『Dreams』の変化球は実際に投球可能か考察してみた

原作・七三太郎、作画・川三番地による野球漫画『Dreams』。超常的な魔球や、驚異的な身体能力を持つ人物・キャラクターが登場し、試合描写の詳細さが評価されている作品だ。ここでは、主人公久里武志の「バクボールシリーズ」と「爆ボール0」、神戸翼成の生田が投げる「魔球KOBE」、私徳館の名倉の「魔球1.7」など、多彩で個性的な変化球が実際に投げられるのかについて、変化球の原理と既存の変化球を照らし合わせ、考察していく。

変化球を投げる投手たち

久里武志(くりたけし)

本作の主人公。走攻守、すべてを兼ね備えた選手。しかし、すぐに頭に血が上ってしまう性格で、暴力沙汰などの問題を起こす問題児でもある。野球センスは抜群なのだが、素行の悪さからどの高校からも勧誘されず、最後に入部テストを受けた夢の島高校に、ようやく合格し、野球部に入部した。性格に難はあるが、部員とも少しずつ調和が取れていき、落ちこぼれだった野球部を強豪チームに変えていく。右投右打。

生田庸平(いくたようへい)

豪爆打線と呼ばれる春の優勝校・神戸翼成高校野球部の投手。阪神大震災で両親を失い、弟と妹の面倒を見ながら、野球を続けている。打撃も上手く、プロ入りを意識した木製バットを愛用している。左投げ左打ち。

名倉的矢(なぐらまとや)

久里の親父が監督を務める私徳館のエース。監督曰く「完成品」らしい。右投げ右打ち。

首里城きらり(しゅりじょうきらり)

美ら海聖都高校の野球部に所属する女子部員。本来は甲子園では女子の出場は認められていないのだが、すでにチームが三回戦まで勝ち抜いていたため、特例で出場を認められた。女子ならではのしなやかな投球術をみせる。左投げ左打ち。

実際に投球可能かを考察した変化球

バクボールシリーズ

バグボール

まずは最初に投げられた「バクボール」。これは左右に微妙に揺れており、空振りではなく、打ち取ることを狙いとした球である。このような変化球のことを、「動く」「暴れる」とも表現する。これは、「ムービングファスト」といって、主に、メジャーリーガーが投げる速球を指す。不規則な縫い目の通過や回転のズレによって、微妙な変化をする性質がある。
余談だが、メジャーリーグの投手は、キャッチャーにいい音で捕球されるのを嫌がる。キャッチャーがしっかり捕球出来るということは、バッターにも打たれる可能性が高いという認識らしい。
メジャーリーグを目指す久里にとって、「バグボール」は有効な持ち球といえる。

バクボール2

速球から打者の手前でスライドする球。つまり、現実の野球でいうと高速スライダーである。曖昧な見解があるが、一般的には140km前後のスライダーのことを高速スライダーと呼ぶ。
日本球界では元ヤクルトスワローズの伊藤智仁や、元中日ドラゴンズの川上憲伸などの名前が高速スライダーを投げた。

バクボール3

高速シンカーを投げる米カージナルスのジョーダン・ヒックス。このボールが「バクボール3」に近い。

「バクボール2」とは逆で、シュート回転しながらシンカーのように沈むボール。現実の野球でいう、高速シンカーに近い球種である。
メジャーリーグでは、米カージナルスのジョーダン・ヒックスが164kmの高速シンカーを投げる。

バクボール4

「バクボール」と「バクボール2」を合わせた球。つまり、ムービングからのスライダーである。現実の野球では、高速スライダーを投げるメジャーリーガーは、ほぼ、「バクボール4」のような動きをするボールを投げる。

爆ボール0

通常の速球と同じく4シームであるが、縫い目を左右逆にすることにより、通常の速球と逆に伸びてくるボール。現実ではソフトボール特有の変化球「ライズボール」にあたる。

「ライズボール」とは、平地もしくは腰より下から相まって投げられるボールというのは、一様流中に置かれた回転する球に、垂直方向の力がはたらく「マグヌス効果」という現象によって、重力に逆らうように打者の手元で浮き上がるように見えるというもの。
一世風靡したソフトボール女子日本代表の上野由岐子が、この変化球を投げることができる。

投げられたボールは、縫い目と回転数によって変化する。通常プロ野球選手が投げるボールの回転数は30~40回転である。オーバースローやスリークォーターの上手投げの選手で、近いものを投げた選手が実際にいる。「平成の怪物」こと松坂大輔のストレートは41回転。「火の玉ストレート」で有名な藤川球児は45回転。そして、中日ドラゴンズの先発投手として活躍した山本昌は驚異の52回転だった。
回転数をあげることによって、重力に逆らい、キャッチャーのミットに届くまで失速することがない。そして、縫い目を逆にすることによって、浮き上がるボール「ライズボール」となるわけである。プロ野球でもノビのあるボールを投げる投手は少なくないため、理論上でも、上角度をつけることにより、「爆ボール0」の投球は可能とされている。

魔球KOBE

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