ミュージシャン峯田和伸の俳優としての活動

日本テレビ系列ドラマ「高嶺の花」で石原さとみの相手役として出演し、その立ち振る舞いが気持ち悪いと炎上した峯田和伸。朝の連続テレビ小説「ひよっこ」にも出演し、大河ドラマへの出演も決定している彼の本業はミュージシャンである。俳優として注目を浴びる峯田のフィルモグラフィとともに、峯田が俳優として活動する経緯を紹介する。

「ボーイズ・オン・ザ・ラン」以降、三浦とのタッグが増え、三浦大輔作・演出の舞台をドラマ化した「裏切りの街」では楽曲を手がけ、舞台「母に欲す」で池松壮亮と共演した。その池松壮亮が主演のドラマ「宮本から君へ」で峯田はタクシードライバーとしてカメオ出演しており、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」が広げた輪は果てしない。さらに、銀杏BOYZとして「ボーイズ・オン・ザ・ラン」という同名曲をエンディングテーマとして披露しており、シングル発売もされている(「光のなかに立っていてね」収録)。このシングルCDには劇中、峯田が歌った岡村孝子の「夢をあきらめないで」のカヴァーが収録されている。この音源を聴けばわかるのだが、峯田は歌うシーンを一発撮りをしている(全編歌い切ったあと、監督の声で「カット」の声がかかる。すなわち、長回しで一発撮りをしている)。雑誌の対談や自身のムック本などで「自分には役者としてのスキルはなく、ただ与えられた役柄を全力でやるだけ」と語っている峯田だが、これほど俳優としてのオファーがかかるのは技術の演技を披露する役者ではなく魂の演技を披露する役者であるからという側面の方が大きい。役者ではないからこそがむしゃらにやった結果が今に繋がっているわけである。見るものや、共演する人間に対してまで「峯田の演技は疲れる」と言わしめるその演技は、技術からくるものではなく、魂からくるものであり、それが評価された結果、俳優として評価され、多数の映像作品に出演することとなるのである。

母に欲す

峯田和伸が役者として初めて出演した舞台である。女性からの共感はあまりなく、男性からの支持が多くを占めるこの作品は、男の醜さ、ダサさが徹底して描かれている。そもそも青春パンクはそういった男の側面を捉えている音楽ジャンルでもあるので、峯田をキャスティングした事に偽りはなく、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」でも描かれた男の疾走が峯田本人によって表現されている。

アルバム「光のなかに立っていてね」が出てから

「ボーイズ・オン・ザ・ラン」以降、2015年まで俳優としての活動はなく、銀杏BOYZとしてアルバム制作に精力的に取り組んでいた。そして2013年11月に、9年ぶりとなるアルバムを2枚同時にリリースすることと、安孫子真哉とチン中村の脱退告知がなされる。また、12月には村井守の脱退が予告された。そして2014年1月15日、アルバム「光のなかに立っていてね」、ライブリミックスアルバム「BEACH」が同時発売される。安孫子、チン、村井の脱退はアルバム収録時の不仲が原因だとされている。アルバム制作に真摯に取り組みすぎるあまり、方向性の違いが露骨に出すぎた結果、殴り合いにまで発展したと言われている。

光のなかに立っていてね収録曲「ぽあだむ」MV 長澤まさみが出演している。

「光のなかに立っていてね」発売から約一年

アルバム発売から約1年後、再び田口トモロヲ監督の作品に出演。ジョージ朝倉原作の映画「ピース オブ ケイク」である。「ピース オブ ケイク」では出演の他に加藤ミリヤfeat.峯田和伸として、主題歌である「ピース オブ ケイク -愛を叫ぼう-」を提供。観客動員ランキングで初登場10位を記録するなどしてヒットした。以降、NHK BSプレミアムでドラマ「植物男子ラベンダー」や、ついには月9「恋仲」に出演。「恋仲」では劇中歌として銀杏BOYZの代表曲である「BABY BABY」を世武裕子がカヴァーしたものが流れ、女子中高生を中心にして話題となった。それをきっかけに地上波ドラマへの出演も増え始め、「アイデン&ティティ」で共演した麻生久美子と共演したNHK BSプレミアム「奇跡の人」や、NHK朝の連続テレビ小説「ひよっこ」などに立て続けに出演。また、メンバーが抜けた後の銀杏BOYZを率いて音楽活動も精力的に行い、「骨」や「エンジェルベイビー」などシングルを量産。ダウンタウン司会の「HEY! HEY! HEY!」や「ダウンタウンなう」に出演するなど、ゼロ年代当時のパンクシーンを知るファン以外からの市民権をも得るようになる。

ドラマ出演、吹き替え声優など

「ひよっこ」や「奇跡の人」で見せた『不器用だけどいい人そう』な峯田は、2018年7月11日から9月12日まで毎週水曜日22時から日本テレビ系の「水曜ドラマ」枠で放送されたテレビドラマ・「高嶺の花」でもその像を崩すことなく遺憾無く発揮されていた。だが、真っ向勝負の恋愛作品かつ相手役が石原さとみというハードルの高さからか、ネット上では「気持ちが悪い」として炎上。「それが峯田の持ち味だ」として擁護する声も上がったものの、ゴールデンタイムのドラマはまだ早かったという声が多い。テレビ的にも石原さとみは峯田からすれば高嶺の花な訳で、やはり釣り合いの取れていなさが視聴者に不快感を与えたのは事実だ。
また、クレイアニメーション映画「ぼくの名前はズッキーニ」で声優吹き替えに初挑戦し、麻生久美子、リリー・フランキーとともに共演した。麻生久美子は峯田の演技を可愛かったと評し、話題となった。

峯田、リリー、麻生の共演シーン抜粋

俳優としての開花

2019年度の大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺〜」にも出演が決まっている峯田だが、やはりパンクな峯田を待ち望んでいるファンも多い。
ライブなどで共演し、自身のお笑いライブにも峯田をゲストとして招いたりもしているお笑い芸人、エレキコミックのやついいちろうは「今はパンクをためている状態で、いつか発散してくれることを待ち望んでいる」とムック本の中で発言している。ファンの多くが待ち望んでいる、かつて「青春パンク」を立ち上げた峯田和伸はこれから音楽活動よりも俳優活動に重きを置くのか。

とはいえ、俳優としての活躍もめざましく、日本アカデミー賞の授賞も望まれている状態である。巡り会う作品がよければ「永い言い訳」で日本アカデミー助演男優賞を授賞した竹原ピストルのように、俳優としてもミュージシャンとしても大成できるはずだとファンからは言われている。
峯田が俳優としてここまで開花したのは、峯田自身が今まで積み上げてきた言葉や行動が「峯田」という生き方そのものになり、演じる役柄に投影されて作家や俳優たちから人間として評価された結果だ。笑福亭鶴瓶と、ももいろクローバーZがMCを務める関西テレビ系「桃色つるべ」に峯田がゲストとして出演した際、笑福亭鶴瓶は峯田の生き方そのものが好きだと発言している。演技の上手い下手ではなく、役柄に投影される「峯田」そのものが評価され、また観る者の心に響くのだ。「不器用な姿が似合う俳優」という他に見当たらない新たなジャンルを見出し、またそれが人々に受け入れられた結果、峯田は俳優として花開くこととなった。

峯田が金田一役で出演しているMV

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