EVE burst error(イヴ・バーストエラー)のネタバレ解説・考察まとめ

『EVE burst error』とは、シーズウェアの開発によるアドベンチャーゲーム。
PCゲームとして発売され、その後セガサターン、PS2、PSP、PS Vitaに移植された。その人気から何度もリメイクされている。
絵画捜索依頼を受けた私立探偵・天城小次郎と、女子高生の身辺警護の指令を受けた凄腕国家情報エージェント・法条まりな、男女二人の視点から猟奇殺人事件の真相を追う。
主人公二人の視点を切り替えながらゲームを進行する「マルチサイト・システム」が高い評価を受けた。

『EVE burst error』の概要

『EVE burst error』は、シーズウェア開発、発売によるPCゲーム。1995年の発売ののち、1997年にセガサターン版が発売。それにアダルト要素を加え再移植した新PC版も発売された。それらを基礎にキャラクターデザインを変更したPS2版である『EVE burst error PLUS』も2003年に発売。それにアダルト要素を加えたPC版である『EVE』もある。ストーリー、トリック、デザインを大幅に変更したPSP版『burst error -EVE The 1st.-』が2010年に発売。2018年にはそれまでの作品要素をすべて取り込んだデジタルリマスター版である『EVE burst error R』が発売、それにアダルト要素を加えた『EVE burst error A』と合わせると35万本以上のヒット作となった。
作者である剣之ゆきひろ(菅野ひろゆき)はシーズウェアのデヴュー作『禁断の血族』でプログラムを担当した後、『悦楽の学園』でプログラムだけでなくシナリオも担当した。製作期間を長く持てなかったこの作品の評価があまり芳しくなかった事から、より良い作品を作りたいと考えた剣之は企画、脚本、ゲームデザイン、プログラムを一人で手掛ける方針にし、クオリティの上昇を追求した。その後その方針で『XENON -夢幻の肢体-』や『DESIRE 背徳の螺旋』を制作。そしてシーズウェア退社前の最後の作品である本作『EVE burst error』が大ヒットを記録した。
本作の魅力は「マルチサイト・システム」を用いた二つの視点から物語の謎を追う中でそれぞれの視点が交錯し、一つの大きな事件が浮かび上がる構造、そして強烈な登場キャラクター達の個性あふれる会話、国家の陰謀や猟奇殺人、クローン生命体などサスペンス・ファンタジー的なスリリングなシナリオである。主人公である私立探偵・天城小次郎と国家諜報エージェント・法条まりなは、それぞれ絵画盗難事件と要人の娘の身辺警護という任務を負う。その中で出会う惨殺事件に、中東の暗殺者・テラーの影が浮かぶ。その中で中東の小国・エルディアの王位継承権を巡る陰謀と、王位継承のためにクローン生命体「μ‐101」を製造する「Çプロジェクト」の秘密が徐々に明らかになっていく。
この作品のPSPでのリメイク版『burst error -EVE The 1st.-』では、コマンドの選択が廃止されたことによりアドベンチャー・ゲームからノベルゲームに近い形にシステムが変更されている。キャラクターデザインも一新され、シリアスなデザインからポップなデザインとなった。キャラクターも一部変更され、グロテスクなシーンもカットされている。

