チ。ー地球の運動についてー(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『チ。ー地球の運動についてー』とは、魚豊が2020年から2022年に『ビッグコミックスピリッツ』で連載していた漫画だ。宇宙は地球を中心に回っている「天動説」が信じられていた15世紀に、その説を覆す「地動説」を証明しようと命がけで研究する人々を描いたフィクション作品である。2021年のマンガ大賞では2位、2022年の手塚治虫文化賞ではマンガ大賞を受賞。その他にも数々の賞にランクインし、メディアでも取り上げられるなどして話題となった。
C教
舞台であるP王国で浸透している宗教。C教の教えは聖書に由来している。異端思想を持つものは神に背いたとされて捕まり、改心しない場合は火あぶりの刑に処される。火あぶりは、肉体が灰になるため最後の審判で復活ができなくなるという教えによって行われている。C教は天動説を公認している。地球が宇宙の中心で底辺にあるのは、位が低く穢れていて、無力で罪深いと思い知らせるためである。天の世界は崇高で、荘厳で、偉大で広大と教えていた。
天動説
地球中心説とも言う。地球が宇宙の中心で静止しており、その周りを天体が回っているという説。プトレマイオスの天文学とアリストテレスの自然学と結びついていた。近代では単なる科学の理論だけではなく思想や世界観とも繋がっていた。作中ではC教が採用している説であるが、実際に幅広い地域で浸透していた宇宙論である。
地動説
宇宙の中心は太陽であり、その周りを地球含めさまざまな惑星が自転しながら公転しているという説。太陽中心説という場合もあるが、地球が動いていることと宇宙の中心が太陽であるということは異なる概念のため訳語として不適切という指摘もある。紀元前5~4世紀前後にフィロラオス、紀元前3世紀にアリスタルコスが地球が唱えたが天動説が信じられていた。16世紀にコペルニクスが『天体の回転について』を刊行し地動説の測定方法や計算方法を記して、それまで信じられてきた天動説を覆す説を唱えた。それでも地動説を真実と考える人はほとんどいなかった。1610年ガリレオ・ガリレイによって発表された『星界の使者』という論文で地動説に有利な証拠が発表されて以降、地動説が主流となっていく。作中ではC教から異端者とされた主人公たちが命がけで地動説の研究を守り後世へ繋いでいった。実際に地動説がキリスト教の宗教家によって迫害されていたか否かは両論あり、フィクションとして描かれている。
異端審問官
聖職者の中で異端者を捕まえて改心させる役割。尋問だけでなく拷問もする。
プトレマイオス
2世紀頃、古代アレクサンドリアの天文学者。地球中心説(天動説)を唱えた人物。アリストテレスの自然学と結びつき多くの人に支持され、主著『アルマゲスト』は権威とみなされて大きな影響を与えた。天文学以外にも数学・占星学・音楽学・光学・地理学・地図製作学など多くの分野で活躍した。
バデーニがピャスト伯について説明をする際、「今の地動説(プトレマイオスモデル)を超す完璧な地動説の証明に、人生を捧げている貴族だ」と言う。
アリスタルコス
紀元前3世紀頃、サモス島に生まれた古代ギリシアの天文学者・数学者。太陽中心説(地動説)の先駆者といわれているが、当時はほとんど支持されていなかった。
第2章でバデーニたちがピャスト伯に会った際、『アリスタルコスを引き継ぐものです。』と自己紹介をしている。
アルベルト・ブルゼフスキ
アルベルトのモデルとなっている人物である。1445年頃~1497年ブルゼヴォ生まれのポーランドの天文学者・数学者・哲学者・文学者・外交官。一般的には遅い23歳でクラフク大学に入学した。その後20年にわたりクラクフ大学で教鞭をとっており、アルベルトの講義をうけた学生の中にはニコラウス・コペルニクスがいた。天動説には懐疑的で、月が楕円軌道を描いていることを世界で最初に突き止めた。
ニコラウス・コペルニクス
1473年~1543年、ポーランド出身の天文学者。晩年に『天球の回転について』を書き、太陽中心説(地動説)を唱えた。天文学史上最も重要な発見とされている。作品ではアルベルトの大学進学後、「彼の注釈書で天文を学んだ同大学の生徒の一人にコペルニクスという青年がいた」と書かれている。史実でも大学でアルベルト教授に出会い天文学を学んでいる。
『チ。ー地球の運動についてー』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
フベルト「不正解は無意味を意味しない」
ラファウはフベルトから地動説について聞いた時、一つ目は矛盾が多すぎる。二つ目は合ってたとして誰が支持するのか。三つ目はそんな直感に命を預けるのは愚かだと、間違っていると思う理由を三つあげた。直感を信じて間違ったらどうするのかと聞くと、フベルトは「構わない。不正解は無意味を意味しない。」と言う。それを聞いたラファウは、とても正気じゃないと拒絶するが、フベルトと接し地動説に触れていくうちに、地動説を信じたいと感じるようになる。フベルトの信念がラファウへと引き継がれ、ノヴァクにこの選択は君の未来にとって正解なのかと聞かれた際、「そりゃ不正解でしょ。でも不正解は無意味を意味しません。」と言う。フベルトの想いと共に引き継いだこの言葉がラファウに信じる勇気を与え、地動説を後世へ繋いだ。
グラス「託してる」
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目次 - Contents
- 『チ。ー地球の運動についてー』の概要
- 『チ。ー地球の運動についてー』のあらすじ・ストーリー
- 第1章
- 第2章
- 第3章
- 『チ。ー地球の運動についてー』の登場人物・キャラクター
- 第1章
- ラファウ
- フベルト
- ポトツキ
- ノヴァク
- 第2章
- オクジー
- グラス
- バデーニ
- ヨレンタ
- ピャスト
- 教授
- コルベ
- アントニ
- クラボフスキ
- 異端者
- 第3章
- ドゥラカ
- シュミット
- フライ
- レヴァンドロフスキ
- ボルコ
- ペーター司教
- アッシュ
- 叔父さん
- アルベルト
- 親方
- アルベルトの父
- ラファウ
- 司祭
- 『チ。ー地球の運動についてー』の用語
- P王国
- C教
- 天動説
- 地動説
- 異端審問官
- プトレマイオス
- アリスタルコス
- アルベルト・ブルゼフスキ
- ニコラウス・コペルニクス
- 『チ。ー地球の運動についてー』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- フベルト「不正解は無意味を意味しない」
- グラス「託してる」
- オクジー「俺は地動説を信仰している」
- 司祭「硬貨を捧げれば、パンを得られる。税を捧げれば、権利を得られる。労働を捧げれば、報酬を得られる。なら一体何を捧げれば、この世のすべてを知れる」
- 裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 題名「チ。」の意味
- 影響を受けた作品