『フィフティ ピープル』が日本語に訳されて出版され、日本語に訳されたことのある韓国の作家として最年少の作家になった。若手人気作家の『保健室のアン・ウニョン先生』の映像化が発表された当初から、韓国での期待値は高かったようだ。ドラマの脚本もチョン・セランが手がけている。

『保健教師アン・ウニョン』のあらすじ・ストーリー

ゼリーの正体と木蓮(モクリョン)高校の関係

保護膜に覆われているホン・インピョ。

ゼリーと戦う使命を持つ本作の主人公アン・ウニョンの幼少期から物語は始まる。ウニョンには、人ならざるもの「ゼリー」が見える。ゼリーは人の姿であったり、カタツムリの粘液のように白くて透明なノリのようなものであったり、可愛いタコのキャラクターを模したような個体であったりと様々な姿で現れる。ほとんどのゼリーは現れても、人に害を及ぼさずに完全に消えてなくなる。亡くなっているウニョンの母も、ウニョンのことを心配してか、ゼリーとなってウニョンに寄り添うことがあった。
ウニョンは「チョンウォンの森幼稚園」に通っている。ゼリーが見えることに戸惑っていたウニョンは孤立してしまい、父はそのことを心配していた。そんな父を励ますように、手を握る幼稚園の先生。その二人の手の間には、ゼリーが伸びる。
ウニョンは幼いながらに、このゼリーの正体は「人間の欲望の塊」で、人間が作り出すものだと気付く。

時に負の感情が蓄積してしまったゼリーは、人間に害を及ぼす。これがゼリーのせいだと知っているのは自分しかいない。生まれながらに人を救う運命を背負っていることを自覚するウニョン。この運命に不満を抱くも、ゼリーと戦う使命を全うしていく。

時は過ぎて、大人になったウニョンは、木蓮(モクリョン)高校の保健教師として勤務している。保健室のロッカーを開くと、面白いアイテムがいっぱい。BB弾、招き猫、大仏、水晶、ロザリオ…。国もバラバラで雑多な道具の数々は、まるでおもちゃ箱だ。だが、ここにある道具こそが有害なゼリーと戦うアイテム。おもちゃの剣とBB弾の銃でゼリーを倒すのだ。おもちゃの剣は、15分間使用可能。BB弾の銃は1日22発まで。エジプトのアンクとバチカンのロザリオ、浮石寺(プソクサ)の数珠と京都の神社のお守りがあれば、28発まで使用可能。悪霊を祓うため、爪には鳳仙花の色素を塗る。

さて、木蓮高校の生徒たちへと話は変わる。毎朝、元気になれる謎の体操と15秒間全力で笑うことをクラス全員で毎朝行う変わった高校。

バスケ部主将のタコが、明るくて好奇心旺盛な同級生の少女アラへの壮大な告白を企て、バスケ部総動員で準備を進める。アラに想いを寄せていた同級生のスングォンは、慌ててアラを探しに行く。そんなスングォンのうなじに突然何かが突き刺さった。保健室でウニョンに診てもらうと、うなじからは赤いハートのゼリーが。発熱の可能性を考慮し、早退を勧めるウニョンだが、スングォンは断って保健室を出ていってしまう。保健室の外には、スングォンがもう一人…。それはゼリーのスングォンだった。

ウニョンは、スングォンを早退させるべく、担任教師に会いに行く。担任教師ホン・インピョは、ゼリーから身を守る「保護膜」に包まれた選ばれた人間だった。インピョ本人に自覚はないが、保護膜が見えるウニョンは興奮する。

足の怪我を庇いながら、スングォンを探すインピョ。そんな中、スングォンのゼリーは数を増やしていく。ゼリーの異常な繁殖力を不思議に思っていたウニョンは、ゼリーが漏れ出す地下室への入り口に気付いた。地下室の鍵を探してみると、地下室の鍵を管理しているのはインピョであることが分かった。インピョは創立者の孫で、創立者が亡くなった後は誰も地下に入れなくなったらしい。もともと指定の消毒会社「イルグァン消毒」が地下室を管理していたようだが、連絡が取れなくなり、地下室は放置されていた。仕方なくウニョンは、地下室の鍵をおもちゃの剣で断ち切る。地下室では大量のゼリーが巣食っていた。やけくそになりながらゼリーを倒していると、後ろにはインピョの姿が。ゼリーの見えないインピョに、ウニョンは「ズンバをしているのだ」と苦しい言い訳をする。「ズンバ」とは、スポーツジムで行われるダンス系の運動のことだ。