『EVE burst error』のあらすじ・ストーリー

このゲームはマルチサイト・システムにより、主人公二人の視点を切り替えながら物語が進行する。終盤にはひとつの視点にまとまり、謎は解け物語はラストを迎える。

天城小次郎視点

小次郎に手料理を振る舞うプリン。

私立探偵、天城小次郎は、ゴシップ誌記者・柴田茜を通して太った中華系の男性・ストールマン・孔から絵画盗難事件解決の依頼を受ける。思っていたよりも早く絵画は見つかる。そのあまりに簡単な捜査の完了に違和感を感じる小次郎。ある時、小次郎は不良に絡まれている異国の少女「プリン」を助ける。小麦色の肌に金色の髪の少女だった。彼女に気に入られた小次郎は押しかけられる形で彼女と一緒に暮らし始める。戸惑いながらも楽しい共同生活を送る小次郎。そこへ解決したはずの絵画盗難事件の依頼主であるストールマン・孔からおかしな電話がかかってくる。まるで初めての会話のような電話だった。気にかかった小次郎は、ストールマンの家へ向かう。するとそこには、会ったことのない男が一文字に首を切られ惨殺されていたのだった。死体の状況をを調べ、現場を後にする小次郎だったが、翌日の報道で殺されていた見知らぬ男が本物のストールマンであった事を知り、衝撃を受ける。絵画盗難の依頼主の男は偽物のストールマンだったのだ。また、報道によってストールマン殺害の犯人として自分と同時に絵画盗難依頼を受けていた二階堂進が指名手配されていることを知る。二階堂は、小次郎の元恋人である桂木弥生が営む桂木探偵事務所に所属しており、かつては小次郎とライバル関係にもあった因縁浅からぬ人物だった。その二階堂が殺人事件を起こすとは思えず、小次郎はストールマン殺しの真相を知るため調査に乗り出す。エール外国人学校に潜入した小次郎は、何度か遭遇していた学校の外国語教師・シリアに襲撃を受けるが間一髪で脱出する。調査の最中、二階堂が自殺したという情報を知る小次郎。この事件には裏があると確信した彼は調査を進め、二階堂が絵画盗難依頼の影で密かに別の依頼を遂行していたことを知るのだった。その依頼主は中東の小国、「エルディア」の駐在大使であるロス・御堂であった。エルディア大使館へ向かい、取材だと偽り潜入し、御堂との面会を成功させる小次郎。会話の中で、御堂がボロを出したことで二階堂を動かしていたのがやはり御堂であるという事実を確信する小次郎。調査中出会った情報機関エージェントである氷室恭子と捜査を続ける中で彼が共に生活していた異国の少女・プリンが、実はエルディア共和国の次の女王候補、プリシアであることが判明する。エルディアでは次期女王を巡る権力争いが起きており、彼女側の勢力のメンバーであったストールマンが殺された上、王位を受ける際に必要となる国璽(重要文書)も手元に無いため、後ろ盾の無い彼女は命すら狙われる非常に危うい立場にあった。さらに、既に死亡している前王の別の子供を相続させようとする一派、王権派から彼女は命を狙われているのであった。それを知った小次郎は、彼女を守りながら、彼女の味方の元へ逃げるよう助ける。

