じいさんばあさん若返る(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『じいさんばあさん若返る』とは新挑限によるおしどり夫婦コメディ漫画。2019年10月26日に作者Twitterとpixivにて発表された。2020年2月29日にはニコニコ漫画にて連載が開始された。KADOKAWAから2020年6月に1巻が発売。同年11月には2巻が発売された。それを記念としてYouTubeにてボイスコミックが公開された。青森のとある農村に住んでいる老夫婦の正蔵とイネはある日突然若返った。2人は若返りに戸惑いつつも新婚時代にすることができなかった夫婦生活を楽しむことにする。

『じいさんばあさん若返る』の概要

『じいさんばあさん若返る』とは2020年10月26日にTwitterとpixivにて公開された新挑限によるおしどり夫婦コメディ漫画である。同年29日にニコニコ漫画にて連載開された。
最新話は毎週水曜日11時Twitterにて公開される。

KADOKAWAから2020年6月22日にコミック1巻、11月21日にコミック2巻が発売された。そして、コミック2巻の発売を記念してYouTubeの「KADOKAWAオフィシャルチャンネル」からボイスコミックが公開された。
コミック発売時にはTwitterで公開された話以外にも描きおろし漫画が収録されている。

青森県のとある農村に住んでいる斎藤正蔵(さいとうしょうぞう)とイネの老夫婦は、ある日の夜に目が覚めると若い頃の姿に戻っていた。若返ったことに最初は戸惑う2人であったが、新婚の頃に新婚旅行すら行くことの叶わなかったことなどから新婚旅行を夢見て夫婦生活を楽しむことにする。

本作の中には地方の過疎化、少子高齢化などの問題がさりげなく入れられている。これは、作品内で声を大にしてこれらの問題を提唱することで作品自体がきな臭くなってしまうのを防ぐための作者の配慮である。
しかし、これらの問題について考えるきっかけになればとも作者は考えている。
青森県が舞台なのは作者の出身県であることが影響しており、地元への愛や感謝が込められている。

作者が『じいさんばあさん若返る』を描こうと思った動機は、前作『幼なじみになじみたい』が大学生カップルによるオーソドックスなラブコメだったことから、今回は違う方向性にしようと考えていためである。そこで、前作とは違い「すでに付き合っている男女」の設定で、前作では目立たせることのできなかった男性主人公を今作では「魅力的に描きたい」と考えて、そこに「人生経験豊富な老夫婦が見た目だけ若返ったら」というアイディアを思いついたという。

元々は商業化を狙って発表されたものではなかったが、作者がデビュー当時からお世話になっている担当に声掛けをもらい商業化した。

主人公である正蔵は昭和初期の生まれという設定にもかかわらず現代風なイケメンなのは「フィクション」ならではのデザインだという。また、ただのイケメンでは面白みに欠けるので、服はダサい老人服のままという部分でバランスを取っている。

本作の舞台は青森県であるため津軽弁がベースになっているが、青森県民以外の人にもわかりやすいようにかみ砕いて書かれている。

『じいさんばあさん若返る』のあらすじ・ストーリー

1巻(1話~23話、描きおろし)

若返り

青森県のとある農村に住む、斎藤正蔵(さいとうしょうぞう)は自宅の縁側に座り、隣に座る妻イネに「若返ったらしたいことはあるか」と聞く。50年以上連れ添って、若い頃に貧乏であったために新婚旅行の1つにも連れていけなかったことを正蔵は気にしていたのだ。しかし、イネの返答は「正蔵が一緒にいれば幸せ」というものであった。
その深夜に目が覚めた正蔵が手洗いの後にふと鏡を見ると、自身の姿が若返っていることに気づいた。正蔵が驚いてイネの元に向かうとイネも若返っていた。
イネも驚き動揺していると、正蔵は勢いのまま新婚旅行に誘った。翌日、2人は新婚旅行(デート)のことを考えながら畑仕事に勤しんだ。

若返った2人は息子夫婦や孫の未乃に驚かれてしまうが、それでも普段の人柄の良さや信頼が高いことから受け入れてもらえた。未乃は若返ったことでイケメンになった正蔵相手に恋人ごっこに興じるほど馴染んでいった。正蔵とイネはゲートボールを趣味にしており、これを通じて知り合いからも若返りについて受け入れてもらっていった。

