どうしても触れたくない(それでも、やさしい恋をする)のネタバレ解説・考察まとめ

『どうしても触れたくない』とは、ヨネダコウのBL漫画作品。単行本全1巻で、『CRAFT』(大洋図書)に2007年から2008年に掲載された。『それでも、やさしい恋をする』は『どうしても触れたくない』のスピンオフ作品であり、単行本全1巻で、同じく大洋図書から出版されている。傷つくことを恐れて素直になることができないゲイの嶋と家族をなくした過去があるストレートの外川。二人の心情が細やかに描かれ、切ない恋愛の醍醐味が詰まった作品。

『どうしても触れたくない(それでも、やさしい恋をする)』の概要

『どうしても触れたくない』とは、ヨネダコウのBL漫画作品で、作者の商業誌デビュー作。
2009年3月27日にドラマCD2枚組が発売された。また、RUN&GUNの米原幸佑と、谷口賢志の主演で実写映画され、2014年5月31日に公開された。映画は当初、レイトショーの単館上映(渋谷イメージ・フォーラムにて)の予定だったが、連日超満員で、上映期間が延長された。上映地域も、大阪や名古屋や京都に拡大され、2014年12月13日~19日には、第4回愛媛LGBT映画祭2014、2016年2月27日~3月4日第5回愛媛LGBT映画祭2016で上映された。2016年3月には台湾でも上映された。ゲイである嶋俊亜紀(しまとしあき)は、同じ職場の社員である恋人からゲイであることを周囲に言われて酷い扱いを受け、居づらくなって別の会社に移った。嶋は新しく入社した会社で、上司である外川陽介(とがわようすけ)に惹かれる。外川は、火事で家族をなくした辛い過去を持つが、あくまでもポジティブに生きている。嶋は自分に優しく接してくれる外川と距離を置こうとするが、外川は構わず嶋にアプローチする。やがて嶋は外川と関係を持ち、交際するようになるが、外川が本社に異動になるのを期に別れを切り出す。
『それでも、やさしい恋をする』は、『どうしても触れたくない』のスピンオフ作品であり、『どうしても触れたくない』の嶋が外川の会社に移る前にいた会社の社員、出口晴海(でくちはるみ)と、外川の部下である小野田良(おのだりょう)が登場する。ゲイである出口と友人であるストレートの小野田の、友人としての付き合いから、やがて恋人同士になるまでが描かれる。大きな事件が起きるわけではなく、日常生活の中での心情の変化が描かれる。『どうしても触れたくない』の嶋と外川が、共に辛い過去を抱えている背景があるのに対し、淡々として柔らかな雰囲気の作品。『それでも、やさしい恋をする』も、ドラマCDが作られ、2014年10月31日に発売された。
『それでも、やさしい恋をする』と『どうしても触れたくない』の時系列は、『それでも、やさしい…』→2年後『どうしても触れたくない』最初頃である。
『それでも、やさしい恋をする』の単行本は、同タイトルの短編を含む6つの短編から構成されるが、短編「それでも、やさしい恋をする」のラストが『どうしても触れたくない』最初頃にあたる。

『どうしても触れたくない(それでも、やさしい恋をする)』のあらすじ・ストーリー

『どうしても触れたくない』

ゲイである嶋俊亜紀(しまとしあき)は社内のストレートの男と交際していたが、その男が周囲に嶋のことを吹聴したことで会社に居づらくなり、その会社を辞めた。嶋は、新たに入った会社の課の課長である外川陽介(とがわようすけ)と出会う。嶋は、ストレートで女性も好きなはずの外川を意識するのを避けるため、距離を置こうとするが、外川は嶋に構ってくる。そのうちに外川は嶋にアプローチしてきて、雰囲気に流されるように、嶋は外川と身体の関係を持つようになる。外川は嶋と関係を持っていることを、同じ課の小野田(おのだ)にも隠さない。嶋は、外川はゲイではないからそのうちに飽きるはずだと自分に言いきかせる。外川はあくまでも嶋に優しく接するが、嶋は外川に優しくされるのが怖くなっていた。嶋と外川の関係は続き、嶋は外川から部屋の鍵も渡される。いっぽう、外川は、総務部長から京都の本社への異動を打診され、それを承諾した。外川は転勤のことを嶋に言おうとするがなかなか言えない。嶋は、先に小野田から外川の京都本社異動の話と、本社に異動したら戻ってこないという話を聞く。嶋は、会うのは最後にと考えて外川に会い、栄転おめでとうございますと伝える。しかし、外川は、嶋の元彼との一件について、事情を知る小野田から聞いたと言い、嶋が好きだからこれからも一緒にいたいと言う。しかし、嶋は、外川が何の気なしに口にしていた「家族に憧れている」の言葉を重く捉えており、自分では外川に家族を与えることはできないと思っていたため、自分と付き合うくらいなら、嫁をもらったほうがいいと断る。嶋は、自分が外川の負担になることを恐れていた。嶋は、ゲイではない元彼に捨てられた自分の過去も、火事で家族をなくした外川の過去も、どうやっても捨てられないと外川に言う。外川は過去を恨めというのかと嶋に言いながらも、別れを受け入れる。
外川が京都に異動して1ヶ月。外川が出た後、課長になった小野田に言われて取引先の名刺を探していた嶋は、会社の机の引き出しの奥から、外川が禁煙するから持っていろと渡してきた、タバコの箱を見つける。嶋は外川を思いだして思わず涙する。小野田は、人と関わろうとしない嶋に小野田が声をかけるのは、外川から頼まれたことも理由にあると嶋に言う。外川は、嶋は皆と交わろうとしないことを自分では平気だと思い込んでいるところがあるから、ひとりにしないでやってくれと、小野田に頼んでいた。嶋は連絡をしないまま、京都へ行き、外川のマンションの外から外川に電話をかける。嶋が京都に来ていることは、すぐ外川にわかり、二人は直接話をする。嶋は、自分が傷つくことばかり考えて臆病になっていたことを外川に謝りたかったと言う。嶋は一緒にいたいと外川に告白し、二人の気持ちは通じ合う。

