チ。ー地球の運動についてー

チ。ー地球の運動についてー

『チ。ー地球の運動についてー』とは、魚豊が2020年から2022年に『ビッグコミックスピリッツ』で連載していた漫画だ。宇宙は地球を中心に回っている「天動説」が信じられていた15世紀に、その説を覆す「地動説」を証明しようと命がけで研究する人々を描いたフィクション作品である。2021年のマンガ大賞では2位、2022年の手塚治虫文化賞ではマンガ大賞を受賞。その他にも数々の賞にランクインし、メディアでも取り上げられるなどして話題となった。

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チ。ー地球の運動についてーのレビュー・評価・感想

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チ。ー地球の運動についてー
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知りたいという人間の欲求は、迫害に勝てるのか

地動説を発見、研究していきた学者たちが、宗教的理由によって迫害されながらも研究を引き継いでゆく姿を描くフィクション。複数の主人公が、物語をつないでいくのが珍しいスタイルで、劇的な展開が突然訪れる「おどろき」を体感できる。知りたいという知識欲が、命とりになることもあるという事実を、ドラマティックに描きつつ、命がけでも真理を追究せざるをえなくなる学者の性を真摯に描写している。タイトルの【チ。】とは地動説のチ、知識のチ、そして血のチを表しており、文字通り血なまぐさいシーンも多発する。地動説を世の中に発表しようとする学者側と、それを食い止めようとする宗教側の異端審問官のどちら側にも、それぞれの信念があり、自身の正義を貫こうとする姿勢が対立し争いにつながることが切ない。これは、現代社会のありかたにもつながる問題で、自分の違う意見を持つものを迫害するのではなく、意見に耳を貸し議論しつつ折衷案や解決策を模索することの大切さを訴えているようにも思える。異端のものを排除するのではなく、その主張に聞く耳を持つことの意義は、自分の知らなかった新たな知識の発見にもつながるという事例を地動説発表という歴史的事実に重ねて創造していることに驚かされた。全8巻で完結。

チ。ー地球の運動についてー
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チ。-地球の運動についてー

まず題名を見て、「地球の運動?つまらなそう」とおもったそこのあなた!今すぐこの漫画を読むべきです。
この漫画は天文学、特に地動説を題材としたものではあるものの、専門的な知識は必要なく、
魅力的なストーリーと登場人物によってすぐにこの世界観に引き込まれます。
なんといってもこの壮大な物語にはほかの漫画では味わえない驚きと感動があります。
この物語は、地動説など信じられていない時代の話。
地球のあらゆる物事は神によって定められており、それを否定することはすなわち神を否定することになります。
地動説などといった異端の考え方をする者たちは次々と火あぶりにされ、二度と復活することができぬように灰にされます。
しかしながら、それに屈せず、自分の信じるものを信じ続ける人々の勇気や意地や信念に感動せずにはいられませんでした。
何十年にもわたる人々の苦闘がたったの7巻に収められているということで、物語は目まぐるしい勢いで進んでいき、読む手が止められません。
地動説という一つのテーマをめぐりたくさんの人々の人生が交わったり、惑わされたりする様子に、
これまでの人類の発展を想像させられ、今生きている地球の神秘を感じずにはいられませんでした。

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「常識」をこわす熱意と知性

最初に出てきた主人公の少年が、地動説を証明していく話か〜なるほどね〜と思って読み始めたら一巻の終盤で予想を裏切られ一気に引き込まれました。天動説が当たり前だったとき、地動説を唱えたものたちは異端として拷問をうけ、2度目に捕まれば殺されていました。少年は秀才であり神学を学ぶことを期待されていたのですが、実際興味があるのは天文学です。周囲のプレッシャーに負けて神学を選ぼうとした時「異端者」の地動説学者と出会い、地動説が正しい、と直観します。ここが熱いです、周りの期待や常識でなく、自分の見つけた真実を追求し始めようとする姿、結局流されてしまう自分と比べてまぶしいです。そのあと、それに気づいた養父は、実は元異端者であるのですが、自分がまた捕まることを恐れて息子を通報します。拷問を受けることになった前日、少年は自分の信念のために自死を選ぶのですが、その時の言葉が感動的でした。感動は寿命の長さよりも尊いといった内容なのですが、少年は地動説が将来だれかに証明されることを託してなくなっていくのです。今は当たり前である地動説が実はこんなに長い歴史と戦いの結果証明され認められたということに感動します。エンタメとしても歴史漫画としても面白いです。

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孤独の中で夢に向かう人々への応援譚

この作品は、天動説全盛の世界で、地動説を唱える研究者や、その協力者の苦悩や戦いを描いた物語です。
「そんな考え一つのために命を懸けるなんて間違っている」「女が研究なんてするな」「何百年と続いてきた研究の答えが、間違いなんてありえない」
そんな、あらゆる時代の壁や葛藤が盛り込まれています。
現代でも、「そんなもので食えるわけがない」「頑張っても無駄」「女なのに勉強なんて」と、人生を懸けて頑張りながらも、世間の目や、周囲からの攻撃と戦っている人は多いはず。
この物語の中では、好きなもののために命を懸け、好奇心に目を輝かせ、ただひたすら「地動説」というバトンを繋いでいく様が描かれています。
地動説は、「一代」で成り立つものではありません。
異端者として捕まり、地動説を成し遂げられなかった人が、同じ志の誰かがそれを継いでくれることを望んで、研究資料を山に隠す。それを見つけた次の誰かが、その資料をもとに研究を続ける。そうして研究の糸が、運命が紡がれ、やがて「地球を動かす大偉業」へと繋がっていくのです。
これをお読みになった方は、必ず元気づけられます。
登場人物の命の熱さに涙を流すこともあるでしょう。
ぜひ、ご一読ください。

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チ。あらすじ

物語は15世紀のお話です。舞台はP王国。まだ世の中が近代になる前、宗教や信仰が世の中を統治していた時代です。
P王国ではC教が国教となっていました。C教の教えに背くものや研究をしていた異端者は排除されていました。
地動説もその一つでした。月より先の天と、月より下の地は別の領域と考えられており、天は永久不滅、そして地は天国に行くための試練の場所と考えられていました。

この第1巻での主人公はラファウという12歳の少年です。彼は非常に頭が良く、そして何よりすごく生きるのが上手でした。彼の信条は合理的に生きる事でした。成績優秀なのに謙虚で大人の言う事にも素直に従う、そんな風な自分を装って生きていました。それがこの時代に何より優遇されることを知っていたからです。彼は12歳にもかかわらず大学に合格しました。義父で聖職者のポトツキには喜ばれ、周囲には尊敬され、彼は満足に暮らしていました。
ある日、ポトツキの友人で異端者として捕まっていたフベルトの身柄を引き取るようにポトツキから頼まれました。この出会いから彼の人生は一転します。フベルトは天ではなく地球が動いていることを研究していました。これが当時はC教に禁じられた理論「地動説」です。地動説に、そしてフベルトに魅せられたラファウはどのような運命を辿るのでしょうか。

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