正蔵とイネは若返ったことで老人の体ではできなかったことをしたり、普通の日常を楽しんだりと仲睦まじい生活を送っていた。そして、正蔵とイネが若返ったことで過疎化の進む町に変化が訪れていた。
農業を継がずに町を出て東京で働くことを希望する学生がいたが、リンゴ畑で働くイネと正蔵の姿を見たことで農業も悪くないと考えを変えるきっかけになった。さらに、さびれてしまった商店街にてイネの知り合いの店がなくなりそうだった時に、イネがその店の商品を食べて外に立っていただけ(イネが美人であったため)で周りの興味を引いたおかげで売れたりなど、本人たちは気づいていないが良い変化を生んでいった。

描きおろし『りんごの泪』

2人が若返る前の話。年老いた正蔵とイネの体は高齢も手伝って病気などで薬が手放せない生活を送っていた。そんななか、イネが正蔵を誘い、自身たちが所有するリンゴ畑を散歩する。散歩する中でイネはリンゴの木を植えて育ててきたこと、できたリンゴを子供に触らせたこと、災害で木が倒れてしまったことなど様々なことを思い出しながら、自身たちがいなくなってしまったらリンゴの木たちはどうなるのだろうと心配する。2人の子供たちは農業を継ぐことなく、自身たちの道を歩んでいることから、2人がいなくなれば朽ちるに任せるだけであった。
ふと、2人は結婚の記念に植えたリンゴの木はどこだったのだろうと探す。見つけたリンゴの木はリンゴ台風(平成3年の台風19号のこと)のときに折れてしまい、修繕したあとが残っていた。イネがそのリンゴの木の先に金色のリンゴが成っていることに気づいた。

2人は金色のリンゴを収穫し、家に持ち帰って食べることにした。その日の夜、イネは巨大な砂時計が目の前にある夢を見る。そして、その砂時計が回転すると目が覚めた。目が覚めたイネは変な夢を見たと戸惑っていた。そして、自身の体が若返っていることに気づいた。すると、トイレに立っていた正蔵が慌てて部屋に入ってくる。正蔵もまた若返っておりさらに戸惑っていると、正蔵が「新婚旅行に行こう」と言うのを落ち着かせ今後のことを話し合うことになった。
正蔵は「若返っても自身のすることは変わらない、イネと家族を幸せにする」という気持ちを話す。そして、正蔵はイネをもっと幸せにしてやりたいという気持ちが強くなっていた。イネも正蔵ともうしばらく一緒にいれることを喜んだ。

2巻(24話~47話、描きおろし)

スポーツ大会

正蔵とイネは体の検査をしてもらうために息子の貴弘が経営する病院へと来た。貴弘が検査をすると正蔵とイネは身体のなかも若返っており、老人だった頃とは比較にならない程元気になっているとのことであった。

正蔵とイネが住む南町では毎年南町北町対抗スポーツ大会が開かれていたが、南町には子供が少なく高齢者しかいないことから町会の人たちは参加を辞退するべきかと悩んでいた。しかし、若返った正蔵は畑仕事で自然についた筋肉がたくましかったため正蔵に参加を頼むことにしたのだ。そして、半ば強制的に正蔵の参加が決定した。
スポーツ大会当日。北町には学校があることから若い人も参加しており、北町町会会長の五十嵐兵助と孫の男子高校生である五十嵐大輝、将太も参加していた。若返った正蔵とイネを見た兵助は驚き、2人の孫かと聞く。しかし、正蔵から間違いなく本人であると告げられる。かくして、スポーツ大会は幕を開けた。

綱引きでは綱の最後尾を正蔵が務めて勝利する。続いての二人三脚も大輝&将太兄弟の息のあった走りよりもさらに息の合った走りで正蔵とイネが勝利した。その後も正蔵とイネが参加した競技はすべて南町が勝利していったことで、南町は総合優勝を飾った。

スポーツ大会から1週間後。将太は兵助から頼まれ、スポーツ大会時に貰った弁当のお礼を持って斎藤家を訪れた。そこで、正蔵とイネの孫が同級生の未乃であったことに驚く。未乃はイネと楓は外にでているからとりあず家に上がってと誘い、将太は動揺していたこととから勢いで家の中にお邪魔することになった。将太にとって未乃はコミュ障の自身にも優しく話しかけてくれることから憧れの存在であった。そのため、2人きりでどうしたらいいかわからずどぎまぎする将太と普段通り接する未乃の姿を帰ってきたイネと楓は扉の隙間から見ていた。楓は未乃に彼氏ができたと喜ぶが、イネはまだ付き合っていないだろうと楓に落ち着くように促す。正蔵も「ひ孫見せてくれ」と呑気に2人を見ていた。
その後、将太が帰ったあとに未乃が将太を見送った玄関で無意識にぽつりと「もっと2人で喋りたかった」と零したのを正蔵だけが聞いた。

