orange(漫画・アニメ・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『orange』(オレンジ)は、『別冊マーガレット』(集英社)と『月刊アクション』(双葉社)で連載された高野苺のSF恋愛ファンタジー漫画およびそれを原作としたアニメ、映画である。高校2年の始業式、高宮菜穂の元に10年後の自分から手紙が届いた。手紙には「転校生の成瀬翔を救ってほしい」と書かれていた。願いを叶えるため奮闘する菜穂と仲間達。友情と恋心が交差する中、5人は翔を救うことが出来るのだろうか。

バレンタイン、伝えられなかった思いを伝える

翔との距離が離れてしまったことに心を痛める菜穂。しかし、10年後の自分が伝えられずに後悔している気持ちを何とか伝えようとバレンタインにチョコを渡す決意をする。たびたび菜穂を避ける翔にくじけそうになるが頑張り続ける菜穂。やっとの思いで翔を呼び出せた菜穂が伝えたのは「翔と話せなくなった今がつらい。傷つくことだってなんだっていい。ケンカしてでもいいから翔と話したい」という素直な思いだった。近くにいると菜穂を傷付けてしまうと距離をとっていた翔にその言葉が優しく響いた。

翔が自殺した当日。5人の願いは届くのか

2月15日、菜穂の手紙によると玄関で「寒いね」と言いあったのが最後にした会話らしい。しかし、翔は菜穂に「一緒にお昼食べない?2人で」と誘った。菜穂は今日は手紙に書いてある事がはずれればいいと思った。
今日はいつも通りいようと約束した5人だったが、やはりいつもと同じではいられない。萩田は眼鏡をプレゼントし、須和は翔の朝練のシュートを褒めて「一緒にプロを目指そう!」と伝えた。あずさと貴子はいっぱいのお菓子を翔と菜穂に渡した。そして、菜穂は久しぶりのお弁当を手渡し、「翔は宝物より大切な人」と伝えた。翔は照れながらも「菜穂が好きだよ」と言ってくれたが、幸せな気持ちと共に不安が押し寄せる菜穂は涙を流すのであった。

放課後は一緒に過ごそうと考えていた5人だったが、翔はおばあちゃんの付き添いで病院に行くという。始業式の事もあって無理に誘うことは出来ないと考えた5人は夜の8時、自殺の現場になった家の近くの十字路で待つ事にした。
祈りながら待つ菜穂たちだったが、事故が起こった8時を過ぎても翔は現れなかった。少しの安心と不安を抱え、翔の家に行く5人。おばあちゃんに話を聞くと、家をとびだしたまま帰って来ていないという。手分けして翔を探すがなかなか見付からない。
やっとの思いで菜穂と須和が見付けた時、翔はまさにトラックの前に飛び出す直前だった。

寸前のところで事故を免れた翔。菜穂たちが駆け寄ると「…死のうと思った。母さんに謝らなくちゃって…。けど出来なかった。死ぬのが怖くなった」と涙を流す翔。母親の携帯を見てトラックの前に飛び出す未来は変えられなかったが、翔は自分で生きる道を選んだ。
5人の気持ちは翔に届いていたのだ。翔はここで初めて手紙の存在を知ることになる。そして、10年後の5人からの手紙を受け取った。手紙には翔を失った5人の後悔と謝罪が詰まっていた。「みんな翔を失ってすごく後悔してる。10年経っても…きっと一生消えない」そう伝える菜穂に「俺の…せい…?」と呟く翔。否定しようとした菜穂の言葉を遮るように「そうだよ。おまえのせいだよ。死んだら絶対許さねぇからな」と須和が言った。
翔は自分のせいで母親が死んだと思い、自分を責めていた。自分だけ楽しくていいのだろうか、生きていていいのだろうかと悩んでいた。けれど、自分が死んだらこんなにも悲しんでくれる仲間がいると分かったからこれからは強く生きていけると思った。

6人で埋めるタイムカプセル

6人はタイムカプセルを埋める事にした。パラレルワールドが存在することを知った翔が「じゃあ、須和と菜穂が結婚する未来もあるってことか」と言うと菜穂はポカンとしていたが、須和は焦りながらも嬉しそうだった。
10年後に向けたタイムカプセルを埋めた後、翔は笑って言った。「俺生きててよかった。俺を助けてくれてありがとう」

そして未来へ

学校帰り、翔は四柱神社へ菜穂を誘う。須和が縁結びの神様だから一緒に行けと言ったのだが、そこは10年後の須和が菜穂にプロポーズした場所だった。須和の気持ちを知るあずさや貴子は「好きな子のことそこまで応援できるやついないよ」「そこまで良い人でいなくていいじゃん」と口々に話す。しかし、10年後の須和は翔がいなくなった事で弱った菜穂の心に入った自分をズルいやつだと感じていた。翔を利用したという気持ちがあったようだ。それでも手紙の最後にはこれからの人生はおまえが決めてくれと書かれていた。自分の気持ちを抑え、2人の応援に徹すると決めたのは今の自分だったのだ。
複雑な気持ちを抱えながら2人を応援することに徹していた須和のことを3人はよく見ていた。「菜穂のためにアンタが翔の代わりになってあげたんでしょ」「高宮と翔、どちらか一方だけを幸せにする事も傷つける事もおまえは出来なかっただけだ」「その手紙は須和にしか書けないし、須和だからその手紙に応えられたんだよ」3人の言葉を聞いた須和はきっと自分の選択に自信を持ったに違いない。

