落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『落第騎士の英雄譚』とは、海空りくによるライトノベル作品またはそれを原作とするアニメ作品である。
ジャンルとしては相対的に魔法要素等が少ないとされるロー・ファンタジーの学園物で、ライトノベルよろしく多数の女性キャラが登場する。
しかし本作の特徴として女性キャラは多数登場するものの、あくまでメインヒロインは一人である。
能力者としては最低ランクかつ、その能力の低さと大人達の汚い関係性故に一度落第している主人公が文字通り一生懸命頑張る姿とメインヒロインとの恋仲の様子が描かれる。

『落第騎士の英雄譚』の概要

『落第騎士の英雄譚』とは、原作を、海空りく、原案を、をんとするライトノベル作品である。
製作会社はSILVER LINKとNexus であり、SILVER LINKにとっては他社との共同制作は初になる。
アニメ監督は『バカとテストと召喚獣』や『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』などの監督も務めた大沼心。
製作は『落第騎士の英雄譚』製作委員会。

作品媒体として出ているのは原作のライトノベル、コミカライズ、アンソロジー、アニメ、インターネットラジオなどがある。
主な略称は「落第騎士」など。
本作は常人にすら備わっている才能すら備わっていない主人公が、人並外れた努力と周りからの助けにより夢を目指す少年漫画のようなライトノベルである。
当時のライトノベルといえば、いわゆる俺TUEEE系とハーレム作品が主流だったため、強くはあるものの才能が悲しいほどない主人公、ヒロインは多数登場するものの主人公とメインヒロインのカップリングが作中序盤で確率されているなどのことからアニメ放映当初から注目を浴びていた。
その差別化もあってかシリーズ累計発行部数は、2017年2月時点で150万部を突破している。

『落第騎士の英雄譚』のあらすじ・ストーリー

一輝とステラの初対面

『落第騎士の英雄譚』とは、自分自身の魂を固有霊装(デバイス)と呼ばれる武器として扱う伐刀者(ブレイザー)が存在する世界で、その養成学校である破軍学園に通っている黒鉄一輝は伐刀者としての能力が最低のFランクであり、それが低すぎるあまり単位が取れずに留年してしまう。
そんなことから周囲も彼のことを落第騎士(ワーストワン)と蔑んでいた。
新年度直前、学生寮の自室に戻ると半裸のステラ・ヴァーミリオンと遭遇してしまう。
彼女はヴァーミリオン皇国の第二皇女であり、更に10年に一度の逸材と呼ばれる最高ランクの学生Aランク騎士であった。
新理事長、新宮寺黒乃の新体制により、完全寮制度である生徒たちの部屋割りは男女関係なく実力の近しいものがルームメイトになるようにされていた。
しかし、十年に一人の逸材と呼ばれる規格外の天才であるステラと十年に一人の凡才である一輝は互いに実力の近しいものがいない。
そのため、両極端に位置する二人が共同生活をすればなにか見えてくるものがあるだろうという黒乃の考えだったが、ステラ、一輝両名にその旨を伝えていなかったためにこのようなハプニングが起きてしまった。

一輝とステラの決闘

紅蓮の皇女の二つ名を持ち、実際ヴァーミリオン皇国の皇女であるステラは自分の半裸を見た一輝を許せなかった。
それに加え、黒乃から提示された「模擬戦を行って勝ったほうが部屋でのルールを決める」という提案に、あろうことがFランクの一輝が「平等でいいですね」と答えた。
ステラの経験上、ステラに負けたものは「才能の前には努力なんて無駄」というような、ステラがまるで抜刀者としての才能の上に胡坐をかいているようなことを言うものが多かった。
一輝のことを能力で負けていても剣の技量でステラに勝てると思っている輩と同列だと思ったステラは剣戟でも一輝に勝つことで、自分が抜刀者の能力だけの人間でないことを証明するために決闘を承諾。
さらに負けん気の強さから「決闘の勝者が同室になる部屋のルールを決める」から「負けた方は勝ったほうに一生服従」という内容に変えて決闘に挑む。
学生Aランク騎士とFランク騎士の決闘の結果は火を見るより明らかであると誰もが思っていたが、大勢の予想に反して決闘は黒鉄一輝の勝利で終わる。
約束通りステラは一輝の下僕となり二人は同室での学園生活をスタートさせる。

