スラムドッグ$ミリオネア(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『スラムドッグ$ミリオネア』とは、2008年製作のイギリス映画。インド人外交官ヴィカス・スワラップの小説『ぼくと1ルピーの神様』をダニー・ボイル監督で映画化。インドでオール・ロケーションされた社会派エンタテインメント。第81回アカデミー賞では作品賞を含む8部門を受賞した。日本でもお馴染みのTVのクイズ番組に出場し、史上最高額まであと1問と迫った青年。彼のスラムで育った過酷にして波瀾万丈の生い立ちを、クイズ番組に巧みに織り込みながら、スリリングかつ躍動感いっぱいに描いていく。

踊り子になっていたラティカをようやく探し出したジャマール。彼と再会し嬉しそうなラティカだったが、そこへ運悪くママンの男たちがやって来た。サリームが拳銃でママンのリーダー格の男を撃ち殺し、3人は金を奪ってその場から逃走する。そしてホテルの一室に入り込みとりあえず落ち着いた。サリームが出掛けた後、2人だけになったジャマールとラティカの久しぶりの会話。「私のために戻って来たの?」というラティカに「当り前さ」と答えるジャマール。「もう忘れちゃったと思ったわ」と言うラティカにジャマールが返したセリフ。

幼い頃からお互いを意識していたジャマールとラティカ。離れ離れになってからもずっとラティカの事を忘れなかったジャマールの、ラティカへの愛の告白ともいえるロマンティックな名セリフである。

「(ジャマール)何故皆こんな番組を観る?」 「(ラティカ)現実から逃げる夢を見るためよ。違う?」

ジャヴェドの豪邸に潜入したジャマールはラティカと久しぶりの再会を果たす。2人は懐かしむように熱く抱き合うのだが、ジャマールがキスをしようとするとラティカは怯えたように突き放す。ジャマールは彼女の顔に痣を発見する。彼女はジャヴェドに囲われており、彼の振るう暴力に怯えながら暮らしていたのだ。「何故来たの?」と言うラティカに戸惑いながら「君に会いに」と返す。「会えたわ。それでどうなるの?」と言うラティカの問いに言葉が出ないジャマール。その時、ラティカが観ていたテレビに『クイズ$ミリオネア』が映っているのを見てジャマールが発したセリフとそ、れに対するラティカのセリフ。

ジャマールが働く携帯電話のオペレーションセンターでは、『クイズ$ミリオネア』に出場したい人たちからの電話が殺到していた。そして今ラティカもこの番組を観ている。クイズに興味の無いジャマールには何とも理解し難い現象だった。だがラティカにとっては先の見えない状況から現実逃避が出来る唯一の楽しみだったのだろう。2人の状況の違いが生んだ名セリフであり、後にジャマールが『クイズ$ミリオネア』に出場するきっかけとなるという名シーンでもある。

クマールの罠

『クイズ$ミリオネア』に出場したジャマールは、番組MCのクマールが出題する数々の問題を正解していき、あと1問正解すれば賞金2千万ルピーが与えられる最後の1問に行ける段階まで来ていた。だが番組を仕切るプライドから正解を阻止したいと考えたクマールは、収録の休憩時間にトイレでジャマールと会話を交わす。クマールは「神が示す予感がする。君は勝つだろう。私を信じろ。」と言い残しトイレを出て行く。そして湯で手を洗うジャマールがふとトイレの鏡を見ると、蒸気で浮かび上がった「B」の文字。それはクマールが指で書いた問題の答えだった。しかしジャマールはその答えを信じず別の答えでその問題に正解する。

クマールは偽りの答えを教え、ジャマールに揺さぶりを掛けた。だがそれが逆にクマールに「予め答えを知っていたのでは」という不正の疑いを持たれることになり、ジャマールは警察に連行されてしまう。ジャマールは本当に答えが分からなかったのだが、クマールの揺さぶりを信じなかった事が正解に繋がり、あと一問という所で奈落の底へ突き落されてしまう。本作中で最もスリリングな名シーンと言えるだろう。

運命の愛

2千万ルピーを手にしたジャマールは収録後、ムンバイの駅でラティカを待った。暫くしてラティカが現れた。彼女にもう追手はいなかった。ジャマールとラティカは無事再会を果たし、2人は抱き合いお互いをじっと見つめながら熱くキスを交わした。

2人のキスはストップモーションになり、「D.運命だった」と答えが出る。これは映画の冒頭で「彼はあと1問でミリオネア。なぜ勝ち進めた?」という架空の問題から「1.インチキした 2.ツイていた 3. 天才だった 4. 運命だった」と4択がテロップで出るのだが、映画の最後にその答えが分かるという仕組みになっている。ジャマールもラティカも、そして死んだサリームも、このムンバイで生まれてからずっと運命に左右され続けて来た。良いことも悪いことも、そして2人の愛もすべてが運命だったのだ。何という粋なラストシーンであろうか。