とある夜、正蔵は若返りのきっかけとなった砂時計の夢を見ていた。そして、くるんと砂時計が回転してしまった。目を覚ました正蔵は慌てて隣で眠るイネを起こす。イネが目を覚ますと、そこには元の年老いた正蔵がいた。

描きおろし『死んでるみたいに眠ってる』

2人が若返る前の話。知人が亡くなったため、2人は葬式に参列することとなった。その過程で、人は生き方を選べても死に方は選べないなとイネが顔を曇らせた。
ふと、深夜に正蔵は自身たちの年を考えれば寝ている間に息を引き取ってもおかしいことではないことを改めて感じ、イネが側からいなくなる想像して焦る。そして、その焦りのまま隣で眠るイネを揺り起こし、起きたことに安堵する。

起きたイネは正蔵の「いつ息を引き取ってもおかしくない、そしてイネがいなくなるのが怖い」という思いを聞いた。イネは不安を和らげるいい方法があるとして正蔵と一緒の布団で寝ることにした。隣にいることでイネの呼吸が確認しやすいことから正蔵は安心して眠りについた。

若返りをしてから以降の正蔵は死を怯える素振りを見せなくなった。しかし、正蔵を落ち着かせていたイネもいつか正蔵と離れてしまうことを考えると怖くてたまらなくなっていた。そして、少し前に怖くなった時に一緒の布団に入ることを提案したが照れた正蔵に断られてしまった。しかし、少しくらいならいいだろうとイネは寝ている正蔵の布団に入る。近くに感じる正蔵の呼吸に安心感を覚えたイネはすうっと眠りについた。
一方イネにくっつかれた正蔵は若い体であるが故に興奮して眠ることができなかった。

3巻(48話~72話、描きおろし)

砂時計の夢

正蔵は若返りのきっかけとなった砂時計の夢を再び見た。そして、ふとした拍子に砂時計がひっくり返ったことで目が覚めると、元の老人の姿に戻っていた。イネは正蔵だけ老いた姿に戻っていたために、若返った自身よりも先に正蔵が死ぬことを想像して恐怖していた。しかし実は正蔵の体は若返った頃の名残なのか、若い頃のままの体力になっていた。そこで、医者をしている息子の貴弘に詳しく正蔵の体を診てもらうことなった。
正蔵の体は一部に若返った頃の名残があれど、腎臓や肝臓は年相応に老いている状態であった。イネは貴弘を正蔵のいない場所に連れて行き、実際のところはどうなのかと聞く。貴弘の見解では徐々に元の老いた身体機能に戻るが、今すぐ生死にかかわるような状態ではないのとのことであった。貴弘は正蔵よりもイネの方が心配だという。イネが若返った状態のまま再び老いていくと仮定した場合、あとどれほど生きるのか心配だとイネに話す。そこで、イネは再び70年生きるとして、その頃には誰も身内がいなくなっている可能性を考えて不安を抱えた。

ある夜、正蔵は再び砂時計の夢を見ていた。正蔵はこれがひっくり返ったことで老人の姿に戻ったのならば、これをひっくり返せば若返るのではと考えつく。そこで、中の砂が落ち切る前にそれを繰り返してしまえば永遠に生きられるではと気づいた。正蔵は砂時計のからくりを調べるてみると、砂時計の真下に砂が落ちていることに気づき、たとえ何度ひっくり返そうとも中の砂が床に落ち切ってしまえば死ぬことを悟った。正蔵は砂時計の砂の量から、まだすぐに死ぬわけではないなと判断して、手で砂時計をひっくり返した。
朝起きると正蔵は再び若返っていた。イネに夢の中の砂時計をひっくり返すことで若返ったり老人に戻ったりできることを話す。イネは自身たちは不老不死なのかと不安に思っていたことを正蔵に話すと、正蔵は砂時計のからくりを説明する。正蔵は独りぼっちになることはありえないとしてイネを安心させた。

描きおろし『至福の時間』

イネに耳掃除をしてもらうのが好きな未乃は、隣に座るいとこの詩織にもイネに耳掃除をしてもらってはどうかと勧める。しかし、詩織は高校生にもなって子供みたいに甘えられないと断る。イネはそんな詩織の姿に幼い頃のように甘えてきてもらえないことに寂しさを感じていた。

その後、未乃が帰ると詩織はイネに隣に座ってと促す。イネが隣に座ると、イネの膝の上に詩織は頭を置いた。詩織の行動に戸惑うイネに詩織は耳かきを渡して、耳掃除をしてほしいと頼む。未乃がいなくなったことで出てきた詩織の甘えにイネは至福の時間だと喜び、詩織の耳掃除をする。そんな時間を堪能している中、正蔵が帰ってきてしまったために、詩織が照れて離れてしまった。イネは折角の詩織との時間を堪能するために、詩織にバレないようにサインを出して正蔵に家から離れてもらう。そして、また2人きりになったとイネがアピールすると詩織は再びイネの膝に頭を預けた。