スングォンの傷が地下室のせいなのか疑いながらもインピョは、ウニョンとともに地下室を見て回り、しめ縄のついた扉を発見する。そこには、「圧池石(アプチソク)」と書かれた石が置かれていた。戻ろうと促すウニョンをよそに、興味本位で石の裏を見ようとするインピョ。ウニョンが止めようとするも虚しく、圧池石をひっくりかえしてしまう。

圧池石の裏には、この地の秘密が書かれていた。ここはもともと大きな池だった。情人を失った若者たちが身を投げる場所。あまりにも自殺者が増え、自殺に見せかけた他殺死体も見られるように。池では、死体を食べていたナマズやカエルなどが肥え太っていったという。役所のお達しでこの池は埋められた。その上に建てられたのが木蓮高校というわけだ。

校内では、タコによるアラへの告白の真っ最中。地震が起こり、生徒が倒れ始めた。そのほかの生徒たちは次々に狂い始め、気をつけの姿勢のまま校内へ走っていく。生徒たちは屋上を目指し、次々に屋上から飛び降りようとする。屋上は大混乱。生徒たちが飛び降りようとする地面は地割れを起こしながら、大きな穴が開いていく。

屋上から飛び降りようとする生徒の頭を片っ端からおもちゃの剣で叩き落とすウニョン。大きな地震が起こり、地面に空いた穴から、醜い怪物のゼリーが現れる。その姿は、カエルのようなトカゲのような醜い怪物。生徒たちを口の中に吸い込もうとする。騒ぎを聞きつけたインピョも屋上にたどり着くがなす術はない。例外なく飛ばされていくウニョンとインピョ。二人の手が偶然触れ合う。すると、インピョの保護膜の力でウニョンの力が回復する。不気味に笑うウニョン。全ての力を込めて、怪物の口にBB弾を打ち込む。その弾を受けた怪物は、カラフルなゼリーとなって飛び散った。生徒たちは正気を取り戻し、一件落着。アラとスングォンは両想いだったことが判明し、スングォンのゼリーも無事に消滅した。

インピョと手を繋ぐと力を充電できると知ったウニョンは、インピョの手を握りしめて離さない。力を使い過ぎて、死にそうだったのだ。何も見えないインピョはウニョンのイカれ具合に恐怖する。
この出来事は大きな地震として処理された。真実を知るのはウニョンのみ。

木蓮高校に通う生徒ワンスとミヌを繋ぐ紐

ワンス(左)とミヌ(右)を結ぶ紐。

夜の職員室に忍び込んできたのは、ホ・ワンスとカン・ミヌという生徒。ボランティア活動の認定書を盗み、売ろうと考えている。この二人はいつも何かしらの問題を起こす。悪巧みをするも、いつもうまくいくワンスはあだ名を「ラッキー」と、いつも失敗してしまうミヌはあだ名を「混乱」と付けられているほど。この二人の頭が紐のようなもので結ばれていた。この紐はウニョンにしか見えない。

ワンスとミヌはキソン女子校の座布団を盗む計画を立て始める。女子校の座布団があれば受験に合格出来るというジンクスのためだ。二人は、盗みの経験者とともに何枚かの座布団を盗むことに成功した。その中の一枚が死んでしまった女子高生のものとは知らず、木蓮高校に持ち込んでしまう。

ほぼ友達がいないウニョンだが、ただ一人家族のような友達がいる。1年前に出会ったのだが、不思議なほど意気投合し、あっという間に親友と呼べるようになった。そんな親友の助言を受け、ワンスとミヌの毛をなんとかしようとしていた。このままでは誰かが死んでしまうかもしれない。まずは、ミヌをそそのかし、丸刈りにさせてみた。しかし、紐はますます太くなってしまう。どうやら髪の毛ではない。次にそれぞれの脇毛を結んでみることに。ウニョンはインピョにあらゆる結び方を教えてもらい、練習を続けていた。

木蓮高校では、キソン女子校の一人の生徒がゼリーとなって彷徨っていた。それはまるで何かを探しにきたようだ。

ミヌとワンスのクラスで、自習していた16人が突然号泣し始めた。残業していたウニョンは教室に駆けつける。泣いていた生徒たちはキソン女子校から盗み出した座布団を敷いていた。その教室には、一つの座布団を握りしめて泣き続ける一人のゼリーがいた。そのゼリーは血を流し始めて、巨大化していく。呆然と見つめるウニョンだったが、周りの生徒たちを取り込み始めたところで、剣を一振り。ゼリーは赤いハート型に散っていく。生徒たちは正気を取り戻した。ゼリーが握りしめていた座布団の中を見ると、お守りのようなお札が出てくる。ウニョンは、座布団とお札を燃やすのだった。