法条まりな視点

護衛対象である真弥子(右)と共にランチを楽しむまりな(左)。

国家情報機関エージェントの法条まりなは、任務達成確率ほぼ100%の凄腕エージェント。海外から日本へ帰国しようと飛行機に乗ったまりなはエアジャックに遭遇するが、たまたま居合わせた鈴木源三郎という男のアシストもあり、エアジャック犯を難なく鎮圧する。無事日本へ帰国したまりなは、所属機関である内閣調査室へ久々の出勤をする。そこには上司である甲野三郎が、いつもの様子で待っていた。着任報告をしたまりなは、甲野から新たな指令を受ける。それは、中東の小国・エルディア王国駐在大使であるロス・御堂の娘、御堂真弥子を彼女のことを狙う過激派勢力から護衛するという任務だった。真弥子に会いに行くまりなだったが、真弥子はかたくなに心を開かない。だが、時におどけながら彼女に付き添うまりなに、少しづつ真弥子は心を開いていく。真弥子の住む学生寮へ同行したまりなは、真弥子が注射器を取り出し腕に打とうとする場面に遭遇する。薬物は辞めた方がいいといさめるまりなだったが、それは誤解だった。真弥子は糖尿病の持病があり、定期的にインシュリン注射が必要となる体だった。自分のことを心から気遣ってくれるまりなに、真弥子はいっそう信頼を寄せるようになる。学校の前の道路で真弥子を襲い、連れ去ろうとした男たちを蹴散らすまりな。そんな護衛の日々の中で、真弥子の通うエール外国人学校の校長であるストールマン・孔が首を一文字に切られ惨殺される事件が発生する。その殺害の手口と、死体の近くに置かれたエルディア特殊部隊のナイフから、上司である甲野は中東のエルディア国の暗殺部隊出身という噂のある暗殺者・テラーが犯人ではないか、と推理する。日中、真弥子が学校に居る間に出向いた街の探索の中で鈴木源三郎と再会し、何度も偶然の出会いを重ねるうちにまりなは彼を愛し始める。任務中のある日、用事でプリンセス・ホテルへ向かったまりなは、つい間違えて別の部屋へと入ってしまう。そこに人が訪れる気配を感じたまりなは、思わず押し入れに身を隠すのだった。最初は会話を聞いていたまりなだったが、途中で不覚にも眠ってしまう。目を覚ましたまりなは、部屋が無音になっていることから人がもう立ち去ったと判断し、押し入れから出る。そこには、首と体が離れるほどに惨殺された男性の死体が横たわっているのだった。上司である甲野に連絡を入れたまりなは、その殺害された男が、エール外国人学校校長であるストールマン殺しの指名手配犯である探偵・二階堂進であることを知る。明らかに誰かに殺された二階堂の事件を、内閣調査室上層部が自殺として処理しようとしている事に陰謀を感じるまりなは、「二階堂殺しは外交上問題となる外国の暗殺部隊員による犯行ではないか」と推理する。現場にはストールマン・孔が殺された時と同様にナイフが残されており、まりなは「一連の事件はテラーによる連続殺人ではないか」という疑念をさらに強くする。真弥子の父、ロス・御堂の動きを不審に感じ始めるまりな。護衛任務以降、なぜか真弥子襲撃が過熱していることに気付く。実は真弥子は御堂の本当の娘ではなく、エルディア前王の血を引いていた。御堂は自作自演の襲撃事件を起こし、それを対立するプリシア派の仕業に見せかけることで彼らの評判を落とし、真弥子の次期王位襲名を後押しする作戦を立てていたのだ。

エンディング視点

式典が迫る中、小次郎(右)は真弥子と、まりなはプリシラと、それぞれに交流する。

ついにエルディア王国の王位継承式典の日が訪れる。エルディア共和国の豪華客船・トリスタン号に、小次郎、まりな、王権派、プリシア派、すべての主要人物が集合するのだった。変装し潜入する小次郎。巡回するまりな。トリスタン号の甲板で、小次郎に出会う真弥子。真弥子は小次郎に恋をする。トリスタン号の部屋の中で式典の時を待つプリシア(プリン)。そして、継承式典は開かれた。初めて相まみえる真弥子、プリシアの両女王候補。大勢の関係者、観客、そしてプリシア派、真弥子派の両派閥が揃う中、全員の前で真弥子は、国璽(重要文書)をプリシアに渡し、王位継承権を放棄、そして小次郎と結婚すると宣言。王位継承権はプリシアの物となった。騒然とする船内。プリシアが王位を継承することになり、式典は終幕した。式典終了後の船内で、ストールマンのふりをして小次郎に絵画捜索を依頼したエルディアの工作員・ディーブや、エルディア国首相であるアクア、そしてロス・御堂などが、次々ナイフによって惨殺される。御堂は、自分が殺された時にトリスタン号に仕掛けた爆弾が爆発するように仕組んでいたため、トリスタン号は爆発、沈没してゆくのだった。偶然にも船底の小部屋に取り残された小次郎、まりな、プリシア、真弥子だったが、いくら壁を叩いても救助は来ない。誰が救助を呼びに海に潜るかを相談する中、真弥子が名乗りを上げる。海に潜る真弥子。帰ってきた真弥子は、救助が近づいている事を皆に告げる。しかし、真弥子の姿は、金髪、瞳の色、すべてがプリシアそっくりになっていた。真弥子は、前国王が死してなお権力を持ち続けるため、王の脳を移植したプリシアのクローン生命体、μ‐101だったのだ。女子高生としての記憶は偽造されたものであり、実年齢は数年程度で、糖尿病のインシュリン注射は実は王の記憶を脳に固定するための記憶維持薬だったのだ。それまでのテラーによる殺人は、真弥子が記憶を失っている間に王の意識が行ったものであり、アクア首相の殺害はその事実を突きつけられ錯乱した真弥子による殺人であった。不完全なクローン技術により脆弱な体で、維持薬の無い状態で過度な運動をした真弥子は、自分の肉体と精神が崩壊してゆくのを感じ取る。意識を失ってゆく真弥子に皆が呼びかける。真弥子は「みんなに幸せになって欲しい。だから笑って」と言うのだった。そしてラストシーン、エルディア王国王宮にてプリシアはつぶやく。「彼女は確かに生きていました」と。

