多田くんは恋をしない(第3話『それ、好きだなあ』)のあらすじと感想・考察まとめ

多田家の飼い猫ニャンコビッグは、ハードボイルドな雄猫である。十年前に拾われた恩義を感じて、多田の成長を見守ってきた。今では一人で珈琲店を切り盛りできるまでになった多田は、ニャンコビッグには自慢の飼い主だ。残念なのは、食べあきたキャットフードをニャンコビッグの好物だと思っていることだ。
今回は「多田くんは恋をしない」第3話『それ、好きだなあ』の内容(あらすじ・ストーリー)と感想・考察を紹介。

「多田くんは恋をしない」第3話『それ、好きだなあ』のあらすじ・ストーリー

ニャンコビッグによる光良起床作戦。

土曜の朝、ニャンコビッグのボディアタックで多田は目が覚めた。「また太ったんじゃないか」とニャンコビッグにぼやきながら、多田は起きだした。
制服姿のゆいが家を出るのを見送り、多田は仏壇に手を合わせる。ニャンコビッグも、遺影の故人に向かって話しかける。「親父さん、おふくろさん、光良もなかなかいい男に育ってきただろう。これも俺が見守ってきたおかげだ」と、ニャンコビッグは自慢した。多田は、妹の面倒を見て、カメラマンになるために日々努力をし、今では名人の祖父に匹敵するコーヒーを淹れられるようになったのだ。庭先で保護されてから十年間、ニャンコビッグは多田を成長を見ていたのだ。
朝食の支度をする音が聞こえて台所に行くと、今日もニャンコビッグは嫌いなキャットフードだった。自棄になってむさぼるニャンコビッグは、「おまえ、ホントそれ好きだなあ」と多田に言われて、好みを理解されていないことに呆然とする。
ベランダに出た多田は、向かいのマンションの窓から、テレサに挨拶をされる。「俺と同じで、光良は、女にうつつを抜かさない。そうだろ?」と、同意を求めて鳴くニャンコビッグに、多田は餌のおかわりを催促されたと思っている。そんなつもりは毛頭なかったニャンコビッグだったが、テレサの家から魚のにおいがして、目の色を変えた。おこぼれ欲しさにテレサの部屋に飛び移ろうとして、ニャンコビッグはベランダから落ちた。

ベランダ越しに挨拶する多田(左)とテレサ。

多田が開店準備をしていると、テレサたちがニャンコビッグを心配してやってきた。アレクはニャンコビッグを乱暴につかみ、逃げる反応のよさで無傷だと確かめた。
開店時間になると、多田はニャンコビッグにドアの札をOPENの側にひっくり返すように言う。言い続けたらやるようになるかもしれないと、多田はとぼけたことを言う。「猫の手も借りたいですか」とアレクが持ち出した慣用句から、テレサは喫茶店の人手が足らないのかと考えた。「何事も経験ですよ」と手伝いたがるテレサをアレクは止められない。祖父が外出中のため一人で店を切り回す多田は、二人の手を借りることにした。
開店一番乗りの客は、モーニングを食べに来た伊集院だった。ニャンコビッグにはムシの好かない相手だった。
次に来た客は、目つきの鋭い常連で、ニャンコビッグは殺し屋だと決めつけている。カウンターの定位置に座った常連客が目くばせで、多田はTVをつけた。TVでは「れいん坊将軍」を放映していた。喜んだテレサは「いつも心は虹色に」と、伊集院とれいん坊将軍の決め台詞ではしゃぎ、常連客をなごませる。