ワンスとミヌを結ぶ紐はどんどん太くなっていく。ウニョンとインピョは、二人を保健室に呼び出し、気絶させて脇毛を結ぶ作戦に出る。二人を結ぶ紐を切ってしまうことに罪悪感を抱くインピョだが、ウニョンに爽快に言い返される。翌日、二人を結ぶ紐は綺麗になくなった。

ゼリーが見える教師マッケンジーの出現

校内では、可愛らしいタコのゼリーが繁殖していた。そのゼリーを見つめる人物がいる。英語教師のマッケンジーだ。マッケンジーは、ゼリーを吸い取り、集め始める。彼も学校の地下室が気になるようだ。そんな彼の手には、「HSP」と書かれた金の指輪が光っていた。マッケンジーにも、インピョの保護膜が見えているようで、やたらとインピョにまとわりつく。ウニョンの友人がマッケンジーを調べてみると、どうやら「安全な幸福(HSP)」の会員だと分かる。なんとも怪しげな宗教団体のようだ。

次に問題を起こすのは、木蓮高校バスケ部。来月に迫るへムン高校との親善試合に向けて、レギュラー争いが激化していた。バスケ部主将のタコは貧乏学生のジヒョンが気に食わない。タコを筆頭にバスケ部の4人でジヒョンをいじめる。いじめの現場を発見し、ジヒョンに救いの手を伸ばしたのは、マッケンジーだった。マッケンジーは、ジヒョンに「なんでも一つ願いを聞いてやる」と言う。最初は本気にしないジヒョンだが、いじめを丸く収めるため、バスケ部を退部させられることになってしまい、大好きなバスケを続けたいと願う。マッケンジーはジヒョンに種を4つ渡す。この種をいじめた奴らの所持品に入れるように、と指示を受け、疑いつつも種を仕込むジヒョン。

試合の日、バスケ部のコーチがジヒョンのもとにやってきた。主将らが怪我をして試合に出られなくなったため、代打で出場のチャンスが与えられたのだ。部室の自身のロッカーを開けてみると、新品のスパイクがあった。マッケンジーからの贈り物だと分かったジヒョンは、種が願いを叶えてくれたことを知り、笑顔を見せる。接戦を繰り広げた親善試合では、ジヒョンが信じられない程の跳躍とパワーで、ダンクシュートのブザービートを決め、勝利する。最後のシュートの時、スパイクを覆った草のようなゼリーをウニョンは見逃さなかった。

夜、木蓮高校の先生たちによる飲み会が開催された。飲み会後、マッケンジーに詰め寄るウニョン。マッケンジーはゼリーを回収し、売り捌いていた。マッケンジーは「もっと金になることをしろ」と言う。大切なことは、ウニョンに理解出来ない英語で話してくる。「利用されているとも知らずに」などと気になる発言をしている。ウニョンの家の中を知るマッケンジー。警戒し、銃を向けるウニョンだが軽くあしらわれてしまう。マッケンジーは去り際、タクシーの中から、あの種を投げる。ウニョンは慌てて、撃ち落とすが、マッケンジーを止めることは出来なかった。

謎が深まる安全な幸福(HSP)

草のゼリーに覆われるジヒョン(左)とおもちゃの剣で払うウニョン(右)。

インピョのもとを訪れた幼馴染ファン・ガヨン。昔話に花を咲かせ、カラカラと笑う彼女といるのが楽しそうなインピョ。彼女の手には、「HSP」と書かれた金の指輪が光っていた。ファン・ガヨンの母親は昨年安全な幸福の代表になっていたことが後に判明している。この指輪をはめている人物がもう一人。学校の教師の中にもいるようだ。

保健室を訪れたジヒョン。ジヒョンの顔を覆うように草が成長していく。ウニョンはそのゼリーを剣で払いつつ、ジヒョンとマッケンジーの関係について聞き出そうとする。が、上手くいかない。

一方、マッケンジーは地下室に入りたがっているようだ。マッケンジーが只者ではないと知り、イルグァン消毒を探すインピョ。イルグァン消毒の所在地に行ってみると、大きく「HSP」の文字が書かれた建物になっていた。並行してウニョンは、マッケンジーについて調べ始める。ウニョンは、親友の力を借りてマッケンジーの自宅を見つけ、大胆に侵入する。マッケンジーの家の浴槽では、コケが繁殖していた。テーブルの上には例の種が置いてある。隣には地図があり、木蓮高校のエリアにマーキングがされていた。しばらくして帰宅したマッケンジーは自宅の違和感に気付く。浴槽に行ってみると、育てていたコケが掘り返され、土に変えられていた。

