五十嵐さんは幼少期、「ゴジラ」をはじめとする怪獣が大好きだったそう。「ゴジラ」に登場する怪獣の図鑑を眺めていたのだとか。
その影響は、伊坂幸太郎「SOSの猿」との競作企画となった漫画作品「SARU」にも現れています。
「SARU」に登場するキャラクターは、幼い頃に惹かれていたゴジラをはじめとする怪獣のイメージが基になっているのかもしれません。
また「釣りキチ三平」が好きで、よく読んでいたとのことです。
特に心を惹かれたのは、料理に関する描写。
イワナの塩焼きを食べるシーンでは、読みながら「うまそう!」という気持ちを掻き立てられていたようです。
こうした自然描写の中の美味しい食べ物と、生きる人の対比は「リトル・フォレスト」に表れています。
「リトル・フォレスト」は橋本愛さん主演で映画化もされ、スタッフが五十嵐さんの故郷である岩手県に住民票を移し、半ドキュメントとして撮影したそうです。
五十嵐さんが描き出す女性は、可愛かったりエロティックだったりと非常に魅力的です。
その理由は、五十嵐さんが少女マンガ誌に魅力を覚えていたから。
デビュー作である「お囃子が聞こえる」も、はじめは少女マンガ誌である白泉社の「LaLa」に投稿したそうです。
結果は残念ながら落選。しかし編集者のコメントに「青年誌のほうがいい」とあり、同作品をアフタヌーンへ投稿したことがデビューにつながりました。
本人いわく「青年誌はまったく分からず、書き方やスクリーントーンの貼り方まで友人に教わりながら投稿した」とのこと。
「お囃子が聞こえる」は膨大な時間をかけ、はじめから最後までこだわり抜いた一作。だからこそ、当時美大を卒業したての素人だったとは信じられないほど高いクオリティを誇っています。
「自然」「人間」という対照的なものを中心として描いているようですが、五十嵐さんは「すべてのものを一つの作品に入れたいという願望が強い」と語っています。
五十嵐さんの作品は、自然と人間をアイコンとして更に広がる物語をどのように読んでいくか? どこまで読みこむことができるか?
それぞれの読み方こそがキーとなるのでしょう。