『スラムドッグ$ミリオネア』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

『クイズ$ミリオネア』はイギリス発祥の番組

『クイズ$ミリオネア』とは、イギリスの製作会社セラドール社によって制作されたテレビのクイズ番組である。1998年9月4日にイギリスで放送が開始された。
番組名は”フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア”『Who Wants to Be a Millionaire?』(誰が百万長者になりたいですか)
徐々に難易度を増していく四択クイズに正解していくことで、高額の賞金が得られるクイズ番組で、賞金の最大金額は100万ポンド。ラジオ・パーソナリティであるクリス・タラントの司会で進行する。元々は、クリス・タラントのキャピタルFMラジオでの朝の情報番組向けに多数のゲームを考案した、デイヴィッド・ブリッグス、スティーヴ・ナイト、マイク・ホワイトヒルによって考案された番組のフォーマットに基づいており、当時のクイズ番組のジャンルでは驚くべき新方式だった。その後、アメリカ合衆国などを筆頭に、世界各国・各地で番組フォーマットが販売・輸出され、2012年までに119の国と地域で放送されている。

本作『スラムドッグ$ミリオネア』はイギリス映画であるが、インド版の当番組が舞台として登場しており、セラドール社の映画部門「セラドール・フィルム」が制作に名を連ねている。また、2006年製作のフランス映画『ぼくの大切なともだち』ではフランス版の当番組が登場。フランス版の本物の司会者がキャスティングされている。

アミターブ・バッチャンとは

若き日のアミターブ・バッチャンのサイン入りブロマイド

本作のクイズ第1問目の問題は、”「鎖」という映画の主人公を演じる俳優は?”である。その答えとして、幼少時代のジャマールやサリームが憧れる映画スターとして描写されているのは、アミターブ・バッチャン(本人は出演していない)である。彼は、実在するインドの映画俳優であり映画プロデューサーや歌手でもある。実は彼は実際のインド版クイズ・ミリオネアの初代司会者でもあるのだ。
1969年にスクリーンデビューし、現在もボリウッドの映画界で最も人気のある大スターの一人である。愛称は「Big B」。最近では、2012年のインド映画『マダム・イン・ニューヨーク』(ガウリ・シンデー監督)や、2013年のアメリカ映画『華麗なるギャツビー』(バズ・ラーマン監督)にも出演している。

子役たちの出演料問題

サリームの幼少時代を演じたアズハルッディーン・イスマーイール、ラティカの幼少時代を演じたルビーナー・アリー、本作に出演した2人の子役の両親が「十分な出演料を受け取っていない」と発言したという。両親によれば、受け取った額はアズハルッディーンは年間1700ポンド(約24万円)、ルビーナーは年間500ポンド(約7万円)という出演料だそうである。製作側はこの申し出に対し「彼らの出演料は同地区の大人が受け取る平均年収の3倍」であって「彼らの教育費、生活費、医療費などを賄うためのファンドもある」と反論した。製作側はさらに加えて「子役たちが高校を卒業後にファンドとは別に10万ポンド(約1300万円)を支給する」としているが、このような方法を取ったのは「出演料を一括支払した場合の起こりうる様々なリスクに配慮したためだ」と説明しており、子役の報酬を周囲の大人に取られないようにするためだとの見解を示している。

子役に人身売買疑惑があった

ラティカの幼少時代を担当した9歳のルビーナー・アリーが、父親によって養子に出されるとの情報が明らかになった。2009年4月19日、イギリスの大衆紙『ニュース・オブ・ザ・ワールド』は、「スラムドッグのスターは父親によって売りに出される」というショッキングな見出しで報じている。
同紙によれば、ルビーナー・アリーの父親がアラブ首長国連邦(UAE)の富豪を装った記者に20万ポンド(約2900万円)で彼女の養子縁組を持ちかけたと報じている。父親はこの人身売買とも言える疑惑を否定したが、別居中の母親が警察に訴えたために同日逮捕された。しかし、人身売買を裏付ける証拠がなかったとして、4日後の23日、警察は父親を起訴せず捜査は打ち切られたそうである。

みのもんたがゲストで登場

ダニー・ボイル監督とみのもんた

2009年2月18日、六本木・東京ミッドタウンにて行われた、映画『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイル監督の来日記者会見に、日本版『クイズ$ミリオネア』の司会者だったみのもんたがゲストとして招かれた。「今日ゲストで来たこと、これも運命だよね。昔から赤い糸で結ばれてたのかな」と笑い、ボイル監督は「アカデミー賞に勝つ!」 と縁かつぎのために用意されたカツカレーをみのと一緒に仲良く頬張り、嬉しそうな笑顔を見せていたようだ。
日本版『クイズ$ミリオネア』は2000年4月20日から2007年3月29日まで7年間に渡りフジテレビ系列で放送された。
司会はフリー・アナウンサーでタレントのみのもんたで、番組の冒頭では、「あなたの人生を変えるかもしれない『クイズ$ミリオネア』」と口上を述べた。また番組内で使われる「ファイナルアンサー!?」は流行語になり社会現象にもなった。

7wBeRJzmQBSiOST3
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