『EVE burst error』のゲームシステム

マルチサイト・システム

制作元であるシーズウェアの前作である『DESIRE』からのシステムであるマルチサイト・システムが導入されている。マルチサイト・システムは、主人公二人のストーリーを追う中で片方から片方へと視点移動が出来るというシステムである。小次郎視点ではまず絵画捜索を依頼されるところから始まり、まりな視点では真弥子の護衛任務から物語が始まる。だが、双方別の事件を追っているように見えて、ストーリーを進めてゆく内に片方の登場人物がもう片方に現れるなど、物語が交錯していくのが特徴である。例えば小次郎の元同僚である二階堂進は、小次郎視点では絵画捜索依頼を同時に請け負ったライバルであり、小次郎に先んじて真相の手がかりを掴んでいるような素振りを見せる。それがまりな視点のある時点で、まりなが隠れているプリンセス・ホテルの部屋において惨殺死体として現れる。また、この作品において特に評価が高いシーンである、小次郎が探偵事務所からパソコンで内閣情報室の機密情報、エルディア王国の情報をハッキングしようとする際、同時に、つまりリアルタイムでまりな側でもハッキングを仕掛けており、知らず知らずの内に二人は協力して機密情報にアクセスする、という場面がある。ここでは頻繁に視点を切り替える必要があり、パスワード入力などもあることから、緊張感が演出されており、マルチサイト・システムの醍醐味が味わえる場面となっている。物語最終盤ではテラー視点、つまり真弥子視点で謎が解明された後マルチサイトは終了し、二人が同じ時間・空間に居るという三人称視点になり終了する。こういったシステムとシナリオが高いレベルで融合した点も、この作品の評価に繋がっている。

セーブシステム

本作95年版では後発作にあるサイトチェンジのタイミングを伝えるガイド機能やログ機能はない。セーブ機能に関しても後発作のようにいつでもセーブ・ロードコマンドが開ける訳ではなく、小次郎視点では「あまぎ探偵事務所」、まりな視点では「サン・マンション403号室」と特定の場所でのみのセーブか、シナリオ進行に応じてセーブ・ロードコマンドが現れる仕様となっている。

『EVE burst error』の登場人物・キャラクター

主人公

天城小次郎(あまぎ こたろう)

CV:子安武人/杉田智和(リメイク版)

私立探偵。使用している銃はグロック22カスタマイズ。かつては桂木探偵事務所のリーダーだった。目が隠れるほどの長髪が特徴。桂木源三郎を養父として桂木弥生とは共に育てられた。桂木探偵事務所の現・所長代理である弥生とは元恋人関係であるが、源三郎の不正を告発した事で桂木探偵事務所を去り、弥生とも別れる。だが弥生とは今でもつかず離れずの関係である。凄まじい推理力を持つが、感覚を重視するタイプ。独立してからは零細の依頼ばかりで冴えない日々を送っていた。調査能力、銃の扱いに関しては源三郎に叩き込まれた技術によって凄腕で、時にクールな一面を見せるが、基本的にはおどけた性格であり、冗談や下らない下ネタをよく喋る。性欲に流されやすく、また男性としての魅力に溢れるため女性と体の関係を持つ事が多いが、優しい性格から許容されやすい。根は正義漢であるが、自由を求める無頼な部分がある。

YAMAKUZIRA
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@YAMAKUZIRA

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