orangeー須和弘人ー

6巻にはorangeー須和弘人ーも収録されている。
翔を失った後、サッカーを辞めみんなと距離をとっていた須和だが、大学生になってしばらく経ったある日弁当屋で働く菜穂と再会する。久しぶりに会った菜穂は未だに翔が好きで悲しい笑顔を浮かべていた。
もう一度菜穂の笑顔を見るためにやり直そうと決めた須和はあの頃翔が言っていた菜穂とやりたい事を叶えていく事にした。ピクニックでお弁当を広げて菜穂に「あーん」とすると見せかけて自分で食べた。「ひどーい」と怒った菜穂はあの頃のような笑顔を浮かべた。映画館でポップコーンを食べた、あずさも一緒に。薄川で水遊びした、貴子も一緒に。花火は翔と3人で行こうと行って2人で出掛けて告白した。「好きだよ。ずっと好きだ。高校の時からずっと…」しかし、答えは10年前の大晦日、翔と菜穂がケンカした日に伝えた時と同じで「私は翔がすき」という言葉だった。

翔が見たいと言っていた松本の夜景を見に行った。菜穂は綺麗と言っていたけれど、一緒に来たのが翔だったらどんなに幸せだっただろう、そう思うと須和の目には涙があふれていた。須和は翔になりたかったのだ。菜穂を幸せに出来る翔に。
久しぶりに萩田と会った須和はまたみんなで仲良くしたいと伝える。翔がいないと5人でいても寂しいだけだという萩田に、翔をいないことにするな。菜穂の笑顔が見たい、翔が必要なんだと相談する須和。しかし、萩田は「翔はいないよ。今…高宮が向き合ってるのはお前だ」という。
その言葉に須和は覚悟を決めた。菜穂の誕生日2人で四柱神社にいった後、「菜穂は俺の希望だから。10年後も20年後も50年後も菜穂に笑っててほしい。だから俺と結婚してください」とプロポーズした。

しばらく経ったある日、須和の前にお弁当を持った菜穂が現れた。並んでお弁当を食べながら、菜穂はあの日の返事をした。「私須和と一緒に遊んでるとすごく楽しい…」そう言って話し出したのは、翔がしたかったことを翔のふりをしてやったことだった。複雑な思いで話を聞く須和に「でも一番嬉しかったのは誕生日にプロポーズしてくれた事」「生まれてきて一番幸せだと思った」と言って菜穂は笑った。プロポーズは自分で考えた事だ。翔じゃない自分自身として気持ちをぶつけたものだった。
「翔をずっと好きでいなきゃって思ってた」「だけどそうじゃないって気づいたの。今大事なことを見失ったらまた後悔するから」そう言って菜穂はプロポーズを受けた。

菜穂と須和が手を繋いで街を見ている。須和が心の中で「菜穂の喜びや幸せを作れるのは翔だけだって」「それは今でも思ってる」
でも俺も負けないからな
振り返ると2人の後ろには高校生の翔がいてニッコリピースしてくれた。

須和と付き合うことになったと貴子に報告すると「須和の嬉しそうな顔が目に浮かぶよ」「アイツ菜穂のことずーっと好きだったからね」と言われた菜穂。改めてずっと支えてくれたのは須和だったんだと気付く。
待ち合わせに到着した菜穂は涙を浮かべながら言った。
「ずっと…待っていてくれてありがとう」

『orange』の登場人物・キャラクター

orange 主な登場人物の相関図

高宮菜穂(たかみや なほ)

CV:花澤香菜、演:土屋太鳳
性格は控えめで臆病な女の子。周りを気にしすぎるあまり、よく我慢してしまうが本当の気持ちに気付いてくれる翔に恋をする。趣味は家事で毎日のお弁当を自分で作ったり、学校にソーイングセットを持って来たりしている。中学時代にはソフトボール部に所属していて、高校の球技大会ではホームランを打つなどスポーツ少女な一面もある。
普段は積極的に行動するタイプではないが、未来の自分の後悔を失くし、翔を救うために奮闘する。

成瀬翔(なるせ かける)

CV:山下誠一郎、演:山崎賢人
高校2年の春、菜穂たちのクラスに転校してきた。幼い頃に両親が離婚、母と2人暮らしをしていた。転校初日に母が自殺してしまったため、その後は祖母の元で育てられる。
須和に誘われサッカー部に入部した。足が速くリレーにも選ばれるなどスポーツ万能である。
菜穂のことを好きになるが、母親の自殺に責任を感じているため一定の距離を保とうとしてしまう。

須和弘人(すわ ひろと)

CV:古川慎、演:竜星涼
身体が大きく、頼りがいがあるリーダータイプで周りを明るくしてくれる。10年後の未来では菜穂と結婚し一児の父である。
翔を失った時の酷く傷ついた菜穂を見て、手紙には2人を応援するように書いた。一途に思い続けた菜穂の恋を応援することに葛藤もありつつ、自分とみんなの後悔を失くすために必死で行動する。
切ない思いを抱えながら2人を応援することに徹している姿が印象的で、読者にも人気のキャラクターである。

村坂あずさ(むらさか あずさ)

CV:高森奈津美、演:清水くるみ
6人の中でも特に明るく元気なムードメーカー的存在。実家がパン屋さん。
萩田とはよく夫婦漫才のような掛け合いをしている。奥手な菜穗の恋に気付いてからは全力で応援している。

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