黒鉄兄妹の再会

新学期がスタートしても黒鉄一輝とステラ・ヴァーミリオンの決闘の熱は冷めることを知らなかった。
通常、Aランク騎士とFランク騎士が戦ったところで勝負になるわけが無い。
更に決闘や柔らかな物腰から女子からの人気が集まり始めた一輝を面白く思わないクラスメイトら五人が、イカサマだと因縁を付けるが、固有霊装を使用した五人に対して固有霊装を使わず相手を傷つけず圧倒的してしまう一輝の実力に、クラスは時間が止まったように静まり返ってしまう。
そこへ一輝の妹であり新入生の黒鉄珠雫が姿を現すが、珠雫が一輝に口づけをした事で空間が凍り付く。
兄妹としてではなく一人の男として好意を寄せている珠雫に対抗心を燃やしたステラはその日、奉仕という建前で一輝の入浴中に水着で現れ胸を押し付けるなどの行為を働く。

桐原との出会い

週末、一輝、ステラ、珠雫、そして珠雫のルームメイトである有栖院凪(以下アリス)は映画を見るためにショッピングモールへでかける。
しかしそこで「解放軍」と呼ばれるテロリスト集団と遭遇し、人質にとられた多数の一般人の中にはステラと珠雫がいた。
アリスと一輝はトイレで離れており、テロリストを捕まえる機会を伺っていた。
ぐずる子供を殺そうとするテロリストにステラが怒りのあまり声をあげてしまう。テロリストは反抗する女が皇女のステラと気付き、全裸で土下座をさせるストリップショーを人質を盾に強行させる。
下着姿となり、群衆に視姦され、辱めに涙を流すステラを見て一輝が飛び込もうとするもアリスがもう少しの辛抱と諭す。
ステラがブラジャーのホックに手をかけたとき、珠雫の反撃をきっかけに一輝達はテロリストを撃退する。
一輝たちが奇襲で全員倒したと安堵していたところ、人質に紛れていたテロリストに一般人を殺害されそうになるが自身の能力で隠れていた一学年上の生徒桐原静矢に助けられる。
桐原は昨年から10年に一人の劣等生と言われるほど才能のない一輝を迫害していた一人だった。

一輝初の公式戦

年に一度開催される全国の抜刀者養成学校の代表者が集い、最強の学生騎士を決める七星剣舞祭。
有志の生徒が七星剣舞祭へ出るための代表者を選ぶ、「選抜戦」トーナメントの初戦で当たることになった桐原静矢と黒鉄一輝。
桐原は去年一年にもかかわらず七星剣舞祭に出るほどの実力者であり、一輝はこの七星剣舞祭で優勝することを卒業の最低条件とされていた。
桐原の実力、そして負ければこの一年を無駄にしてしまうというプレッシャー。
さらに一輝とステラの決闘を八百長と信じ、ランクを理由に罵声を浴びせる観客たる生徒達に一輝の心は折れそうになる。
そういった考えが大嫌いなステラが「自分たちの可能性を諦めているお前達に自分の可能性を信じている一輝の強さがわかるわけない」と一喝する。
自分を認めてくれたステラに応えるように一輝は奮い立つ。
一輝は伐刀者の名門家に生まれながらその才能のなさ故に分家の子供でさえ受けられていた稽古を受けさせてもらえなかった。
そのため人の動きを見て盗む技術が抜群に高く、立ち会えば剣技の端から深部へと理解する模倣剣技(ブレイドスティール)を使用していた。
この戦いの中でその常人離れした観察眼から模倣剣技を進化させ、相手の思考、価値観など全てを先読みする完全掌握(パーフェクトビジョン)を開眼する。
この完全掌握で視覚のみならず気配すら感知させない桐原を追い詰める。
今まで戦闘において怪我すらしたこのなかった桐原はまるで見えているかのように自分を追い詰める一輝に恐怖し、必死に命乞いをするが鼻先を薄皮一枚斬られ失神する。
辛くも勝利を収めた一輝だが満身創痍で気を失ってしまう。

医務室で目を覚ました一輝はステラと思いを通じ合わせ、恋人となる。
そして二人はいつか七星剣王の座をかけて再戦することを誓った。
桐原静矢を下した一輝はいつしか無冠の剣王(アナザーワン)と呼ばれ、破軍学園の生徒から上級生関係なく剣術指南をすることになり、今までとは環境が一変するようになる。
破軍学園序列三位、速度中毒者(ランナーズハイ)の異名を持つ兎丸恋々を一輝は無傷で下し、Fランクながら選抜戦全勝を守り続けていた。

