片倉優樹(ダブルブリッド)の徹底解説・考察まとめ

第6回電撃ゲーム小説大賞僅金賞受賞作品である、電撃文庫の名作、ダブルブリッド。その主人公である片倉優樹は人間と「怪(アヤカシ)」と呼ばれる生き物のハーフだった。超常的な能力を持ちながら、その出生ゆえ人間たちに疎まれていた彼女。刑事としての職務についていたが、なんの変化もない単調な生活を何年も続けていた。しかし、一人の人間の青年が彼女の生活に変化をもたらした。それと同時に彼女の平穏な日々が終わりを告げる事件が起きる。数奇な人生を生き抜いた片倉優樹という人物とそれと取り巻く人々の解説。

"主"率いる特高のΩサーキットという計画を阻止するために活動している組織。構成員は人間である千堂昭子、アヤカシである上村鈴香、そしてアヤカシと人間を掛け合わせて生まれたキマイラという存在である片倉晃。この三人は「三角」と呼ばれ、クロスブリードの中心を担っている。その他には晃と同じキマイラ達、鈴香の仲間のアヤカシで構成されている。それぞれが"主"に対する恨みを抱いており、それがこの組織が発足した理由であるが、構成員は決して仲間意識は強くない。本編では三角以外の構成員は登場しない。

大阪条約

アヤカシの研究・保護の観点から、無意味な捕獲や殺傷の禁止、商業的な目的の取引の禁止、非人道的な扱いや生体実験等の禁止を定めた条約。日本・ドイツ・オーストラリアが批准している。アメリカは批准予定ということになっている。この条約を批准しないと他国から研究目的でアヤカシを借り受けることができない。アメリカ本土ではアヤカシの発見例がほとんどないため、他国に比べて研究が遅れている。そのため、密輸など非合法な手段でアヤカシを手に入れようとしている。批准国には査察も入るようだが、裏では非人道的な実験や研究が行われいるのが現状である。

鬼斬り

空木というアヤカシが自分の半身と引き換えに生み出した、アヤカシを殺すためだけの武器。アヤカシによって襲われてしまう人間たちのために、空木が人間たちに与えた。完全なる対アヤカシ用の武器であるため、人間はもちろん虫一匹でも殺すことはできない。見た目はただの木刀であるが、アヤカシに対して殺意を持った人間に寄生することでその効力を発揮する。
攻撃方法は枝であり、無数に宿主の体から生えてくる。その枝一本一本にアヤカシの体を貫くだけの威力があり、先端からアヤカシの血液や体液を吸い尽くす。そのため鬼斬りに殺されたアヤカシは出血もなく、体を穴だらけにされて干からびた状態になる。
寄生された人間は、アヤカシを殺すごとに次第にアヤカシを殺すことしか考えられなくなる。思考能力も低下していき、末期には夢遊病者のようになる。加えて、その人間は睡眠や食事を取る必要がなくなり、土と水から得る養分だけで十分になる。いくら走っても疲れることはなく、眠くもならない。傷を負ったとしても即座に体内の鬼斬りによって再生される。逆に土と水と日光がない場所ではその力が弱まる。
無敵のようにも思えるが、一人の宿主で殺せるアヤカシは三体が限界であり、それ以上は宿主の体がもたずに死んでしまう。その際はただの木刀に戻り、それまでに吸ったアヤカシの養分によって枝分かれし新たな鬼斬りが生まれる。作中では第五世代までが確認されており、下の世代にいくほど鬼斬りとしての力は弱まっていく。上の世代は下の世代を吸収できる力も持つ。
鬼斬りの最初の一本は童子斬りと呼ばれ、空木の半身であり圧倒的な力を持つ。本編で山崎太一朗に取り憑く。

Ωサーキット(オメガサーキット)

特高が進めている計画の名前。浦木曰く「頑丈で強い生き物を作る計画」。その全貌は”主”というアヤカシの魂の器たる身体を作り出すこと。その計画の中で作り出されたものの一つにキマイラがある。人間とアヤカシの細胞、そして薬品で新しい生物を作るために生体実験を繰り返していた。生物として安定しておらず、生き物として形を成さないまま死んでしまったり、形としてキマイラを生み出しても非常に短命であるなど、計画自体は上手くいっていない。最終的には”主”の寿命が来てしまい、計画ごと放棄された。

キマイラ

Ωサーキットの計画内で生み出された生き物。3分の2は人間、残りはアヤカシと薬で出来ているようだ。非常に短命であり、最長でも16年ほどしか生きられない。己の寿命を知っているが故、心が荒れた者が多く、自分たちがキマイラであることを否定し人間だと主張している。片倉晃というキマイラを筆頭に特高に反旗を翻し、Ωサーキットを抜けてからはクロスブリードに全員身を置いている。”主”という自分たちを生み出したアヤカシに復讐するために日夜活動している。

聖堂騎士団

二巻に登場する集団で、ヨーロッパを拠点に活動している過激なキリスト教の宗教団体。ダブルブリッドの世界のキリスト教団体はアヤカシの存在に否定的であり、完全抹殺を掲げている団体も少なくない。本編では、日本に来た吸血鬼と呼ばれるアヤカシ、フレデリック・アシュトン・クロフォードを追って2人の団員が来日した。アヤカシを捕殺する独自の方法を持っており、青い炎を自然発生させるような超常能力で戦う。フレデリックのことを「悪魔の使徒」と呼んで始末しようとしていた。フレデリックを追う過程で優樹をも傷つけようとし交戦となるが、太一朗の奇襲により地に伏すこととなった。

神銀鋼(ミスティックメタル)

鉄や銀などをベースに、いくつかのレアメタルを非金属元素を結合させた合金のこと。素材は超高純度化され、結晶粒度5マイクロメートル以下という超微細化されたスーパーメタル。強度や腐食耐性などは現存する金属を凌駕している。しかし、作り出すには莫大な費用と複雑な精製手順や加工が必要であるため、量産や実用化は難しい。
ダブルブリッドの世界では、この金属で作られたナイフが登場する。訓練を積めば、人間でもアヤカシの骨を切断できるような代物で、そのナイフ一本で優樹の給料3か月分に相当するという。米軍の特殊生物災害対部隊(通称SBHRT)はこのナイフを正式に採用している。
作中では、高橋幸児が使用しており優樹との対決で使用された。優樹が高橋との勝負に勝った際に、優樹のものとなった。と同時に、このナイフは高橋の形見になってしまった。10巻で太一朗の体から童子斬りを切り離したのもこのナイフである。その拍子に、海の底に落としてしまい、童子斬りと共に沈んでいった。

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