チェブラーシカ(Cheburashka)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『チェブラーシカ(Cheburashka)』とは、1969年〜1983年まで旧ソ連(ロシア)で製作された全四話からなる人形アニメである。南国産オレンジの箱に詰められてやってきたチェブラーシカと、動物園で働く心優しいワニのゲーナを中心とした物語。チェブラーシカの愛らしさが日本を始め世界各国から人気を集める一方、孤独やアイデンティティといったテーマも描かれている。ダークな側面も持ち合わせる独特な世界観を持つ作品としても注目されている。

ゲーナを訪ねてきたレフ・チャンドルの「これでもう一人ぼっちではないなあ」という言葉がきっかけでゲーナが発端となりチェブラーシカや他の動物たちと共に作った家。町に溢れているだろう「一人ぼっち」のためみんなで集まることができる家だ。しかし家を建てるため協力した動物たちはすでに友達になる目的を果たしたため必要なくなった。ガーリャが電話ボックスに住んでいたチェブラーシカに住むことを提案するも、チェブラーシカが幼稚園にしてぼくはおもちゃとして働くよ、とのこと。「〜の家」とはソ連的な言い回しで、当時の公民館や城跡を表す名称としても使われる。

『チェブラーシカ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

線路で途方に暮れる(左から)ゲーナとチェブラーシカ。

社会批判が目的で作られた作品とはいえ今日まで人気が途絶えない要因はキャラクターの個性にある。ほのぼのとしたストーリーの中でも理不尽な仕打ちにも善良さで向き合うキャラクター達が印象的だ。

「みんなの家」の完成

「みんなの家」の完成を喜ぶ一同。

ゲーナやチェブラーシカをはじめとする多くの動物や人間の手により「みんなの家」が完成した。もともと孤独な人が友達を作るために作られたその家は、建てられたことにより仲間ができて必要がなくなった。そこでガーリャが電話ボックスで暮らしているチェブラーシカに住むよう提案するが、チェブラーシカはみんなの幼稚園にして自分はおもちゃとして働きたいといった。彼が孤独を嫌うという理由もあるが自分だけの家ではなく誰かのために役立てたいという気持ちに心打たれる。さらに、動物である彼がおもちゃとして働きたいという意思を、周りにいた誰もが否定することなく応援したことも感動的である。

道に迷って木の実を見つける

木の実に夢中になっている(左から)ゲーナとチェブラーシカ。

チェブラーシカとゲーナが初めての旅行に出かける。しかしその道中でシャパクリャクに切符や財布を盗まれてしまい汽車を降ろされることに。彼らは仕方なしに家まで歩いて帰ることを決断するが、そこでキャラクターたちの個性が強調される。
チェブラーシカとゲーナはお互いを励まそうと言葉を掛け合う。旅行の荷物に苦労しているゲーナを思いやったチェブラーシカが「僕が荷物を持つから、ゲーナは僕を持って」と提案する。ゲーナが一人で全てを背負うおかしな提案ながらチェブラーシカの優しさを感じ取ったゲーナは「そうか、そいつは名案だな。」とカバンを一つ線路に置き去りにしてチェブラーシカを持つのであった。そしてゲーナは「肝心なのはこうして線路に沿っていけば決して道に迷ったりしないってことさ。」と息を切らせながら声をかける。しかしその矢先線路が二手に分かれていて選んだ道は行き止まりだった。しかし間違った道で二人は木の実を見つけるのだった。ユニークな場面でもあり困難の中でも善良さを保ち続け希望を見出す彼らに心打たれる。製作当時、共産党が大きな理想を掲げていたソ連では庶民が実が伴わない生活を送っていたという。繰り返し困難に直面する彼らは、庶民に寄り添える唯一の存在だったのかもしれない。

ゲーナ「安心しろチェブラーシカ。季節は今まさに秋だ。つまり線路に水溜りはできないしぬかるみもできない」

左からゲーナとチェブラーシカ。

初めての旅行で財布と切符を盗まれたゲーナとチェブラーシカ。仕方なく線路に沿って道を引き返し始めた時ゲーナが雪道で「安心しろチェブラーシカ。季節は今まさに秋だ。つまり線路に水溜りはできないしぬかるみもできない。」と声をかけた。楽しい旅行が台無しになりとても落ち込んでいる表情を見せた二人だったが、上手くいかないことがあっても良い面を探して現状と向き合うたくましさそして優しさが感じられる名ゼリフだ。

シャパクリャク「トロッコで行くのはシャパクリャクばあさん」

旅行者が押すトロッコで登場するシャパクリャク。

いつも神出鬼没で抜け目のないシャパクリャクがチェブラーシカやゲーナと共に旅行者が仕掛けた罠にかかる。そこで彼らをこらしめると宣言しこらしめた後、旅行者全員が押すトロッコに乗り歌いながら登場する。「トロッコで行くのはシャパクリャクばあさん♪」その堂々たる歌い振りからゲーナとは一味違ったたくましさが感じられる。

『チェブラーシカ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

「チェブラーシカ」の名前は知人の娘の行動が由来

「チェブラーシカ」という名前は、ウスペンスキーが知人の発言からとった。知人の小さな娘が毛皮のコートを踏んで転んだところを知人は「まるでばったり倒れやさんだな」と発言した。これを面白い表現だと思った彼はキャラクターに名付けた。

長年に渡ってDVをしていた原作者

作品の原作者であるエドゥアルド・ウスペンスキーは長年家庭内暴力を振るっていた人物であると彼の娘が証言した。2020年、ロシアの児童文学賞に彼の名前をつけようという話が出た際、ウスペンスキーの娘は「父は相応しい人物ではない」という公開書簡を発表した。それに対して国立児童図書館は「作家のプライベートな資質ではなく、彼の文学への貢献だけをみている」とウスペンスキーの名前を文学賞から外すことを拒否した。
また、ウスペンスキーは劇中に登場するシャパクリャクというキャラクターについて彼女を自分自身だという発言もしている。シャパクリャクのいじめた後に優しくするというサイクルは、いわゆる「DVサイクル論」とも重なり、故意かそうでないかは分からないが自身の行動パターンを彼女に重ねている側面もあると言える。

アニメーションの権利を巡って日本側と対立

製作当初からソ連国内では原作者やキャラクターの作者レオニート・シュヴァルツマンらに無許可でキャラクター商品が出回るなど『チェブラーシカ』と権利を巡る問題は切り離せないと言っても過言ではない。日本と共同制作をした2010年公開『チェブラーシカ』も同様権利を巡って対立している。日本側のチェブラーシカ・プロジェクト有限責任事業組合が「チェブラーシカの再映画化や商品化の事業を行うに当たり、原作者の故ウスペンスキー氏やソ連時代のアニメ映画著作権者の両方から独占的ライセンスを受けている」と説明するも、ロシア側が「チェブラーシカの著作権は16年前に旧幹部が日本側に渡したが、契約期限や条件をめぐり双方に深刻な意見の相違がある」と主張し、また日本も公式サイトが閲覧不可状態なのはロシア側による操作だとされている。

『チェブラーシカ』の主題歌・挿入歌

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