綾辻絢瀬との初対面

そんな日、一週間前から自分のストーカーをしている綾辻絢瀬から剣術指南を依頼される。
数日後、絢瀬から指南のお礼にとファミレスへ誘われる。
そこで絢瀬の仇敵、倉敷蔵人と遭遇してしまう。
倉敷とその取り巻き達は散々に挑発をするがあまり問題を起こさない方が良いと判断した一輝によりその場は収まった。
しかしその夜、一輝の次の対戦者が綾辻絢瀬に決定してしまう。
対戦者発表後、しばらく交流のなかった絢瀬に試合前日の夜学校の屋上に呼び出される一輝。
身投げした絢瀬を一輝は一刀修羅を使って何とか救出する。
これは絢瀬の罠であり、一輝の切り札である一刀修羅を使わせることで自分との選抜戦時に使えないようにする事が狙いであった。
翌日、絢瀬は固有霊装「緋爪」の空間に傷をつける能力を用いて予め罠を張った。
そして試合会場で選抜戦が始まった。緋爪は傷をつけた個所を開くことができる。相手の体を斬ったのであればさらなる追撃を、空間を斬ったならカマイタチのようなものを発生させることができる。
本来であれば試合開始前に罠を張ることはルール違反だが一輝は予め審判である先生に「彼女がルール違反と分かっても止めないでくれ」と念を押していた。

綾辻絢瀬の因縁の相手との決闘

彼女の望みと蔵人との因縁を知った一輝は綾辻一刀流の道場へ向かい2年前、絢瀬達から綾辻一刀流の道場を奪い取った蔵人に道場破りを仕掛ける。彼との戦いを続ける中、同じく彼女の話を聞いて一輝に同伴していたステラは絢瀬に蔵人に敗北し意識不明となった綾辻海斗の本当の想いを絢瀬に伝える。そして、お互いが次で決めると誓ったその時、一輝は剣術指南の際に絢瀬の剣から盗んだ綾辻一刀流最終奥義・天衣無縫を蔵人に叩き込む。「天衣無縫に挑んでみたい」という想いだけで2年間、道場を支配していた蔵人はこの戦いに満足し決闘を中断して絢瀬に道場を返す。その際、一輝に「戦いの続きは七星剣武祭でだ」と言い残しその場を去る。

破軍学園生徒会長東堂刀華の実力

学園長から「1年のホープである君達を学園の奥多摩にある合宿所へ招くから鍛錬してくるといい」と招待された一輝とステラ。
二人だけの長旅は初めてとルンルン気分で向かうが合宿所で待っていたのは生徒会の面々であった。
生徒会の面々曰く一輝達も同じ目的でここに来たと言うが話が食い違っており混乱する一輝。
実はこの合宿所を一ヶ月後使用するため、掃除の助っ人として呼ばれていたのだった。
粗方掃除も終わったところで一輝とステラは行きに見かけた滝を間近で見ようと二人で向かう。
途中でステラの体調不良により戻ろうとするが、急な雨のため近くの山小屋へと避難することにした。
濡れたままでは体温を奪われるので一輝は服を脱ぎ、頬を赤く染め息を荒らげるステラの服も鉄の意思でなんとか脱がせることに成功した。
雨もあがり始めた頃、地響きのような音がし始め、確認のために外へ出ると背後に山小屋を破壊しようとする岩の巨人が立っていた。
山小屋を破壊される寸前、一輝は一刀修羅を発動しステラを救出。
生徒会の面々と生徒会長である東堂刀華の助けもあり無事帰ることが出来た。

珠雫の元に次の選抜戦の相手が破軍学園序列第1位・東堂刀華に決定した、というメールが入る。
選抜戦で初めて明確な格上の強敵である東堂刀華との試合が決定した珠雫。珠雫は「この一戦で自らの限界を試し、彼女を倒して一輝やステラ達と一緒に七星剣武祭に出場する」と決意を新たにした。
選抜戦当日、ロングレンジでは刀華と互角に渡り合う珠雫。
しかし刀華の抜き足によって徐々に追い詰められていく。
珠雫は覚悟を決め伐刀絶技・緋水刃でクロスレンジに飛び込むがそこは刀華の間合いであった。
刀華は伝家の宝刀・雷切によって珠雫を切り伏せ、珠雫は敗北してしまう。
試合後、医務室へお見舞いに来た一輝達を「1人にして欲しい」と遠ざけるが1人留まったアリスの腕の中で悔しさから涙を溢れさせた。