チョコレートスプーンを使ったコーヒーを、何気なくすすめるような仕草をするテレサ(左)。多田(右)は間髪おかずに、テレサのカップに口をつけた。

昼どきになり、やはり常連の老夫婦が来店する。老夫婦の頼んだカッパサンドに、伊集院は異常に怯える。
ニャンコビッグには顔なじみの男の子が、女の子と一緒に入ってきた。二人は、初々しくぎくしゃくして会話もままならない。
ボックス席にお冷やを運ぼうとしたテレサがつまずき、ポットを落とした。すかさずカウンターの常連客がポットをつかみ、落とさずにすんだ。テレサは、「かたじけない」と礼を言い、ポットをトロフィーのように掲げて店内に見せる。息を詰めていたボックス席の客たちも、ほっとする。
テレサのふるまいに笑いがもれて、若いカップルは肩の力が抜けた。お互い話しかけようとして、見つめ合う。「男と女は八秒目が合えば、恋に落ちると聞く」とニャンコビッグは観察し、その言葉通りになることを確かめた。
店内から客がひけて、多田はひと息つくことにする。テレサは、手土産にホットチョコレートスプーンを持ってきていた。スプーンにチョコレートを固めたものを飲み物に溶かす、テレサの母国ではメジャーな嗜好品である。甘いものが苦手だと手を出さない多田に、テレサは自分の虹色のカップを多田に向けた。多田はためらいなくテレサの飲みさしに口をつけ、好感触を伝える。テレサは、多田の唇が触れたことを意識しながら、虹色のカップを口元に運んだ。

日比谷公園の藤棚で休憩中の写真部。

午後になり、多田たちは写真部の撮影会に出かけていった。
ニャンコビッグもパトロールに出た。出先から帰ってきた多田の祖父は、ニャンコビッグに「パトロールか」と話しかける。祖父とは意思疎通できることに、ニャンコビッグは毛が逆立つほど驚いた。銀座を行く先々でニャンコビッグをなぜか「ミーコ」と呼ばれながら、日比谷公園に行き着いた。
公園には多田たちも撮影に来ていた。山下は寝転がって空を撮り、伊集院はセルフポートレートを撮るなど、部員はいつも通りのペースである。
テレサは、「れいん坊将軍が出てきそう」と日本庭園に歓声を上げる。伊集院は池には河童がいるのだと教える。六歳の時、伊集院は庭園内の池で何かに足をつかまれた。一緒にいた友達は、河童の仕業と騒いで逃げてしまった。写真を撮っていた多田が、「河童なんていない」と伊集院を引っ張り上げてくれた。これが、多田と伊集院のなれそめであった。
その話を聞いて、テレサは幼少時代を思い出す。アレクが作ってくれた花冠を川に落としたテレサは、止める間もなく橋から飛びこんだ。「ご自身の立場を考えて行動してください」と、アレクは泣きじゃくりながらたしなめた。テレサもその思い出を、アレクに水を向ける。アレクは「そんなことありましたっけ」と忘れたふりをし、左腕をさすった。

ニャンコビッグを抱きとめてよろけるテレサを、多田が押さえて見つめ合う。

撮影会を解散しても、多田は残るという。
山下は、多田の亡父は有名なカメラマンであり、多田もプロを目指していると話す。その話を聞くテレサの足元に白猫が擦り寄ってくる。テレサが皇居前で一緒に雨宿りした猫で、山下はチェリーという飼い猫だと教えてくれる。
ニャンコビッグはチェリーと八秒見つめ合い心を奪われるが、チェリーはそっぽを向く。チェリーに近付こうとしたニャンコビッグは池に落ちたが、自力で上がり木に登った。しかしそこからも落ちてしまう。
テレサがニャンコビッグを抱きとめ、よろけた背中を多田が押さえる。テレサと多田は数秒見つめ合った。多田は、ニャンコビッグに「今日飛びすぎだぞ」と情緒のないことを言うのだった。
その夜、テレサは夜空を見上げてカッパ星の話をする。アレクのカッパの説明にもうわの空で、テレサは「河童が住んでいるのでしょ?」と、今日撮影した写真を見つめていた。

「多田くんは恋をしない」第3話『それ、好きだなあ』の感想・考察

「多田くんは恋をしない」アニメ全話のネタバレ解説まとめ

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