イネは「孫はいつまでもかわいい」という気持ちを噛み締めた。

4巻(73話~96.5話、描きおろし)

傷ついた砂時計

正蔵とイネは砂時計の夢をうまく使い、時と場合に応じて元の老人の姿と若返った姿とを使い分けていた。ある時、正蔵とイネは未乃に誘われて未乃の通う高校の文化祭に行くことになった。文化祭を見て回っているときにイネの服が汚れてしまったため、被服部で服を借りることになった。イネは制服を借りることになり、それを着ると女学生だった頃を思い出して、訛りのある口調から標準語に変わり顔つきも変わってしまった。その姿を見た正蔵はイネが記憶をなくしてしまったのでは驚くが、実はイネが正蔵を驚かそうと演技していたのだと笑った。
服を借りて正蔵をからかい終えたイネは満足し、2人は未乃が所属するクラスへとやってきた。

未乃のクラスは喫茶店を開いていたが、閑古鳥が鳴く状況であった。そこで、顔の良い正蔵に給仕を手伝ってもらうことで未乃のクラスは盛り上がりを見せて終わった。

イネは再び砂時計の夢を見た。役所に手続きの用事があるため老人の姿に戻ろうと砂時計をひっくり返そうとしたが、転んでしまい砂時計に頭をぶつけてしまった。それにより、砂時計に傷がついた。そして、朝目覚めた正蔵(老人の姿)がイネに話しかけるとイネの記憶は若い頃に戻っており、現在の生活も正蔵のこともすべて忘れてしまっていた。正蔵は未乃の文化祭の時に恐れていた記憶自体の若返りがイネに起きてしまったことに驚いた。イネの記憶は正蔵と出会う前に戻っており、正蔵が今までのことを説明した。イネは正蔵の話を聞くと、なぜ自身が正蔵と結婚をして人生を共に歩むことにしたのか気になるとして、もう1度自身を正蔵に惚れさせてほしいと頼んだ。

正蔵はイネの生活知識が50年以上前に戻っているので現代の生活を教えていく。その過程で、イネは正蔵が一家の主にもかかわらず家事をこなし、さらに妻であるイネと同じ目線に立とうとしている姿に少し心を開いた。結局、1日経っても記憶の戻らないイネに正蔵は若返りの説明をして、信じられないという態度のイネに「一晩待ってくれればわかる」と言い、その日は眠りについた。
翌日になり、正蔵の姿が若返ったことにイネは驚く。正蔵は若返った姿を見てなにかを思い出したかと問うが、イネは何も思い出すことはなかった。その後、イネの思い出の地を巡ることを繰り返したが数週間たってもイネの記憶が戻ることはなかった。とある日に、正蔵は用事のために帰りが遅くなるということで、イネは1人で晩御飯を食べることになった。
イネは正蔵がいないことに不安を感じていること、正蔵の側にいることに価値を見出そうとしていることに気づいた。そこで、イネの砂時計は傷ついた部分が修復されていき、イネの記憶も元通りになった。イネは帰ってきた正蔵に抱き着き、記憶が戻ったことを知らせた。

描きおろし『悪魔の軽トラ』

とある峠道には「悪魔の軽トラ」という噂があった。峠道を走る車の助手席に座る男はこの峠道に現れる軽トラは巷の走り屋たちをことごとく負かしているのだと運転席の男に話すが、運転席の男は真面目に取り合わなかった。そんな話をしていると目の前に軽トラが走っているの見つけた運転手は小馬鹿にしたように運転席から煙草の吸殻を捨てた。
それを見た軽トラを運転していた正蔵は自身のリンゴ畑に煙草の吸殻を捨てられたことに怒り、走りの勝負で負かすことにする。

車に乗っていた2人は軽トラの異様な走りように驚きつつ負けじと奮闘するが、知り合いに弄られて本来の軽トラよりも走れる正蔵の軽トラには勝てなかった。2人は正蔵が運転する軽トラこそ噂の「悪魔の軽トラ」であり、あり得ない速度と運転技術に「悪い夢を見たんだ」と泣きながら帰っていった。
その後、2人はテレビの取材にて軽トラの亡霊を見たと答えており、それを見たイネは「怖いな」と感想を漏らした。正蔵は亡霊の正体を察したのか気まずそうに同意した。

『じいさんばあさん若返る』の登場人物・キャラクター

3155130izumi7
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