秘密の恋人関係の暴露

後日、生徒会から呼び出しをくらった一輝とステラは生徒会室で東堂刀華の親しみやすい一面を知る。
東堂刀華は有名人であるステラ達を自分が育ったのと同じような孤児院へ連れていくことで子供達が喜ぶと考え、一輝達を呼んだのであった。
孤児院で一輝は刀華の強さの所以を知る。
更に刀華と同じ孤児院育ちの生徒会副会長、御祓泡沫から「君のような何も乗っていない剣では多くを背負う刀華の剣には絶対に勝てない」と断言され、自分の軽すぎる剣に悩むことになる。

孤児院から学園に帰ると「ヴァーミリオン皇女、禁断の火遊び」と一面に一輝とステラのキスショットを飾った新聞を突き付けられる。
そこへ黒鉄家分家で魔導騎士連盟の倫理委員会委員長の赤座守が査問会が開かれること、一輝の出頭を命じる。
これは一輝を快く思わない黒鉄家の明確な悪意を持った攻撃であり、一輝を魔導騎士にさせないためであった。
自らの潔白を主張するため出頭に応じる一輝。
幾度も自分達は清い交際であり、やましい事はないと主張する一輝であったが、黒鉄の息のかかった委員が話を聞くことも無かった。
一輝は、劣悪な環境や休息のほとんど無い状況であるものの、魔導騎士連盟日本支部で行われた自身の選抜戦はなんとか全勝を守り続けていた。
そんな中、魔導騎士連盟日本支部長である自らの父・黒鉄厳に直談判し、潔白を証明しようとするが父と自分は決定的に切れていることを思い知らされ、精神が崩壊するまで追い込まれてしまう。
この最悪のタイミングで倫理委員会は選抜戦最後の相手を東堂刀華とし、彼女との決闘に勝てば今回の件は不問、負ければ魔導騎士連盟追放という条件を強要した。

剣豪黒鉄一輝決勝戦

決勝戦当日、倫理委員会の思惑で徒歩で学園まで戻らなくてはならなくなった一輝。
肉体も精神もとうに限界を超えている一輝は「もういいじゃないか。お前のこの軽すぎる剣では彼女に勝てるはずがない」と諦めさせるもう一人の自分の言葉に折れかける。
しかし学園へ着いた一輝が見たのは自らを慕ってくれる者、自らを愛してくれるもの、そして自らが愛する者の姿だった。
ステラとの約束を思い出し、自分の剣にだって負けないくらい思いが乗っていると確信した一輝はステラ達に東堂刀華への勝利宣言をして試合に臨む。

赤座の手により全世界へ中継が繋がった試合会場で始まった試合。
一輝は試合開始と同時に切り札である一刀修羅を発動させ、自らの最速の剣技である第七秘剣・雷光を以ってクロスレンジ不敗を誇る東堂刀華の雷切に真っ向から勝負を挑む。
刀華もまた、彼の一刀を避ければ自分の勝ちであることを承知の上で誇り高き騎士である彼と戦いたい、正々堂々正面から降したい一心で一輝を殺すことすら覚悟して雷切を振るう。
一刀修羅の一分間の全力をただ一振の為だけに凝縮するという更なる進化を遂げ一刀羅刹とし、不敗であった東堂刀華の雷切に打ち勝つ。

一輝が勝てるはずのない試合を作り上げたはずだった赤座は、自らの失脚を恐れ一輝を始末しようとするがステラのひと薙ぎでどこかへと吹っ飛ぶ。
今にも倒れそうな一輝だが、伝えたい事がある一心でギリギリ踏みとどまる。
もはや一歩も動けないところにステラが飛び込み、全世界へ中継されている事も忘れ、ステラへ「家族になって欲しい」とプロポーズする。
この決闘の経緯と結末を聞いたステラの父・ヴァーミリオン皇国国王ことシリウス・ヴァーミリオンは日本の報道陣に対し不快感を示し、黒鉄厳にも「大人の事情に子供を巻き込むな」と一喝する。
報道陣もそれ以上追求することが出来なくなり、このスキャンダル騒動は尻すぼみとなった。
決戦から一週間後、七星剣舞祭任命式で一輝は団長に任命される。

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