翌日。ウニョンは全身が酷くかぶれていた。あのコケを触ったせいだ。人々の祈りからエネルギーをもらい、回復していくウニョン。インピョが見せたいものがあると言って、自宅にウニョンを招く。招かれた場所は、木蓮高校創立者である祖父の書斎。よく読んでいた本には「吸穴を治めれば大運を変え国を自在に動かすことができる」という文章があった。二人は木蓮高校創設の理由を知るべく、書物を調べる。ウニョンはインピョの足の怪我の理由を訪ねた。どうやらバイクを運転中に横転し、バスの下敷きになって、生きていたのが奇跡という大事故だったらしい。

ウニョンは親友に、学校は安全な幸福(HSP)と繋がっている気がすると打ち明ける。学校の問題がいよいよウニョン一人では抱えきれなくなってきて、不安になっていた。自分がミスしてしまったら、大勢が死ぬ。でも一人で背負わなくてはならない。

そんなウニョンをよそに、学校ではダニのようなものが大量発生していた。ウニョンはいつものように剣を使うが死なない。良くない事を引き起こすダニが増えているせいで、学校の保健室は怪我をした生徒で溢れていた。転入生のペク・ヘミンは自分は「ダニ捕り」だと告げる。このダニは自分の胃酸で死ぬのだと、ダニを食べてみせる。ヘミンはダニが大量に発生するところに、ダニを食べるために生まれるのだという。決まった範囲内で20歳までしか生きられず、何度も生まれる自分はNPCみたいな存在で、それでも今回はもっと生きてみたいと口にする。

ダニを食べる時、空腹だと痛むようで、爆食をするヘミン。ウニョンのもとにしょっちゅう胃薬をもらいにくるようになっていた。苦しみながらダニ退治をするヘミンを思い、ウニョンも手伝えないか模索する。

アン・ウニョンがおもちゃの剣で戦うことにしたきっかけ

ウニョンの幼馴染キム・ガンソンが現れた。ガンソンは「なかなか壊れないから会いにきた」とウニョンに告げる。ガンソンは既にゼリーと化していた。死んでゼリーとなった肉体がなかなか壊れずに、この世界に留まっていたようだ。実はガンソンは今のウニョンのおもちゃの剣で戦うスタイルを考案した人。学生時代二人は孤立していた。霊感があると噂されていたウニョン。親が裏社会と繋がっていたガンソン。二人は席が隣になった事をきっかけに距離をつめていく。ウニョンが見えるゼリーの話を信じてくれたガンソン。ウニョンに好意を抱くようになったガンソンは、ウニョンが傷付かずにみんなから愛されるキャラに変わることを提案する。絵が得意なガンソンはパラパラ漫画を描いて渡す。そこに描かれていたウニョンはおもちゃの剣を握っていた。ゼリーとなったガンソンはウニョンと行動をともにし始める。

一方ヘミンは、アラやラディたちクラスメイトとの仲を深め、青春を謳歌しながらダニを食べて過ごしていた。ウニョンは親友のツテで、ヘミンの身体を治してくれる人を見つける。早速ヘミンに話してみるが、学校の今後を心配するヘミンは頷かない。ウニョンはインピョを誘い、手術の担当医に会いに行く。胃の全摘手術の費用が2億と告げられた。ウニョンの悩みをよそに、ヘミンは手術を断ってくる。ガンソンもヘミンも生きたいと願っているのに、救う手段が見つからず悩むウニョン。

ウニョンはゼリーの友達ジョンヒョンに会いに行く。ウニョンが幼稚園の時から存在する少女で、現在も少女の姿のままだ。ジョンヒョンが人間に害を及ぼしたり、苦しんだりしたら、消してあげるのが自分の役目だと思っている。そんなジョンヒョンの話し相手になってあげるのだった。

帰り道。ガンソンに昔話をするウニョン。学生時代、学校近くであった火事で死んだ女性たちのゼリーが、毎日学校に現れていた。そのゼリーは毎日ウニョンに助けを求めて縋っていた。ゼリーそのものではなく、そんなふうにゼリーに縋られる人生であることが怖かった。そんな人生を受け入れることしか出来ないウニョンだが、ヘミンなら変えられる。胃を摘出さえすれば、普通の人間として生きられるのだ。ウニョンの出した答えは、学校中のダニを全て集め、全て食べさせ終えてから、胃を摘出するというもの。

