ニル・アドミラリの天秤(第2話『第弐章 帝国図書情報資産管理局 -フクロウ-』)のあらすじと感想・考察まとめ

帝国図書館情報資産管理局・通称フクロウに入ったツグミは局員に歓待される。
はじめての任務は巡回だった。深窓の令嬢だったツグミには、仕事とはいえ男性と街中を歩くこともためらわれた。稀モノが一冊も見つからないことも、ツグミに不安を募らせる。
今回は「ニル・アドミラリの天秤」第2話『第弐章 帝国図書情報資産管理局 -フクロウ-』の内容(あらすじ・ストーリー)と感想・考察を紹介。

「ニル・アドミラリの天秤」第2話『第弐章 帝国図書情報資産管理局 -フクロウ-』のあらすじ・ストーリー

ツグミ(中)に帝国図書館情報資産管理局内を案内する尾崎隼人(左)と朱鷺宮栞。

帝国図書館情報資産管理局、通称フクロウに入ったツグミは、尾崎隼人に局内を案内してもらう。隼人はツグミがフクロウに来たことを喜び、もっと気楽に話するようにと言う。
情報資産管理局は、探索部と研究部に分かれていた。ツグミは、早速、地下階にある探索部の作戦室に連れていかれる。作戦室の続き部屋は稀モノの一時保管庫になっていた。ツグミはすべての本のアウラが見えた。書庫の陰から姿を現した男にツグミは驚く。男は久世家で書生をしていた隠だった。隠は、帝国図書館で働くようになってから稀モノの存在を知り、アウラが見えることに気付いたという。ツグミがアウラが見えるようになったきっかけが、ヒタキの自殺未遂であることも隠は知っていた。「だからこそ私にできることがあればと思っています」と、ツグミは能力を役に立てたいという意思を語った。

研究部部長の猿子は特に鳥類と民俗学に精通している。

隼人とツグミが作戦室に戻ると、朱鷺宮が会議から帰っていた。ツグミの案内は朱鷺宮に引き継がれた。
ツグミは、地下通路を通って研究部に連れていかれる。鳥の仮装をした研究部の猿子部長にツグミは歓待される。猿子は民俗学と鳥類学が好きだと語り、肩にはオオハシを乗せていた。
上階は図書館で、たくさんの職員が立ち働いていた。ここは帝国唯一の国立図書館であった。情報資産管理局は元々国内外の貴重な書物を収集・管理する部署であり、稀モノをめぐる職務もその延長線上にあると、猿子は説明する。

ツグミ(中)の歓迎会に現れた金魚売りは、作家の汀紫鶴(右)だった。

夕方、朱鷺宮は、フクロウの職員アパートに向かった。ツグミには二階の個室が与えられ、ゆっくり休むようにねぎらわれた。荷物は隼人が運びこんでくれていた。
一人残されたツグミは庭の温室に下りてみた。その時、金魚売りの口上が聞こえ、好奇心にかられてツグミは通りに出た。人気のない道で天秤棒を担いだ長髪の男は、ツグミに気付き、カフェに誘った。慌てたツグミはアパートの敷地に戻った。
庭の樹上からツグミに声をかけ飛び下りてきたのは、オッドアイの少年だった。少年もフクロウの一員であり、星川翡翠と名乗った。
その夜、アパートの一室でツグミの歓迎会が開かれた。鴻上は寿司をひとつつまんだだけで、席を立った。隼人や翡翠によると鴻上は社交的でないらしく、付き合いが悪いのだという。
鴻上と入れ替わりに、夕方の金魚売りがやってきた。金魚売りは作家の汀紫鶴だった。紫鶴は、フクロウと同じアパートに住んでいるのだった。ツグミになれなれしい紫鶴に、隼人は釘を刺すが、紫鶴は「(仕事以外は)彼女の自由だろう。束縛する権利は君にないはずだ」と軽くいなす。

ツグミ(右から2番目)の初仕事の同行者は尾崎隼人・星川翡翠・鴻上滉(左から)

翌朝、ツグミは、隼人・鴻上・翡翠の三人と巡回に出た。紫鶴は、幸先が良いように縁起を担いで火打石を鳴らし、ツグミを見送ってくれた。
ツグミに用意された制服は、スカート丈が短く、ボディラインを強調したものだった。また、同行者は男性だけだった。華族の令嬢としてつつましく暮らしてきたツグミには、制服がはしたなく感じた。男性と肩を並べて歩くこともためらわれ、ツグミは三人に遅れがちになる。翡翠は女性には歩みが速いかと気遣い、隼人も体調を気にかけてくれる。
巡回では、輸入品も扱う雑貨屋に立ち寄った。店主の杙椰のペットになつかれて気分がよくするツグミに、杙椰は品のない言葉で誘いをかける。「男性にも結婚にも興味ないので」とそっぽを向いたツグミに、隼人が何故か驚いていた。気も悪くせず、杙椰は稀モノが見えるツグミに入荷した本の判別を頼む。「申し訳ありません。これは普通の本だと思います」と言うツグミに、隼人はなぜ謝るのかと不思議がる。
その後、巡回を続けても稀モノは見つからなかった。ツグミは見つけられないことに気落ちしていた。
モダンな店構えの笹乞書店では、店主が露骨な嫌味を言ってくる。大した結果も出していないフクロウが役立たずの人員を増やした、と笹乞は冷笑する。
笹乞の言うように何も役に立てないのではないかと、不安にとらわれたツグミは、雑踏で隼人たちとはぐれてしまう。心配して探しに来た隼人は、「ちゃんとついて来いと言っただろう」と、荒々しくツグミを責める。恐縮するツグミを、翡翠が慰めてくれる。

笹乞(右)がフクロウを笑い者にするのを傾聴するのみの鴻上(左)とツグミ

その日最後の見回り対象である大林堂書店に行くと、店主が待ちかねていた。稀モノに触れただけで呪いを受けるという妄言を店主は真に受けて、持ち込まれた和書に怯えていた。ツグミは稀モノではないと判断した。
店主は心底安心して、ツグミたちフクロウに感謝する。稀モノを見つけることが目的になっているツグミは、店主の喜びようが理解できない。隼人は、ツグミのおかげで危険なものを扱わなくていいとわかったのだと説明をする。ついでに、隼人はツグミの迷子を強くとがめたことを謝った。「ありがとうございます、尾崎さん」と隼人の気遣いへの礼がもの堅いと隼人はとがめ、気楽に話すようにと促した。ツグミは、「ありがとう、隼人」とためらいがちに改めた。
その夜、どこかとわからぬ一角で書物を焼く学生の一団があった。焼かれているのは和綴じの冊子数冊だった。

「ニル・アドミラリの天秤」第2話『第弐章 帝国図書情報資産管理局 -フクロウ-』の感想・考察

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