『それでも、やさしい恋をする』

ゲイだがカムアウトする気がない出口晴海(でぐちはるみ)は、男とは後腐れのない相手とつかの間の身体だけの付き合いばかりで、恋人はいない。出口は友人を通して、ストレートの男、小野田良(おのだりょう)と仲良くなり、友だち付き合いをするうちに次第に小野田に惹かれていく。出口が小野田に気持ちを打ち明けないまま友人関係を続けて、3年経つ。あるとき、出口は小野田から、小野田の会社NEXT社に新たに入ってきた、嶋俊亜紀のことを訊ねられる。出口は、嶋はかつて出口と同じTAG社ににいた社員だったが、同じ社内で交際していた男から酷い目に遭わされて辞めたと話す。小野田は密かに嶋に惹かれていたが、嶋が上司の外川と恋人同士になったので失恋したと、出口に打ち明ける。小野田が嶋に惹かれていたことを知った出口は、小野田相手に片思いをしている自分にもチャンスがあるかもしれないと思い、冗談交じりに恋人として自分を小野田に勧める。最初は本気にしなかった小野田に、出口は本気だと伝え、好きだということも打ち明ける。小野田は、友人だと思っていた出口に付き合いたいと言われ、悩んでなかなか返事ができないが、それまで以上に頻繁に会うようになる。あるとき小野田は、週末に出口の家を訪れた際、ひょんなことから出口が後腐れのない相手と身体だけの関係を持っていたと知って、怒りを覚える。嶋と外川が身体だけの交際をしていた時期があったことも知っている小野田は、出口のことで怒りを覚えるのは嫉妬だと気づき、自分も出口が好きだと打ち明ける。

『どうしても触れたくない(それでも、やさしい恋をする)』の登場人物・キャラクター

嶋俊亜紀(しまとしあき)

声(ドラマCD):野島健児、演:米原幸佑
26歳。NEXT社システム課。前の会社は、社内で交際している男から身を固めたいから別れてくれと言われて辞職した。その会社では交際相手の男が、嶋と付き合っているという噂を消すために、嶋にあれこれ嫌がらせをして会社に居づらくさせた。交際していた男からは「お前のこと好きなのに、男のお前を好きな自分が嫌なんだよ」と言われ、望んでも仕方のないことは考えないように、どこかで諦めて生きてきた。
少し頑固で不器用だが思いやりがあって嘘がない性格。小野田(おのだ)によると「魔性のノンケキラー」。「ノンケ」とは、ゲイではなくストレートの男性であることを意味する。

外川陽介(とがわ ようすけ)

声(ドラマCD):石川英郎、演:谷口賢志
NEXT社システム課課長、ノンケ、29歳。
7歳の時に父親が交通事故で死亡。母親がノイローゼ気味になり、後追い自殺しようとして家に火を付けた。弟は死亡し、外川と母親は生き残った。母親は刑務所に5年服役し、外川は祖父母に育てられた。喫煙者であり、嶋がタバコの煙が苦手なため、いったん禁煙したが、恋人同士になった後また喫煙するようになった。

金崎(かねざき)

演:入江崇史。
NEXT社の部長。外川の上司。

高田(たかだ)

演:松田祥一。
NEXT社、システム課勤務。外川の部下。

出口晴海(でぐちはるみ)

声(ドラマCD):野島裕史、演:寿里
『それでも、やさしい恋をする』の主人公。TAG社の営業部に勤務。28歳。ゲイだが、カムアウトする気はなく、身体だけのつかの間の付き合いをしていた。友人を通して、小野田(おのだ)と知り合う。格好良くてゲイバーでもモテるが、特定の相手は作っていなかった。

小野田良(おのだりょう)

声(ドラマCD):森川智之、演:富田翔
NEXT社。出口の3歳年下の25歳。ノンケ。格好良いというタイプではないが、優しい。友人を通して、出口と知り合う。振り回されるのが好きなタイプらしく、気が強い彼女と付き合っていたが、出口と出会った頃にふられた。外川のことが好きな嶋に密かに惹かれていたが、すぐに失恋したと知る。考えていることを無意識に声に出して言う癖がある。自分を過小評価しているため、自分への好意には気づきにくい。

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