チ。ー地球の運動についてー(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『チ。ー地球の運動についてー』とは、魚豊が2020年から2022年に『ビッグコミックスピリッツ』で連載していた漫画だ。宇宙は地球を中心に回っている「天動説」が信じられていた15世紀に、その説を覆す「地動説」を証明しようと命がけで研究する人々を描いたフィクション作品である。2021年のマンガ大賞では2位、2022年の手塚治虫文化賞ではマンガ大賞を受賞。その他にも数々の賞にランクインし、メディアでも取り上げられるなどして話題となった。

石箱を見つけ、オクジーにこの先どうするか話していたグラスは足下の橋が崩れて転落しかける。ギリギリのところでオクジーが捕まえたが2人とも助かるすべはなさそうだと判断したグラスは自ら橋の下に落ちようとする。しかしまたしてもオクジーはグラスを捕まえて「何してるんですか!!」と言うと、グラスは「託してる」「私が死んでもこの世界は続く。だったらそこに何かを託せる。それが喪失まみれのこの世界から生まれたある種の希望だ」と言って自ら橋の下に落ちる。石箱を見つけた際、グラスにとって石箱の中身はこの世を肯定し生きる希望となった。この世に期待できず死後天国に行くことだけを希望としているオクジーに、石箱の中身だけでなく、希望をもって今を生きるという自分の信念を託した。

オクジー「俺は地動説を信仰している」

オクジーは話を聞こうとしないバデーニに「指摘を受け入れなければそれは信仰だ」と言う。それは真理を求める研究者として地動説と向き合っているバデーニに響いた。異端審問官がバデーニとオクジーを捕まえに向かってきていることが分かったとき、オクジーは自ら迎え撃ちに行こうとする。バデーニはなんとか止めようとするが聞き入れないオクジーに「指摘を受け入れるのが重要と言ってたろ。地動説という学術研究の関わり方として間違っている。」という。しかし学者ではないオクジーは「俺は地動説を信仰している。」と言って納屋を出て行く。グラスから託された希望は引き継がれ、地動説を信じるということがオクジーにとっての生きる希望となったことがこの一言に込められている。

司祭「硬貨を捧げれば、パンを得られる。税を捧げれば、権利を得られる。労働を捧げれば、報酬を得られる。なら一体何を捧げれば、この世のすべてを知れる」

アルベルトは、幼い頃の傷が癒えずに知を恐れていることを祭司に打ち明ける。「いくら悩んで問うても神は口を開かない」と言うアルベルトに対して祭司は「だから永遠に考え続けられる。それを幸福と思いたい」と言う。そして「硬貨を捧げれば、パンを得られる。税を捧げれば、権利を得られる。労働を捧げれば、報酬を得られる。なら一体何を捧げれば、この世のすべてを知れる。と思いますか?」と質問をする。「この世で生き延びるためにその応えを探してください」と言ってアルベルトの知的好奇心を再び起こし、大学進学へ背中を押した。

裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

題名「チ。」の意味

題名の「チ。」とは地、血、知の3つの意味がある。「。」には止まっていたものが動き出すという意味が込められている。

「地動説」という題材を決める前に、【知性と暴力】をテーマにしたマンガを描くことだけは決めていて、「知性の知」と「暴力の血」で「知と血」にしようと思っていた。
さらに題材が「地動説」に決まり、「地」まで入ってきたので『チ。』しかない!と思った。
「。」は地球を表していると同時に、文の停止を意味する句点に軌跡を足すことで、「止まっていたものが動き出す」というコンセプトを表現できると思い、タイトルデザインのアイデアを提案させていただきました。

出典: getnews.jp

影響を受けた作品

作品の中でソクラテスなどの言葉が引用されているが、作者・魚豊へのインタビューでは、影響を受けた作品として、セネカの『人生の短さについて』、プラトンの『ソクラテスの弁明』、デカルトの『方法序説』があげられている。作者自身も死に対する恐怖があったが、先人たちの作品に勇気をもらい、恐怖を受け入れて前向きに物事を捕えられるようになったと語っている。

セネカの「人生の短さについて」、プラトンの「ソクラテスの弁明」、デカルトの「方法序説」などです。哲学や天文学の本は知識欲も満たせますし、エンターテイメントとしても面白いので影響を受けました。歴史に残る本って古びず、面白さに普遍性があるのが偉大だと思います。

高校一年のある夜、「あれ? いつか死ぬってやばくない? これまで楽しかったけど、全部が無になるんだよな……」って急にタナトフォビア(死恐怖症)みたいになってしまいました。
今でもその気持ちは抱えているのですが、「いつか死ぬんだったら後悔なく生きよう」って心構えができるようにもなりました。死ぬのは怖いんですけど、「いつか死ぬんだから飛び出してみようぜ、挑戦してみようぜ」って勇気が出せることにも繋がります。
僕も、「どうせ死ぬんだったら、漫画家を目指してもいいじゃん」ってことで何度も背中を押されました。

出典: tsutaya.tsite.jp

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