そしてガンソンにも最期の時がやってくる。高層ビルの建築中に老朽化したクレーンが折れて下敷きになってしまったらしい。ガンソンは最期までウニョンの身を案じ、「前向きに生きろ」と言う。そして「連れて行ってほしい」と言い残して消滅するのだった。目的地を聞くことは叶わなかった。

そのまま眠ってしまったウニョンは、ガンソンが死ぬ瞬間の夢を見る。死体を確認するとウニョン自身だったというところで目が覚めた。ウニョンは、すっきりした顔をしていた。朝起きたら、ゼリーが見えなくなったのだ。

木蓮学校を壊してしまえ

夜の保健室でインピョを待っていたウニョン。その手に握られたおもちゃの剣が光を発することはない。

ヘミンの手術は無事に成功した。ヘミンには胃がなくて、代わりに「救済」と書かれた生き物が入っていた。今のウニョンには、その生き物が見えない。ヘミンはウニョンとインピョとともに、今まで出ることが出来なかった担当区域の外へ出る。境界線を超えたところで、自分は変われたんだと実感し、涙を浮かべるヘミン。その後ヘミンの口から語られたのは、木蓮高校建設の秘密。自殺者が絶えない池の上に学校を建てるのをみんなが心配していた。とても「気」が強い場所で、元気な人には問題ないが、弱った人は吸い寄せられる。インピョの祖父は、「安全な幸福」と手を組み、「気」を利用して国を変えようとしていた。

学校建設の真実にうんざりして、ウニョンは退職を決意する。どうせゼリーももう見えない。木蓮高校は、ゼリーが力を増していた。津波のように流れ出して校内を支配する。生徒たちは少しずつおかしくなっていた。怪我から復帰したバスケ部主将タコらは、堂々とジヒョンに喧嘩を売る。ジヒョンの指には「HSP」の指輪が光る。ヘミンとラディは付き合ってると言い、他の生徒たちは泣き始め、罵り合い、喧嘩をし始める。影響は先生たちにも及んでいた。学校はどんどんおかしくなっていく。

ウニョンを頼れなくなってしまったインピョはイルグァン消毒を探す。祖父との写真を手がかりに行った釜山(プサン)は、干上がって水が無くなっていた。

のんびりと過ごしていたウニョンだが、木蓮高校で何人もが意識不明に陥って騒ぎになっていることをニュースで知る。学校から解放されたはずなのに気になってしまうウニョン。その手の話に詳しい親友に話を聞くと、高校は安全な幸福の所有ではないという。

ウニョンはもともとイルグァン消毒だったはずのHSPと書かれた建物に向かう。郵便受けを漁ってみると、イルグァン消毒代表には親友の名前があった。親友のつもりだったファ・スこそが探していたイルグァン消毒だったのだ。そこに現れるファン・ガヨン。どうやら学校は安全な幸福とイルグァン消毒の取り合いになっていたようだ。手に入るまではウニョンを利用し、学校を管理しようとしていた。インピョの祖父は学校を独り占めしようとしたため始末され、イルグァン消毒は除名。ガヨンは学校は安全な幸福のものだと主張する。ただ、学校の力を使うには、インピョの保護膜の力が必要だった。安全な幸福とイルグァン消毒の勢力争いにウニョンとインピョは巻き込まれていたのだった。

夜の保健室で会う約束をしたウニョンとインピョ。ウニョンは、学校を守りきれないから夜のうちに学校を壊してしまおう、と言うのだ。インピョは同意し、一緒に地下室へ向かう。圧池石をひっくり返そうと触れたウニョン。その瞬間、またゼリーが見えるようになってしまう。絶望しながらも、圧池石をひっくり返してきたため、溢れ出した力に耐えきれなくなった学校は壊滅する。

季節は変わり、学校は立て直され、教師は入れ替えられた。生徒たちも普通に戻っている。ウニョンは結局保健室に戻っていた。そんな保健室を訪ねてくる生徒が一人。ラディだ。ラディから、母が幽霊を見るから家に来て欲しいと相談を受け、物語は幕を閉じる。

『保健教師アン・ウニョン』の登場人物・キャラクター

木蓮高校の教師たち

アン・ウニョン(演:チョン・ユミ)

木蓮高校の保険教師。もともと病院で働いていたが、親友の紹介で木蓮高校に勤める。ゼリーが見え、おもちゃの剣と銃で人間に害を及ぼすゼリーと戦う。

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