したたかに生きる、戦国の女たち

司馬遼太郎が描く、戦国時代に生きる女性の個性的な生きざまを描いた短編『戦国の女たち』。この中で特にオススメの4編について紹介します。

女は遊べ物語

七蔵の妻・小梅は大の贅沢&浪費好き。
時々夫から小言を言われても構いはしません。なぜなら、家計が圧迫すればするほど、彼女がわがままを言えば言うほど、夫は手柄を立てて帰ってくるのだから…

わがままで贅沢好きの小梅と、すっかり彼女のATMと化している夫。美人ではないが色香のある小梅が持つ男をたぶらかす技術には、「見事」と言うよりほかありません。

胡桃に酒

明智光秀の娘・細川ガラシャと彼女の夫・細川忠興。
稀有な美貌と教養を持つ女を妻にした忠興は、結婚したその日から猛烈な嫉妬と狂気的な激情に悩まされることとなる…

比類なく美しく強かな妻と、武士としては有能だが妻への畏怖と嫉妬を前に狂ってしまった夫。題にある『胡桃と酒』のように、食べ合わせの悪い夫婦の奇妙な軌跡を描いています。

一夜官女

美しく着飾り、"生け贄"として神と一夜を過ごす〈一夜官女〉に抜擢された人妻の小若。期待と不安を胸に待つ彼女の前に現れたのは、〈神〉を名乗る一人の荒々しい男だった…

家庭で冷遇されていた女にもたらされた甘く背徳的な一夜。しかしそれ特有の湿っぽさはなく、まるで青春小説の1ページのような爽やかなラストが印象的です。

駿河御前

天下人・豊臣秀吉の妹の物語。
顔立ちはそこそこであったが欲も無く教養も無い彼女は、兄の思惑による分不相応な結婚に生涯苦しめられることになる…

豊臣秀吉の妹、と言う立場にありながらあまりにも謎めいている彼女の生涯。司馬遼太郎はそんな彼女を"悲哀に満ちた純朴な女性"として魅力的に書き上げています。

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